1.卵巣・卵管・腹膜について
卵巣は、子宮の両脇に1つずつある親指大の臓器で(図1)、表面をおおっている上皮(表層上皮)、卵子のもとになる細胞(胚細胞)、性ホルモンをつくる細胞(性索細胞や間質細胞)などからできています。卵管は子宮から左右に伸びた一対の管で、先端は卵巣の近くで漏斗のような形になっています。腹膜は、おなかの内側の壁や、胃や腸など内臓の表面を覆っている膜のことです(図2―1)。なお、腹膜は性別にかかわらず誰にでもあります。
卵巣は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンを分泌します。また、初経から閉経までのあいだ、成熟した卵子をおよそ28日ごとに放出(排卵)します。放出された卵子は卵管を通って子宮に送られます。
2.卵巣がん・卵管がん・腹膜がんとは
卵巣がん・卵管がん・腹膜がんは、発生する場所は異なりますが、がん細胞の性質や治療法が共通しており、まとめて「卵巣・卵管・腹膜の上皮性腫瘍(特に漿液性がん)」として扱われることが多くなっています。
卵巣がんは、卵巣に発生するがんで、起源となる組織によって、主に「上皮性腫瘍」、「胚細胞腫瘍」、「性索間質性腫瘍」の3つに分類され、このうち上皮性腫瘍が最も多くなっています。上皮性のがんはさらに「漿液性がん」「明細胞がん」「類内膜がん」「粘液性がん」などに分類され、それぞれ性質も異なります。
卵管がんは、卵管に発生するがんで、ほとんどが上皮性です。
腹膜がんは、腹膜に発生したと考えられるがんです。腹膜に、卵巣がん・卵管がんと同様の性質を持つ「漿液性がん」が見られるものの、卵巣や卵管にはがんが見つからない場合に診断されます。そのため、腹膜は男女ともにありますが、腹膜がんはほぼ女性にしか発生しません。
※卵巣や卵管にできる腫瘍には、がんである「悪性腫瘍」のほかに、浸潤や転移をすることがない「良性腫瘍」や、悪性と良性の中間的な性質をもつ「境界悪性腫瘍」があります。このページでは、最も頻度の高い上皮性の卵巣がん・卵管がんと腹膜がんについて説明しています。ほかの種類の卵巣腫瘍・卵管腫瘍については、担当医にご確認ください。
卵巣がん・卵管がんは、できてすぐは卵巣や卵管の中だけにあり、他の場所には広がっていません。卵巣・卵管の周りには大腸、小腸、横隔膜、脾臓、腹壁の内側などをおおっている腹膜、胃から垂れ下がって大腸と小腸をおおっている大網などがあり(図2)、卵巣がん・卵管がんが進行すると腹膜や大網にがんが広がる腹膜播種が起こりやすくなります。
播種したがんは、大腸、小腸、横隔膜、脾臓などに浸潤することがあります。このほか、腹部の大血管の周りにある後腹膜リンパ節に転移することや、肺や肝臓、脳や骨などの離れた臓器に転移(遠隔転移)することもあります。
なお、性別にかかわらず腹膜にできる腹膜中皮腫というがんは、腹膜がんとは異なる別の種類のがんです。また、腹膜播種は、他の臓器にできたがんが腹膜に広がった状態を指し、腹膜がんとは異なります。詳しくは、関連情報「腹膜中皮腫(悪性腹膜中皮腫)」、用語集「腹膜播種」をご覧ください。
3.症状
卵巣がん・卵管がん・腹膜がんの自覚症状は、初期の段階ではほとんどありません。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなったなどの症状をきっかけに受診し、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんであることがわかる場合もあります。また、がんが大きくなると、足がむくんだり、膀胱や直腸を圧迫されることによって頻尿や便秘が起きたりすることもあります。進行して腹水がたまると、おなかが大きく前に突き出てくることもあります。
卵巣がん・卵管がん・腹膜がんは初期の段階では症状が出にくいため、見つかったときには進行していることが多いがんです。このような症状に気付いたときには、早めに婦人科を受診しましょう。
| 2026年03月17日 | 「卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2025年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 臨床編 第1版補訂版」より内容を更新しました。 |
| 2021年11月04日 | 「卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版(2020年)」より内容を全面的に更新し、タイトルを「卵巣がん・卵管がん」に変更しました。 |
| 2018年07月31日 | 「4.組織型分類」から「4.組織型分類(がんの組織の状態による分類)」へタイトルを変更しました。 |
| 2017年09月21日 | 「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。 |
| 2013年01月29日 | 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。 |
| 1996年07月25日 | 掲載しました。 |