このページの本文へ移動
文字サイズ
メニュー
多発性骨髄腫

多発性骨髄腫 治療

1.病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いて「Stage(ステージ)」ともいいます。説明などでは、ステージという言葉が使われることが多いかもしれません。病期の段階はローマ数字で表されます。

多発性骨髄腫の病期は、腫瘍の量、その後の経過を左右する要因(予後因子)により、Ⅰ~Ⅲの3段階に分けられます。特に血清アルブミンと血清β2ミクログロブリンは重要な予後因子で、血清アルブミンの値が低い場合や血清β2ミクログロブリンの値が高い場合には、その後の経過(予後)がよくないと考えられています。これに基づいた国際病期分類(ISS:International Staging System)が、国際骨髄腫作業部会から提唱されています(表2)。この分類では多発性骨髄腫はⅠ~Ⅲ期に分けられ、正常に近い場合は病期Ⅰ、進行するに従ってⅡ期、Ⅲ期と進みます。

表2 多発性骨髄腫の国際病期分類(ISS:International Staging System)
病期 基準
血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L
血清アルブミン≧3.5g/dL
ⅠでもⅢでもないもの
血清β2ミクログロブリン≧5.5mg/L
注:病期には以下の2つが含まれる
(1)血清β2ミクログロブリン<3.5mg/Lで血清アルブミン<3.5g/dLのもの
(2)血清アルブミン値に関わらず、血清β2ミクログロブリン≧3.5mg/Lかつ<5.5mg/Lのもの
注:最近では、上記のISS病期に骨髄腫の活動度を表す血清LDH値と、骨髄腫細胞の性質を反映する染色体異常を含めた新たな改定国際病期分類(R-ISS: Revised ISS)も用いられています。
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成

2.予後因子

多発性骨髄腫の経過には、年齢や合併症の有無、病型、病期などが影響します。その他にも予後因子と呼ばれている指標があり、治療に対する反応性やその後の経過(予後)を推測する方法として用いられています。

国際病期分類によると、血液検査でアルブミンの値が低い場合やβ2ミクログロブリンの値が高い場合には、その後の経過がよくないと考えられています。また、染色体の異常がある場合、特に13番染色体や17番染色体の異常、4番と14番染色体の転座(染色体の一部が組み替えられること)などがある場合は、その後の経過がよくないということが知られています。

実際の治療方針を決定する上では、このような予後因子についても考慮することが重要です。経過がよくないと推測される場合にはより積極的な治療法を選ぶなど、患者さんごとに最適な治療法を決定することが大切になります。

3.治療方針

多発性骨髄腫に対する治療は、骨髄腫細胞に関連する臓器障害(腎機能障害、骨折など)や疼痛とうつうなどの症状が出現した場合に検討されます。このような臓器障害や自覚症状を有する骨髄腫を「多発性(症候性)骨髄腫」と呼びます。骨髄腫と診断された場合であっても、症状があらわれない「くすぶり型(無症候性)骨髄腫」や「意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)」と呼ばれる病態の場合は、直ちに治療を行う必要はありません。定期的に検査を行い、経過を観察し、「多発性(症候性)骨髄腫」に移行した時点で治療の対象となります。

骨髄腫は血液細胞に由来する悪性腫瘍であり、治療は薬物療法が中心となります。現在では、従来用いられているメルファランなどの細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)とステロイド剤に加えて、さまざまな薬剤(ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミドなど)が保険承認されており、これらを適切に組み合わせた薬物療法を行います。

骨髄腫の病態によっては、治療開始前から重大な合併症(骨折による脊髄せきずい圧迫や、腎不全など)を併発していることがあり、骨髄腫そのものに対する治療よりも合併症への治療を先行させることもあります。

図6は、症状のある多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)に対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

図6 症状のある多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)に対する治療方法
図6 症状のある多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)に対する治療方法の図
日本骨髄腫学会編「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」(文光堂)より作成

4.初期治療

多発性骨髄腫とはじめて診断された場合には、骨髄腫細胞を減少させるために薬物療法を行い、条件が合う場合には大量抗がん剤投与を併用する造血幹細胞移植(自家移植)を行います。

1)移植ができる患者さん(65歳以下)の場合

一般に、重要な臓器の機能が保たれている65歳以下の患者さんに対しては自家移植を考慮します。自家移植を行う前に、骨髄腫細胞を減らす目的で薬物治療が行われます。これを導入療法と呼びます。導入療法を施行後、各種検査によって、治療効果を判定し、自家移植が行えるかどうかを検討します。

