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全ページ表示でんし冊子舌がん(ぜつがん)

更新・確認日:2019年03月14日 [ 履歴 ]
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2019年03月14日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「口腔癌診療ガイドライン 2013年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」を基に作成し、掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期(ステージ)

舌がんの病期は、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決まります(表1)。
Tカテゴリー:がんの広がり
Nカテゴリー:リンパ節への転移の有無・大きさ・個数
Mカテゴリー:遠くの臓器への転移の有無
表1 舌がんの進展度(TNM分類)
表1 舌がんの進展度(TNM分類)の表
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)、
日本頭頸部癌学会ホームページ 頭頸部癌取扱い規約第6版 TNM 分類の一部訂正について(2018年12月12日)(http://www.jshnc.umin.ne.jp/pdf/teisei_20181225.pdf)より作成
表2 舌がんの病期分類
表2 舌がんの病期分類の表
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、患者さんの体の状態や年齢、希望なども含めて検討し、担当医と共に決めていきます。
舌がんの治療は手術が中心ですが、T1〜T3では放射線治療の1つである組織内照射を行う場合もあります。組織内照射の後にがんが残っているときには、手術を行います。手術後は、薬物療法と放射線治療を組み合わせる術後補助療法を行うことがあります。
図2は、舌がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図2 舌がんの治療の選択
図2 下舌がんの治療の選択の図
日本頭頸部癌学会編.「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成

●妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕(にんよう)性温存治療(妊娠できる可能性を保つ治療)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

舌がんに対する治療は、がんのある部分を手術で切除することが中心です。手術の方法は、切除する部位や大きさによって異なります。

1)手術の種類

(1)舌部分切除術

舌部分切除術は、舌の可動部の一部分を切除する手術です。早期の舌がんでがんが小さい場合には、舌部分切除術ですむことがあります。切除する範囲が小さいため、多くの場合食べたり飲み込んだりする機能や、発音する機能にはあまり影響を及ぼしません。
図3 舌部分切除術の切除範囲
図3 舌部分切除術の切除範囲の図

(2)舌半側切除術

舌半側切除術は、比較的大きながんの場合に、がんのある側の舌を半分切除する手術です。舌の可動部のみを切除する場合(舌可動部半側切除術)と、舌根も含めて切除する場合(舌半側切除術)があります。舌の機能を維持するために、再建手術を合わせて行うことがあります。
図4 舌半側切除術の切除範囲
図4 舌半側切除術の切除範囲の図

(3)舌(亜)全摘出術

舌の半分以上を切除することを舌亜全摘出術、舌のすべてを切除することを舌全摘出術といいます。がんが進行し、舌の半分以上に広がっている場合に行います。舌の可動部のみを切除する場合は舌可動部(亜)全摘出術、舌根を含めて切除する場合は舌(亜)全摘出術と呼ばれます。
舌を半分以上切除すると、舌の機能を維持することが難しいため、再建手術を行います。
図5 舌(亜)全摘出術の切除範囲
図5 舌(亜)全摘出術の切除範囲の図

2)頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)

頸部郭清術は、リンパ節への転移がある場合に、転移のあるリンパ節を周囲の組織ごと手術で取り除く方法です。リンパ節への転移がなくても、今後リンパ節転移が起こる危険性が高いと判断された場合に行うこともあります(予防的頸部郭清術)。周辺の血管や神経をできるだけ残すように手術しますが、がんの状態によってはそれらを残すことができないこともあり、取り除く範囲はがんの状態によって異なります。
早期の舌がんでは、予防的頸部郭清術が不要な場合もあり、予防的頸部郭清術の必要性を見極める目的で、術後の合併症などの危険性が比較的低い「センチネルリンパ節生検」を行うことがあります。

3)手術の合併症

手術の方法や頸部郭清術の範囲によって異なります。

(1)舌切除術の合併症

手術により舌を切除すると、ものを食べたり、飲み込んだり、発音したりする機能が低下することがあります。このような機能への影響は、手術後に舌がどのくらい残っているかによって異なります。
切除した範囲が小さい場合は、手術後も舌の基本的な機能が保たれますが、切除した範囲が大きい場合は、舌の機能低下が避けられません。特に、飲み込む機能が低下すると、飲食物が食道ではなく気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)を起こしやすくなります。舌の機能低下を最小限に抑えるためには、リハビリテーションのほか、手術で失った部分の舌の形を新たに作り直す「再建手術」も必要です。再建手術では、患者さん自身の太ももや、おなか、胸、腕などから採取した皮膚や脂肪、筋肉などの組織を移植し、残った舌ができるだけ機能するように再建します。

(2)頸部郭清術の合併症

頸部郭清術の際は、リンパ組織だけでなく周囲の血管や筋肉、神経を切除することがあります。このため、術後に、顔のむくみ、頸部のこわばり、肩があがりにくくなるといった運動障害などの合併症がみられます。
合併症を最小限に抑えるために、リハビリテーションを行います。

