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卵巣がん(らんそうがん)

更新・確認日:2017年09月21日 [ 履歴 ]
履歴
2017年09月21日 「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年01月29日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
1996年07月25日 掲載しました。
診療の流れ、セカンドオピニオンなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については「治療にあたって」をご参照ください。

1.卵巣について

卵巣は、子宮の両脇に1つずつある親指大の楕円(だえん)形の臓器です。卵巣の機能には、女性らしい体をつくり、維持を促す女性ホルモンの分泌があります。その他にも、成熟した卵子を月経が停止する(閉経)まで周期的に放出します(排卵)。
図1 卵巣と周囲の臓器
図1 卵巣と周囲の臓器の図

2.卵巣がんとは

卵巣がんは、卵巣に発生したがんです。卵巣に発生する腫瘍(しゅよう)には、良性と悪性、その中間的な境界悪性というものがあります。卵巣に腫瘍ができたからといって、卵巣がんとは限りません。

進行すると、おなかの中にがんが広がる腹膜播種(はしゅ)が生じやすくなります。また、胃から垂れ下がって大腸小腸をおおっている大網(たいもう/だいもう)、おなかの大血管の周りにある後腹膜リンパ節、大腸、小腸、横隔膜、脾臓(ひぞう)などに転移することがあります。
図2 腹部の構造
図2 腹部の構造の図

3.症状

はじめはほとんど自覚症状がありません。下腹部にしこりが触れる、おなかが張る、トイレが近い、食欲の低下などの症状があって受診することが多いのですが、このようなときにはすでにがんが進行していることも少なくありません。急激なおなかの張りや痛みなど、気になる症状がある場合には、早めに受診することをお勧めします。

4.組織型分類

卵巣の腫瘍はその発生する部位によって、上皮性(じょうひせい)腫瘍、胚細胞性(はいさいぼうせい)腫瘍、性索間質性(せいさくかんしつせい)腫瘍などの組織型に分類されています。

最も多いのは、卵巣の表層をおおう細胞に由来する上皮性腫瘍です。上皮性のがんは卵巣がんの90%を占めています。このがんは、主に4つの組織型(漿液性[しょうえきせい]がん、粘液性がん、類内膜がん、明細胞がん)に分けられ、それぞれ異なった性質をもっています。

上皮性のがんの次に多いのは、卵子のもとになる胚細胞から発生するがんです。

5.統計

卵巣がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり14.3人です。40歳代から増加を始め、50歳代前半から60歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します1)

6.発生要因

卵巣がんの発生には複数の要因が関与しているといわれています。卵巣がんの約10%は遺伝的要因によるものと考えられており、BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子変異が発症する危険性を高めることがわかっています。ほかには、排卵の回数が多いと卵巣がんになりやすいと考えられているため、妊娠や出産の経験がない場合や、初経が早く閉経が遅い場合は発症する危険性が高くなる可能性があります。

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7.予防と検診

1)予防

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。

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2)検診

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。

しかし、卵巣がんについては、現在、指針として定められている検診はありません。また、卵巣がんに関しては科学的に根拠のある検診方法も確立されていません。急激なおなかの張りや痛みなど、気になる症状がある場合には、医療機関を早期に受診することをお勧めします。

なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わったあとの検査は、ここでいう検診とは異なります。

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8.「卵巣がん」参考文献

1) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国推計値2012年
2) 日本婦人科腫瘍学会編.卵巣がん治療ガイドライン2015年版,金原出版
3) 日本産科婦人科学会・日本病理学会編.卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版.2016年,金原出版
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2017年09月21日 「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年01月29日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
1996年07月25日 掲載しました。

1.卵巣がんの検査

内診、直腸診、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査などを行います。卵巣がんは、画像検査や診察では良性の卵巣腫瘍(しゅよう)との区別が難しいため、病理検査を行うことによって診断を確定します。腫瘍マーカー検査は、治療後の経過観察の検査の1つとして行うことがあります。

2.検査の種類

1)内診、直腸診

子宮や卵巣の状態を腟(ちつ)から指を入れて調べます。また、直腸やその周囲に異常がないかをお尻から指を入れて調べます。

2)超音波(エコー)検査

超音波を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にする検査です。より近くで子宮や卵巣を観察するため、腟の中から超音波をあてて調べる経腟超音波断層法検査を行う場合もあります。卵巣腫瘍の性質や状態、大きさをみたり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係を調べたりします。

