「食道がん」の基本的な情報については、「食道がんについて」をご参照ください。
- Q1 がんが進行すると、どんな症状が出てきますか。
- Q2 手術と薬物療法、放射線治療は、どう選んだらいいですか。
- Q3 それぞれの治療で、生活にどのような影響が出ますか。
- Q4 治療後に、どんな症状が出てきますか。
- Q5 治療後、いつごろから仕事や普通の生活に戻れますか。
- Q6 治療後に、声が出にくくなりますか。
- Q7 放射線治療後の食事の違和感(飲み込みにくい、つかえ感)は良くなりますか。
- Q8 治療後には、どんなものを食べたらいいですか、また良くないですか。
- Q9 食べられないとき、どうしたらいいですか。
- Q10 お酒を飲んだりたばこを吸ったりしてもいいですか。一生飲めないのですか。
- Q11 将来の経過について、先生にどのように聞くのがいいですか。
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Q1 がんが進行すると、どんな症状が出てきますか。
A1食道がんでは、初期には自覚症状がないことがほとんどです。がんが進行するにつれて食道が狭くなり、飲食時のつかえる感じや胸の違和感が出てきます。この他、体重減少、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状が出ることがあります。食道が非常に狭くなると水や流動食の通りも悪くなり、点滴や胃ろう(おなかの皮膚から胃へ管を通す穴)などを使った栄養の補助が必要になります。
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Q2 手術と薬物療法、放射線治療は、どう選んだらいいですか。
A2ステージ(病期または進行度ということもあります)や体の全体的な状態によって、手術を中心とした治療か手術以外の治療かを選びます。手術以外の治療では、薬物療法と放射線治療の組み合わせ(化学放射線療法)や、放射線治療のみなどを選びます。基本的には標準治療(多くの専門家が現在の最良の治療として決めた治療法)に従います。また、治療を選ぶ際には、自分の希望やがん以外の病気、体の全体的な状態も併せて考えていきます。
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Q3 それぞれの治療で、生活にどのような影響が出ますか。
A3手術の場合には、特に他の病気がない人でも、手術の1~2日前から入院し、退院までに2~4週間程度を要することが多いため、仕事など生活面の調整が必要になります。
薬物療法や放射線治療の場合には、体の状態によっては通院で治療を行うこともあります。放射線治療では約1~2カ月間、週5回(1回30分程度)通院する必要があるため、通院のしやすさなども考えて病院を選ぶ必要があります。
頸部食道がん(がんの発生する部位が食道の頸部のもの)で食道とともに咽頭喉頭を切除した場合には、声帯がなくなるため声が出せなくなります。そのため、発声法(食道発声、シャント発声など)の習得や電気式人工喉頭(発声を補助する器具)を使用した代用音声のリハビリテーションを行います。 -
Q4 治療後に、どんな症状が出てきますか。
A4食道がんの治療後の症状は、行う治療によって異なります。
手術(外科治療)を行った場合には、体重減少、ダンピング症候群、誤嚥、逆流性食道炎などが起こりやすくなります。
薬物療法では、薬の種類にもよりますが、血球(赤血球、白血球、血小板)が減る、口腔(口の中)や胃腸の粘膜があれる、髪の毛が抜ける、爪が伸びなくなる、感染しやすくなるなどの症状が起こります。
放射線治療では、治療中から治療直後の一時的な副作用として、照射した部位の痛みやつかえ感が2~5週間ほど続くことがあります。また、治療後数カ月~数年たっても起こりうる副作用(晩期合併症)として、肺炎などによる咳や微熱、息切れなどがあります。 -
Q5 治療後、いつごろから仕事や普通の生活に戻れますか。
A5治療後の体の回復の具合によって、仕事やスポーツを行える時期は異なります。仕事の内容や、生活の中でこれまでやってきたことを担当医に伝えて、いつごろ、どのような範囲までできるようになるか確認しましょう。特に、手術を行う場合には、入院期間が長くなる場合もあるため、仕事の復帰時期について職場で調整を行う必要があります。
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Q6 治療後に、声が出にくくなりますか。
A6手術でがんを取り除くときに、反回神経(発声の役割のある声帯を調節する神経)に傷がつくことがあります。それによって手術後に声帯の動きが悪くなり、声がかすれることがあります。多くの場合、神経機能は3~6カ月程度で回復します。嗄声(声のかすれ)があるときには、嚥下時にむせないように注意することも必要です。
