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卵巣がん・卵管がん

卵巣がん・卵管がん 治療

卵巣がん・卵管がんの治療では、主に手術によりできるだけがんを取り除きます。多くの場合、手術の後に薬物療法も行います。

1.病期と治療の選択

治療法は、がんの進行の程度を示す病期やがんの性質、患者の体の状態などに基づいて検討します。卵巣がん・卵管がんの治療を選択する際には、次のことを調べます。

1)病期(ステージ)

卵巣がん・卵管がんの病期は、手術の後に決まります。卵巣は骨盤内の深いところにあることから、手術により切除した卵巣を調べないと正確ながんの広がりが評価できないからです。そのため、卵巣がん・卵管がんでは、病期の分類は手術進行期分類と呼ばれています(表1)。

進行期は、ローマ数字を使って表記します。卵巣がん・卵管がんでは早期から進行するにつれてⅠ期~Ⅳ期まであります。

表1 卵巣がん・卵管がんの手術進行期分類(日産婦2014、FIGO2014)
Ⅰ期:卵巣あるいは卵管内限局発育
   ⅠA期 腫瘍しゅようが片側の卵巣(被膜破綻ひまくはたん※1がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤しんじゅんが認められないもの。腹水または洗浄液※2の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
   ⅠB期 腫瘍が両側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
   ⅠC期 腫瘍が片側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが、以下のいずれかが認められるもの
      ⅠC1期 手術操作による被膜破綻
      ⅠC2期 自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤
      ⅠC3期 腹水または腹腔ふくくう洗浄細胞診に悪性細胞が認められるもの
Ⅱ期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤内(小骨盤腔)への進展を認めるもの、あるいは原発性腹膜がん
   ⅡA期 進展ならびに/あるいは転移が子宮ならびに/あるいは卵管ならびに/あるいは卵巣に及ぶもの
   ⅡB期 他の骨盤部腹腔内臓器に進展するもの
Ⅲ期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、あるいは原発性腹膜がんで、細胞学的あるいは組織学的に確認された骨盤外の腹膜播種はしゅならびに/あるいは後腹膜リンパ節転移を認めるもの
   ⅢA1期 後腹膜リンパ節転移陽性のみを認めるもの(細胞学的あるいは組織学的に確認)
      ⅢA1(ⅰ)期 転移巣最大径10mm以下
      ⅢA1(ⅱ)期 転移巣最大径10mmを超える
   ⅢA2期 後腹膜リンパ節転移の有無関わらず、骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの
   ⅢB期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの
   ⅢC期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cmを超える腹腔内播種を認めるもの(実質転移を伴わない肝臓および脾臓ひぞうの被膜への進展を含む)
Ⅳ期:腹膜播種を除く遠隔転移
   ⅣA期 胸水中に悪性細胞を認める
   ⅣB期 実質転移ならびに腹腔外臓器(鼠径そけいリンパ節ならびに腹腔外リンパ節を含む)に転移を認めるもの
※1卵巣の表層をおおう膜が破れること。
※2腹腔内に生理的食塩水を入れて、腹腔内貯留液とともに回収したもの。
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より作成

2)がん細胞の性質(組織型・異型度・遺伝子異常)

(1)組織型

組織型とは、がんの種類のことです。がんの性質は組織型によって異なります。上皮性の卵巣がんは、漿液性しょうえきせいがん、明細胞めいさいぼうがん、類内るいないまくがん、粘液性がんなどの組織型に分類されます。卵管がんの多くは漿液性がんで、その他の組織型は極めてまれです。

(2)異型度

異型度(グレード)は、がんの悪性度の高さを示すものです。

漿液性がんは、低異型度と高異型度の2つに分けられます。低異型度のがんは、がんが発生したもともとの正常な組織や細胞に近い形態をしていて、悪性度はそれほど高くありません。一方、高異型度のがんは、より悪性度が高くなります。

類内膜がんはグレード1~3に分けられます。グレードが上がるにつれて、より悪性度が高くなります。また、明細胞がんのように、すべて悪性度が高いために異型度(グレード)がつかない組織型もあります。

(3)遺伝子異常

一部のがんの治療では、遺伝子の変化に対応した薬による治療が行われています。卵巣がん・卵管がんでは、BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に異常がある場合などに、対応する薬物療法を検討します。

3)治療の選択

治療法は、がんの手術進行期や組織型、異型度に応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と患者が話し合って決めていきます。