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3)CT検査、MRI検査

CT検査では、X線を利用して卵巣から離れた場所への(遠隔)転移の有無やリンパ節転移などを確認します。MRI検査では、磁気を利用して周囲臓器への腫瘍の広がり(浸潤)や腫瘍の大きさ、性質や状態などを確認します。卵巣がんの検査では両者を組み合わせて行うことがあります。

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4)細胞診・組織診(病理検査)

細胞診では、胸水や腹水などにがん細胞が含まれていないかを検査します。手術前に胸水や腹水がみられる場合は、皮膚から針を刺して胸水や腹水を採取し、検査を行うことがあります。

組織診では、手術で採取した組織を検査し、良性・境界悪性・悪性の判定および組織型の判定を行います。最終的な結果が出るまでには2週間から3週間かかります。

手術前に境界悪性や悪性が疑われた場合には、手術の範囲を決めるために手術中に病理検査を行うことがあります(術中迅速[じんそく]病理検査)。術中迅速病理検査は時間的な制約などがあり、手術後に詳しく行った最終病理検査の結果と異なる場合があります。

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5)腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが潜んでいると大量に産生される物質です。がんの種類に応じて多くの種類があり、血液検査により量を測定します。

卵巣がんの腫瘍マーカーには、CA125があります。卵巣がんの場合、CA125が上昇することが多いのですが、上昇しないこともあります。腫瘍マーカーの値の大きさそのものよりも、治療の前後で値がどのように変化するのかをみることが重要です。腫瘍マーカーは、再発の早期発見に有効ですが、それだけでは腫瘍の悪性度や進行具合などの判定はできないことから、画像検査などを組み合わせて総合的に判定を行います。

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2017年09月21日 「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月12日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2013年01月29日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
1996年07月25日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期

卵巣がんでは、がんがどの程度広がっていたかが手術により判明した時点で決まる、手術進行期分類を用いています。
表1 卵巣がんの手術進行期分類(日産婦2014、FIGO2014)
I期:卵巣あるいは卵管内限局発育
IA期 腫瘍(しゅよう)が片側の卵巣(被膜破綻※1がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤(しんじゅん)が認められないもの。腹水または洗浄液※2の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
IB期 腫瘍が両側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
IC期 腫瘍が片側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが、以下のいずれかが認められるもの
    IC1期 手術操作による被膜破綻
    IC2期 自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤
    IC3期 腹水または腹腔(ふくくう)洗浄細胞診に悪性細胞が認められるもの
II期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤内(小骨盤腔)への進展を認めるもの、あるいは原発性腹膜がん
IIA期 進展 ならびに/あるいは 転移が子宮 ならびに/あるいは 卵管 ならびに/あるいは 卵巣に及ぶもの
IIB期 他の骨盤部腹腔内臓器に進展するもの
III期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、あるいは原発性腹膜がんで、細胞学的あるいは組織学的に確認された骨盤外の腹膜播種(はしゅ) ならびに/あるいは 後腹膜リンパ節転移を認めるもの
IIIA1期 後腹膜リンパ節転移陽性のみを認めるもの(細胞学的あるいは組織学的に確認)
   IIIA1(i)期 転移巣最大径10mm以下
   IIIA1(ii)期 転移巣最大径10mmを超える
IIIA2期 後腹膜リンパ節転移の有無関わらず、骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの
IIIB期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの
IIIC期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cmを超える腹腔内播種を認めるもの(実質転移を伴わない肝臓および脾臓[ひぞう]の被膜への進展を含む)
IV期:腹膜播種を除く遠隔転移
IVA期 胸水中に悪性細胞を認める
IVB期 実質転移ならびに腹腔外臓器(鼠径[そけい]リンパ節ならびに腹腔外リンパ節を含む)に転移を認めるもの
※1: 卵巣の表層をおおう膜が破れること。
※2: 腹腔内に生理的食塩水を注入した後、腹腔内貯留液とともに回収したもの。
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より作成

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含めて検討し、担当医とともに決めていきます。

卵巣がんの場合、手術(外科治療)によって、組織型と手術進行期分類を基に診断します。手術前の検査で境界悪性や悪性が疑われる場合には、術中迅速病理検査を行い、その結果が悪性であれば、手術中に病期を決定するために必要な処置を追加することがあります。術中迅速病理検査ができない施設では、最終病理検査の結果が悪性であれば、切除可能な部分に対する再手術を行うこともあります。

