1.喉頭について
喉頭は、いわゆる「のどぼとけ」のところにある器官で、気管と咽頭をつなぐ部分です(図1)。喉頭は咽頭から気管への空気の通り道ですが、飲食物が入ってきた時には、喉頭蓋と呼ばれる部分がフタのように閉じることにより、飲食物が間違えて気管に入ること(誤嚥)を防いでいます。
喉頭には左右一対の声帯があり、声帯が振動することで声が出ます。左右の声帯とそれらに囲まれた空間を声門といいます。また、声門より上を声門上部、下を声門下部と呼びます。
なお、頭頸部とは、脳、目、首の骨(頸椎)を除いた頭と頸部(首)のことで、鼻や口、あご、のど、耳、またそれらの周囲の臓器を指します。
2.喉頭がんとは
喉頭がんは、喉頭に発生するがんで、頭頸部がんの1つです。発生するがんの種類(組織型)はほとんどが扁平上皮がんです。がんができる場所によって、「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」の3つに分けられています。この中で最も多いのは声門がんで全体の約70%を占め、次いで声門上部がんが25%、声門下部がんが5%となります。
喉頭がんの中でも声門がんは頭頸部の他の部位のがんと比べて、転移することが少ないです。一方で、声門上部がんと声門下部がんは周辺のリンパ液の流れが豊富なため、リンパ節に転移しやすいという特徴があります。
3.症状
喉頭がんは、がんができる場所によって最初にあらわれる症状が異なります。
1)声門がん
声を出すために必要な声帯にがんができるため、早い時期から声の異常である嗄声(声のかすれ)があらわれます。嗄声には、低いがらがら声、雑音が入ったざらざらした声、息がもれるような声などがあります。がんが大きくなると、嗄声もひどくなり、声門が狭くなると息苦しくなります。また、がんから出血することにより、痰に血液が混じることもあります。声門がんは、これらの症状が早いうちからあらわれるため、早く発見されやすいがんです。
2)声門上部がん
のどに、いがらっぽさ、異物感や飲食物を飲み込んだときの痛みがあらわれます。がんが声帯にまで広がると嗄声が起こり、さらに進行すると息苦しくなります。初めのうちは、のどのいがらっぽさなど風邪による症状と似ているため気付きにくく、発見が遅くなることがあります。
3)声門下部がん
がんが進行するまで症状がないことが多く、進行すると嗄声や息苦しさといった症状があらわれます。そのため、進行するまで気づきにくく、受診しないことが多いので、発見が遅くなることがあります。
これらのような気になる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、早期発見につなげましょう。
4.関連する疾患
喉頭がんと同時、または異なる時期に、喉頭以外の頭頸部、食道、胃、肺などの臓器にがんが見つかることがあります。喉頭がんの原因である喫煙や過度の飲酒は、これらのがんの発生要因でもあると考えられているためです。このように、異なる臓器に発生するがんのことを重複がんといいます。喉頭がんは重複がんが多いという特徴があります。
2023年09月06日 | 「頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版」「日本頭頸部癌学会 全国登録2019年初診症例の報告書」より、内容を更新しました。 |
2018年06月26日 | 「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。 |
2013年01月06日 | 図2を更新しました。 |
2012年12月21日 | 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。 |
2006年11月29日 | 内容を更新しました。 |
1996年11月25日 | 掲載しました。 |