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急性骨髄性白血病(きゅうせいこつずいせいはっけつびょう)

更新・確認日:2015年05月20日 [ 履歴 ]
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2015年05月20日 タブ形式に変更しました。「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」「造血器腫瘍取扱い規約2010年3月(第1版)」より内容を更新しました。
2006年10月01日 掲載しました。

1.急性骨髄性白血病とは

血液中には赤血球白血球血小板などの血液細胞があり、骨の内部にある骨髄(こつずい)で血液細胞のもととなる造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)から増殖しながら分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)してつくられます。造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれ、前者からは赤血球、血小板、白血球の一種である顆粒球(かりゅうきゅう)単球に分化し、後者からはBリンパ球、Tリンパ球、NK細胞などのリンパ球に分化します(図1)。

急性骨髄性白血病(AML:Acute Myeloid Leukemia)は、このような血液をつくる過程の未熟な血液細胞である骨髄芽球に何らかの遺伝子異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増殖することで発症します。
図1 造血幹細胞から血液細胞への分化
図1 造血幹細胞から血液細胞への分化の図

●急性前骨髄球性白血病(APL:Acute Promyelocytic Leukemia)とは

急性骨髄性白血病の一種で、前骨髄球ががん化する白血病です。15番染色体と17番染色体の転座[t(15;17)]と呼ばれる染色体異常が特徴で、この異常により、白血球が分化、成熟できなくなり、骨髄や末梢血中で前骨髄球が増加します。前骨髄球は、トロンボプラスチンという血液の凝固に関連する物質と似た性質を持っているため、他の急性白血病に比べ非常に出血を起こしやすい特徴があり、以前は最も治りにくい白血病の1つでした。しかし、血液の凝固を抑えるビタミンAの1つであるオールトランス型レチノイン酸(ATRA:All-trans Retinoic Acid)が用いられるようになり、治療成績が改善しました。

2.症状

急性骨髄性白血病は、病状の進行が速いため、急に症状が出現する場合が多く、早期の診断と速やかな治療の開始が重要です。

症状が起こる原因は大きく2つに分類され、骨髄で白血病細胞が増加することによって、造血機能が低下し、正常な血液細胞がつくれないために起こる症状と、白血病細胞が臓器に浸潤(しんじゅん)することで起こる症状があります(表1)。
表1 急性骨髄性白血病の主な症状
原因 主な症状
造血機能の障害 赤血球減少 (貧血)息切れ、動悸、倦怠感など
白血球減少 (感染)発熱など
血小板減少 (出血)あざ、赤い点状の出血斑、鼻血、歯ぐきからの出血など
白血病細胞が臓器に浸潤 肝臓や脾臓の腫れ お腹が張る、腹部の腫瘤・痛み
歯肉腫脹 歯ぐきの腫れ・痛み
骨痛 腰痛、関節痛
髄膜への浸潤 頭痛

3.原因

染色体や遺伝子の異常が原因の急性前骨髄球性白血病や、過去に化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を受けた後に発症する二次性白血病以外は、明らかな原因は不明です。放射線や化学物質などが要因になるといわれていますが、まだ十分に解明されていません。発症頻度は10万人に2~3人で、発症率は年齢が高くなるにつれて増加します。
【参考文献】
  1. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版;金原出版
  2. 日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版;金原出版
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2006年10月01日 掲載しました。

1.がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

がんの疑い

  「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく受診しましょう。
   

受診

  受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
   

検査・診断

  検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。
   

治療法の
選択

  がんや体の状態に合わせて、担当医は治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。
   

治療

  治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、小さなことでも構いませんので、気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。よい解決方法が見つかるかもしれません。
   

経過観察

  治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

2.受診と相談の勧め

がんという病気は、患者さんごとに症状のあらわれ方が異なります。また、症状がなく検診でがんの疑いがあると言われることもあります。何か気にかかる症状があるときや、詳しい検査が必要と言われたときには、医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご自身で判断したり、何か見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、問題がないことを確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでは、がんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしていますので、お気軽に訪ねてみてください。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で相談できます。対面だけでなく、電話などでも相談することができますので、わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

詳しくは、「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」をご覧ください。

お近くのがん相談支援センターは「がん相談支援センターを探す」から検索することができます。

3.がんと言われたとき

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。

病気がどのくらい進んでいるのか、果たして治るのか、治療費はどれくらいかかるのか、家族に負担や心配をかけたくない…、人それぞれ悩みは尽きません。気持ちが落ち込んでしまうのも当然です。しかし、あまり思い詰めてしまっては、心にも体にもよくありません。

この一大事を乗りきるためには、がんと向き合い、現実的かつ具体的に考えて行動していく必要があります。そこで、まずは次の2つを心がけてみませんか。

1)情報を集めましょう

まず、自分の病気についてよく知ることです。担当医は最大の情報源です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。また、あなたが集めた情報が正しいかどうかを、あなたの担当医に確認することも大切です。