3.放射線治療

舌がんに対しては、放射線を放出する物質(放射性同位元素)を、管や針などを使って、がん組織やその周辺の組織に直接挿入して照射する「組織内照射」と、体の外からがんに放射線をあてる「外部照射」があります。
組織内照射は、一般的にT1・T2で腫瘍の厚さが1cmを超えない場合に行います。T3や腫瘍の厚さが1cmを超える場合でも行う場合があります。
外部照射は、組織内照射との併用や、術後補助療法として薬物療法との併用で行うことがあります。

●副作用について

放射線治療の副作用は、早期のもの(放射線治療中や治療後数カ月以内に生じるもの)と、それ以降に生じる晩期のものに分けられます。
早期の副作用には、唾液の出る量の減少、口腔(こうくう)乾燥、味覚障害、口腔粘膜炎による痛み、舌運動機能の低下、皮膚の炎症による痛みなどの症状があらわれ、しばしばものを食べたり、飲み込んだりする機能が低下します。また、倦怠(けんたい)感や体力低下が起こることもあります。
晩期の副作用としては、開口障害、唾液が出にくいことによる虫歯の増加、歯の欠損や下顎骨壊死(かがくこつえし)などがあらわれることがあります。放射線治療の影響は長期に及び、治療が終了して何年たってもまれに抜歯をきっかけに下顎骨の骨髄炎になることもあります。治療終了後も口の中をきれい保ち、歯科を受診する前には担当医にそのことを伝えましょう。

4.薬物療法

舌がんでは、手術でがんが取りきれなかった場合や、再発のリスクが高い場合に、「術後補助療法」を行うことがあります。
術後補助療法としては、シスプラチンと放射線治療を併用する治療方法が一般的です。

●シスプラチンの主な副作用

吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感、脱毛、発疹、ほてり、貧血、腎障害(尿量が減るなど)、難聴(聞こえづらい)など
用語集
再発 貧血 

5.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。

なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。

本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。
用語集
QOL 

6.リハビリテーション

食べ物をかむ・飲み込む・味わう機能や、思う通りに発声して話す機能が低下した場合は、リハビリテーションを行い、これらの機能をできるだけ回復させていきます。特に、食べ物を食べたり飲み込んだりする訓練は、術後に早期から自分の口で食べ物を摂取できるようにするために重要です。
舌がんのリハビリテーションは、担当医や看護師はもちろん、発声や摂食嚥下(せっしょくえんげ)などの問題を扱う「言語聴覚士」や、栄養状態の管理や食事形態の検討などを行う「管理栄養士」、口腔ケアやかみ合わせの調整、口腔内補助装置の作製を担う「歯科口腔外科医」や「歯科衛生士」といった多くの専門家の協力の下で行っていきます。

1)飲み込みのリハビリテーション

飲食物を食道へ、空気を気管へとふり分ける働きが低下すると、誤嚥(ごえん)による誤嚥性肺炎が生じる恐れがあります。これを防ぐためにも、手術で舌を切除した場合には、残っている舌の大きさや再建した舌の状態に合わせて、舌そのものの運動訓練を行ったり、舌を使わずに飲み込む動作を練習したりします。
代表的な飲み込む動作は、みそ汁などの熱いものをズルズルとすする、いわゆる「すすり飲み」のような方法です。再建した舌のように、自由に舌を動かすことができないときに適しています。
すすり飲みの方法がうまくできない場合は、いすの背もたれによりかかり、首を後ろに曲げて、重力を利用してのどに食べ物を送り込む方法を訓練します。

2)発声・発音のリハビリテーション

頬や唇、残っている舌などのうち、どの部位をどのように動かせば発したい音を出せるかについて、鏡などを用いながら練習します。また、唾液がうまく飲み込めないことによって、正しい発声・発音が難しくなっている場合には、すすり飲みで唾液をしっかり飲み込んでから、大きく口を動かして発声・発音する練習も必要です。

3)装置を使った飲み込みや発声・発音のリハビリテーション

手術によって残った舌の範囲が少ない場合には、舌接触補助床(PAP)という装置を使ってリハビリテーションを行うことがあります。この装置は、舌と上あごとの間の隙間を埋める入れ歯のようなもので、これをはめて嚥下や発音のリハビリテーションを行います。

4)頸部郭清術による症状のリハビリテーション

頸部郭清術を行った場合、手術後の顔のむくみ、頸部の変形・こわばり、肩があがりにくくなるなどの運動障害などが問題となります。理学療法士や作業療法士などの指導を受けながら、腕をあげたり、肩や首を回したりする運動を行い、退院後も継続することで不快感は軽減されます。

7.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●舌がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。
参加できる臨床試験があるかどうかについては、担当医に相談してみましょう。

8.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。
以下に、全国がんセンター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【舌がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表3 舌がんの病期別5年相対生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)
表3 舌がんの病期別5年相対生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)の表
全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2019年3月集計)による
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9.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

1)転移

初回治療後の早い時期から、頸部のリンパ節に転移することがあります。転移が見つかったときの治療は手術が中心ですが、手術が適さない場合は放射線治療や薬物療法を行うこともあります。

2)再発

初回の治療として手術を行っている場合は、再手術や放射線治療のどちらか、あるいは両方の治療をすることがあります。初回の治療で放射線治療を行っている場合は、主に、手術による切除を行います。また、再発時の治療方法として手術が適さない場合は、薬物療法を行うこともあります。
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