卵巣がんは進行した状態で発見されることが多いため、術後化学療法が行われることがほとんどです。早期に発見された場合でも、がんの種類によっては再発の危険があるため、行うことがあります。

図3は、卵巣がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図3 卵巣がんの治療の選択
図3 卵巣がんの治療の選択の図
※3:グレードとは、細胞の分化度を示したもので、グレード1~3があります。細胞の成熟度合いの順番に並び、グレード1は細胞が成熟して活発な増殖がみられないもので、グレード3になると細胞が未熟で活発な増殖がみられます。明細胞がんのようにグレードがつかない組織型もあります。
日本婦人科腫瘍学会編「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」より作成

●妊娠や出産について

卵巣がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕(にんよう)性温存治療(妊娠できる可能性を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

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2.手術(外科治療)

卵巣がんでは、手術により、がんが取りきれたかどうかが予後に影響し、残存する腫瘍の大きさが小さいほど予後がよくなります。初回手術では、可能な限りがんを摘出することが原則です。

標準治療として行われているのは開腹手術です。腹腔鏡下手術は良性腫瘍で広く行われていますが、卵巣がんでは開腹手術と比較して勧められるだけの報告がなく、現時点では標準治療ではありません。

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1)基本的な手術法

両側の卵巣と卵管、子宮、大網(たいもう/だいもう)を摘出します。

2)腫瘍減量術

腫瘍減量術では、手術で完全には切除できない場合でも、できるだけ多くのがんを摘出することを目指します。残存する腫瘍の大きさが予後に関わるため、転移が大腸、小腸にある場合には腸管部分切除、横隔膜にある場合は横隔膜切除、脾臓にある場合は脾臓摘出を行うことがあります。

3)腹水細胞診や腹膜生検

腹水細胞診は病期を決定するために必要な処置です。腹膜上に小さなかたまりが認められた場合には、腹膜生検を行い、腹膜播種の有無を確認します。

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4)後腹膜リンパ節郭清もしくは生検

病期を決定するために、範囲を広くリンパ節を取る後腹膜リンパ節郭清(かくせい)、もしくは腫れている一部のリンパ節の生検を行い、リンパ節転移の有無を確認します。

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5)妊孕性(にんようせい)温存を希望する場合

卵巣がんの手術では1)~4)を行います。卵巣と子宮を摘出した状態では妊娠する力を温存することは不可能です。しかしながら、ある条件下では妊孕性温存手術が検討されています。

妊孕性温存が可能な条件とは、組織型が漿液(しょうえき)性がん、粘液性がん、類内膜がんに分類されるもので、進行期がIA期および分化度がグレード1または2とされています。これらを判定するためには、初回手術において、がんの完全摘出はもちろんのこと、手術進行期分類による診断を行うために十分な切除が必要です。妊孕性温存手術の基本的な手術法として、腫瘍のある側の卵巣と卵管、大網の切除、さらに腹水細胞診を行うことが勧められています。

また、組織学的な条件以外にも、以下のことが必要です。
(1)妊娠可能年齢であり、妊娠への強い希望がある。
(2)患者と家族が、卵巣がんや妊孕性温存治療、再発の可能性について十分に理解していること。
(3)治療後も長期にわたり厳重な経過観察を続けること。

これらの条件を満たした上で妊孕性温存手術が可能となります。

6)手術後の様子

治療の範囲が下腹部のため、手術直後には手術の創(きず)が痛んで、起き上がったり、立ち上がったり、力を入れることが難しくなることがあります。例えば、トイレのときに苦労するなどの問題があるかもしれません。手術の創の状態が安定し、痛みがとれてくると、動ける範囲が少しずつ広がります。痛みが強く、動かない状態が長期化すると後述の術後合併症の頻度が高くなるため、痛み止めを使用しながら少しずつ動ける範囲を広げていきましょう。

7)手術の合併症について

手術が広範囲にわたること、また卵巣を摘出することにより、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)に影響する合併症が起こることもあります。

(1)更年期障害のような症状

閉経前の患者さんでは、両側の卵巣を摘出することにより、女性ホルモンが急激に減少し、更年期障害のような症状が起こることがあります。ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸(どうき)、不眠、腟分泌液の減少、骨粗しょう症、高脂血症などがみられます。これらの症状は時間の経過と共に徐々に軽快していきますが、日常生活に支障が出るようであれば、担当医に相談してみましょう。

