膵臓がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療、緩和ケアがあります。がんが切除できる場合は、手術のみ、もしくは手術と薬物療法、放射線治療を組み合わせた治療(集学的治療)を行います。切除できない場合は、主に薬物療法や、薬物療法と放射線治療を組み合わせた治療を行います。がんの進行状況や体の状態によっては、緩和ケアのみを行う場合があります。
また、診断されたときから、がんに伴う心と体、社会的なつらさなどを和らげるための緩和ケア/支持療法を受けることができますので、遠慮せずに医療者やがん相談支援センターに相談しましょう。
1.ステージと治療の選択
治療法は、がんの進行の程度を示すステージ(病期)やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。
1)ステージ(病期)
がんの進行の程度は、「ステージ(病期)」として分類します。ステージは、ローマ数字を使って表記することが一般的で、Ⅰ期(ステージ1)・Ⅱ期(ステージ2)・Ⅲ期(ステージ3)・Ⅳ期(ステージ4)と進むにつれて、より進行したがんであることを示しています。なお、膵臓がんではステージのことを進行度ということもあります。
膵臓がんでは0期~Ⅳ期まであり、がんの大きさ、周囲への広がり、リンパ節や他の臓器への転移があるかどうかによって決まります(表1、2)。
膵臓がんのステージの分類には、日本では「膵癌取扱い規約(日本膵臓学会編)」(表1)、または「TNM悪性腫瘍の分類(UICC)」(表2)が用いられ、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決まります。
Tカテゴリー:原発腫瘍※の大きさや周囲への広がりの程度
Nカテゴリー:リンパ節への転移の有無
Mカテゴリー:他臓器などへの転移(遠隔転移)の有無
※原発腫瘍とは、原発部位(がんがはじめに発生した部位)にあるがんのことで、原発巣ともいわれます。
自分がどのステージに当てはまるかということは、今後の治療方針を考える上でとても重要です。ステージの詳細については担当医に聞いてみましょう。
2)治療の選択
治療法は、がんの進行の程度に基づいた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。
膵臓がんに対する治療は、手術や放射線治療(「局所治療」)と、細胞障害性抗がん薬などを用いた薬物療法(「全身治療」)があります。図3は、膵臓がんの標準治療を示しています。
まず、膵臓がんでは、治療方針を決めるときに「手術ができるかどうか」について検討し、「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」のどの状態であるかを調べます。
- 「切除可能」な場合
手術のみ、もしくは手術と薬物療法を組み合わせた治療を行います。 - 「切除可能境界」の場合(切除しても細胞レベルでがんが残る可能性のある場合)
「細胞障害性抗がん薬」または「細胞障害性抗がん薬+放射線療法」を一定期間行い、再度がんの状態を確認し、手術するかどうかを判断します。 - 「切除不能」な場合(がんが膵臓周辺の大きな血管を巻き込んでいたり、別の臓器に転移していたりして手術ができない場合)
薬物療法や化学放射線療法を行います。
また、痛みや食欲の低下、糖尿病、不安などがある場合、緩和ケアや支持療法を行います。
なお、担当医から複数の治療法を提案されることもあります。治療を選ぶにあたって分からないことは、まず担当医に確認することが大切です。また、担当医が提案した以外にも治療法がないか知りたいときや、担当医の意見を別の角度から検討したいときに、セカンドオピニオンを聞くこともできます。また、治療の生活への影響など不安に思うこと、悩みや困りごとなども含め、がん相談支援センターで相談することもできます。
妊孕性の温存について
がんの治療が、妊孕性(子どもをつくる力)に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕性を温存することが可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。
禁煙について
喫煙を続けることは、がんの治療の効果を下げたり、手術後の合併症の増加につながると考えられています。喫煙している場合には、治療が始まる前に少しでも早く禁煙しましょう。なお、手術までに禁煙できていないときには、手術が延期になることもあります。禁煙治療を希望する場合は、まずはがんの治療の担当医に相談しましょう。
2.手術(外科治療)
膵臓がんの治療では、「切除可能」である(手術でがんを切除できると考えられる)場合、できる限り手術をします。手術には、膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術、膵全摘術があります。
