1.MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫について
1)MALTリンパ腫、リンパ形質性細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫とは
MALTリンパ腫、リンパ形質性細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫は、白血球の中のリンパ球のうち、Bリンパ球ががん化する病気です。進行の速さによって、「アグレッシブリンパ腫(週~月の単位で、速く進行するタイプ)」、「インドレントリンパ腫(年の単位で、ゆっくり進行するタイプ)」に分類されます。
血液細胞は造血幹細胞からつくられます
血液の中にある赤血球、白血球、血小板などを血液細胞といいます。血液細胞は、骨の中心部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞から増殖しながら分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)してつくられます。造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれて成長していきます。骨髄系幹細胞からは、赤血球、白血球、血小板などがつくられ、リンパ系幹細胞からは白血球の一種であるリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)がつくられます。リンパ球は、リンパ系幹細胞から成長した白血球の一種です。

2)症状
首や腋の下、足の付け根などリンパ節の多いところに、腫れやしこりがあらわれます。多くの場合、痛みを伴いません。また、発熱、体重減少、盗汗(大量の寝汗)といった症状があらわれることもあり、これらの症状を「B症状」といいます。
腫れやしこりが大きくなり、尿管(腎臓から膀胱への尿の通り道)や静脈、脊髄などの臓器が圧迫されると、水腎症(尿管がせき止められて、腎臓に尿がたまって広がった状態)、むくみ、麻痺などの症状があらわれ、緊急で治療が必要な場合もあります。体のかゆみや皮膚の発疹があらわれることがあります。
2.検査
悪性リンパ腫では、ほとんどの場合、診断や病型を確定するために生検を行います。生検では、腫れているリンパ節などの病変の組織をとって、顕微鏡などさまざまな方法で調べます。その他、病気の広がりを調べるためにCTやPET-CTなどの画像検査や、骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)などを行います。
骨髄検査は、皮膚を消毒し局所麻酔をした後に、一般的には腸骨(腰の骨)に針を刺して、骨髄組織を採る検査です。
がんの疑いがあるときや治療中・治療後に受けることの多い検査についての情報は、「がんの検査について」をご参照ください。
3.治療
MALTリンパ腫、リンパ形質性細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫に対する治療には、薬物療法、放射線治療、造血幹細胞移植などがあります。
薬物療法には、分子標的薬、細胞障害性抗がん薬を組み合わせた治療、分子標的薬と細胞障害性抗がん薬を組み合わせた治療などがあります。その他、病気の種類によっては飲み薬の分子標的薬が用いられることもあります。薬物療法は、起こる副作用の強さによって、入院して行うもの、全て通院で行うものなどさまざまなものがあります。
放射線治療は、がんができている部位とその周辺に対して直接行われる治療で、数週間繰り返して行うことが一般的です。
造血幹細胞移植は、通常の薬物療法や放射線治療だけでは治すことが難しい場合に行うことがあります。自分の血液のもとになる細胞を点滴で投与する自家造血幹細胞移植と、ドナーの血液のもとになる細胞を投与する同種造血幹細胞移植とがあります。
このほか、ゆっくり進行するタイプのB細胞リンパ腫では、リンパ腫による症状や体に問題が起こっていない場合は、治療を始めずに、注意深く経過観察することもあります。
なお、がんの診断から治療までの流れなどについては「8. 関連する情報」、手術・薬物療法・放射線治療などの主な治療法に関する情報は「診断と治療」をご覧ください。「妊よう性」には、妊娠や出産に関する情報を掲載しています。
1)患者向けの情報
治療の情報を含む患者向けのページを紹介しています。
2)医療従事者向けの情報
医療従事者向けの情報が掲載されています。
(1)血液・リンパのがんに関する診療ガイドライン
日本血液学会のホームページです。医療従事者向けの診療ガイドラインが掲載されています。
(2)その他のB細胞リンパ腫に関する診療ガイドライン
日本血液学会ホームページに掲載されている診療ガイドラインのMALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫に関するページです。ご覧いただくにあたっては、(1)のリンクの「日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版」の利用規約を必ずご確認ください。
辺縁帯リンパ腫