(2)性機能障害

がんが浸潤していなければ、基本的に腟(ちつ)は残りますので、手術後、創の状態が安定して、体力が戻ったら性交渉を行うことが可能です。卵巣がんの手術では、身体的な変化に伴い、心理的な変化も生じやすくなります。性交時の痛みや性欲の減退が生じる場合もあります。パートナーとよく理解し合うことが大切です。

(3)リンパ浮腫

手術の際にリンパ節郭清を行うとリンパ浮腫が生じることがあります。あらわれる場所は、リンパ節郭清を行った範囲に応じてみられます。

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3.放射線治療

放射線治療は、再発した場合の疼痛(とうつう)や出血などの症状を緩和するために行うことがあります。また、脳に転移している場合には、症状の緩和だけでなく、予後の改善のために行うことがあります。

4.薬物療法

卵巣がんは進行した状態で発見されることが多いため、術後化学療法を行うことがほとんどです。早期に発見された場合でも、がんの種類によっては再発の危険が高いことがあるため、術後に化学療法を行うことがあります。術後の化学療法を省略できるのは、病期がIA期もしくはIB期で、さらに分化度がグレード1の場合のみです。なお、明細胞がんについては、高悪性度として扱われているため、IA・IB期であっても術後に化学療法を行います。

また、初回手術が安全もしくは十分に行えないと予想される場合に、術前に化学療法を行うことがあります。手術で取り切れない腫瘍の大きさが1cm以上になってしまうと予想されるほど進行している場合や、合併症がある、高齢である、腹水や胸水がたまっているなどのことから全身状態が悪い場合が当てはまります。術前の化学療法により腫瘍が小さくなり完全切除が可能となったり、全身状態が改善したりした段階で手術を行います。

1)化学療法

細胞障害性抗がん剤を用いて、がん細胞を破壊する治療法です。タキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法が基本となります。

(1)TC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)

タキサン製剤であるパクリタキセルでは、しびれの症状がみられる末梢(まっしょう)神経障害が高頻度に起こります。症状が重くなった場合は回復が遅く、後遺症が残ることもあります。また、添加剤としてアルコールが含まれているため、お酒に弱い患者さんは、酔ったときのような症状があらわれることがあります。

副作用などで化学療法の継続が困難な場合には、薬剤の変更もしくは治療の中止などを検討します。

(2)化学療法の副作用について

細胞障害性抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします。特に毛根(髪の毛)、口や消化管などの粘膜、骨髄(こつずい)など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、一般的に、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなったりすることがあります。その他にも、肺や腎臓に障害が出ることもあります。

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2)分子標的治療

がんの増殖に関わっている分子を標的にしてその働きを阻害します。卵巣がんの場合、化学療法と併用して行われることがあります。

(1)ベバシズマブ

がん細胞に栄養を与える新しい血管の形成を抑えます。ただし、大腸や小腸などの消化管に穴が開くなどの重大な副作用があらわれることがあります。そのため、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験をもつ医師の下で適切に使う必要があります。

(2)分子標的治療の副作用について

主な副作用には、出血、高血圧、タンパク尿、神経毒性、疲労・倦怠(けんたい)感、食欲減退、悪心(おしん)、口内炎、脱毛症などがあります。

関連情報

5.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率および10年相対生存率のデータを示します(参照:相対生存率)。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【卵巣がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表2 卵巣がんの病期別5年相対生存率 (対象:2006~2008年に診断を受けた患者さん)
病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
I 629 87.4
II 144 66.4
III 601 44.2
IV 272 28.3
全症例 1,767 61.1
全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年9月集計)による
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6.リハビリテーション

がんそのものや治療に伴う後遺症や副作用などから、患者さんが受けるさまざまな身体的・心理的な障害の緩和や、能力の回復・維持を目的に行われています。

1)排尿や排泄の障害に対するリハビリテーション

子宮を含めて広範囲にわたり切除するため、排尿や排泄に障害が起こることがあります。

排尿がうまくできない場合には、カテーテルを尿道から膀胱へゆっくり挿入し、カテーテルを通して尿を出す、間欠導尿法(かんけつどうにょうほう)を行うことがあります。

便秘を防ぐため、バランスのとれた食事、十分な水分補給、適度な運動を心がけましょう。場合によっては下剤で便秘を解消することもあります。

2)身体機能低下に対するリハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は、体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

7.緩和ケア

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんのニーズに応じて幅広い対応をします。

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8.臨床試験

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねで作り上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験や治験などの研究段階の医療が行われています。

