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全ページ表示がんの冊子卵巣がん(らんそうがん)

更新・確認日:2017年09月21日 [ 履歴 ]
履歴
2017年09月21日 「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月12日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2013年01月29日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
1996年07月25日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期

卵巣がんでは、がんがどの程度広がっていたかが手術により判明した時点で決まる、手術進行期分類を用いています。
表1 卵巣がんの手術進行期分類(日産婦2014、FIGO2014)
I期:卵巣あるいは卵管内限局発育
IA期 腫瘍(しゅよう)が片側の卵巣(被膜破綻※1がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤(しんじゅん)が認められないもの。腹水または洗浄液※2の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
IB期 腫瘍が両側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
IC期 腫瘍が片側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが、以下のいずれかが認められるもの
    IC1期 手術操作による被膜破綻
    IC2期 自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤
    IC3期 腹水または腹腔(ふくくう)洗浄細胞診に悪性細胞が認められるもの
II期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤内(小骨盤腔)への進展を認めるもの、あるいは原発性腹膜がん
IIA期 進展 ならびに/あるいは 転移が子宮 ならびに/あるいは 卵管 ならびに/あるいは 卵巣に及ぶもの
IIB期 他の骨盤部腹腔内臓器に進展するもの
III期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、あるいは原発性腹膜がんで、細胞学的あるいは組織学的に確認された骨盤外の腹膜播種(はしゅ) ならびに/あるいは 後腹膜リンパ節転移を認めるもの
IIIA1期 後腹膜リンパ節転移陽性のみを認めるもの(細胞学的あるいは組織学的に確認)
   IIIA1(i)期 転移巣最大径10mm以下
   IIIA1(ii)期 転移巣最大径10mmを超える
IIIA2期 後腹膜リンパ節転移の有無関わらず、骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの
IIIB期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの
IIIC期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cmを超える腹腔内播種を認めるもの(実質転移を伴わない肝臓および脾臓[ひぞう]の被膜への進展を含む)
IV期:腹膜播種を除く遠隔転移
IVA期 胸水中に悪性細胞を認める
IVB期 実質転移ならびに腹腔外臓器(鼠径[そけい]リンパ節ならびに腹腔外リンパ節を含む)に転移を認めるもの
※1: 卵巣の表層をおおう膜が破れること。
※2: 腹腔内に生理的食塩水を注入した後、腹腔内貯留液とともに回収したもの。
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より作成

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含めて検討し、担当医とともに決めていきます。

卵巣がんの場合、手術(外科治療)によって、組織型と手術進行期分類を基に診断します。手術前の検査で境界悪性や悪性が疑われる場合には、術中迅速病理検査を行い、その結果が悪性であれば、手術中に病期を決定するために必要な処置を追加することがあります。術中迅速病理検査ができない施設では、最終病理検査の結果が悪性であれば、切除可能な部分に対する再手術を行うこともあります。

卵巣がんは進行した状態で発見されることが多いため、術後化学療法が行われることがほとんどです。早期に発見された場合でも、がんの種類によっては再発の危険があるため、行うことがあります。

図3は、卵巣がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図3 卵巣がんの治療の選択
図3 卵巣がんの治療の選択の図
※3:グレードとは、細胞の分化度を示したもので、グレード1~3があります。細胞の成熟度合いの順番に並び、グレード1は細胞が成熟して活発な増殖がみられないもので、グレード3になると細胞が未熟で活発な増殖がみられます。明細胞がんのようにグレードがつかない組織型もあります。
日本婦人科腫瘍学会編「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」より作成

●妊娠や出産について

卵巣がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕(にんよう)性温存治療(妊娠できる可能性を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

用語集

2.手術(外科治療)

卵巣がんでは、手術により、がんが取りきれたかどうかが予後に影響し、残存する腫瘍の大きさが小さいほど予後がよくなります。初回手術では、可能な限りがんを摘出することが原則です。

標準治療として行われているのは開腹手術です。腹腔鏡下手術は良性腫瘍で広く行われていますが、卵巣がんでは開腹手術と比較して勧められるだけの報告がなく、現時点では標準治療ではありません。

用語集

1)基本的な手術法

両側の卵巣と卵管、子宮、大網(たいもう/だいもう)を摘出します。

2)腫瘍減量術

腫瘍減量術では、手術で完全には切除できない場合でも、できるだけ多くのがんを摘出することを目指します。残存する腫瘍の大きさが予後に関わるため、転移が大腸、小腸にある場合には腸管部分切除、横隔膜にある場合は横隔膜切除、脾臓にある場合は脾臓摘出を行うことがあります。

