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多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)

更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新しました。
2015年05月26日 タブ形式に変更しました。「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新しました。
2006年11月14日 「多発性骨髄腫の診断」を掲載しました。

1.検査

多発性骨髄腫の診断と治療方針を決めるために、尿検査、血液検査、骨髄検査、骨のX線検査やCT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査などが行われます(表1)。検査の目的は骨髄腫細胞を確認するだけでなく、全身の臓器について合併症の有無などを確認することにあります。
表1 診断に必要な検査項目
尿 ベンスジョーンズタンパク(BJP)、尿タンパク量
血液 赤血球数、ヘモグロビン、白血球数、血小板数、
LDH、BUN、クレアチニン、カルシウム、
アルブミン、タンパク分画
免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD)、
免疫電気泳動、免疫固定法、
β2ミクログロブリン、CRP
骨髄 骨髄腫細胞(形態、表面マーカー、染色体)
画像 全身骨X線、CT、MRI、PET

1)尿検査

多発性骨髄腫の患者さんの尿には、骨髄腫細胞がつくり出すMタンパクの1つであるベンスジョーンズタンパク(BJP)が排出されるため、このタンパクの有無を調べます。併せて腎機能の状態などを調べます。24時間中の尿を集めて尿中のMタンパクの量などを調べる全尿検査も行われます。

2)血液検査

赤血球、ヘモグロビン、白血球血小板などの数値を測定し、造血機能の障害の程度を調べます。また骨髄腫の進行度や腎臓の障害を調べるために、免疫グロブリンの量、Mタンパクの量、LDH(乳酸脱水素酵素)、BUN(血液尿素窒素)、クレアチニン、カルシウム、アルブミン、β2ミクログロブリンなども測定します。

3)骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)

診断を確定するには、骨髄液を採取(骨髄穿刺[こつずいせんし])もしくは骨髄組織を採取(骨髄生検[こつずいせいけん])し、顕微鏡で骨髄腫細胞の存在や形を調べます。骨髄穿刺は皮膚を消毒し、局所麻酔のあとに腸骨(骨盤の後ろの骨)に細い針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引して採取します(図3)。この骨髄液中に含まれる細胞の形を顕微鏡で調べます。骨髄液を吸引する際に痛みがあり、この痛みは局所麻酔では抑えられませんが、通常は一時的な痛みにとどまります。骨髄生検では、腸骨にやや太い針を刺し、骨髄組織を少量採取します。細胞の表面に出ているマーカー(腫瘍の存在や特徴を表す印)の検査では腫瘍細胞の種類と成熟度を、染色体検査では悪性度についても判定します。また、骨髄以外の組織に腫れ(はれ)がみられる場合には、その組織の細胞を採取して検査する必要があります。
図3 骨髄穿刺の様子
図3 骨髄穿刺の様子

4)X線、CT、MRI、PET検査

多発性骨髄腫と診断されると、全身への病気の広がりや骨の状態を確認するための検査を行います。最も一般的ものはX線検査で、全身の骨病変や病的骨折の有無などを調べます。最近はCT検査やMRI検査によって、より小さな骨の病変や骨髄腫細胞の広がりについても診断できるようになりました。CTは、X線を使って体の内部を描き出します(図4)。MRIは磁気を使用します。造影剤を使用する場合はアレルギーが起こることがあります。造影剤アレルギーの経験のある人は医師に申し出てください。

さらに骨髄外に存在する病変を評価するためPET検査が行われることもあります。PET検査は、ブドウ糖ががんに集まる性質を利用して、ブドウ糖に似たFDGという物質と放射性同位元素(18F)を結合した薬剤を用いて、がん病変の有無や位置を調べます。
図4 CT検査の様子
図4 CT検査の様子

2.病型分類

多発性骨髄腫は、「骨髄腫細胞」が主に骨髄でふえ続け、体にいろいろな症状があらわれる病気です。骨髄腫細胞による病気は、多発性骨髄腫のほかにもさまざまな病型があります。それぞれの疾患を区別し病気のタイプ(病型)を知ることは、治療を進める上でとても重要です。

病型の分類には、国際骨髄腫作業部会(IMWG:International Myeloma Working Group)による診断基準が広く用いられています。骨髄の中の異常な形質細胞(骨髄腫細胞)の有無、血液・尿中のMタンパクの有無、臓器障害(高カルシウム血症、貧血、腎不全、骨病変など)の有無などによって分類され、治療開始時期などを見極めます。代表的な病型には、次のようなものがあります。

1)意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症
   (MGUS:Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance)

「エムガス」と呼ばれるタイプの形質細胞腫です。Mタンパクや骨髄内の骨髄腫細胞が少ない型で、臓器の障害がなく、治療の必要はありません。骨髄腫に進展する可能性があり、定期的な検査を行います。

2)くすぶり型多発性骨髄腫(無症候性骨髄腫)

骨髄腫細胞やMタンパクが一定量以上に増加していますが、症状はほとんどなく臓器障害も伴いません。積極的な治療は行わず、定期的な検査を行います。

3)多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)

血液や尿中のMタンパクと骨髄腫細胞が増加し、骨髄腫による臓器障害がある場合は、多発性骨髄腫と診断されます。最も多いタイプであり、薬物療法造血幹細胞移植(自家移植)などの治療を行います。一般に、多発性骨髄腫と診断された場合の治療は、自家移植ができる65歳以下の患者さんと、66歳以上あるいは重要な臓器の障害などのために移植を行わない患者さんでは、異なった治療方針が選択されます。

