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全ページ表示がんの冊子でんし冊子甲状腺がん(こうじょうせんがん)

更新・確認日:2018年07月24日 [ 履歴 ]
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2018年07月24日 「甲状腺癌取扱い規約 第7版(2015年)」「甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2010年版」「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」を基に作成、掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期(ステージ)

甲状腺がんでは、がんの種類、進行の程度によって治療法が異なるため、組織型や病期を正確に把握することが重要です。
乳頭がん、濾胞(ろほう)がんの病期は、年齢によって異なります。55歳未満の場合には、遠くの臓器への転移の有無によってI期、II期に分類します(表1)。55歳以上の場合は、がんの大きさ、広がり、リンパ節や別の臓器への転移の有無によって分類します(表2)。
表1 乳頭がんおよび濾胞がんの病期(55歳未満)*
表1 乳頭がんおよび濾胞がん*の病期(55歳未満)の表
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成
表2 乳頭がんまたは濾胞がんの病期(55歳以上)*
表2 乳頭がんまたは濾胞がん*の病期(55歳以上)の表
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成
髄様(ずいよう)がんの病期は、年齢に関わらず、がんの大きさ、広がり、リンパ節や別の臓器への転移の有無によって分類します(表3)。
表3 髄様がんの病期
表3 髄様がんの病期の表
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成
未分化がんの病期は、IVA期、IVB期、IVC期に分類します(表4)。
表4 未分化がんの病期
表4 未分化がんの病期の表
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成
悪性リンパ腫の病期は、下記をご覧ください。

2)治療の選択

治療法は標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含めて検討し、担当医とともに決めていきます。
甲状腺がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法(内分泌療法[ホルモン療法]、分子標的療法、化学療法)などがあります。悪性度の高い未分化がんを除き、多くの場合、治療は手術が基本となります。
腫瘍の大きさが1cm以下(微小乳頭がん)で、高リスク因子(45歳以上、男性、リンパ節転移・甲状腺外の浸潤・遠隔転移)をもたない場合は、手術などの積極的な治療を行わずに、定期的な超音波検査により経過を観察していく場合があります。

(1)甲状腺分化がん(乳頭がん・濾胞がん・低分化がん)

基本的には手術が標準治療になります。手術後には、補助療法として放射性ヨード内用療法(アブレーション※1、放射性ヨード大量療法※2)を実施する場合があります。
(※1)アブレーション:放射線ヨード(I-131)カプセルをのみ、手術後に残った甲状腺組織を除去する放射線治療
(※2)放射性ヨード大量療法:遠隔転移(肺、骨など)に対して大量の放射性ヨードを投与する治療

(2)髄様がん

主に手術で甲状腺全摘術と、必要に応じて頸部郭清(けいぶかくせい)を行います。遺伝性の髄様がんなど高リスクの場合は、甲状腺全摘術と中央区域のリンパ節郭清を行います。頸部リンパ節転移がある場合には、外側区域のリンパ節郭清も行います。再発や転移がある場合には、分子標的薬を使用することがあります。

(3)未分化がん

IVA期、IVB期で手術が可能な場合には、術後に補助療法(放射線治療もしくは化学放射線療法)を行います。そのほかの場合には、集学的治療を行います。
図2は甲状腺がんの種類に応じた主な治療方法を、図3は乳頭がんの治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図2 甲状腺がんの治療の選択
図2 甲状腺がんの治療の選択の図
図3 乳頭がんの治療の選択
図3 乳頭がんの治療の選択の図
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成

●妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

1)手術の方法

手術には、甲状腺をすべて摘出する全摘術、甲状腺の約2/3以上を切除する亜全摘術、片側の甲状腺(右葉[うよう]あるいは左葉[さよう])を切除する葉切除術などがあります(図4)。葉切除術の際、必要な場合は峡部(きょうぶ)も一緒に切除します。これを葉峡部切除術といいます。手術の方法は、がんのある場所や、大きさ、転移の有無などによって決めます。
図4 甲状腺がんの主な手術の方法
図4 甲状腺がんの主な手術の方法の図
甲状腺をすべて摘出すると、甲状腺ホルモンが分泌されなくなります。甲状腺機能の温存と合併症を軽減するため、がんの状態によって、再発のリスクが低いと考えられる場合には、全摘術ではなく、葉切除術を行うことを検討します。
気管傍リンパ節(気管の側面にあるリンパ節)への転移が疑われる場合には、気管周囲郭清(かくせい)を行います。また、頸部(けいぶ)リンパ節への転移があれば、頸部リンパ節全体を切除する頸部郭清を行います。必要な場合には、縦隔の上寄り部分を切除する上縦隔郭清を行うこともあります。
手術の際には、反回神経(声帯の運動をつかさどる神経)をなるべく温存するようにしますが、まれに、反回神経と腫瘍をうまく切り離すことができずに、温存できない場合があります。その場合には、可能な限り反回神経の再建を試みます。声帯の運動は回復しなくても、萎縮を予防することで、音声改善と誤嚥(ごえん)予防につながります。
用語集
誤嚥 