治療効果の判定には、骨髄腫細胞が産生する「Mタンパク」を指標とします。治療開始前と比較して、血液中あるいは尿中のMタンパクが一定程度以上減少した場合には、「奏効した」と判定されます。導入療法が奏効した場合は、造血幹細胞採取という処置を行い、造血幹細胞を十分量採取した上で、自家移植を行います。自家移植ではメルファランという抗がん剤を大量に使用(大量メルファラン療法)することで、高い抗腫瘍効果が期待されます。
初期治療によっても奏効状態に至らなかった場合には、他の導入療法に切り替えます。

移植ができる患者さん(65歳以下)の場合の治療について、さらに詳しく

(1)導入療法

導入療法にはさまざまな種類があり、どの導入療法を選択するかは、患者さんの全身状態や合併症の有無、予後不良な染色体異常の有無などを考慮して決定します。推奨される導入療法としては、高い奏効割合が期待できるボルテゾミブとデキサメタゾン(ステロイド剤)併用の導入療法(BD療法)を3~4コース施行したあとに、シクロホスファミド大量療法にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)という白血球をふやす薬を併用、またはG-CSFのみを使用して、患者さんの末梢まっしょう血から造血幹細胞を採取します。より高い効果を期待できる導入療法として、前述のBD療法にシクロホスファミドやドキソルビシンを加えた治療もありますが、同時に毒性も増強することに留意する必要があります。レナリドミドとデキサメタゾンを用いた併用療法も選択可能ですが、4コースを超えて使用すると造血幹細胞の採取が難しくなる場合があります。

(2)自家造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、大量の抗がん剤を投与して(大量化学療法)可能な限り骨髄腫細胞を殺し、そのあとで患者さん自身の造血幹細胞(血液細胞のもととなる細胞)を点滴することにより、正常な骨髄細胞の機能を取り戻すという方法で、患者さんの生存期間を延ばす効果が期待できます。造血幹細胞移植には、自分の組織を移植する自家じか移植と、他の人の組織を移植する同種移植がありますが、骨髄腫に多く行われる移植は安全性の高い自家造血幹細胞移植(特に自家末梢血幹細胞移植)です。

寛解導入療法後、早期に自家造血幹細胞移植を行うことが勧められています。移植の前処置として、2日間にわたり大量メルファランの投与を行い、その翌々日に凍結しておいた自家造血幹細胞を急速解凍して静脈から体内に注入します。

(3)維持療法

初期治療での効果を維持するための治療として、サリドマイドやレナリドミドなどを用いた「維持療法」の効果と安全性が検討されています。骨髄移植をした場合には、サリドマイドによる維持療法の有用性が報告されており、長期投与による末梢神経障害を考慮し投与期間を1年未満とすることと、高齢者には慎重に投与することが推奨されています。また、レナリドミドによる維持療法の有効性も報告されていますが、二次がんの可能性が示されており、実際の治療に際してはメリットとデメリットに関する説明を十分に受けることが望まれます。

2)移植を行わない患者さん(66歳以上)の場合

一般に、66歳以上の患者さん、および65歳以下で重要な臓器の障害などのために自家移植を行わない患者さんには、ボルテゾミブやレナリドミドなどの薬剤を中心とした多剤併用療法が行われます。患者さんの年齢や末梢神経障害、血栓症などのリスクや肺の合併症などにより、これらの薬剤が使用できない場合には、従来のMP療法(メルファラン+プレドニゾロン)などの選択肢もあります。

5.再発・難治性骨髄腫に対する治療

再発した場合や進行・治療抵抗性の骨髄腫の治療においては、ボルテゾミブやレナリドミド、サリドマイドに加えてカルフィルゾミブやポマリドミドなどの薬剤が保険承認され、一定程度の治療効果が報告されています。一般的に、これらの薬はデキサメタゾンと併用して用いられます。

再発・難治性骨髄腫に対する治療について、さらに詳しく

1)初回治療終了時から6カ月以上経過したあとに再発・再燃した場合

この場合には、初回導入療法が奏効する場合もあり、初回導入療法を再度試みるか、初回療法で用いられていない薬剤(ボルテゾミブ、レナリドミド、カルフィルゾミブ、サリドマイドなど)を含む治療に変更します。1回目の自家造血幹細胞移植後2年以上経過してから再発した場合には、2回目の自家移植も選択肢となります。移植が適応とならない患者さんが再発した場合には、再発前の治療による奏効期間(効果持続期間)が1年以上であれば、同じ治療法、または同じ治療法に他の薬剤を1種類追加した治療法の効果が期待できます。