「知識は力なり」。正しい知識は、あなたの考えをまとめるときに役に立ちます。

2)病気に対する心構えを決めましょう

大きな病気になると、積極的に治療に向き合う人、治るという固い信念を持って臨む人、なるようにしかならないと受け止める人などいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためには、あなたが自分の病気のことをよく知っていることが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医からよく説明を受け、いつでも率直に話し合い、その都度十分に納得した上で、病気に向き合うことに尽きるでしょう。

情報不足は、不安と悲観的な想像を生み出すばかりです。あなたが自分の病状について理解した上で治療に取り組みたいと考えていることを、担当医や家族に伝えるようにしましょう。

お互いが率直に話し合うことが、お互いの信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。
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2015年05月20日 タブ形式に変更しました。「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」「造血器腫瘍取扱い規約2010年3月(第1版)」より内容を更新しました。
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1.検査

急性骨髄性白血病の診断と治療方針を決めるためには、さまざまな検査が行われます。検査は白血病細胞を確認するだけでなく、病型分類の決定や、発症に伴うさまざまな異常や合併症の有無を確認する目的もあります。

代表的な検査は血液検査と骨髄検査で、治療開始後も定期的に検査を行い、治療効果を確認します。

1)血液検査

血液中で増加している細胞を顕微鏡で詳しく調べます。急性骨髄性白血病の特徴として、白血球の数は増加から減少までさまざまですが、白血球の一種である好中球は減少しています。幼若な白血病細胞と残存する成熟細胞のみが見られ、中間の成熟細胞が見られない白血病裂孔(れっこう)という現象があらわれます。

2)骨髄検査

骨髄穿刺(こつずいせんし)や骨髄生検は、診断と病型分類のために重要な検査です。採取した骨髄液や骨髄組織から染色体や遺伝子、血液細胞の表面に発現している抗原(細胞表面マーカー)などを解析します。これらの解析は、治療効果を判定する上でも重要なため、治療中もたびたび検査が実施されます。

骨髄穿刺は皮膚を消毒し、局所麻酔の後に腸骨(腰の骨)または胸骨(胸の中央にある骨)に細い針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引して採取します(図2)。この骨髄液中に含まれる細胞の形を顕微鏡で調べます。骨髄液を吸引する際に痛みがあり、この痛みは局所麻酔では抑えられませんが、通常は一時的な痛みにとどまります。骨髄生検では、腸骨にやや太い針を刺し、骨髄組織を採取します。
図2 骨髄穿刺の様子
図2 骨髄穿刺の様子の図
【細胞表面マーカーについて】
白血球などの血液細胞の表面には、細胞を特徴づける分子(抗原)が存在します。この分子は細胞表面マーカーで、国際的に統一された番号で整理したものがCD(Cluster of Differentiation)分類と呼ばれます。白血病細胞の表面に特異的に発現している抗原を調べることで、診断や治療効果の判定が可能で、急性骨髄性白血病の場合は、白血病細胞の多くにCD33抗原が発現しています。
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3)染色体検査・遺伝子検査

染色体検査遺伝子検査は染色体の構造や数の異常を調べることで、診断や病型分類、治療方針や治療効果の判定、予後の判定などが可能で、重要な検査です。急性骨髄性白血病の場合は、病型に関連する特異的な染色体異常があり、その異常に伴う遺伝子異常もみられます。

4)腹部超音波検査・腹部CT検査

臓器の異常や合併症の有無の確認のための検査として、腹部の超音波検査(エコー)CT検査を行うことがあります。

2.病型分類

がんの進行の程度を判定する基準として、病期(Stage:ステージ)という言葉が用いられますが、急性骨髄性白血病の場合は発症時に白血病細胞が血液を介して全身に広がっている状態のため、病期分類はありません。治療方針を決定する上で非常に重要となる分類は、病型分類と呼ばれ、治療成績の蓄積や比較のためには統一した分類で診断することが重要なため、国際的にFAB分類とWHO分類の2種類が用いられています。現在は主に、WHO分類が主流となりつつあります。

1)FAB分類

骨髄穿刺の検査で骨髄細胞を採取し、どのタイプの細胞が白血病化したかを顕微鏡で観察し、細かく分類した細胞系統・形態による分類です。1970年代に提唱され、WHO分類に該当しない細分類にも用いられます。骨髄(こつずい)の中の芽球の比率が30%以上で急性白血病と定義され、M0からM7の8つの病型に分類されます。
各病型の特徴については、下記の[FAB分類について、さらに詳しく]の表2をご参照ください。
【FAB分類について、さらに詳しく】
表2 急性骨髄性白血病のFAB分類
M0 急性未分化型骨髄性白血病
芽球のペルオキシダーゼ陽性率は3%未満ですが、
細胞質内免疫ペルオキシダーゼが陽性です
M1 急性未分化型骨髄芽球性白血病
未熟な骨髄芽球。ペルオキシダーゼ陽性率は3%以上です
M2 急性分化型骨髄芽球性白血病
成熟傾向のある骨髄芽球。ペルオキシダーゼ陽性率は3%以上。
染色体転座でt(8;21)を持つものが多く、比較的予後は良好です
M3 急性前骨髄球性白血病
骨髄芽球から少し分化した前骨髄球が増加しています。
血小板が激減して、出血傾向を示す「DIC:播種性血管内凝固症候群
(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)」を合併しやすいです。
染色体転座でt(15;17)を持つものが多く、
レチノイン酸による分化誘導療法が有効で、予後は良好です
M4 急性骨髄単球性白血病
顆粒球系と単球系の2系統の血液細胞が、がん化しているものです。
inv(16)の染色体異常を持つものは、予後が良好です
M5 急性単球性白血病
単球系の幼弱な細胞が、がん化しているものです。
ペルオキシダーゼ染色だけでなく、エステラーゼ染色でも陽性を示します
M6 赤白血病
赤血球をつくる造血幹細胞が、がん化したものです
M7 急性巨核芽球性白血病
血小板をつくる造血幹細胞が、がん化したものです
日本血液学会、日本リンパ網内系学会編「造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版)」(金原出版)より作成
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2)WHO分類