近年では、それぞれの方法に対して、おなかに小さな穴を開けて内視鏡を使って手術することもあります(腹腔鏡下膵切除、ロボット支援下膵切除) 。内視鏡を使った手術は、開腹手術(おなかを開ける手術)と比べて、傷が小さく、出血量も少なく、術後の痛みも少ないなどの利点があります。ただし、実施できる施設は限られており、また他の臓器に浸潤がある場合は実施が難しくなります。
手術方法により異なりますが、一般的には、膵体尾部よりも膵頭部の切除のほうが、腸とつなぎ合わせる部位が多いため、回復に時間がかかります。また、がんの位置によっては、腸の動きを調整する神経も一緒に切除するため、下痢を起こしやすくなります。切除する膵臓の範囲によっては、糖尿病や消化吸収障害などが起こり、そのための治療が必要になることがあります。
入院期間については、持病の有無や入院施設、手術内容、合併症の発生状況によっても異なります。一般的には、開腹手術と比べて腹腔鏡下手術やロボット支援手術では短くなるといわれています。
なお、「切除可能境界」である(がんが周囲の血管を巻き込んでいるなどの理由で、手術でがんを取りきれるか判断が難しい)場合は、化学療法や化学放射線療法を行ったあと、治癒につながる切除が可能かどうかをあらためて検討した上で、手術を行うことがあります。
1)膵頭十二指腸切除術
膵頭部を中心にがんがある場合、膵頭部とともに、十二指腸、胆のうと胆管の下部、周囲のリンパ節を切除します。がんが血管を巻き込んでいる場合は血管の一部も切除します。
がんが胃の近くにある場合は胃の一部も切除します。これまでは、胃の3分の2の切除を伴う膵頭十二指腸切除術(PD)が広く行われていましたが、最近では、胃の大部分を残す亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)や胃のすべてを残す幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)が一般的に行われています(図4、5)。切除後は、残った膵臓を小腸につなぎ合わせ、膵液が小腸に流れるようにします(再建手術)。同様に、胆管と小腸、胃と小腸もつなぎ合わせます。
手術後の合併症と対応
手術後はさまざまな合併症が発生することがあります。以下に主な合併症とその対応を示します。
- 胆汁や膵液の漏れ(胆汁ろう/膵液ろう)
つなぎ合わせた部分から胆汁や膵液が漏れることがあり、その結果、感染、腹膜炎、出血が起こることがあります。その対策として手術時におなかにドレーンという管を入れておき、漏れた消化液を体外に排出するようにします。 - 胆管の炎症(胆管炎)
感染によって胆汁の通り道である胆管に炎症が起こることがあります。その場合には、抗菌薬で治療します。 - 腹膜炎、出血
腹膜炎や出血が起こった場合にはカテーテル治療や緊急手術などが必要になることがあります。 - 胃の動きが悪くなる(胃内容排出遅延)
一時的に胃から腸への食べ物の流れが遅れることによって、食事がうまく食べられなかったり、吐き気が起こったりすることがあります。その場合には、状態が回復するまで、点滴もしくは鼻から細い管を入れて水分や栄養を補うことがあります。
2)膵体尾部切除術
膵体尾部にがんがある場合、膵臓の体部と尾部を周囲のリンパ節とともに切除します。通常は脾臓も摘出します(図6)。消化管は切除しないので、消化管同士をつなぎ合わせる再建手術は必要ありません。
手術後の合併症と対応
手術後はさまざまな合併症が発生することがあります。以下に主な合併症とその対応を示します。
- 膵液の漏れ(膵液ろう)
膵臓を切り離した部分から膵液が漏れることがあり、その結果、感染、腹膜炎、出血が起こることがあります。その対策として手術時におなかにドレーンという管を入れておき、漏れた消化液を体外に排出するようにします。 - 腹膜炎や出血
腹膜炎や出血が起こった場合にはカテーテル治療や緊急手術などが必要になることがあります。 - 細菌に対する抵抗力の低下
脾臓を摘出した場合には、肺炎球菌などの細菌に対する抵抗力が落ちるため、肺炎球菌ワクチンの予防接種が勧められています。
3)膵全摘術
がんが膵臓全体に及ぶ場合は、膵臓をすべて摘出します。また、胃の一部から十二指腸、胆のうと胆管の下部を周囲のリンパ節とともに切除します。
手術後の合併症と対応
手術後はさまざまな合併症が発生することがあります。以下に主な合併症とその対応を示します。
- 糖尿病
膵臓をすべて摘出するため、インスリンなどのホルモンが分泌されなくなります。それにより、血糖のコントロールができなくなり糖尿病になります。膵臓の機能を補うために、定期的にインスリンを使用します。 - 消化吸収障害、脂肪肝
