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多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)

更新・確認日:2017年04月12日 [ 履歴 ]
履歴
2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新しました。
2015年05月26日 タブ形式に変更しました。「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新しました。
2006年11月14日 「多発性骨髄腫の治療」を掲載しました。

1.薬物療法

骨髄腫細胞を破壊し減少させ、病気の進行を遅らせるために、薬物療法を行います。患者さんの体の状態、効果と副作用のバランスを考慮し、分子標的薬(参照:分子標的治療)や細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)、ステロイドなどを組み合わせて治療を行います。治療に使用される主な薬剤は以下の通りです。

1)ボルテゾミブ(ベルケイド)

ボルテゾミブは、不要となったタンパク質を分解する酵素であるプロテアソームの働きを阻害することにより、骨髄腫細胞の増殖を抑制する分子標的薬です。保険診療上、再発・難治性多発性骨髄腫だけでなく、はじめて治療を受ける多発性骨髄腫の患者さんも使用できます。皮下注射または静脈内注射にて投与されます。
【ボルテゾミブについて、さらに詳しく】
重要な副作用として、肺障害(間質性肺炎、肺水腫など)があります。治療前には胸部のX線検査などで異常の有無を確認した上で、投与が可能かどうかを判断します。投与後に息切れ、息苦しさ、咳および発熱などの症状がみられた場合には、担当医に相談することが必要です。

注意を要する副作用として、末梢(まっしょう)神経障害と骨髄抑制白血球減少血小板減少貧血)があります。末梢神経障害は、特に足の疼痛(とうつう)を伴う知覚異常としびれがあり、疼痛を伴う場合にはボルテゾミブの減量や休止が勧められています。骨髄抑制では、定期的な血液検査を行い、必要に応じてG-CSF製剤(白血球をふやす薬)などの投与や輸血などを行います。その他に、発熱、発疹、胃腸障害(便秘、下痢、悪心)などが起こることがあります。また、副作用としてボルテゾミブの投与中に帯状疱疹(たいじょうほうしん)※1を発症することがあるため、予防のために抗ウイルス薬(アシクロビル)を内服します。


※1帯状疱疹:水痘(水ぼうそう)を引き起こすウイルスが体内に潜伏し、免疫力が低下したときに再び感染症を引き起こす疾患で、神経痛や水ぶくれを伴う。症状があらわれるのは体の片側だけであり、発症後早期の治療介入が重要。
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2)レナリドミド(レブラミド)

レナリドミドは、体内の免疫の働きを調整する免疫調節薬という種類の薬剤で、骨髄腫細胞を抑制します。通常、成人はデキサメタゾンと併用し、1日1回、21日間連続で内服したあと、7日間休薬します。この28日間を1サイクルとして繰り返します。なお、患者さんの状態により適宜減量されます。
【レナリドミドについて、さらに詳しく】
この薬はサリドマイドの同類薬であり、催奇形性(さいきけいせい:胎児に奇形を生じること)があります。妊婦または妊娠している可能性のある女性は使用できず、男性患者では避妊を徹底することが必須です。また、この薬の使用にあたっては、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「RevMate(R) (レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)」と称する安全管理システムが定められており、患者さん、医師、薬剤師などのすべての関係者がこの手順を遵守することが必要です。

重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)および肺塞栓症があります。この副作用はデキサメタゾンやドキソルビシンと併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリンなど)を投与することがあります。その他の副作用として、骨髄抑制(好中球減少、血小板減少)、皮膚障害、疲労、めまいがあります。
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3)サリドマイド(サレド)

