更新・確認日:2018年07月31日 [
履歴 ]
履歴
2018年07月31日 |
「4.組織型分類」から「4.組織型分類(がんの組織の状態による分類)」へタイトルを変更しました。 |
2017年09月21日 |
「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。 |
2013年01月29日 |
内容を更新しました。タブ形式に変更しました。 |
1996年07月25日 |
掲載しました。 |
診療の流れ、セカンドオピニオンなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については「
治療にあたって」をご参照ください。
1.卵巣について
卵巣は、子宮の両脇に1つずつある親指大の楕円(だえん)形の臓器です。卵巣の機能には、女性らしい体をつくり、維持を促す女性ホルモンの分泌があります。その他にも、成熟した卵子を月経が停止する(閉経)まで周期的に放出します(排卵)。
2.卵巣がんとは
卵巣がんは、卵巣に発生したがんです。卵巣に発生する腫瘍(しゅよう)には、良性と悪性、その中間的な境界悪性というものがあります。卵巣に腫瘍ができたからといって、卵巣がんとは限りません。
進行すると、おなかの中にがんが広がる腹膜播種(はしゅ)が生じやすくなります。また、胃から垂れ下がって大腸小腸をおおっている大網(たいもう/だいもう)、おなかの大血管の周りにある後腹膜リンパ節、大腸、小腸、横隔膜、脾臓(ひぞう)などに転移することがあります。
3.症状
はじめはほとんど自覚症状がありません。下腹部にしこりが触れる、おなかが張る、トイレが近い、食欲の低下などの症状があって受診することが多いのですが、このようなときにはすでにがんが進行していることも少なくありません。急激なおなかの張りや痛みなど、気になる症状がある場合には、早めに受診することをお勧めします。
4.組織型分類(がんの組織の状態による分類)
卵巣の腫瘍はその発生する部位によって、上皮性(じょうひせい)腫瘍、胚細胞性(はいさいぼうせい)腫瘍、性索間質性(せいさくかんしつせい)腫瘍などの組織型に分類されています。
最も多いのは、卵巣の表層をおおう細胞に由来する上皮性腫瘍です。上皮性のがんは卵巣がんの90%を占めています。このがんは、主に4つの組織型(漿液性[しょうえきせい]がん、粘液性がん、類内膜がん、明細胞がん)に分けられ、それぞれ異なった性質をもっています。
上皮性のがんの次に多いのは、卵子のもとになる胚細胞から発生するがんです。
5.統計
卵巣がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり14.3人です。40歳代から増加を始め、50歳代前半から60歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します1)。
6.発生要因
卵巣がんの発生には複数の要因が関与しているといわれています。卵巣がんの約10%は遺伝的要因によるものと考えられており、
BRCA1遺伝子あるいは
BRCA2遺伝子変異が発症する危険性を高めることがわかっています。ほかには、排卵の回数が多いと卵巣がんになりやすいと考えられているため、妊娠や出産の経験がない場合や、初経が早く閉経が遅い場合は発症する危険性が高くなる可能性があります。

7.予防と検診
1)予防
日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。

2)検診
がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。
しかし、卵巣がんについては、現在、指針として定められている検診はありません。また、卵巣がんに関しては科学的に根拠のある検診方法も確立されていません。急激なおなかの張りや痛みなど、気になる症状がある場合には、医療機関を早期に受診することをお勧めします。
なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わったあとの検査は、ここでいう検診とは異なります。

8.「卵巣がん」参考文献
1) |
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国推計値2012年 |
2) |
日本婦人科腫瘍学会編.卵巣がん治療ガイドライン2015年版,金原出版 |
3) |
日本産科婦人科学会・日本病理学会編.卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版.2016年,金原出版 |
よりよい情報提供を行うために、アンケートへの協力をお願いいたします。