頸部食道がん(がんの発生する部位が食道の頸部のもの)で食道とともに咽頭喉頭を切除した場合には、声帯がなくなるため声が出せなくなります。そのため、発声法(食道発声、シャント発声など)の習得や電気式人工喉頭(発声を補助する器具)を使用した代用音声のリハビリテーションを行います。 -
Q7 放射線治療後の食事の違和感(飲み込みにくい、つかえ感)は良くなりますか。
A7放射線治療によって、つかえ感が出るようになったり、強い痛みで食事が困難になったりすることがあります。症状がつらいときには、食べやすいものを食べられるときに食べるようにします。点滴で栄養を補うこともあります。治療終了後は、多くの場合2~3週間で徐々に良くなり、元の食事に近づけていきます。
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Q8 治療後には、どんなものを食べたらいいですか、また良くないですか。
A8基本的には好きなものを、少しずつ小さく刻んで食べて良いのですが、食べるときにはゆっくりよくかんで食べましょう。なるべくツルツルとしたもの(プリンなど)を食べるようにして、のどごしの悪いものやパサパサした食べ物(のりなど)は避けることがお勧めです。
手術後は、消化しにくいもの(こんにゃくなど)は避けると良いです。水分は最も誤嚥しやすいため、とろみをつけたり、吸い飲みなどを使用したりして飲むのがお勧めです。また、食べられない状態が続いたあとには、胃腸に負担がかかりにくい消化の良いもの(おかゆや茶わん蒸しなど)や、タンパク質の多いもの(温泉卵など)を、人肌程度の温度にして食べると良いでしょう。 -
Q9 食べられないとき、どうしたらいいですか。
A9食欲がないときには、無理に食べる必要はありません。好きなもの、食べやすいものを選んでください。全くご飯が食べられない場合でも、水分は取るようにしましょう。点滴で栄養を補うこともあります。治療後、3カ月程度でゆっくり元の食事量に戻すことを目指すとよいです。
ご家族や周りの方は、食べ物を勧めすぎないように配慮してください。食べられないことや体重が減ることについて不安がある場合には、遠慮せず医師、看護師、栄養士にご相談ください。 -
Q10 お酒を飲んだりたばこを吸ったりしてもいいですか。一生飲めないのですか。
A10食道がんが発生する主な要因のひとつは飲酒であるため、食道がんの治療中に飲酒することは勧められません。また食道がんの治療後に飲酒を継続すると、再び食道がんや他のがんを発生するリスクを高めるため禁酒の継続をお勧めします。
たばこについては、治療前に禁煙することが必要です。特に手術の場合は、肺炎などの術後合併症の予防のために、必ず禁煙してください。禁酒と同様に、治療後は禁煙を続けることをお勧めします。 -
Q11 将来の経過について、先生にどのように聞くのがいいですか。
A11がんについて予想される将来の経過や、限られた時間の長さを知りたいと思ったときは、まず担当医に知りたいという気持ちを伝えましょう。ただし、将来の経過や限られた時間の長さについては、担当医であっても正確に分からないこともあります。担当医と家族も交えて落ち着いて話ができる時間を調整してもらいましょう。
なかなか人には打ち明けられない気持ちがあるときには、心の専門家(精神腫瘍医、緩和ケア医、心理士など)に相談することもお勧めします。図1.担当医への話し方の例
「食道がん Q&A」参考文献
- 日本食道学会編.食道癌診療ガイドライン 2022年版.2022年,金原出版.
- 「コンセンサス癌治療」編集委員会編.新 癌についての質問に答える.2013年,へるす出版.
- 出江紳一編集企画.摂食嚥下障害リハビリテーションABC.2017年,全日本病院出版会.
- 日本がん看護学会監修.がん治療と食事 治療中の食べるよろこびを支える援助.2015年,医学書院.
- 日本放射線腫瘍学会編.患者さんと家族のための放射線治療Q&A 2015年版.金原出版.
- 日本放射線腫瘍学会編.放射線治療計画ガイドライン 2016年版.金原出版.
- 日本がんリハビリテーション研究会編.がんのリハビリテーションベストプラクティス.2015年,金原出版.
- 日本リハビリテーション医学会編.がんのリハビリテーション診療ガイドライン第2版.2019年,金原出版.
作成協力
この「食道がんQ&A」は、厚労科研(H29がん対策‐一般‐005)での患者・家族から尋ねられた質問や疑問についての調査結果を基に、日本食道学会と「がん情報サービス」にて共同作成しました。患者・家族から尋ねられた質問や疑問についての調査は、全国がんセンター協議会および全国がん診療拠点病院等のがん相談支援センターのご協力により実施しました。