2)術後合併症

手術後の合併症とは、手術後の好ましくない症状や状態のことをいいます。甲状腺がんの手術では、切除範囲が大きいほど、甲状腺機能の低下(甲状腺ホルモンの分泌不足)、副甲状腺機能の低下(血液中のカルシウムの不足)、反回神経の麻痺(声のかすれ)などの合併症のリスクが高くなります。

(1)甲状腺機能低下、副甲状腺機能低下

手術によって甲状腺の組織が減ると、甲状腺機能が低下し、甲状腺ホルモンがつくられなくなります。甲状腺機能の低下を放置すると、新陳代謝が悪くなり、だるさ、疲労感、食欲がないなどの症状があらわれることがあります。
甲状腺が半分以上残っていれば、多くの場合、治療を行う必要はありません。しかし、全摘術や亜全摘術などを行ったあとには、生涯にわたって、甲状腺ホルモン薬をのむことにより甲状腺ホルモンを補います。
また、甲状腺全摘術の際に、副甲状腺機能が温存できなかった場合は、血液中のカルシウム濃度が低下し、手足がしびれるなどの症状が出ることがあります(テタニー症状)。そのため、低カルシウム血症とならないように、ビタミンD製剤やカルシウム剤をのむ場合があります。
通常、甲状腺ホルモン薬、カルシウム補充薬(ビタミンD製剤やカルシウム剤)は1日1回のみます。副作用はほとんどありませんが、気になることがあるときには担当医へ相談しましょう。

(2)反回神経麻痺

手術などによって反回神経の麻痺が起こると、声がかすれる症状が出ます。反回神経の麻痺による一時的な声のかすれは、ほとんどの場合6カ月以内に症状が回復します。

3.放射線治療

放射線治療は、高エネルギーのX線やそのほかの放射線を用いてがん細胞が増えるのを抑え、がんを小さくする効果があります。放射線を体の中から照射する方法(内照射)と、体の外から照射する方法(外照射)があります。

1)内照射による治療(放射性ヨード内用療法)

甲状腺分化がん(乳頭がん、濾胞がん、低分化がん)では、甲状腺全摘術後に放射性ヨード内用療法を行うことがあります。

(1)放射性ヨード内用療法

一般的には、甲状腺全摘術によってがんをすべて取り除くことができたと判断された場合でも、わずかに甲状腺の組織が残っています。これを放っておくとがんが再発したり、転移したりすることがあります。そのため、全摘術後に残った甲状腺の組織や目に見えない微小な腫瘍の組織を、I-131と呼ばれる放射性ヨードのカプセルをのんで、内照射することによって除去します(アブレーション)。一方、遠隔転移など手術では切除できない病巣に対しては、I-131の用量が大きい放射性ヨード大量療法を行います。
放射性ヨード内用療法は、入院または外来(アブレーションの場合)で行います。放射性ヨードのカプセルをのむと、一定期間は汗、唾液、尿などの体液に放射性ヨードが排出されます。入院治療の場合は、カプセルをのんだ後3日間は周りの人の被ばくを避けるため、アイソトープ病室に入院します。外来治療を希望する場合は、家族に小児または妊婦が同居していないことや、できるだけ公共交通機関を使わずに帰宅できることなどの、一定の条件があります。担当医に相談しましょう。

(2)治療スケジュールと注意点

カプセルは治療日に1回のみます。その後、半年〜1年後に効果があらわれているかを検査で確認します。効果があらわれるまで、これを数回繰り返すことがあります。
カプセルをのむ日(治療日)の4週間前から、甲状腺ホルモン薬は中止します。また、治療日の2週間前から、ヨードを含む医薬品は中止し、ヨードを含む食事(海藻類、貝類、赤身の魚、寒天を使用した食品など)も制限する必要があります。カプセルをのんでから3日後までは、ヨードの摂取の制限が必要です。