関連情報

1)卵巣がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

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9.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

卵巣がんの場合、初回の治療効果はあるものの、半数以上が再発します。再発の時期としては、治療後2年以内が多くみられます。

再発した場合は化学療法が主な治療法になります。

化学療法終了後から再発までの期間が6カ月未満の場合、前回の治療で用いた薬剤では効果が期待できないため、異なる薬剤での単剤による治療が基本です。再発までの期間が6カ月以上の場合は、プラチナ製剤を含む多剤併用療法が行われます。

放射線治療は、再発した場合の疼痛や出血などの症状緩和に対し行われることがあります。また、脳転移に対しては、症状緩和だけでなく、予後の改善のために行われることがあります。

1)腸閉塞に対する治療

腸閉塞は、再発したがんの増大、腹膜播種による圧迫、腸間膜のひきつれ、腸管神経麻痺(まひ)などによって起こることがあります。

腸閉塞による吐き気・嘔吐(おうと)は、薬により改善することがあります。また、可能であれば、閉塞部位の切除やバイパス術、ストーマ造設などの手術を行うことがあります。

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2)腹水貯留に対する治療

卵巣がんが進行すると腹水がたまりやすくなります。腹水による症状緩和のために、利尿薬の使用、腹水を体外へ出す腹水ドレナージ、体内にカテーテルを留置し腹水を静脈に流す腹腔静脈シャント、回収した腹水をろ過濃縮したあとに静脈に戻す腹水ろ過濃縮再静注法などを行うことがあります。
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2017年09月21日 内容の更新に伴い、4タブ形式に変更しました。
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1.日常生活を送る上で

病状や、術式、治療の状況により、日常生活の注意点は異なります。自分の体調をみながら、担当医と注意点などをよく相談して無理のない範囲で過ごしましょう。

1)治療別の日常生活の注意点について

(1)手術(外科治療)後の日常生活

手術後の活動の範囲や運動については、担当医からよく説明を受けましょう。創(きず)の状態が安定したら、体力の回復状況に合わせて、まずは散歩などの軽い運動から始め、あせらず、少しずつ運動量を増やしていきましょう。運動を始めるのは、家事などの日常生活が元通りにできるようになってからです。創の痛みや違和感、熱感など気になることがあれば、遠慮なく担当医に相談しましょう。

(2)放射線治療後の日常生活

放射線皮膚炎の予防的ケアが大切です。照射された部位は刺激を与えないように、擦ったり、かいたりしないようにしましょう。放射線皮膚炎は、放射線治療特有の症状であり、治療には放射線に関する専門的知識が必要です。症状があらわれてしまった場合には、放射線腫瘍医(しゅようい)に伝えましょう。また、放射線治療が終了して数カ月から数年たってから起こる症状(晩期合併症)もありますので、気になる症状があれば担当医に報告しましょう。

(3)薬物療法後の日常生活

近年、副作用に対する予防や症状緩和のための支持療法の進歩に伴い、通院による外来化学療法が増えています。仕事や家事、育児、介護など今までの日常生活を続けながら治療ができる一方で、いつも医療者がそばにいるわけではないという不安があるかもしれません。医療スタッフへ予想される副作用や出現時期、その対処法について事前に確認し、外来時には疑問点や不安点などを相談しながら治療を進めるとよいでしょう。

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2)家族や親しい人の理解を得る

治療後は、体力の回復が第一です。家事などもすべてを急に始めるのではなく、家族に協力してもらいながら徐々に体を慣らしていきましょう。

性生活については、女性性器の手術を受けた方の多くが不安を感じます。不安を軽減するため、まずは、性交渉にこだわらず、「抱きしめてもらう」「手をつないで眠る」のようなことからパートナーと接してみましょう。また、治療にもよりますが、性交痛がつらいなど悩んだりしたときには、ひとりで抱えこまずにパートナーに話してみましょう。パートナーと一緒に担当医に相談することも大切です。もし、知っている人には相談しづらいと感じるのであれば、がん相談支援センターでも相談できます。

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2.経過観察

再発の早期発見と、治療に伴う合併症に対処するために、定期的な外来通院と検査を行います。

経過観察は、治療後1~2年目は1~3カ月ごと、3~5年目は3~6カ月ごと、6年目以降は1年ごと、を目安としています。

必要に応じて、問診、内診、腫瘍マーカー検査、経腟超音波断層法検査、CT検査などを行い、再発だけでなく合併症の有無についても確認します。

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