多くの消化酵素を含む膵液が分泌されなくなるため、消化吸収障害(脂肪便、下痢、体重減少など)や脂肪肝が起こります。膵液のかわりになる消化剤を服用します。
3.放射線治療
膵臓がんの放射線治療には、治療の効果を高めることを目的とした化学放射線療法と、症状緩和を目的とした放射線治療の2つがあります。
1)化学放射線療法
放射線治療と化学療法(細胞障害性抗がん薬を用いる薬物療法)を組み合わせた治療法です。がんを切除しても細胞レベルでがんが残る可能性のある切除可能境界型膵臓がんの場合や、遠隔転移はないと判断されるものの、がんが膵臓近くの重要な血管を巻き込んでいることが明らかで、手術ができない局所進行切除不能膵臓がんの場合に行われることがあります。放射線治療を単独で実施するよりも、化学療法と組み合わせることで治療の効果を高めることが期待でき、局所進行切除不能膵臓がんに対する標準治療の1つとして推奨されています。
なお、放射線治療では、粒子線治療(重粒子線治療、陽子線治療)が受けられる場合がありますが、実施できる施設は限られています。希望する場合は担当医に相談しましょう。
そのほかに、手術ができない膵臓がんでは、痛みを和らげるために行われることがあります。
2)痛みの緩和を目的とした放射線治療
がんが膵臓周辺の大きな血管を巻き込んでいたり、別の臓器に転移していたりして手術ができない「切除不能」な膵臓がんに対して、痛みを和らげる目的で行われることがあります。また、骨転移による痛みを和らげる治療として行うこともあります。
3)放射線治療の副作用
放射線を当てる場所や放射線の量などによって症状は異なりますが、一般的には、皮膚の色素沈着、吐き気・嘔吐、食欲不振などがあらわれます。また、白血球や赤血球などの血球減少が起こることもあります。まれに胃や腸の粘膜が荒れて出血することで、黒い便が出ることもあります。
4.薬物療法(化学療法)
膵臓がんの薬物療法では、主に細胞障害性抗がん薬を使います。細胞障害性抗がん薬には、点滴や内服薬があります。膵臓がんでは、再発率を下げることを目的として、多くの場合で手術の前や後に細胞障害性抗がん薬を用いた治療が行われます。また、放射線治療と組み合わせる場合や、手術ができない場合にも細胞障害性抗がん薬が使われます。
なお、病状や治療の状況によって、がん遺伝子検査が行われることがあり、その結果によっては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を使う場合があります。
細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を邪魔することで、がん細胞を攻撃する薬です。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質などを標的にして、がんを攻撃する薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぐ)薬です。
薬物療法で使用する薬の組み合わせは複数あります。どの種類の薬を使うかは、治療の目的、がんの状態や体調、薬物療法に伴って起こることが想定される副作用などについて、担当医と話し合って決めていきます。薬に関する詳しい情報は、担当医や薬剤師などの医療者に尋ねてみましょう。
1)術前補助化学療法・術後補助化学療法
手術後の再発の可能性を下げるために、細胞障害性抗がん薬などを用いて行う治療を「補助療法」といいます。手術の前に行う補助療法は「術前補助化学療法」、手術のあとに行う補助療法は「術後補助化学療法」といいます。
手術で切除可能な膵臓がんの場合、手術の前や後に、一定期間薬物療法を受けると、再発しにくくなる可能性が示されています。そのため、手術の前や後にそれぞれ有効性が確認された異なるレジメン(薬剤の用量や用法、治療期間を明記した治療計画のこと)での薬物療法を行うことがあります。なお、病期が0期の場合には、通常は手術の前後に薬物療法は行いません。
2)手術できない場合・手術後再発した場合の薬物療法
膵臓がんが周囲の重要な血管を巻き込んでいたり遠隔転移していて手術ができない場合や、がんが再発した場合に行われます。薬物療法だけでがんを完全に治すことは難しいですが、がんの進行を抑えたり、がんによる症状を和らげたりすることが分かっています。
(1)一次化学療法
細胞障害性抗がん薬を用いて最初に行う治療を一次化学療法と呼びます。手術ができない場合や、手術後に再発した場合に、がん自体の進行を抑え、延命および症状を和らげることを目的とした治療です。細胞障害性抗がん薬を単独、または複数の薬を組み合わせて使います。また、遠隔転移がない場合は、放射線治療と組み合わせた化学放射線療法を行うこともあります。どの治療を選択するかは、体調や副作用の可能性を考慮して、医師と相談しながら決めていきます。