2)初回治療終了後6カ月未満の再発・再燃や治療中に進行した場合

このような難治性骨髄腫の場合、また、予後不良な染色体異常を伴う場合には、ボルテゾミブやサリドマイド、レナリドミド、カルフィルゾミブなどを含む救援化学療法(救援療法)が優先されます。前に行った治療内容や患者さんのもつ合併症、臓器機能障害の有無などを考慮して、薬剤が選択されます。救援化学療法が奏効してHLA(ヒト白血球抗原)が適合するドナーがいる場合には、同種造血幹細胞移植という選択肢もありますが、移植後早期の死亡率が高く、再発・再燃も高頻度であることから、臨床試験の範囲で行われることが望ましいとされています。

6.薬物療法

骨髄腫細胞を破壊し減少させ、病気の進行を遅らせるために、薬物療法を行います。患者さんの体の状態、効果と副作用のバランスを考慮し、分子標的薬や細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)、ステロイドなどを組み合わせて治療を行います。治療に使用される主な薬剤は以下の通りです。

1)ボルテゾミブ(ベルケイド)

ボルテゾミブは、不要となったタンパク質を分解する酵素であるプロテアソームの働きを阻害することにより、骨髄腫細胞の増殖を抑制する分子標的薬です。保険診療上、再発・難治性多発性骨髄腫だけでなく、はじめて治療を受ける多発性骨髄腫の患者さんも使用できます。皮下注射または静脈内注射にて投与されます。

ボルテゾミブについて、さらに詳しく

重要な副作用として、肺障害(間質性肺炎、肺水腫など)があります。治療前には胸部のX線検査などで異常の有無を確認した上で、投与が可能かどうかを判断します。投与後に息切れ、息苦しさ、咳および発熱などの症状がみられた場合には、担当医に相談することが必要です。

注意を要する副作用として、末梢まっしょう神経障害と骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血)があります。末梢神経障害は、特に足の疼痛とうつうを伴う知覚異常としびれがあり、疼痛を伴う場合にはボルテゾミブの減量や休止が勧められています。骨髄抑制では、定期的な血液検査を行い、必要に応じてG-CSF製剤(白血球をふやす薬)などの投与や輸血などを行います。その他に、発熱、発疹、胃腸障害(便秘、下痢、悪心)などが起こることがあります。また、副作用としてボルテゾミブの投与中に帯状疱疹たいじょうほうしん※1を発症することがあるため、予防のために抗ウイルス薬(アシクロビル)を内服します。

※1帯状疱疹:水痘(水ぼうそう)を引き起こすウイルスが体内に潜伏し、免疫力が低下したときに再び感染症を引き起こす疾患で、神経痛や水ぶくれを伴う。症状があらわれるのは体の片側だけであり、発症後早期の治療介入が重要。

2)レナリドミド(レブラミド)

レナリドミドは、体内の免疫の働きを調整する免疫調節薬という種類の薬剤で、骨髄腫細胞を抑制します。通常、成人はデキサメタゾンと併用し、1日1回、21日間連続で内服したあと、7日間休薬します。この28日間を1サイクルとして繰り返します。なお、患者さんの状態により適宜減量されます。

レナリドミドについて、さらに詳しく

この薬はサリドマイドの同類薬であり、催奇形性さいきけいせい(胎児に奇形を生じること)があります。妊婦または妊娠している可能性のある女性は使用できず、男性患者では避妊を徹底することが必須です。また、この薬の使用にあたっては、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「RevMate(R) (レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)」と称する安全管理システムが定められており、患者さん、医師、薬剤師などのすべての関係者がこの手順を遵守することが必要です。

重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)および肺塞栓症があります。この副作用はデキサメタゾンやドキソルビシンと併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリンなど)を投与することがあります。その他の副作用として、骨髄抑制(好中球減少、血小板減少)、皮膚障害、疲労、めまいがあります。

3)サリドマイド(サレド)

サリドマイドは、レナリドミドと同じく免疫調節薬であり、骨髄腫細胞の増殖を抑制します。1950年代に催眠鎮静薬として販売されましたが、妊娠中の女性が服用することにより胎児に重度の先天異常を引き起こしたため、世界各国で販売中止と回収が行われました。その後、サリドマイドが多発性骨髄腫に対する治療薬として有効であることが米国より報告され、日本では、2008年に多発性骨髄腫に対する治療薬として再承認されました。承認条件として、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「サリドマイド製剤安全管理手順(TERMS(R))」という安全管理システムの遵守が医療機関に義務付けられ、厳重な安全管理の下、使用する必要があります。妊婦または妊娠している可能性のある女性には使用できず、男性患者では避妊を徹底することが必須です。