4)孤立性形質細胞腫

骨や骨以外の組織に骨髄腫細胞のかたまり(腫瘍)ができますが、臓器障害はありません。腫瘍がある場所に放射線治療が行われます。

5)形質細胞白血病

末梢(まっしょう)の血液中で骨髄腫細胞が増殖するものです。リンパ節や臓器腫大など骨髄以外の病変が高頻度にみられ、臓器障害などが進行した状態であることが多く認められます。治療は多発性骨髄腫の治療方針に準じて行います。
【関連する疾患について】

(1)全身性アミロイドーシス

アミロイドーシスとは、Mタンパクが分解されてアミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が生じ、これがさまざまな組織や器官に蓄積して臓器障害を起こす病気です。全身性アミロイドーシスでは、元々異常な形質細胞の増加がみられ、さらに心臓、肺、皮膚、舌、甲状腺(こうじょうせん)、腸管、肝臓、腎臓、血管など、全身の臓器にアミロイドが蓄積します。そこで、アミロイドタンパクの産生を断つため、腫瘍性の形質細胞を減少させる治療が必要となります。65歳以下で移植条件を満たす場合には、末梢血造血幹細胞移植併用メルファラン大量療法を行います。移植条件に満たない場合や66歳以上の場合には、MD療法(メルファラン+デキサメタゾン)や、ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミドを用いた治療を行います。

(2)POEMS症候群(Crow-Fukase [クロウ・フカセ] 症候群、高月病)

POEMS症候群は、主な症状である多発神経炎(Polyneuropathy)による末梢神経障害、臓器腫大(Organomegaly)、内分泌異常(Endocrinopathy)、Mタンパク血症(Monoclonal Protein)、皮膚症状(Skin Changes)の頭文字を集めた症候群で、ほかに浮腫(ふしゅ)、胸腹水(きょうふくすい)などがみられる全身性の疾患です。わが国に比較的多く、経過は慢性で生命予後は10年以上とよいのですが、多彩な症状があらわれ、特に末梢神経障害が患者さんの日常生活動作(ADL)を著しく低下させます。POEMS症候群は世界的にもまれな疾患であり、治療のガイドラインが存在しませんが、無治療であれば病状は進行するため、状況に応じて、放射線照射、細胞障害性抗がん剤(抗がん剤:アルキル化剤)の投与、造血幹細胞移植を行います。今後、骨髄腫に準じた薬物療法(ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミド)による治療例の集積が期待されています。
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3.病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いて「Stage(ステージ)」ともいいます。説明などでは、ステージという言葉が使われることが多いかもしれません。病期の段階はローマ数字で表されます。

多発性骨髄腫の病期は、腫瘍の量、その後の経過を左右する要因(予後因子)により、I~IIIの3段階に分けられます。特に血清アルブミンと血清β2ミクログロブリンは重要な予後因子で、血清アルブミンの値が低い場合や血清β2ミクログロブリンの値が高い場合には、その後の経過(予後)がよくないと考えられています。これに基づいた国際病期分類(ISS:International Staging System)が、国際骨髄腫作業部会から提唱されています(表2)。この分類では多発性骨髄腫はI~III期に分けられ、正常に近い場合は病期I、進行するに従ってII期、III期と進みます。
表2 多発性骨髄腫の国際病期分類(ISS:International Staging System)
病期 基準
血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L
血清アルブミン≧3.5g/dL
ⅠでもⅢでもないもの
血清β2ミクログロブリン≧5.5mg/L
注:病期Ⅱには以下の2つが含まれる
(1)血清β2ミクログロブリン<3.5mg/Lで血清アルブミン<3.5g/dLのもの
(2)血清アルブミン値に関わらず、血清β2ミクログロブリン≧3.5mg/Lかつ<5.5mg/Lのもの
注:最近では、上記のISS病期に骨髄腫の活動度を表す血清LDH値と、骨髄腫細胞の性質を反映する染色体異常を含めた新たな改定国際病期分類(R-ISS: Revised ISS)も用いられています。
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成

4.予後因子

多発性骨髄腫の経過には、年齢や合併症の有無、病型、病期などが影響します。その他にも予後因子と呼ばれている指標があり、治療に対する反応性やその後の経過(予後)を推測する方法として用いられています。

国際病期分類によると、血液検査でアルブミンの値が低い場合やβ2ミクログロブリンの値が高い場合には、その後の経過がよくないと考えられています。また、染色体の異常がある場合、特に13番染色体や17番染色体の異常、4番と14番染色体の転座(染色体の一部が組み替えられること)などがある場合は、その後の経過がよくないということが知られています。

実際の治療方針を決定する上では、このような予後因子についても考慮することが重要です。経過がよくないと推測される場合にはより積極的な治療法を選ぶなど、患者さんごとに最適な治療法を決定することが大切になります。

【参考文献】
  1. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月);文光堂
  2. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版);日本血液学会
  3. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版(第1.0版);金原出版
  4. 日本血液学会 日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月第1版;金原出版
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多発性骨髄腫
132.多発性骨髄腫(PDF)

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