なお、BRCA遺伝子検査の結果、BRCA遺伝子に変異がある場合には、プラチナ製剤と呼ばれる種類の細胞障害性抗がん薬を使って治療したあとに、分子標的薬を使った維持療法(細胞障害性抗がん薬の効果を維持するために行う治療)を行うこともあります。
(2)二次化学療法(一次化学療法が効かなくなった場合などに用いる薬物療法)
一次化学療法の効果がなくなったときや、効果はあっても副作用が強くて治療を続けることができないときは、それまでの治療で使っていないほかの薬で治療を行います。これを二次化学療法といいます。
細胞障害性抗がん薬を単独、または組み合わせて使いますが、どの治療を選択するかは、体調などを考慮して、医師と相談しながら決めていきます。
(3)がん遺伝子検査
膵臓がんの薬物療法中に、がん遺伝子検査を行うことがあります。膵臓がんと関連がある遺伝子の異常や変異には以下のようなものがあり、その結果によって、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬による治療が行われることがあります。
-
MSI-High: MSI-Highとは、遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくいために起こる状態です。膵臓がんの人の中でMSI-Highである人は100人中1人(1%)弱といわれています。免疫チェックポイント阻害薬による治療が行われることがあります。
-
TMB-High: TMB-Highとは、がん細胞のゲノムに起こった遺伝子変異が多い状態(DNAの傷が多い状態)です。膵臓がんの人の中でTMB-Highである人は100人中1~2人(1~2%)といわれています。免疫チェックポイント阻害薬による治療が行われることがあります。
-
NTRK融合遺伝子、
RET融合遺伝子: 融合遺伝子とは、異なる2つの遺伝子が結合して生じる遺伝子異常で、がん細胞の異常な増殖を引き起こします。膵臓がんの人の中でNTRK融合遺伝子やRET融合遺伝子が見つかる頻度はどちらも100人中1人未満(1%未満)といわれています。これらの遺伝子異常がある場合には、分子標的薬による治療が行われることがあります。 -
BRAF V600E
遺伝子変異: がん細胞の増殖に関わる遺伝子異常で、膵臓がんの人の中で100人中1~3人(1~3%)程度に見つかるといわれています。BRAF V600E遺伝子変異に対して有効性が示されている分子標的薬の併用療法が行われることがあります。 -
BRCA遺伝子
(BRCA1、BRCA2)
変異: BRCA遺伝子は生まれたときから誰もがもっている遺伝子の1つで、DNA修復に関わる重要な役割をもちます。BRCA遺伝子変異がある場合は、DNA修復の働きが十分機能しなくなるといわれています。膵臓がんの人の中で100人中5人(5%)程度に見つかるといわれています。BRCA遺伝子に変異がある場合には、プラチナ製剤と呼ばれる種類の細胞障害性抗がん薬を使った治療が行われることがあります。
3)薬物療法の副作用について
副作用は、使用する薬ごとに異なり、その程度も個人差があります。
細胞障害性抗がん薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えるため、食欲不振、吐き気、倦怠感、口内炎、下痢、発熱、しびれ、脱毛などの症状や、血液中の白血球や血小板などの数が少なくなる骨髄抑制、肝機能や腎機能の低下などの副作用が起こることがあります。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は、薬ごとにさまざまな副作用があらわれます。
最近では副作用を予防する薬が開発され、特に吐き気や嘔吐については、以前と比べて予防したり、コントロールできるようになり、制吐薬(吐き気・嘔吐を抑える薬)も開発されています。吐き気は、吐く一歩手前の状態だけでなく、「胃の不快感」「ムカムカ感」「胸やけ」なども含まれます。症状によって効きやすい薬は異なるため、自分に合った薬を選ぶためには、症状、時期、嘔吐の有無などを具体的に医療者に伝えることが大切です。気になる症状は我慢せずに医療者に伝えましょう。
一方で、副作用の種類や程度によっては、治療が継続できなくなることもあります。自分が受ける薬物療法について、いつどんな副作用が起こりやすいか、どう対応したらよいか、特に気をつけるべき症状は何かなど、治療が始まる前に担当医によく確認しておきましょう。また、副作用と思われる症状がみられたときには、迷わずに担当医に伝えましょう。有効な治療をできるだけ続けられるように、適切に対処することが大切です。
5.免疫療法
免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2025年11月現在、膵臓がんの治療に効果があると科学的に証明されている方法は、MSI-Highの場合とTMB-Highの場合に免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです。インターネット上では、高額な自由診療による免疫療法の情報が掲載されていることもありますが、その他の免疫療法で、膵臓がんに対して効果が証明されたものはありません。