特徴的な染色体・遺伝子変異を有する病型が存在し、治療の予後にも影響を与えることなど臨床的な重要性が研究の進歩に伴い明らかとなり、2000年代に提唱されました。染色体異常、遺伝子変異などの病因的な因子を重視しています。骨髄中の芽球の比率が20%以上で急性白血病と定義されます。
各病型の特徴については、下記の[WHO分類について、さらに詳しく]の表3をご参照ください。
【WHO分類について、さらに詳しく】
表3 急性骨髄性白血病のWHO分類
1) 特異的染色体異常を有する急性骨髄性白血病
(a) t(8;21) (q22;q22)、または RUNX1-RUNX1T1 を有する
急性骨髄性白血病(FAB分類のM2の一部に相当します)
(b) inv(16) (p13.1q22)、t(16;16) (p13.1;q22)、CBFB-MYH11 を有する
急性骨髄性白血病(FAB分類のM4の一部に相当します)
(c) t(15;17) (q22;q12)、PML-RARA を有する
急性前骨髄球性白血病(FAB分類のM3に相当します)
(d) t(9;11) (p22;q23)、MLLT3-MLL を有する急性骨髄性白血病
(e) t(6;9) (p23;q34)、DEK-NUP214 を有する急性骨髄性白血病
(f) inv(3) (q21q26.2) またはt(3;3) (q21;q26.2)、RPN1-EVI1 を有する急性骨髄性白血病
(g) t(1;22) (p13;q13)、RBM15-MKL1 を有する急性骨髄性白血病(巨核芽球性)
(h) NPM1 遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病
(i) CEBPA 遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病
2) 骨髄異形成関連の変化を有する急性骨髄性白血病
(a) 骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病
(b) 骨髄異形成症候群に関連する染色体異常を伴う急性骨髄性白血病
(c) 50%以上の細胞に多血系異形成を伴う急性骨髄性白血病
3) 治療に関連した急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群
4) 上記以外の急性骨髄性白血病
(a) 急性骨髄性白血病最未分化型(FAB分類のM0に相当します)
(b) 急性骨髄性白血病未分化型(FAB分類のM1に相当します)
(c) 急性骨髄性白血病分化型(FAB分類のM2に相当します)
(d) 急性骨髄単球性白血病(FAB分類のM4に相当します)
(e) 急性単球性白血病および急性単芽球性白血病(FAB分類のM5に相当します)
(f) 急性赤白血病(FAB分類のM6に相当します)
(g) 急性巨核芽球性白血病:遺伝子異常の場合は1)となる
(FAB分類のM7に相当します)
(h) 急性好塩基性白血病
(i) 骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症
5) 骨髄肉腫
6) ダウン症候群に関連した骨髄増殖症
(a) 一過性異常骨髄症
(b) ダウン症候群関連骨髄性白血病
7) 芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍
*染色体異常の記号の説明
  ・t : 転座(translocation) 2本の染色体がそれぞれ切断され、断片が交換されること
  ・inv : 逆位(inversion) 同じ染色体が2カ所切断され、内側の染色体の断片が逆転すること
  ・q : 染色体の長い部分(長腕)
  ・p : 染色体の短い部分(短腕)
日本血液学会、日本リンパ網内系学会編「造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版)」(金原出版)より作成
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【参考文献】
  1. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版;金原出版
  2. 日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版;金原出版
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1.治療の選択

急性骨髄性白血病はさまざまな病型分類がありますが、大別すると急性骨髄性白血病と急性前骨髄球性白血病で治療法が異なります(図3)。また、全身の状態、年齢、合併する他の病気の有無などに加え、患者さんの希望を考慮しながら、治療法が決定されます。
図3 治療の流れ
図3 治療の流れの図
「詳しい治療方法は」をクリックすると、各治療のページに移動します。

2.治療効果の判定

血液のがんでは、症状や検査結果でがん細胞の存在を確認できなくなった状態を「寛解(かんかい)」といいます。寛解となっても、体内にはがん細胞が残っており、治療を継続しなければ再発するため、完治(完全に治った状態)とは異なります。この寛解の状態を確認することが、治療効果の判定となり、下記のように評価されます(図4)。

