1.検査の目的

腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみることを目的に行います。
腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質です。がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られます。がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査など、その他の検査の結果も合わせて、医師が総合的に判断します。
2.検査の方法
腫瘍マーカー検査は、主に血液や尿などの体液の成分を測定することによって行う検査です。専用の分析装置を使って、血液や尿に含まれる腫瘍マーカーの値を測定します。
3.検査の実際
腫瘍マーカー検査では、採血もしくは採尿を行います。
4.検査の特徴
腫瘍マーカー検査は、採血や採尿で検査することができ、体への負担はほとんどありません。腫瘍マーカーは、がん細胞の数や、がん細胞が作る物質の量が多くなると、値が高くなります。しかし、肝障害、腎障害、飲酒や喫煙などの生活習慣、いつも飲んでいる薬、がん以外にかかっている病気などの影響により、がんの有無とは無関係に高い値になることもあります。反対に、がんがあっても値が高くならないこともあります。
このように、腫瘍マーカーだけでがんの診断は確定できないため、多くの腫瘍マーカーは、参考になる検査の1つとして、診察や画像検査の結果などと合わせて使われます。また、全てのがんで特定の腫瘍マーカーが見つかっているわけではありません。
5.検査を行う主ながん
腫瘍マーカー検査は、がん診断の補助に加えて、治療の効果や、再発や転移が無いかを調べるために、さまざまながんで行うことがあります。肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、子宮頸がんなどのがんでは、採血によって検査を行います。膀胱がんでは、採尿によって検査を行います。
- 甲状腺がん:CEA
- 非小細胞肺がん:CYFRA21-1、CEA、SLX、CA125、SCC
- 小細胞肺がん:NSE、ProGRP
- 食道がん:SCC、CEA
- 胃がん:CEA、CA19-9
- 大腸がん:CEA、CA19-9、p53抗体
- 肝細胞がん:AFP、PIVKA-Ⅱ、AFP-L3
- 胆道がん:CA19-9、CEA
- 膵臓がん:CA19-9、Span-1、DUPAN-2、CEA、CA50
- 膀胱がん:NMP22、BTA
- 前立腺がん:PSA
- 乳がん:CEA、CA15-3
- 子宮頸がん:SCC、CA125、CEA
- 卵巣がん:CA125
それぞれのがんにおける腫瘍マーカー検査の目的や腫瘍マーカーの種類の説明
6.Q&A
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Q1がんの治療中です。腫瘍マーカーの値が高くなっているのですが、がんが進行しているのでしょうか?どこかに転移があるのでしょうか?
A1腫瘍マーカーの値の変化だけでは、がんが進行しているか、転移しているかどうかは確定できません。腫瘍マーカーの値は、生活習慣や薬の影響などで一時的に高くなることもあります。腫瘍マーカーの値だけでなく、画像検査などの複数の検査結果から、医師が総合的に判断しますので、担当医にご相談ください。 -
Q2がんを早期に発見するために腫瘍マーカー検査は有効ですか?
A2腫瘍マーカーは、がんの有無とは無関係に高い値になったり、がんがあっても値が高くならなかったりするため、がんを早期に発見するためには必ずしも有効とはいえません。健康診断のオプションや人間ドックなどで行われることがある腫瘍マーカー検査は、国が推奨するがん検診には含まれません。 -
Q3人間ドックで腫瘍マーカーの値が高かったため、精密検査を勧められました。どうすればよいですか?
A3腫瘍マーカー検査を受けて、精密検査を勧められた場合には、まずは身近な医療機関に相談し、医師が必要と判断した場合は精密検査を受けましょう。なお、腫瘍マーカーの値は、がんが無くても高くなることがあるので、それだけでがんと診断されたわけではありません。
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