3)腹水細胞診や腹膜生検

腹水細胞診は病期を決定するために必要な処置です。腹膜上に小さなかたまりが認められた場合には、腹膜生検を行い、腹膜播種の有無を確認します。

用語集

4)後腹膜リンパ節郭清もしくは生検

病期を決定するために、範囲を広くリンパ節を取る後腹膜リンパ節郭清(かくせい)、もしくは腫れている一部のリンパ節の生検を行い、リンパ節転移の有無を確認します。

用語集

5)妊孕性(にんようせい)温存を希望する場合

卵巣がんの手術では1)~4)を行います。卵巣と子宮を摘出した状態では妊娠する力を温存することは不可能です。しかしながら、ある条件下では妊孕性温存手術が検討されています。

妊孕性温存が可能な条件とは、組織型が漿液(しょうえき)性がん、粘液性がん、類内膜がんに分類されるもので、進行期がIA期および分化度がグレード1または2とされています。これらを判定するためには、初回手術において、がんの完全摘出はもちろんのこと、手術進行期分類による診断を行うために十分な切除が必要です。妊孕性温存手術の基本的な手術法として、腫瘍のある側の卵巣と卵管、大網の切除、さらに腹水細胞診を行うことが勧められています。

また、組織学的な条件以外にも、以下のことが必要です。
(1)妊娠可能年齢であり、妊娠への強い希望がある。
(2)患者と家族が、卵巣がんや妊孕性温存治療、再発の可能性について十分に理解していること。
(3)治療後も長期にわたり厳重な経過観察を続けること。

これらの条件を満たした上で妊孕性温存手術が可能となります。

6)手術後の様子

治療の範囲が下腹部のため、手術直後には手術の創(きず)が痛んで、起き上がったり、立ち上がったり、力を入れることが難しくなることがあります。例えば、トイレのときに苦労するなどの問題があるかもしれません。手術の創の状態が安定し、痛みがとれてくると、動ける範囲が少しずつ広がります。痛みが強く、動かない状態が長期化すると後述の術後合併症の頻度が高くなるため、痛み止めを使用しながら少しずつ動ける範囲を広げていきましょう。

7)手術の合併症について

手術が広範囲にわたること、また卵巣を摘出することにより、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)に影響する合併症が起こることもあります。

(1)更年期障害のような症状

閉経前の患者さんでは、両側の卵巣を摘出することにより、女性ホルモンが急激に減少し、更年期障害のような症状が起こることがあります。ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸(どうき)、不眠、腟分泌液の減少、骨粗しょう症、高脂血症などがみられます。これらの症状は時間の経過と共に徐々に軽快していきますが、日常生活に支障が出るようであれば、担当医に相談してみましょう。

(2)性機能障害

がんが浸潤していなければ、基本的に腟(ちつ)は残りますので、手術後、創の状態が安定して、体力が戻ったら性交渉を行うことが可能です。卵巣がんの手術では、身体的な変化に伴い、心理的な変化も生じやすくなります。性交時の痛みや性欲の減退が生じる場合もあります。パートナーとよく理解し合うことが大切です。

(3)リンパ浮腫

手術の際にリンパ節郭清を行うとリンパ浮腫が生じることがあります。あらわれる場所は、リンパ節郭清を行った範囲に応じてみられます。

用語集関連情報

3.放射線治療

放射線治療は、再発した場合の疼痛(とうつう)や出血などの症状を緩和するために行うことがあります。また、脳に転移している場合には、症状の緩和だけでなく、予後の改善のために行うことがあります。

4.薬物療法

卵巣がんは進行した状態で発見されることが多いため、術後化学療法を行うことがほとんどです。早期に発見された場合でも、がんの種類によっては再発の危険が高いことがあるため、術後に化学療法を行うことがあります。術後の化学療法を省略できるのは、病期がIA期もしくはIB期で、さらに分化度がグレード1の場合のみです。なお、明細胞がんについては、高悪性度として扱われているため、IA・IB期であっても術後に化学療法を行います。

また、初回手術が安全もしくは十分に行えないと予想される場合に、術前に化学療法を行うことがあります。手術で取り切れない腫瘍の大きさが1cm以上になってしまうと予想されるほど進行している場合や、合併症がある、高齢である、腹水や胸水がたまっているなどのことから全身状態が悪い場合が当てはまります。術前の化学療法により腫瘍が小さくなり完全切除が可能となったり、全身状態が改善したりした段階で手術を行います。