サリドマイドは、レナリドミドと同じく免疫調節薬であり、骨髄腫細胞の増殖を抑制します。1950年代に催眠鎮静薬として販売されましたが、妊娠中の女性が服用することにより胎児に重度の先天異常を引き起こしたため、世界各国で販売中止と回収が行われました。その後、サリドマイドが多発性骨髄腫に対する治療薬として有効であることが米国より報告され、日本では、2008年に多発性骨髄腫に対する治療薬として再承認されました。承認条件として、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「サリドマイド製剤安全管理手順(TERMS(R))」という安全管理システムの遵守が医療機関に義務付けられ、厳重な安全管理の下、使用する必要があります。妊婦または妊娠している可能性のある女性には使用できず、男性患者では避妊を徹底することが必須です。
【サリドマイドについて、さらに詳しく】
よくみられる副作用に、末梢神経障害があります。手足の指先からしびれが広がり、進行すると筋力低下を来すこともあります。その一部は、薬を止めても長期に症状が持続する場合もあります。日常生活に支障が出る場合には、投与量を減らすか、それでも改善しない場合には投与の中止を検討します。また、眠気、便秘、口の渇きも頻度が高く、投与開始数日後から出現します。その他、好中球の減少、肝機能障害がみられることがあります。

重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)が起こることがあります。この症状は、デキサメタゾンやドキソルビシン、経口避妊薬と併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリンなど)を投与することがあります。
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4)ポマリドミド(ポマリスト)

この薬はサリドマイドと同じく免疫調節薬です。ボルテゾミブとレナリドミドの治療経験がある場合に使用できます。通常、成人はデキサメタゾンと併用し、1日1回、21日間連続で内服したあと、7日間休薬します。この28日間を1サイクルとして繰り返します。なお、患者さんの状態により適宜減量されます。また、この薬の使用にあたっては、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「RevMate (R)(レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)」と称する安全管理システムが定められており、患者さん、医師、薬剤師などのすべての関係者がこの手順を遵守することが必要です。

主な副作用には、骨髄抑制や発疹などがあります。重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)および肺塞栓症があります。この副作用はデキサメタゾンやドキソルビシンと併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリン)を投与することがあります。

5)カルフィルゾミブ(カイプロリス)※2

不要となったタンパク質を分解する酵素であるプロテアソームの働きを阻害することにより、骨髄腫細胞の増殖を抑制する分子標的薬で、点滴により投与します。主な副作用には、骨髄抑制や高血圧、心不全、発疹などがあります。

※2 カルフィルゾミブ:この薬剤は、造血器腫瘍診療ガイドライン第3版(2013年;金原出版)には掲載されていません。承認されて間もない薬のため、副作用について特に慎重に検討がなされています。

6)その他の薬剤

上記のほかにもさまざまな薬剤があり、患者さんの状態にあわせて使用されます。診断時にさまざまな合併症や既往症があるために、ボルテゾミブやレナリドミド、サリドマイドなどの薬剤を使用できない場合には、従来の標準治療であったMP療法(メルファラン+プレドニゾロン)やデキサメタゾン大量療法などを行います。造血幹細胞移植(自家移植)を予定する患者さんであれば、末梢血幹細胞採取に影響の少ない抗がん剤が選択されます。その他、新しい治療薬の開発を目指した臨床試験が行われています。臨床試験にはいろいろな種類があり、参加できる条件も異なっていますので、検討できる臨床試験があるかどうかに関しては担当医と相談してください。

2.放射線治療

骨髄腫細胞は一般に放射線に感受性が高く、腫瘍縮小や疼痛(とうつう)緩和のために放射線治療が用いられます。

1)疼痛緩和を目的とする場合

限局的な骨病変による疼痛に対しては、多くの場合、少量の局所放射線照射(20Gy[グレイ]程度)で十分な効果が得られます。

2)腫瘤の消失・縮小を目的とする場合

腫瘤(しゅりゅう)の消失や縮小を目的とする場合、必要な放射線総量は疼痛緩和よりも多い35~40Gyが用いられます。骨髄腫による脊髄圧迫(知覚障害や運動麻痺[まひ]など)がある場合には、MRIなどによる診断と、放射線照射・ステロイドによる治療をできるだけ速やかに(48時間以内に)開始する必要があります。

3.合併症に対する治療

多発性骨髄腫に伴う症状や合併症に対して、次のような治療が行われることがあります。

1)腎障害

多発性骨髄腫では、Mタンパクや高カルシウム血症、骨髄腫細胞の浸潤(しんじゅん)などが原因となり、腎障害が起きることがあります。また脱水や検査時に用いられる造影剤の使用、痛みを抑えるための非ステロイド系消炎鎮痛剤の投与などでも、腎障害が悪化することがあります。このようなときは、点滴による水分補給をはじめとした治療が行われ、緊急の場合には血液透析が行われることもあります。