1)完全寛解

骨髄(こつずい)の中の白血病細胞がほとんど減少し、血液をつくる機能が回復した状態です。体内には、白血病細胞がまだ残っている可能性があります。

2)血液学的完全寛解

骨髄中の白血病細胞が顕微鏡検査では目で見た限りはなくなり、同時に血液検査で白血球赤血球血小板の数が正常な範囲内にある状態です。体内には、白血病細胞がまだ残っている可能性があります。

3)分子学的完全寛解

白血病細胞が持つ染色体異常(遺伝子変異)を目安にして、より精密に検査しても白血病細胞が見つからない状態です。この状態でもなお、体内には白血病細胞が残っている可能性があります。
図4 治療効果の判定
図4 治療効果の判定の図

3.自分に合った治療法を考える

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではありません。自分の生活や人生において何を大切にするのか、自分で考えることが大切です。

まずは、病状を詳しく把握しましょう。わからないことは、まず担当医に質問してみましょう。診断を聞くときには、病型分類を確認しましょう。治療法は、病型や病態によって異なります。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。

担当医と話すときの助けとして「わたしの療養手帳 自分に合った治療法は?」もご参照ください。「患者必携 わたしの療養手帳」はさまざまな場合で必要なことを書きとめることができる手帳になっています。印刷もできますので、自分で記入してみて、わからないことや聞いてみたいことを整理してみましょう。

診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。最初にかかった担当医に何でも相談でき、治療方針に納得できれば言うことはありません。

担当医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。セカンドオピニオンを聞きたいときは、担当医に話してみましょう。多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解していますので、快く資料を作ってくれるはずです。

セカンドオピニオンについては「セカンドオピニオン」もご参照ください。

担当医以外でも、看護師など他の医療スタッフやがん相談支援センターのスタッフに相談することができます。あなたの抱えている問題点を整理し、一緒に考えてくれます。

がん相談支援センターについては「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」もご参照ください。

【参考文献】
  1. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版;金原出版
  2. 日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版;金原出版
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更新・確認日:2019年07月24日 [ 履歴 ]
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2019年07月24日 用語集へのリンクを追加しました。
2017年08月14日 6.病型別の治療法に関連情報「急性骨髄性白血病 化学療法(シタラビン大量療法)基本パス」を掲載しました。
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2006年10月01日 掲載しました。

1.化学療法(抗がん剤治療)

中心となる治療法は化学療法(抗がん剤治療)で、大きく2つの過程で行われます。初期治療として、抗がん剤をいくつか併用して行う、寛解導入療法(かんかいどうにゅうりょうほう)と、その後の完全寛解を維持し、白血病細胞をゼロに近づけるための寛解後療法(かんかいごりょうほう)です。病状によっては、維持療法を行う場合もあります。

病型や病態によっては、脳や脊髄(せきずい)に白血病細胞が浸潤(しんじゅん)することがあります。脳や脊髄の中枢神経には、点滴や内服による投与では抗がん剤が届きにくいため、背中から細い針や管(くだ)を挿入して中枢神経系に直接抗がん剤を投与する「髄腔内注射(ずいくうないちゅうしゃ)」を行います。
【副作用と対策について】
多くの場合、大量の抗がん剤を投与するため、開始当日から治療後数カ月にわたり、さまざまな副作用が起こりますが、予測される副作用に対して、可能な限り対策を立てて治療を行います。あらかじめ予想される状態について知っておいたり予防や準備をしておくと、落ち着いて対応でき、実際に副作用が起きたときにも早く適切に対処できるようになります。

治療前は、白血病細胞がふえている一方で、正常な血液細胞は圧迫されて減少しています。白血病細胞を減らす目的で抗がん剤治療を行いますが、減少した正常な血液細胞もダメージを受けて、一時的にはさらに減少します。一般的な副作用は、骨髄抑制や吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、口内炎、脱毛、発熱などです。

1)骨髄抑制

使用される薬の種類によっても異なり、個人差もありますが、抗がん剤治療後の7~14日ごろに、赤血球血小板白血球(特に感染を防御する重要な役割を持つ好中球)が減少します。もともとの病気による正常な白血球数の減少や、リンパ球の機能異常などもあり、非常に感染症を起こしやすい状態であり、さらに細菌やカビなどのさまざまな菌やウイルスなどの病原体と戦う白血球が減るため、肺炎や敗血症などの感染症を起こすことがあります。

2)対策

時間がたつにつれて、白血球の数は自然に回復しますが、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)という白血球をふやす薬を使うこともあります。感染経路を遮断(しゃだん)するためにも、手洗い・うがい、清潔を保つことを心がけます。また、感染症状について知り、早めに対処することで重篤な感染症を防止することができます。貧血や血小板減少に対しては、輸血を行います。
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2.分化誘導療法