図3は、卵巣がん・卵管がんの標準治療を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

卵巣がん・卵管がんが疑われる場合には、まず手術を行ってできるだけがんを取り除きます。その上で、手術進行期、組織型、異型度、手術でがんが取りきれたかどうかなどを考慮して、次に行う治療を決めます。卵巣がん・卵管がんでは、多くの場合、手術の後に薬物療法を行います。また、がんが進行していてがんを取りきることが難しい場合には、手術の前に薬物療法を行い、がんを小さくしてから手術を行うことを検討することもあります。

図3 卵巣がん・卵管がんの治療の選択
図3 卵巣がんの治療の選択の図
日本婦人科腫瘍学会編 卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2020年版 第5版より作成

妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性を温存すること(妊娠するための力を保つこと)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

卵巣がん・卵管がんでは、手術により、がんが取りきれたかどうかが予後に影響します。残っているがんが小さいほど予後が良くなります。卵巣がん・卵管がんが疑われる場合には、手術進行期や組織型の診断と、がんをできるだけ取りきることを目的として、手術を行います(初回腫瘍減量手術・進行期決定手術)。この手術が難しい場合には、試験開腹術や中間腫瘍減量手術など、目的を限定した手術を検討することもあります。妊娠するための力を保つことを目的として、妊よう性温存手術を検討することもできます。

1)初回腫瘍減量手術・進行期決定手術

両側の卵巣と卵管、子宮、大網を切除するほか、手術進行期を診断するために、腹腔細胞診、腹腔内各所の生検、骨盤・ぼう大動脈だいどうみゃくリンパ節郭清(生検)などを行うことがあります。腹膜や周りの臓器にすでにがんが広がっている場合は、目に見えるがんを完全に取りきることを目指して、可能な限り体内からがんを切除します。

2)試験開腹術

手術でがんを取りきることが難しい場合に、生検によって組織型を診断することと、可能な範囲で手術進行期を確認することを目的とした試験開腹術を行うことがあります。

3)中間腫瘍減量手術

最初の手術が試験開腹術だった場合、または手術後に体内に残ったがんの直径が1cm以上の場合には、薬物療法による治療を行いながら、計画的に、がんの量を減らすための手術を行うことがあります。また、初回腫瘍減量手術・進行期決定手術で1cm以上の大きさのがんが残ることが予想される場合や、全身状態や合併症などにより初回腫瘍減量手術・進行期決定手術が十分に行えないと判断された場合、まず薬物療法を行ってから中間腫瘍減量手術を行うことがあります。

4)妊よう性温存手術

妊娠するための力を保つことを目的として、妊よう性温存手術を検討することもできます。卵巣がん・卵管がんの手術では、通常、両側の卵巣と卵管、子宮、大網を切除します。しかし、将来の妊娠の可能性を残したいという強い希望がある場合や、がんの性質がおとなしく、片方の卵巣・卵管だけにとどまっている場合などには、がんのない側の卵巣と卵管を切除せずに、妊娠の可能性を残す手術ができることもあります。

妊よう性温存手術を検討することができるのは、明細胞がん以外の卵巣がん・卵管がんで、さらに、手術進行期がⅠA期で異型度が低い(グレード1)であるという条件に限られています。

これらの条件を満たしていると判定するためには、初回腫瘍減量手術において、がんを可能な限り完全に切除する必要があります。

妊よう性温存手術の基本的な手術法として、がんのある側の卵巣と卵管、大網の切除、さらに腹水細胞診を行うことが勧められています。

また、上の条件以外にも、以下のことが必要です。
(1)妊娠可能年齢であり、妊娠への強い希望があること。
(2)患者と家族が、卵巣がん・卵管がんや妊よう性温存治療、再発の可能性について十分に理解していること。
(3)治療後も長期にわたり厳重な経過観察を続けること。
(4)婦人科腫瘍に精通した婦人科の医師による注意深い腹腔内の検査や術後の経過観察が可能であること。

これらの条件を満たした上で妊よう性温存手術が可能となります。

妊よう性温存手術を検討するときには、自分のがんの状態やリスクについて十分理解して、担当医とよく相談することが必要です。

5)手術の合併症について

手術の後には、腸閉塞やリンパ嚢胞のうほう、リンパ浮腫などの合併症が起きることがあります。吐き気や嘔吐に腹痛を伴う場合や発熱に痛みが伴う場合、発熱と腹痛がある場合、脚の付け根や太もも、下腹部にむくみがあり、むくんでいる場所が赤くれて熱をもっている場合には、担当医に連絡しましょう。このほか、卵巣欠落症状と呼ばれる更年期のような症状が起きることがあります。

3.放射線治療

卵巣がん・卵管がんでは、最初に行う治療として放射線治療を行うことはありません。再発した場合に、痛みなどの症状を和らげるために局所的な放射線治療を行うことがあります。