なお、免疫チェックポイント阻害薬を使用する方法は、薬物療法の1つでもあります。免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法に関する情報は、関連情報「膵臓がん 治療 4.薬物療法」をご覧ください。
6.合併症に対する治療
1)黄疸や胆管炎に対する治療
黄疸とは、膵臓がんによって胆管がふさがり胆汁の流れが滞った結果、目の白い部分や皮膚が黄色くなることです。また、胆汁の流れが滞って感染することによって胆管炎が起こり、高熱が出ることもあります。これらの症状が出た場合には、担当医や看護師に相談しましょう。
黄疸が起こった場合、たまった胆汁を排出するために、胆道に管を挿入する「胆道ドレナージ」を行うことがあります。胆道とは、胆汁の通り道である胆管、胆のう、十二指腸乳頭の総称です。胆道ドレナージにはいくつかの方法がありますが、近年は体への負担が少ない、内視鏡を使ってステントという管を留置する方法(内視鏡的胆道ドレナージ)が主流となっています。内視鏡的胆道ドレナージでは、直径10mmほどの金属製の筒や、直径2~3mmほどのプラスチック製のチューブが用いられます。ステントは人工物のため、挿入後に詰まったり、自然に抜けたりずれたりすることがあり、再度治療が必要になることもあります。
- 内視鏡的胆道ドレナージ(ERBD):内視鏡を使って、十二指腸乳頭から胆管の狭くなった部分にステントを入れて、胆汁の流れをよくする方法です。鎮静剤を使うため、眠っている間に治療が終わり、苦痛はほとんどありません。ただし、合併症として治療後に膵炎を起こすことがあります。また、ステントが詰まったときに胆管炎を起こす可能性もあります。
- 内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD): 内視鏡を使って鼻から胆管にチューブを入れる方法です。鼻からチューブが出るため、慣れるまで違和感や不快感を伴うことがあります。そのため、胆管炎が強い場合など、主に一時的な処置として用いられています。
- 経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD): おなかの皮膚から肝臓を経由して胆管にチューブを入れ、胆汁を体の外に出す方法です。胆汁が出ているかどうかを目で確認できる利点がありますが、体の外側にチューブが出ているため、慣れるまで痛みがあったり、日常生活で不便を感じることがあります。そのため、黄疸が強い場合など、主に一時的な処置として用いられています。
- 超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD):超音波内視鏡を用いて、胆管と十二指腸または胃をつなぐステントを挿入する方法です。EUS-BDは、がんの浸潤や手術後の影響によって、ERBDでステントを挿入することができない場合などに行われることがある新しい方法です。そのため、熟練した技術や専用の器具が必要で、外科や放射線科、内視鏡科の医師によるチーム体制が整った施設でのみ行われます。
2)消化管や胆管の閉塞に対する治療
膵臓は胃や十二指腸などの消化管の近くにあるため、膵臓がんが広がると消化管を圧迫したり浸潤したりして、閉塞する(詰まる)ことがあります。消化管の閉塞が起こると、食べられる量が減り、体重減少や栄養状態低下につながります。そのため、がんの切除ができない場合には、このような症状を改善する目的で、十二指腸ステント術またはバイパス手術が行われることがあります。
十二指腸ステント術では、膵臓がんによって胃や十二指腸が狭くなっている部分に、内視鏡を用いて、直径20mmほどの金属製の筒(ステント)を入れて広げ、食べ物の通り道をつくります(図7)。
一方、バイパス手術では、食べ物が十二指腸へ流れないように、胃と空腸(小腸の一部)をつなぐ胃空腸吻合術を行います。
また、胆管ががんでふさがって黄疸が出ていて、内視鏡治療が難しい場合には、胆管と空腸をつなぐ胆管空腸吻合術を行うことがあります。
7.緩和ケア/支持療法
緩和ケア/支持療法は、がんに伴う体と心のつらさ、社会的なつらさを和らげたり、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用、合併症、後遺症を軽くしたりするために行われる予防、治療およびケアのことです。がんと診断されたときから、治療とともにつらさを感じるときにはいつでも受けることができます。痛みなどの症状がある場合には薬の処方など、気持ちの落ち込みやつらさには心理的なケアなどを受けることができます。また、経済的な不安や仕事の不安、家族関係に関する相談もできます。