急性前骨髄球性白血病では、ビタミンAの誘導体であるオールトランス型レチノイン酸(ATRA:All-trans Retinoic Acid)とタミバロテンが使用されます。他の抗がん剤が白血病細胞を直接破壊するのに対し、ATRA、タミバロテンは白血病細胞を分化・成熟させることによって、正常な白血球と同様な経過をたどって死滅させます。

特徴的な副作用は「APL分化症候群」で、発熱、息切れ、息苦しさ、胸苦しさ、咳、倦怠(けんたい)感などが出現する場合があります。この症状が悪化すると、致命的な合併症となるため注意が必要ですが、抗がん剤との併用などにより、その合併症の減少が図られるようになっています。

3.分子標的治療

CD33と呼ばれる抗原が陽性の再発または難治性の急性骨髄性白血病の場合は、分子標的薬のゲムツズマブオゾガマイシン(商品名:マイロターグ)を用いたGO療法が行われます。ゲムツズマブオゾガマイシンとはCD33抗原に対する抗体に抗がん剤である「カリケアマイシン」を結合させた薬剤です。

ゲムツズマブオゾガマイシンの抗体部分は、急性骨髄性白血病細胞の表面にあるCD33抗原に結合します。この薬が白血病細胞に取り込まれることで殺細胞効果があらわれます。ゲムツズマブオゾガマイシンが有効なタイプのCD33を持つ急性骨髄性白血病かどうかは、治療前に骨髄検査あるいは血液検査で、細胞表面マーカー検査をしておきます。
【副作用について】
一般的な副作用としては、発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振、骨髄抑制、肝機能障害です。倦怠感、頭痛、口内炎、発疹、かゆみ、めまいなどがみられる場合もあります。特徴的な副作用としては、肝臓に障害が起こりやすく、静脈閉塞性肝疾患(VOD)などの重い副作用が出現する場合があります。静脈閉塞性肝疾患とは、肝臓の小さな血管が血栓でふさがれてしまい、機能が低下し、黄疸(おうだん)や肝腫大、腹水などの症状が出現することです。重症化すると腎臓や心臓などの重要な臓器にも障害が起こるため、血液検査などで注意深く観察します。
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4.造血幹細胞移植

造血幹細胞移植が適応するかどうかは、染色体異常、病型、予後因子などによって決定されます。化学療法と比べて、この治療によって質の高いクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を得られると考えられる場合や予後の改善が期待できるとき、再発時などに治療の選択肢として検討されます。
【造血幹細胞移植について、さらに詳しく】

1)骨髄移植

化学療法、または放射線治療の組み合わせによって、骨髄(こつずい)を中心とする体の中の白血病細胞と正常な血液細胞を破壊し、白血球の型(HLA)が一致したドナーから採取した正常な骨髄を、静脈から輸血のように体内に入れ、破壊された造血幹細胞と入れ替えます。

2)末梢血(まっしょうけつ)幹細胞移植

白血球をふやす薬(G-CSF)を数日間ドナーの皮下に注射し、骨髄から全身の血管内に流れ出てきた造血幹細胞を採取し移植します。この方法では、G-CSFの投与に伴う副作用はありますが、全身麻酔による骨髄液採取は不要になるので、ドナーの負担が減る可能性があります。

3)臍帯血(さいたいけつ)移植

臍(へそ)の緒の中に存在する造血幹細胞を、骨髄のかわりに用います。臍帯血バンクには、さまざまな HLA型に対応できるよう臍帯血が保管されています。

4)骨髄非破壊的移植(ミニ移植)

近年では、必ずしも大量の抗がん剤治療や全身を照射する放射線治療をしなくても、免疫抑制作用の強い薬を用いることによって、患者さんとドナーの造血幹細胞を入れ替えることが可能になりつつあります。60歳代の高齢者の方や、合併症のある患者さんへの移植が行われるようになってきました。通常の骨髄あるいは、末梢血移植に比べて再発率は高いものの移植合併症が明らかに少ないことがわかってきました。
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5.支持療法

支持療法とは、白血病細胞そのものを減少や死滅させる治療ではありませんが、症状や合併症、治療に伴う副作用を予防、軽減させる治療で、血液のがんの治療を効果的に進めていく上で重要になります。

具体的には、治療に伴う白血球減少に備え、感染しやすい場所(口の中、気道、肛門周囲など)の治療やケア、白血球減少の状況での感染症の予防や治療のための抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌(カビ)薬の投与、貧血や血小板の減少に対する輸血、その他血液製剤や吐き気止めの使用などです。長期にわたることの多い治療の間の精神的な支援を含めて、幅広い内容の支持療法が行われます。

6.病型別の治療法

治療の基本は、白血病細胞を根絶し(Total Cell Kill)、治癒(ちゆ)を目標とした強力な化学療法を繰り返し行います。寛解導入療法は白血病細胞の根絶と正常な造血機能の回復を目的として行われ、寛解後療法は、残存している白血病細胞の根絶と再発・再燃の予防を目的として、治癒を目指します。