サリドマイドについて、さらに詳しく

よくみられる副作用に、末梢神経障害があります。手足の指先からしびれが広がり、進行すると筋力低下を来すこともあります。その一部は、薬を止めても長期に症状が持続する場合もあります。日常生活に支障が出る場合には、投与量を減らすか、それでも改善しない場合には投与の中止を検討します。また、眠気、便秘、口の渇きも頻度が高く、投与開始数日後から出現します。その他、好中球の減少、肝機能障害がみられることがあります。

重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)が起こることがあります。この症状は、デキサメタゾンやドキソルビシン、経口避妊薬と併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリンなど)を投与することがあります。

4)ポマリドミド(ポマリスト)

この薬はサリドマイドと同じく免疫調節薬です。ボルテゾミブとレナリドミドの治療経験がある場合に使用できます。通常、成人はデキサメタゾンと併用し、1日1回、21日間連続で内服したあと、7日間休薬します。この28日間を1サイクルとして繰り返します。なお、患者さんの状態により適宜減量されます。また、この薬の使用にあたっては、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「RevMate (R)(レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)」と称する安全管理システムが定められており、患者さん、医師、薬剤師などのすべての関係者がこの手順を遵守することが必要です。

主な副作用には、骨髄抑制や発疹などがあります。重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)および肺塞栓症があります。この副作用はデキサメタゾンやドキソルビシンと併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリン)を投与することがあります。

5)カルフィルゾミブ(カイプロリス)※2

不要となったタンパク質を分解する酵素であるプロテアソームの働きを阻害することにより、骨髄腫細胞の増殖を抑制する分子標的薬で、点滴により投与します。主な副作用には、骨髄抑制や高血圧、心不全、発疹などがあります。

※2カルフィルゾミブ:この薬剤は、造血器腫瘍診療ガイドライン第3版(2013年;金原出版)には掲載されていません。承認されて間もない薬のため、副作用について特に慎重に検討がなされています。

6)その他の薬剤

上記のほかにもさまざまな薬剤があり、患者さんの状態にあわせて使用されます。診断時にさまざまな合併症や既往症があるために、ボルテゾミブやレナリドミド、サリドマイドなどの薬剤を使用できない場合には、従来の標準治療であったMP療法(メルファラン+プレドニゾロン)やデキサメタゾン大量療法などを行います。造血幹細胞移植(自家移植)を予定する患者さんであれば、末梢血幹細胞採取に影響の少ない抗がん剤が選択されます。その他、新しい治療薬の開発を目指した臨床試験が行われています。臨床試験にはいろいろな種類があり、参加できる条件も異なっていますので、検討できる臨床試験があるかどうかに関しては担当医と相談してください。

7.放射線治療

骨髄腫細胞は一般に放射線に感受性が高く、腫瘍縮小や疼痛とうつう緩和のために放射線治療が用いられます。

1)疼痛緩和を目的とする場合

限局的な骨病変による疼痛に対しては、多くの場合、少量の局所放射線照射(20Gy[グレイ]程度)で十分な効果が得られます。

2)腫瘤の消失・縮小を目的とする場合

腫瘤しゅりゅうの消失や縮小を目的とする場合、必要な放射線総量は疼痛緩和よりも多い35~40Gyが用いられます。骨髄腫による脊髄圧迫(知覚障害や運動麻痺まひなど)がある場合には、MRIなどによる診断と、放射線照射・ステロイドによる治療をできるだけ速やかに(48時間以内に)開始する必要があります。

8.合併症に対する治療

多発性骨髄腫に伴う症状や合併症に対して、次のような治療が行われることがあります。

1)腎障害

多発性骨髄腫では、Mタンパクや高カルシウム血症、骨髄腫細胞の浸潤しんじゅんなどが原因となり、腎障害が起きることがあります。また脱水や検査時に用いられる造影剤の使用、痛みを抑えるための非ステロイド系消炎鎮痛剤の投与などでも、腎障害が悪化することがあります。このようなときは、点滴による水分補給をはじめとした治療が行われ、緊急の場合には血液透析が行われることもあります。