痛みがある場合には、痛みの強さに応じた痛み止め(薬剤)を使って和らげます。強い痛みがあるときは、医療用の麻薬を使うこともあります。痛みの緩和に必要な薬剤の種類や量には個人差があるため、医師が一人ひとりの痛みに合わせて薬剤を調整していきます。また、神経ブロック(痛みを感じる原因となる神経の近くに針を刺し、薬剤を注入する治療)や、骨転移の痛みを緩和するための放射線治療を行うこともあります。
膵臓がんによって胆管が狭くなった場合は胆道ドレナージを行ったり、消化管が狭くなった場合には、ステントと呼ばれるチューブのような器具を入れる治療や手術を勧められることもあります。詳しくは、関連情報「膵臓がん 治療 6.合併症に対する治療」をご覧ください。
このような症状や、本人にしか分からないつらさについても、遠慮せずに、早めに医療者やがん相談支援センターに相談することが大切です。緩和ケアは、全国のがん診療連携拠点病院で外来・入院いずれの状況でも受けることができ、自宅でも受けることができます。必要時には地域の病院と連携して緩和ケアを継続することも可能です。がん相談支援センターでは、お住まいの地域の病院や在宅療養、利用できる制度など地域の緩和ケアに関する情報を紹介することもできます。
また、がんやがんの治療によって外見が変化することがあります。支持療法の中でも、外見の変化によって起こるさまざまな苦痛を軽減するための支援として行われているのが、「アピアランス(外見)ケア」です。外見が変化することによる悩みや心配についても、医療者やがん相談支援センターに相談してみましょう。
8.リハビリテーション
リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行われます。手術を受ける場合は術後の回復力を高めるためにも、手術前からのリハビリテーションが重要です。また、緩和ケアの一環として、心と体のさまざまなつらさに対処する目的でも行われます。
一般的に、がんの治療中や治療後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師や看護師などの医療者に確認しましょう。
9.再発した場合の治療
再発とは、治療によって見かけ上なくなったがんが再びあらわれることです。原発巣やその近くに、がんが再びあらわれることだけでなく、別の臓器で「転移」として見つかることも含めて再発といいます。
再発した場合には、それぞれの状況に応じて総合的に検討し、治療やケアの方針を決めていきます。
それまでの治療経過や体調から、がんに対する治療が可能な場合、多くは薬物療法(化学療法)を行います。詳細は、関連情報「膵臓がん 治療 4.薬物療法(化学療法) 2)手術できない場合・手術後再発した場合の薬物療法」をご覧ください。
治療経過や体調から、がんに対する治療が難しい場合、多くは適切な緩和ケアによって症状を和らげ体力を温存するようにしていきます。詳細は、関連情報「膵臓がん 治療 7.緩和ケア/支持療法」をご覧ください。
| 2026年03月19日 | 「膵癌診療ガイドライン2025年版」より、内容を更新しました。 |
| 2023年02月20日 | 「膵癌診療ガイドライン2022年版」より、内容を更新しました。 |
| 2020年09月08日 | 「膵癌診療ガイドライン2019年版」より、内容の更新をしました。 |
| 2020年02月27日 | 「5.生存率」の参照先を「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」としました。 |
| 2017年07月25日 | 「膵癌診療ガイドライン 2016年版」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。 |
| 2016年12月07日 | 「膵癌診療ガイドライン2016年版」より、「図2 膵臓がんの臨床病期と治療 」を更新しました。 |
| 2016年02月10日 | 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。 |
| 2014年10月14日 | 「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013年版」を反映しました。 |
| 2014年10月03日 | 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。 |
| 2013年04月12日 | 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。 |
| 2006年10月20日 | 内容を更新しました。 |
| 1995年12月25日 | 掲載しました。 |