1)急性骨髄性白血病の治療:若年者

若年者(65歳以下、小児を除く)の場合はまず、複数の薬剤を使用した化学療法を行い寛解(かんかい)を目指します。寛解後の治療は、予後に関連する因子の1つである染色体異常などから予後分類を行い、その後の治療方針を決定します。
【治療について、さらに詳しく】
図5は、治療の流れを大まかに示した図です。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図5 急性骨髄性白血病(若年者)の治療
図5 急性骨髄性白血病(若年者)の治療の図
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成

(1)寛解導入療法

寛解導入療法の中心となる抗がん剤はシタラビンで、アントラサイクリン系の薬剤との組み合わせで使用されることが標準治療です。下記の薬剤の組み合わせで投与を1コース行い、寛解の場合は寛解後療法を行います。寛解にならないときは、再度同じ治療を行い、2コース目でも寛解が得られない場合は、大量または中等量のシタラビンを含む救援療法が行われます。

(2)寛解後療法

寛解後療法は、地固め療法と呼ばれる化学療法を引き続き行い、染色体検査によって予後因子を決定し、その後の治療方針が決定されます。予後良好群に分類された場合はシタラビン大量療法を3コース以上行います。

(3)投与スケジュールについて

下記は、寛解導入療法、寛解後療法で使用される抗がん剤の投与スケジュールです。抗がん剤の量や治療の日程は、患者さんの状態や副作用などによって変更される場合があります。詳しくは担当医へご確認ください。
1. 寛解導入療法
・イダルビシン+シタラビン療法
イダルビシンとシタラビンの2種類の抗がん剤を使用します。通常、7日間をひと区切り(1コース)で行い、イダルビシンは3日目まで、シタラビンは7日目まで毎日点滴で投与します。
薬剤 投与方法 投与日
イダルビシン(IDR) 点滴 1~3日目
シタラビン(AraC) 点滴 1~7日目
・ダウノルビシン+シタラビン療法
ダウノルビシンとシタラビンの2種類の抗がん剤を使用します。通常、7日間をひと区切り(1コース)で行い、ダウノルビシンは5日目まで、シタラビンは7日目まで毎日点滴で投与します。
薬剤 投与方法 投与日
ダウノルビシン(DNR) 点滴 1~5日目
シタラビン(AraC) 点滴 1~7日目
2. 寛解後療法
・シタラビン大量療法
シタラビンを5日間点滴で投与します。通常、5日間がひと区切り(1コース)ですが2日目と4日目が省かれる場合もあります。
薬剤 投与方法 投与日
シタラビン(AraC) 点滴 1~5日目

シタラビン大量療法についての、入院中に行われる検査・治療・食事など療養に関する計画表(クリニカルパス)は「急性骨髄性白血病 化学療法(シタラビン大量療法)基本パス」もご参照ください。
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2)急性骨髄性白血病の治療:高齢者

高齢者(65歳以上)の場合は、全身状態や合併症の有無などを考慮して、強力な化学療法が可能か判定し、その後予後分類にそって、治療方針が選択されます。
【治療について、さらに詳しく】
図6は、治療の流れを大まかに示した図です。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図6 急性骨髄性白血病(高齢者)の治療
図6 急性骨髄性白血病(高齢者)の治療の図
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成

(1)寛解導入療法

高齢者で標準治療が可能な場合は、若年者と同様に寛解導入療法を行います。中心となる抗がん剤はシタラビンですが、シタラビンのかわりに、シタラビンにゆっくりと変換されるエノシタビンを使用することもあります。標準治療の実施は困難だが、治療は可能な場合は、低用量のシタラビンの投与などが行われます。

(2)寛解後療法

高齢者の場合は、標準的な寛解後療法は確立されていませんが、アントラサイクリン系の薬剤を含んだ多剤併用療法が選択される場合もあります。

(3)投与スケジュールについて

下記は、寛解導入療法で使用される抗がん剤の投与スケジュールです。抗がん剤の量や治療の日程は、患者さんの状態や副作用などによって変更される場合があります。詳しくは担当医へご確認ください。
1. 寛解導入療法
・ダウノルビシン+シタラビン療法
ダウノルビシンとシタラビンの2種類の抗がん剤を使用します。通常、7日間をひと区切り(1コース)で行い、ダウノルビシンは3日目まで、シタラビンは7日目まで毎日点滴で投与します。薬剤の投与量は、全身状態などによって減量する場合があります。
・ダウノルビシン+シタラビン療法
ダウノルビシンとシタラビンの2種類の抗がん剤を使用します。通常、7日間をひと区切り(1コース)で行い、ダウノルビシンは3日目まで、シタラビンは7日目まで毎日点滴で投与します。薬剤の投与量は、全身状態などによって減量する場合があります。
薬剤 投与方法 投与日
ダウノルビシン(DNR) 点滴 1~3日目
シタラビン(AraC) 点滴 1~7日目
・ダウノルビシン+エノシタビン療法
ダウノルビシンとエノシタビンの2種類の抗がん剤を使用します。通常、8日間をひと区切り(1コース)で行い、ダウノルビシンは3日目まで、エノシタビンは8日目まで毎日点滴で投与します。薬剤の投与量は、全身状態などによって減量する場合があります。
薬剤 投与方法 投与日
ダウノルビシン(DNR) 点滴 1~3日目
エノシタビン(BHAC) 点滴 1~8日目
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3)急性骨髄性白血病の予後因子