●放射性ヨード内用療法の副作用

副作用は、急性期のもの(治療日から数日以内に生じるもの)とそれ以降に生じる後期のものに分けられます。急性期の副作用は、唾液腺の炎症(唾液腺炎)により食事時に痛む、口の中が乾燥する、塩味が低下するなどの味覚障害が起こることがあります。後期副作用には、唾液腺障害・涙腺障害による口の中や目の乾燥、不妊があげられます。
生殖腺の被ばくを減らすためには、水分を多めにとり、排尿の回数を増やすとよいといわれています。特に、カプセルをのんだ初日は水分を多めにとりましょう。
女性では、一時的な性周期の異常が見られることがあり、治療後1年間は避妊をすることが望ましいです。
男性では、治療後3〜6カ月以内に精子数の減少などがみられ、精巣機能の回復までには3年程度を要する場合があります。
病状が安定している場合には、先に子どもをもうけ、その後治療を行うこともあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、早めに医師に相談しましょう。

2)外照射による治療

未分化がんや悪性リンパ腫の治療では、外照射を行います。乳頭がんや濾胞がんでは、手術で腫瘍を取りきれない場合や、骨の転移による痛みなどの症状を緩和する目的で、外照射を行うことがあります。

●外照射の副作用

放射線を照射した部位に起こる口内炎、咽頭炎などの粘膜炎・皮膚炎、のどの痛み、のみ込みにくさなどがあります。このほかに、だるさ、吐き気・嘔吐(おうと)、食欲低下、白血球減少などがあります。副作用に応じて、症状を和らげる治療を行います。

4.薬物療法

1)内分泌療法(ホルモン補充療法/TSH抑制療法)

甲状腺がんの一部を切除する手術(葉切除など)のあとには、体が甲状腺ホルモンの不足を補うために、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を多く分泌します。TSHは、甲状腺を刺激してホルモンを分泌させる大切な役割を担っていますが、同時に甲状腺のがん細胞にも働きかけてしまうことが知られています。
そのため、乳頭がんや濾胞がんで、手術後に再発や転移の危険性が高いと予測される場合には、このTSHの分泌を抑えるために甲状腺ホルモン薬をのむことがあります。

2)分子標的療法

甲状腺分化がん(乳頭がん、濾胞がん、低分化がん)の転移・再発がんでは、手術が難しく、放射性ヨード内用療法に効果が期待できない場合に、分子標的薬を用いることがあります。髄様がんでは、手術が困難な転移・再発がんの場合に、分子標的薬を用いることがあります。
甲状腺分化がんではレンバチニブとソラフェニブを、髄様がんではバンデタニブ、レンバチニブ、ソラフェニブを用いることがあります。
未分化がんでは、手術が困難な場合にレンバチニブを用いることがあります※1
いずれも血管新生阻害剤といわれる薬剤で、腫瘍が大動脈に浸潤あるいは皮膚、食道、気管支に浸潤していると出血・瘻孔(ろうこう)形成のリスクがあり、服用のメリットよりもデメリットが大きいことがあります。
※1:甲状腺癌診療連携プログラムウェブサイト 適応症例 根治切除不能な分化型甲状腺癌に対する分子標的薬治療の適応患者選択の指針(2016年10月)

3)化学療法

悪性リンパ腫や、ほかの治療では効果がないと考えられるような未分化がんでは、複数の細胞障害性抗がん剤を組み合わせた治療を行うことがあります。
使用する薬剤は、ドキソルビシンやパクリタキセルなどですが、2018年7月現在、甲状腺がんでは保険適用外です。
乳頭がんや濾胞がんでは手術の効果があらわれやすいこともあり、化学療法はあまり行われませんが、放射性ヨード内用療法が無効な場合に検討することがあります。

5.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。
以下に、全国がんセンター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【甲状腺がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、そのほかの何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表5 甲状腺がんの病期別5年相対生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)
表5 甲状腺がんの病期別5年相対生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)の表
全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2018年7月集計)による
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6.リハビリテーション

治療の途中や終了後は、体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示のもと、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動を、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。
手術後早期に首のストレッチやマッサージを行うことで、首の周囲の違和感(のどのつまり、しめつけ感)、ひきつれ、肩こりなどの症状の緩和に役立つといわれています。また、発声の練習で、特に高い声を出す練習を行うこともあります。リハビリテーションの方法について、医師に確認しましょう。

7.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんに伴う症状や治療による副作用に対しての予防、症状を軽減させる治療のことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

8.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●甲状腺がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

9.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。
甲状腺がんでは、もともとがんがあった甲状腺やその周辺のリンパ節での局所再発が多く、再発時には手術、放射線治療(内照射、外照射)、薬物療法が検討されます。
肺や骨、肝臓などの遠隔臓器への転移はまれですが、遠隔転移の場合は、放射線治療(内照射、外照射)、薬物療法による治療を検討します。
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