2)過粘稠度症候群かねんちょうどしょうこうぐん

血液中のMタンパクの増加による血液粘度の上昇により、出血症状(鼻出血、眼底出血、口腔こうくう内出血)、視力障害、意識障害、腎障害を来すことをいいます。緊急を要する場合には、患者さんの血漿けっしょう(血液の液体成分)を、健康な人から採取した血漿と交換すること(血漿交換)が有効ですが、同時に骨髄腫の治療も行う必要があります。

3)感染症

多発性骨髄腫の患者さんは免疫力が低下しているため、帯状疱疹たいじょうほうしん※1に代表されるような、ウイルス、細菌、真菌などの感染症にかかりやすくなっています。そのため治療中だけでなく、日常生活でも感染には十分注意する必要があります。

※1帯状疱疹:水痘(水ぼうそう)を引き起こすウイルスが体内に潜伏し、免疫力が低下したときに再び感染症を引き起こす疾患で、神経痛や水ぶくれを伴う。症状があらわれるのは体の片側だけであり、発症後早期の治療介入が重要。

4)骨病変による症状

骨髄腫細胞による骨病変に対しては、放射線治療や、ビスホスホネート製剤(骨を溶かす細胞を抑制する作用がある)が有効です。鎮痛薬は上手に活用すれば効果的に痛みを抑えることができます。

ビスホスホネート製剤の使用中に歯科治療を受けたり、歯科治療を要する状態(虫歯、歯槽膿漏しそうのうろうなど)があったりすると、まれに歯肉しにく下顎骨かがくこつ壊死えしが生じることがあります。したがって、この薬を使用する場合には事前に歯科のチェックを受け、治療開始後は口腔内のケアを行うとともに、歯科にかかるときは必ず担当医の許可を得て歯科治療を受けるようにしてください。

また、骨に病変がある部位は軽微な力でも骨折が起きやすくなるため、その部位に大きな力が加わらないよう気をつける必要があります。脊椎せきつい圧迫骨折により痛みがある場合には、痛みを起こりにくくし圧迫骨折の進行を防ぐために、コルセットを装着することがあります。また、骨折による疼痛を抑えるために、手術を行うことがあります。

5)高カルシウム血症

骨髄腫細胞により骨の組織が破壊されることで高カルシウム血症が起こり、吐き気や食欲不振、意識障害や口の渇きなどの症状があらわれることがあります。高カルシウム血症は腎障害を引き起こす原因となるため、患者さんの状態にあわせて生理食塩水の速やかな輸液および利尿剤の投薬に加えて、ビスホスホネート製剤の点滴が行われます。

9.支持療法

支持療法とは、がん細胞そのものを減らしたり、がんを小さくしたりする治療ではありませんが、がんあるいはそのがんによって起こる合併症、治療に伴う副作用を予防または軽減する治療で、血液のがんの治療を進めていくに当たって極めて重要です。

具体的には、治療に伴う白血球減少で生じる感染症を予防するために、感染しやすい場所(口の中、気道、肛門周囲など)の治療やケア、白血球減少の状況での感染症の予防や治療のための抗生物質・抗ウイルス薬・抗真菌(カビ)薬の投与、貧血に対する輸血、血小板減少に対する血小板の輸血、その他血液製剤の補充、吐き気止めの使用、骨痛や神経痛に対する薬物療法などです。長期にわたることの多い治療の間の精神的な支援を含めて、幅広い内容の支持療法が行われます。

10.再発

再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。多発性骨髄腫は、治療によって状態がよくなっても、病気が再発したり、病気の進行が止まっていたものが再び進行し始めたりする可能性が高いがんです。造血幹細胞移植(自家移植)がうまくいった場合でも再発する場合があります。

このような場合には、今までの治療内容や患者さんの臓器機能障害、合併症の有無などを考慮して、薬物療法が行われます。この時期の治療は救援療法(救援化学療法)と呼ばれます。治療効果が得られない場合は、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持しながら病気と付き合っていくことを目指した治療を行います。

11.生活の質を重視した治療

近年、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の改善を目的とし、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族がその人らしく過ごしたりするための緩和ケアが浸透し始めています。

緩和ケアは、がんが進行したときだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状や、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くすること、また、その人らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をしていきます。

そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことがあれば、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

更新・確認日:2017年04月12日 [ 履歴 ]
履歴
2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新しました。
2015年05月26日 タブ形式に変更しました。「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新しました。
2006年11月14日 「多発性骨髄腫の治療」を掲載しました。
前のページ
多発性骨髄腫
ページの先頭に戻る
相談先・
病院を探す
閉じる

病名から探す

閲覧履歴