急性骨髄性白血病は、他のがんと比較すると抗がん剤治療の効果が高く、治癒が期待できます。ただし、これまでの治療成績より、治療効果が低いさまざまな条件が明らかになっています。これらの条件を予後因子と呼び、予後因子から「予後良好群」「予後中間群」「予後不良群」の3つに分類し、寛解後導入療法の方針を決定します。
【予後因子について、さらに詳しく】
表4 急性骨髄性白血病の予後因子について
項目 予後良好となる因子 予後不良となる因子
年齢 50歳以下 60歳以上
全身状態
(PS)
PS2以下

日常生活の問題がない

歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない
PS3以上

限られた自分の身の回りのことしかできない

動くことができず、自分の身の回りのことはまったくできない
発症形式 初発 二次性
染色体異常** t(8;21) (q22;q22)
inv(16) (p13.1q22)
t(16;16) (p13.1;q22)
t(15;17) (q22;q21)
3q異常[inv(3) (q21q26.2)、
t(3;3) (q21;q26.2)など]
5番・7番染色体の欠失
または長腕欠失
t(6;9) (p23;q34)複雑核型
遺伝子異常 NPM1 変異
CEBPA 変異
FLT3-ITD 変異
寛解までの
治療回数
1回 2回以上
*PS(Performance Status):パフォーマンスステータス。全身状態の指標の1つで、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。
**染色体異常の記号の説明
  ・t : 転座(translocation) 2本の染色体がそれぞれ切断され、断片が交換されること
  ・inv : 逆位(inversion) 同じ染色体が2カ所切断され、内側の染色体の断片が逆転すること
  ・q : 染色体の長い部分(長腕)
  ・p : 染色体の短い部分(短腕)
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成
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4)急性前骨髄球性白血病の治療

急性前骨髄球性白血病は、ビタミンAの誘導体であるオールトランス型レチノイン酸(ATRA:All-trans Retinoic Acid)を化学療法と併用して、寛解導入療法を行います。ATRAは白血病細胞の分化や成熟を誘導することによって、高い治療効果が期待できる治療薬です。寛解導入療法だけでは寛解を維持することは難しいため、寛解後療法を行います。病状によっては、ATRAを中心とした維持療法が行われる場合もあります。抗がん剤の治療だけでは再発する可能性が高い場合や、再発した場合、また骨髄異形成症候群より移行して発症した場合などは、年齢や全身状態を考慮した上で、治療の適応があれば造血幹細胞移植を行う場合もあります。
【治療について、さらに詳しく】
図7は、治療の流れを大まかに示した図です。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図7 急性前骨髄球性白血病の治療
図7 急性前骨髄球性白血病の治療の図
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成

(1)寛解導入療法

標準的な治療は、ATRAとアントラサイクリン系の薬剤を中心とした化学療法です。

(2)寛解後療法

血液学的完全寛解が確認された後は、地固め療法と呼ばれる化学療法を行います。寛解導入療法と同様のアントラサイクリン系の薬剤を中心とした化学療法を、引き続き2~3コース行います。ATRAと同じビタミンAの誘導体であるタミバロテンという薬剤や亜ヒ酸(ATO)を化学療法と併用したり、単独で使用する場合もあります。

(3)難治性、再発時の治療

難治性の場合や、ATRAと化学療法の治療後に再発した場合でも、亜ヒ酸(ATO)の投与によって高い治療効果が期待できます。再寛解後は地固め療法として、引き続き亜ヒ酸を投与し、病状によっては造血幹細胞移植も検討されます。造血幹細胞移植の適応がない場合は、タミバロテンや亜ヒ酸による維持療法や分子標的薬のゲムツズマブオゾガマイシンを用いたGO療法が選択される場合もあります。
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関連情報
クリニカルパスとは、入院中の患者さんの検査や治療、療養に関する予定を記載した計画表のことで、計画的に安全な医療を進める手助けとなります。
【参考文献】
  1. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版;金原出版
  2. 日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版;金原出版
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更新・確認日:2015年05月20日 [ 履歴 ]
履歴
2015年05月20日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 掲載しました。

1.経過観察と検査

治療後の通院の間隔は、病型(病気の種類)、治療の内容とその効果、継続して行う治療の有無、合併症や副作用の内容、治療後の回復の程度など、患者さんの状態によって異なります。担当医によく確認しておきましょう。一般的には体の状態をみながら、最初は1週間から2週間ごとに通院し、その後、通院の間隔を1カ月、2カ月と延ばしていきます。継続して治療を行わない場合、それ以降は3カ月から6カ月ごとに、再発がないかを調べるために通院します。

検査としては、診察、血液検査、尿検査のほか、超音波検査(エコー)X線検査CT検査MRI検査などの画像検査があげられます。症状や検査の結果によっては、骨髄検査骨シンチグラフィが行われます。