2)過粘稠度症候群(かねんちょうどしょうこうぐん)

血液中のMタンパクの増加による血液粘度の上昇により、出血症状(鼻出血、眼底出血、口腔[こうくう]内出血)、視力障害、意識障害、腎障害を来すことをいいます。緊急を要する場合には、患者さんの血漿(けっしょう:血液の液体成分)を、健康な人から採取した血漿と交換すること(血漿交換)が有効ですが、同時に骨髄腫の治療も行う必要があります。

3)感染症

多発性骨髄腫の患者さんは免疫力が低下しているため、帯状疱疹(たいじょうほうしん)※1に代表されるような、ウイルス、細菌、真菌などの感染症にかかりやすくなっています。そのため治療中だけでなく、日常生活でも感染には十分注意する必要があります。

※1帯状疱疹:水痘(水ぼうそう)を引き起こすウイルスが体内に潜伏し、免疫力が低下したときに再び感染症を引き起こす疾患で、神経痛や水ぶくれを伴う。症状があらわれるのは体の片側だけであり、発症後早期の治療介入が重要。

4)骨病変による症状

骨髄腫細胞による骨病変に対しては、放射線治療や、ビスホスホネート製剤(骨を溶かす細胞を抑制する作用がある)が有効です。鎮痛薬は上手に活用すれば効果的に痛みを抑えることができます。

ビスホスホネート製剤の使用中に歯科治療を受けたり、歯科治療を要する状態(虫歯、歯槽膿漏[しそうのうろう]など)があったりすると、まれに歯肉(しにく)や下顎骨(かがくこつ)の壊死(えし)が生じることがあります。したがって、この薬を使用する場合には事前に歯科のチェックを受け、治療開始後は口腔内のケアを行うとともに、歯科にかかるときは必ず担当医の許可を得て歯科治療を受けるようにしてください。

また、骨に病変がある部位は軽微な力でも骨折が起きやすくなるため、その部位に大きな力が加わらないよう気をつける必要があります。脊椎(せきつい)圧迫骨折により痛みがある場合には、痛みを起こりにくくし圧迫骨折の進行を防ぐために、コルセットを装着することがあります。また、骨折による疼痛を抑えるために、手術を行うことがあります。

5)高カルシウム血症

骨髄腫細胞により骨の組織が破壊されることで高カルシウム血症が起こり、吐き気や食欲不振、意識障害や口の渇きなどの症状があらわれることがあります。高カルシウム血症は腎障害を引き起こす原因となるため、患者さんの状態にあわせて生理食塩水の速やかな輸液および利尿剤の投薬に加えて、ビスホスホネート製剤の点滴が行われます。

4.支持療法

支持療法とは、がん細胞そのものを減らしたり、がんを小さくしたりする治療ではありませんが、がんあるいはそのがんによって起こる合併症、治療に伴う副作用を予防または軽減する治療で、血液のがんの治療を進めていくに当たって極めて重要です。

具体的には、治療に伴う白血球減少で生じる感染症を予防するために、感染しやすい場所(口の中、気道、肛門周囲など)の治療やケア、白血球減少の状況での感染症の予防や治療のための抗生物質・抗ウイルス薬・抗真菌(カビ)薬の投与、貧血に対する輸血、血小板減少に対する血小板の輸血、その他血液製剤の補充、吐き気止めの使用、骨痛や神経痛に対する薬物療法などです。長期にわたることの多い治療の間の精神的な支援を含めて、幅広い内容の支持療法が行われます。

【参考文献】
  1. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月);文光堂
  2. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版);日本血液学会
  3. Rev Mate(R)(レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)ver. 4.0(2015年3月改訂);セルジーン
  4. サリドマイド製剤安全管理手順 第4‐2版(2014年6月改訂);藤本製薬
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