1.舌について
舌は口腔内にある器官で、表面の粘膜と筋肉でできています。前方約2/3の舌体と、後方約1/3の舌根に分けられます(図1)。舌体は舌可動部とも呼ばれ、動かすことができます。
舌可動部の表面の粘膜には、味を感じる味蕾という小さな器官があります。また、舌は、食べ物をかみ砕いてうまく飲み込むことを助ける機能や、正しく発音する機能があります。
2.舌がんとは
口の中にできるがんを口腔がんといい、舌がんは口腔がんの中でも半数以上の割合を占めます。口腔がんは舌の他に、口腔底(舌と下側の歯ぐきの間)、歯肉(歯ぐき)、頬粘膜(頬の内側)、硬口蓋(上あご)、口唇(くちびる)などにもできます。
舌がんの多くは、舌の表面を覆う扁平上皮細胞から発生する扁平上皮がんです。がんが大きくなるにつれて、舌の深くまで広がっていきます。
転移する場合は、頸部(首)のリンパ節が多く、まれに肺に転移することもあります。
なお、舌根の部分にできたがんは、がんの分類上、舌がんではなく中咽頭がんに分類されます。中咽頭がんの詳しい情報は関連情報をご覧ください。
3.症状
舌がんは、舌の両脇の部分にできることが多く、舌の先端や中央部分ではあまりみられません。舌がんの患部は鏡を使って自分で見ることができますが、舌の裏側などの見えにくい場所にできることもあります。
自分でわかる症状としては、舌に固いしこりができる、ただれる、動かしにくい、しびれがある、などがあります。また、舌の粘膜が赤くなる紅板症や白くなる白板症、口内炎が治りにくいなどの症状がみられることもあります。がんが進行した場合は、痛みや出血が続いたり、口臭が強くなったりすることなどがあります。
気になる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科や歯科を受診して早期発見につとめましょう。詳しい検査が必要なときは、頭頸部外科や歯科口腔外科などの専門の医療機関の受診が必要になることもあります。
4.関連する疾患
舌がんと同時、または異なる時期に、頭頸部(喉頭・咽頭など)・上部消化管(食道・胃)・肺など、他の臓器にがんが見つかることがあります。舌がんの原因である喫煙や過度の飲酒は、これら他のがんの発生要因であると考えられているためです。このように、異なる臓器に発生するがんのことを重複がんといいます。
また、白板症と紅板症は、舌がんになる可能性が高いことが分かっているため、定期的に医師の診察を受けることが勧められています。