2.日常生活を送る上で

治療後しばらくの間は、疲れたら無理をしないですぐに横になれるようにしておきましょう。この期間は、家の周りの散歩など軽い運動や簡単な家事をしながら、体力の回復に努めます。ただし、急に発熱したり、胸が痛んだり、しつこい咳や息切れなどを感じたら、すぐに担当医に連絡しましょう。

入院での治療の後、退院してからも外来で治療を行う場合があり、治療期間は一般的に長期間にわたることが多くなります。この間、特に注意したいのが感染症です。寒い日は1枚余分に上着を羽織るなどして、体を冷やさない工夫も必要です。とげが刺さったり、虫に刺されたりしたら消毒薬を塗り、感染を予防しましょう。
【日和見(ひよりみ)感染症について】
日和見感染症とは、健康な人には害のないような弱い細菌や真菌(カビ)、ウイルスなどにより感染症を発症することです。治療中に起こりやすい感染症で、重症化する場合もあります。

人はさまざまなウイルスや細菌、真菌などから感染を受けながら、体の中の状態を維持しています。このような微生物は、大腸菌のようによい働きをしているものもありますし、静かに身を潜めているものもあります。しかし、免疫機能が非常に弱くなると、体内にいるこのような弱い微生物の活動さえも抑えられなくなり、感染症を発症することがあります。また、「麻疹(ましん:はしか)」や「水痘(すいとう:水ぼうそう)」など、幼少のころに感染して免疫を獲得していた場合でも、免疫機能が弱まることで再び感染する場合もあります。
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3.社会復帰

これまでの仕事や生活リズムにもよりますが、一般的には体力がついて副作用による症状も改善され、治療が一段落するか、安定した状態で維持療法を継続することができるようになれば、通常に近い生活リズムに戻すことが可能です。

外出の回数を増やす、軽い運動をしてみるなど、少しずつ行動範囲を広げていきます。職場に復帰するときは、会社の人たちに大まかな治療の予定や生活上の注意点などを伝えておき、無理のない業務や就労時間でスタートしましょう。

社会復帰については「働く世代の方へ」もご参照ください。

4.家族や親しい人の理解を得る

急性骨髄性白血病は、病状の進行が速いため、急に症状が出現する場合があります。そのため、心構えができていないうちに病気の診断を受け、治療が開始することもあります。状態によっては、詳しい診断が確定しないうちに緊急に治療が開始されることもあります。治療前に、その時点でわかっている病気の状況や治療内容について担当医の話を聞くときは、家族など信頼できる人に付き添ってもらうとよいでしょう。

特に治療に関しては、副作用も含め、治療の予定や見通しについてもよく確認しておくことが大切です。納得して治療が受けられるように、担当医や看護師に尋ねたいことはあらかじめメモに整理して聞くようにしましょう。疑問や納得できないことがないように、担当医や看護師に確認しましょう。

また、治療期間が長くなることが多く、抗がん剤や支持療法に必要な輸血・血液製剤の費用などで、医療費が高額になることがあります。病気や治療の説明、今後の予定、経済的なことなど、わからないことはがん相談支援センターに相談することができます。
更新・確認日:2015年05月20日 [ 履歴 ]
履歴
2015年05月20日 タブ形式に変更しました。「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」「造血器腫瘍取扱い規約2010年3月(第1版)」より内容を更新しました。
2006年10月01日 掲載しました。

1.再発

治療によって、白血病細胞が正常な細胞に占める割合がある基準を下まわった場合に寛解(かんかい)として、治療効果があったとみなすことができます。しかし、治療の効果により寛解あるいは治癒(ちゆ)と判断された後でも、再びがんが出現することがあり、これを再発再燃といいます。

この時期の治療は、それぞれの患者さんの状況に応じた治療の方針が検討され、化学療法の寛解導入療法(かんかいどうにゅうりょうほう)を再び行ったり、造血幹細胞移植が選択される場合もあります。急性前骨髄球性白血病の場合は、再発・再燃したときも分化誘導療法のレチノイン酸の投与や、分子標的薬のゲムツズマブオゾガマイシンを用いたGO療法で高い治療効果が期待できる場合があります。治療効果が得られない場合は、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持しながら病気とつきあっていくことを目指した治療を行うことになります。

2.生活の質を重視した治療

近年、がんと診断されたときから、QOLの改善を目的とし、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族がその人らしく過ごしたりするための緩和ケアが浸透し始めています。

緩和ケアは、がんが進行したときだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状や、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くすること、また、その人らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をしていきます。

そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことがあれば、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

緩和ケアについては、「緩和ケア」もご参照ください。

再発については、以下の項目もご参照ください。
がんの再発や転移のことを知る
痛み
がんの再発に対する不安や、再発に直面したときの支えとなる情報をまとめた冊子です。がんの再発という事態に直面しても、「希望を持って生きる」助けとなりたいという願いを込めて、再発がんの体験者、がん専門医らとともに検討を重ねて作成されたものです。 もしも、がんが再発したら 冊子
【参考文献】

  1. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版;金原出版

  2. 日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版;金原出版

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