4.薬物療法

卵巣がん・卵管がんは進行した状態で発見されることが多く、また、早期のがんでも再発することがよくあります。その一方で、卵巣がん・卵管がんのうち最も多い漿液性がんは、薬物療法が効きやすい性質を持っています。

卵巣がん・卵管がんの薬物療法には、術後薬物療法、術前薬物療法、維持療法があります。

1)術後薬物療法

ほとんどの場合、手術の効果を高めることを目的として、手術の後に薬物療法を行います。卵巣がん・卵管がんでは、微小管びしょうかん阻害薬と白金はっきん製剤を使う治療が基本です。これらはいずれも、細胞の増殖の仕組みに着目して、その仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する「細胞障害性抗がん薬」です。

手術進行期がⅢ期・Ⅳ期の場合には、「分子標的薬」も使うことがあります。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、栄養を運ぶ血管、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬です。手術進行期がⅠA期、またはⅠB期の低異型度のがんの場合には、術後薬物療法を行わないこともあります。

卵巣がん・卵管がんの術後薬物療法では、微小管阻害薬のパクリタキセルと、白金製剤のカルボプラチンを使うTC療法を主に行います。手術進行期がⅢ期・Ⅳ期の場合には、TC療法に分子標的薬のベバシズマブを追加した治療も検討します。

2)術前薬物療法

初回腫瘍減量手術・進行期決定手術でがんを取りきることが難しいと予測される場合には、手術の前に細胞障害性抗がん薬を用いた薬物療法を行い、がんを小さくしてから完全に取りきることを目指すことがあります。使用する薬の種類は術後薬物療法と同じように検討します。

3)維持療法

生存期間を長くすることを目的とした薬物療法を行うことがあります。手術の後に細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を使って治療し、寛解(がんが体の中に確認できない状態になること)した場合に、さらに分子標的薬による治療を続けて行うことを検討します。

術後薬物療法で、TC療法にベバシズマブを追加した治療を行い、薬の効果により寛解した場合には、ベバシズマブを使った維持療法を検討します。また、手術進行期がⅢ期・Ⅳ期でBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に変異があり、かつ術後薬物療法で寛解した場合には、分子標的薬のオラパリブを使った維持療法を検討します。

4)再発した場合の薬物療法

卵巣がん・卵管がんが再発した場合は、薬物療法が主な治療法になります。使用する薬は、白金製剤を使った治療の終了後から再発までの期間によって異なります。

再発までの期間が6カ月未満の場合、白金製剤の効果が出にくいがんであると考えられます。この場合、初回で使った薬とは異なる種類の薬を単独で使用する治療を検討します。また、分子標的薬を追加して治療することもあります。

再発までの期間が6カ月以上の場合は、白金製剤を含む複数の細胞障害性抗がん薬を使った治療を中心に検討します。また、分子標的薬を追加して治療することもあります。これらの薬物療法の効果があった場合には、さらに追加で維持療法を行うことがあります。

薬物療法の副作用

細胞障害性抗がん薬の副作用には、吐き気、食欲不振、白血球減少、血小板減少、貧血、口内炎、脱毛、しびれなどの末梢神経障害などがあります。また、分子標的薬の副作用は、種類によって異なりますが、主なものには、出血、高血圧、タンパク尿、手足のしびれや筋肉の痛みなどの神経毒性、疲労・倦怠感けんたいかん、食欲不振、吐き気、口内炎、脱毛などがあります。

5.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケアは、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげます。がんと診断されたときから始まり、がんの治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます。

なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

6.リハビリテーション

一般的に、治療中や治療終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

7.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療により縮小したりなくなったりしたようにみえたがんが再び出現することをいいます。

卵巣がん・卵管がんは、腹膜、大網などに播種はしゅしたり、大腸、小腸、横隔膜、脾臓ひぞうなどに浸潤しんじゅんしたりすることがあります。また、おなかの大血管の周りにある後腹膜リンパ節に転移したり、肺や肝臓、脳や骨などに遠隔転移したりすることもあります。

卵巣がん・卵管がんが再発した場合は、薬物療法が主な治療法になります。使用する薬は、白金製剤を使った治療の終了後から再発までの期間によって異なります。

痛みや出血などがある場合には、放射線治療で症状を和らげる治療をすることがあります。また、脳転移がある場合には、症状緩和だけでなく、予後の改善のために放射線治療をすることがあります。

更新・確認日:2021年11月04日 [ 履歴 ]
履歴
2021年11月04日 「卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版(2020年)」より、内容を全面的に更新し、タイトルを「卵巣がん・卵管がん」に変更しました。
2019年07月22日 新規に追加された用語へのリンクを追加しました。
2017年09月21日 「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月12日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2013年01月29日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
1996年07月25日 掲載しました。
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