1)化学療法

細胞障害性抗がん剤を用いて、がん細胞を破壊する治療法です。タキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法が基本となります。

(1)TC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)

タキサン製剤であるパクリタキセルでは、しびれの症状がみられる末梢(まっしょう)神経障害が高頻度に起こります。症状が重くなった場合は回復が遅く、後遺症が残ることもあります。また、添加剤としてアルコールが含まれているため、お酒に弱い患者さんは、酔ったときのような症状があらわれることがあります。

副作用などで化学療法の継続が困難な場合には、薬剤の変更もしくは治療の中止などを検討します。

(2)化学療法の副作用について

細胞障害性抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします。特に毛根(髪の毛)、口や消化管などの粘膜、骨髄(こつずい)など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、一般的に、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなったりすることがあります。その他にも、肺や腎臓に障害が出ることもあります。

用語集

2)分子標的治療

がんの増殖に関わっている分子を標的にしてその働きを阻害します。卵巣がんの場合、化学療法と併用して行われることがあります。

(1)ベバシズマブ

がん細胞に栄養を与える新しい血管の形成を抑えます。ただし、大腸や小腸などの消化管に穴が開くなどの重大な副作用があらわれることがあります。そのため、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験をもつ医師の下で適切に使う必要があります。

(2)分子標的治療の副作用について

主な副作用には、出血、高血圧、タンパク尿、神経毒性、疲労・倦怠(けんたい)感、食欲減退、悪心(おしん)、口内炎、脱毛症などがあります。

関連情報

5.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率および10年相対生存率のデータを示します(参照:相対生存率)。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【卵巣がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表2 卵巣がんの病期別5年相対生存率 (対象:2006~2008年に診断を受けた患者さん)
病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
I 629 87.4
II 144 66.4
III 601 44.2
IV 272 28.3
全症例 1,767 61.1
全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年9月集計)による
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6.リハビリテーション

がんそのものや治療に伴う後遺症や副作用などから、患者さんが受けるさまざまな身体的・心理的な障害の緩和や、能力の回復・維持を目的に行われています。

1)排尿や排泄の障害に対するリハビリテーション

子宮を含めて広範囲にわたり切除するため、排尿や排泄に障害が起こることがあります。

排尿がうまくできない場合には、カテーテルを尿道から膀胱へゆっくり挿入し、カテーテルを通して尿を出す、間欠導尿法(かんけつどうにょうほう)を行うことがあります。

便秘を防ぐため、バランスのとれた食事、十分な水分補給、適度な運動を心がけましょう。場合によっては下剤で便秘を解消することもあります。

2)身体機能低下に対するリハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は、体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

7.緩和ケア

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんのニーズに応じて幅広い対応をします。

関連情報

8.臨床試験

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねで作り上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験や治験などの研究段階の医療が行われています。

関連情報

1)卵巣がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

関連情報

9.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

卵巣がんの場合、初回の治療効果はあるものの、半数以上が再発します。再発の時期としては、治療後2年以内が多くみられます。

再発した場合は化学療法が主な治療法になります。

化学療法終了後から再発までの期間が6カ月未満の場合、前回の治療で用いた薬剤では効果が期待できないため、異なる薬剤での単剤による治療が基本です。再発までの期間が6カ月以上の場合は、プラチナ製剤を含む多剤併用療法が行われます。

放射線治療は、再発した場合の疼痛や出血などの症状緩和に対し行われることがあります。また、脳転移に対しては、症状緩和だけでなく、予後の改善のために行われることがあります。

1)腸閉塞に対する治療

腸閉塞は、再発したがんの増大、腹膜播種による圧迫、腸間膜のひきつれ、腸管神経麻痺(まひ)などによって起こることがあります。

腸閉塞による吐き気・嘔吐(おうと)は、薬により改善することがあります。また、可能であれば、閉塞部位の切除やバイパス術、ストーマ造設などの手術を行うことがあります。

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2)腹水貯留に対する治療

卵巣がんが進行すると腹水がたまりやすくなります。腹水による症状緩和のために、利尿薬の使用、腹水を体外へ出す腹水ドレナージ、体内にカテーテルを留置し腹水を静脈に流す腹腔静脈シャント、回収した腹水をろ過濃縮したあとに静脈に戻す腹水ろ過濃縮再静注法などを行うことがあります。
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