1.経過観察
手術後も、回復の度合いや再発の有無を確認するために、定期的に通院して検査を受けます。通院の頻度は個別の状況により異なりますが、少なくとも手術後5年間は必要で、その後も継続して検査を受けることが勧められています。術後2年間は3〜6カ月おきに、それ以降は6〜12カ月おきに受診します。
診察では、黄疸の有無や血糖、肝機能、腫瘍マーカーなどを調べるための血液検査と、腹部の超音波(エコー)、CT、MRIなどの画像検査を行います。
2.日常生活を送る上で
規則正しい生活を送ることで、体調の維持や回復を図ることができます。禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、適度な運動などを日常的に心がけることが大切です。
症状や治療の状況により、日常生活の注意点は異なります。体調をみながら、担当医とよく相談して無理のないように過ごしましょう。
1)手術後の日常生活
(1)消化のよい食事を取る、食事の取り方を工夫する
手術によって、脂肪の消化吸収に重要な胆汁や消化酵素を含む膵液が減少したり、分泌されなくなったりすることがあります。その結果、消化不良による下痢などを起こしやすくなるので、食事は、バランスよくなるべく消化のよいものを取りましょう。管理栄養士に相談することで、個々の状況にあった献立や調理の工夫を聞くことができます。また、バイパス手術後の食事についても相談できます。
食事の取り方の工夫には、例えば次のようなものがあります。
- 食事は控えめの量から少しずつ:消化や吸収に時間がかかることがあります。
- 少量ずつ何回かに分ける:一度にたくさん食べると消化吸収が追いつかないことがあります。3食以外にも間食を取り栄養を補いましょう。
- 脂肪分を取りすぎない:動物性脂肪を控え、植物性脂肪を取りましょう。
- 良質なタンパク質(大豆製品や魚など)を取る。
- 香辛料は控えめにする。
- コーヒー、紅茶は控えめにする。
- アルコール(飲酒)については、医師に確認する。
(2)血糖の変動に注意する
手術で膵臓を切除した場合、糖尿病を発症したり、もともとあった糖尿病が悪化したりすることがあります。その場合は糖尿病専門医の診察を受ける必要があります。
膵全摘術を行った場合には、血糖を下げるホルモンであるインスリンが分泌されなくなるため、自分で注射を打ってインスリンを補います。注射の方法などは、退院前に担当医あるいは看護師、薬剤師から指導を受けます。
なお、退院後に自分で注射を打つことに不安を感じる場合には、それを支援する様々な仕組み(訪問看護によるサポートや訪問介護による見守り等)もあります。分からないことや心配なことは遠慮せず、担当医や看護師などの医療スタッフや、がん相談支援センターにご相談ください。
2)薬物療法中の日常生活
近年、薬物療法の副作用を予防したり、症状を緩和したりする支持療法が進歩したため、通院で治療を行うことが増えています。仕事や家事、育児など今までの日常生活を続けながら治療ができる一方で、体調が悪くても、無理をしてしまうことがあります。日常生活を送っていたとしても、治療により万全の体調ではないことを忘れないようにしましょう。
また、いつも医療者がそばにいるわけではないため、不安に感じることもあるかもしれません。予想される副作用や出現時期、その対処法について医師や看護師、薬剤師に事前に確認し、通院時には疑問点や不安点などを相談しながら治療を進めると良いでしょう。副作用については家族や周りの人のサポートを得ながら、自分なりの対処法を見つけることも大切です。
3)性生活について
性生活によって、がんの進行に悪影響を与えることはありません。また、性交渉によってパートナーに悪い影響を与えることもありません。しかし、がんやがんの治療は、性機能そのものや、性に関わる気持ちに影響を与えることがあります。がんやがんの治療による性生活への影響や相談先などに関する情報は、「がんやがんの治療による性生活への影響」をご覧ください。
なお、薬物療法中やその後は、膣分泌物や精液に薬の成分が含まれることがあるため、パートナーが薬の影響を受けないように、コンドームを使いましょう。また、薬は胎児に影響を及ぼすため、治療中や治療終了後一定期間は避妊しましょう。
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