B細胞ががん化するインドレントリンパ腫(ゆっくりと進行するタイプのリンパ腫)です。なかでも、胃にできるMALTリンパ腫ではピロリ菌を除菌する治療に効果があることが多いです。その他、病変が限られた範囲にとどまっているMALTリンパ腫では、手術での切除や放射線治療を行います。進行したMALTリンパ腫では、分子標的薬や細胞障害性抗がん薬を使った治療を行います。症状や体に問題が起こっていない場合は、治療を始めずに、注意深く経過観察することもあります。
リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症
B細胞ががん化するインドレントリンパ腫(ゆっくりと進行するタイプのリンパ腫)で、リンパ腫の細胞がIgMという蛋白質を作ります。飲み薬の分子標的薬や、点滴の分子標的薬や細胞障害性抗がん薬を使った治療を行います。症状や体に問題が起こっていない場合、治療を始めずに、注意深く経過観察します。
マントル細胞リンパ腫
B細胞ががん化するアグレッシブリンパ腫(速く進行するタイプのリンパ腫)で、分子標的薬や細胞障害性抗がん薬を使った治療を行います。自家造血幹細胞移植や、再発後に飲み薬の分子標的薬による治療を行うことがあります。
バーキットリンパ腫
B細胞ががん化するアグレッシブリンパ腫(速く進行するタイプのリンパ腫)で、特に進行が速い特徴があります。分子標的薬や細胞障害性抗がん薬を使った強力な治療を入院して行います。リンパ腫が脳で再発をすることを防ぐための治療も併せて行います。
(3)小児のリンパ腫に関する診療ガイドライン
日本小児血液・がん学会のホームページです。小児白血病・リンパ腫の診療ガイドラインが掲載されています。
4.療養
「症状を知る/生活の工夫」には、がんの治療に伴う症状や自宅での生活の工夫などに関する情報を掲載しています。
特に、血液・リンパのがんは、がんそのものや薬物療法の影響で、健康な人には害のないような弱い細菌、真菌(カビ)やウイルスなどの病原体に感染しやすくなります。そのため、手洗いやうがいをしっかり行う、感染源を作らないためにけがをしないようにするなど、日常生活でも注意が必要です。
がんと診断されてからの仕事については「がんと仕事」、医療費や利用できる制度、相談窓口などのお金に関する情報は「がんとお金」をご参照ください。また、「がん相談支援センター」でも相談することができます。
「地域のがん情報」では、各都道府県等が発行しているがんに関する冊子やホームページへのリンクを掲載しています。併せてご活用ください。
5.臨床試験
国内で行われているMALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫の臨床試験が検索できます。
がんの臨床試験を探す チャットで検索
※「チャットで検索」では、がんの種類や都道府県などの調べたい言葉(キーワード)を入力して、検索することができます。
がんの臨床試験を探す カテゴリで検索 悪性リンパ腫
※「カテゴリで検索」では、広い範囲で検索します。そのため、お探しのがんの種類以外の検索結果が表示されることがあります。
臨床試験への参加を検討する際は、以下の点にご留意ください
- 臨床試験への参加を検討したい場合には、担当医にご相談ください。
- がんの種類や状態によっては、臨床試験が見つからないこともあります。また、見つかったとしても、必ず参加できるとは限りません。
6.患者数(がん統計)
日本全国で、悪性リンパ腫はMALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫も含め、1年間に約36,000例(人)が診断されます。
7.相談先・病院を探す
情報や病院などが見つからないときにはご相談ください。
8.関連する情報
がんの治療を始めるにあたって、参考となる情報です。
9.参考資料
- 厚生労働省ウェブサイト;がん登録 全国がん登録 罹患数・率 報告 平成31(令和元年)年報告;2022年(閲覧日2022年8月4日)https://www.mhlw.go.jp/
- 野村正満編.ハンドブック 白血病と言われたら 改訂第6版 下巻 血液の病気を知ろう.2020,認定特定非営利活動法人全国骨髄バンク推進連絡協議会.
作成協力
2022年08月23日 | 「5.臨床試験」の関連情報に、「患者本位の『がん情報サイト』」を追加しました。 |
2022年08月04日 | 「B細胞リンパ腫」を「濾胞性リンパ腫」、「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」、「MALTリンパ腫、リンパ形質性細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫など」の3ページに再構成し、掲載しました。 |
2022年07月05日 | 「8.関連する情報」に「AYA世代の人へ」へのリンクを追加しました。 |
2022年06月23日 | 「3.治療」の関連情報に、「厚生労働科学研究班 がん対策研究紹介サイト 正しいがん情報の提供 研究成果・資料 2.悪性リンパ腫に関する資料」を追加しました。 |
2021年11月11日 | 「3.治療」の関連情報に「日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版」のB細胞リンパ腫に関するページへのリンクと「日本小児血液・がん学会 小児白血病・リンパ腫の診療ガイドライン」へのリンクを追加しました。 |
2021年07月01日 | B細胞リンパ腫を掲載しました。 |