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軟部肉腫〈小児〉

軟部肉腫〈小児〉 治療

軟部肉腫の治療は、手術(外科治療)、薬物療法、放射線治療などがあります。

横紋筋肉腫の治療については、「横紋筋肉腫〈小児〉 治療」のページをご参照ください。

1.病期(ステージ)と治療の選択

1)病期分類

すべての肉腫に適用されるわけではありませんが、病期分類として国際対がん連合(UICC)と米国がん合同委員会(AJCC)のTNM分類と、フランスの全国がんセンター連盟(FNCLCC)による組織学的な悪性度分類が行われることが一般的です。

軟部肉腫の病期分類には、多くの組織型の腫瘍をまとめて評価するために、評価項目の1つとして組織学的悪性度分類が用いられています(表1)。

表1 軟部腫瘍【体幹、四肢、後腹膜】の病期とUICC TNM分類
病期 腫瘍のサイズ 1) リンパ節転移 2) 遠隔転移 3) 組織学的悪性度 4)
ⅠA T1 N0 M0 Grade 1、Grade X 低悪性度
ⅠB T2、T3、T4 N0 M0 Grade 1、Grade X 低悪性度
T1 N0 M0 Grade 2、Grade 3 高悪性度
ⅢA T2 N0 M0 Grade 2、Grade 3 高悪性度
ⅢB T3、T4 N0 M0 Grade 2、Grade 3 高悪性度
ⅢB Any T
(Tに関係なく)
N1 5) M0 Any Grade(Gradeに関係なく)
Any T
(Tに関係なく)
Any N(Nに関係なく) M1 Any Grade(Gradeに関係なく)
  • 1)T1(最大径≦5cm)、T2(5cm<最大径≦10cm)、T3(10cm<最大径≦15cm)、T4(15cm<最大径)、TX(原発腫瘍の評価不可能)、T0(原発腫瘍を認めない) 、Any T(腫瘍のサイズは問わない)
  • 2)N0(領域リンパ節の転移なし)、N1(領域リンパ節の転移あり)、NX(領域リンパ節の評価が不可能)、Any N(転移の有無は問わない)
  • 3)M0(遠隔転移なし)、M1(遠隔転移あり)、MX(遠隔転移の評価が不可能)
  • 4)FNCLCC分類(悪性度はGrade 1<Grade 2<Grade 3); Grade 1(合計スコア2または3)、Grade 2(合計スコア4または5)、Grade 3(合計スコア6または7または8)、Grade X(分化度の評価が不可能)、Any Grade(Gradeは問わない)
  • 5)AJCCでは体幹と四肢においてN1を病期に分類
James D.Brierleyほか編.TNM悪性腫瘍の分類 第8版.2017年,金原出版.より作成

頭頸部、胸腔および腹腔内臓器の軟部肉腫に病期の定義はありません(表2および表3)。

表2 軟部腫瘍【頭頸部】の進展度とUICC TNM分類
進展度
(臨床進行度)
TNM分類
限局 T1(最大径≦2cm)
  T2(2cm<最大径≦4cm)
領域リンパ節転移 N1
隣接臓器浸潤 T3(4cm<最大径)
T4a(眼窩/頭蓋底/硬膜/正中臓器/顔面骨格/翼突筋に浸潤)
T4b(脳実質/椎前筋/中枢神経に浸潤/頸動脈を取囲む)
遠隔転移 M1
James D.Brierleyほか編.TNM悪性腫瘍の分類 第8版.2017年,金原出版.より作成
表3 軟部腫瘍【胸腔、腹腔内臓器】の進展度とUICC TNM分類
進展度
(臨床進行度)
TNM分類
限局 T1(単一臓器に限局)
領域リンパ節転移 N1
隣接臓器浸潤 T2a(漿膜/臓側腹膜に浸潤)
  T2b(漿膜を超える顕微鏡的進展)
  T3(2臓器浸潤/漿膜を超える肉眼的進展)
  T4a(2部位以下浸潤多病巣性腫瘍)
  T4b(3-5部位浸潤多病巣性腫瘍)
  T4c(6部位以上浸潤多病巣性腫瘍)
遠隔転移 M1
James D.Brierleyほか編.TNM悪性腫瘍の分類 第8版.2017年,金原出版.より作成

2)治療の選択

治療には手術(外科治療)、薬物療法、放射線治療などがあります。手術、放射線治療は局所の療法で、薬物療法は全身的な治療です。転移があったり転移が疑われたりする場合は全身的な治療が必要です。悪性度の高い腫瘍では、転移が見つからなくても全身的な治療の併用が好ましい場合があります。

温熱療法、免疫療法と呼ばれる治療は、現在、骨軟部腫瘍(肉腫)の治療法として、確立されていません。

現在、軟部肉腫治療の主体は手術ですが、悪性度の高い腫瘍では、薬物療法や放射線治療を組み合わせて行う集学的治療が推奨される場合があります。

がんの治療では、生殖機能に影響してしまい、妊娠するための力が弱まったり、失われたりすることがあります。近年では、将来自分の子どもをもつ可能性を残すために、卵子や精子、受精卵を凍結保存する「妊よう性温存治療」という選択肢も加わってきました。妊よう性温存治療ができるかどうかについて、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

腫瘍が発生した部位(局所)にとどまっている場合、その局所の腫瘍を切除しますが、なるべく再発が起こらないように手術を行います。腫瘍は成長するときに、腫瘍の周囲に反応層と呼ばれる膜のようなものをつくりますが、この反応層の中にはすでに腫瘍細胞が入り込んでおり、反応層で切除すると再発率が高くなってしまいます。そのため、反応層の外側で周囲の正常組織とともに切除する広範切除が行われます(広範切除術)。

近年、腫瘍を大きく切除した後、再建として別の部位の皮膚、筋肉、骨などを切除部位に持ってきて細い血管を顕微鏡下でつないだり(再建手術)、静脈や人工血管を使って血管を移植したりする技術が進歩してきました。そのため、以前であれば切断するしかなかった場合でも、手足を残して機能が温存できるようになってきました(患肢温存術)。

腫瘍が大きくなって血管や神経が侵されてしまった場合は、手足の切断になることもあります。

リンパ節転移が疑われる場合は切除しますが、リンパ節郭清かくせいと呼ばれる系統的なリンパ節の切除が適切かどうかは分かっていません。

3.薬物療法

静脈から点滴で投与された抗がん剤は、血液の流れで運ばれて全身に行き渡り腫瘍細胞を死滅させます(全身投与)。

手術後に再発転移が起こる場合、検査では発見できない小さな転移(微小転移)が手術の時点ですでにあったことが考えられます。このような微小転移を治療するため、術前や術後に補助的に抗がん剤の全身投与を⾏うことを補助化学療法と呼びます。

また、肺転移巣やそのほかの転移巣の治療あるいは手術ができない場合に、薬物療法を行うこともあります。

使用する抗がん剤は、細胞障害性抗がん薬のドキソルビシン、イホスファミド、トラベクテジン、エリブリン、分子標的薬のパゾパニブなどです。トラベクテジン、エリブリン、パゾパニブは国内で小児に対する安全性が確認されておらず、原則的には16歳以上での使用となります。ドキソルビシンとイホスファミドは併用する場合があります。

乳児線維肉腫せんいにくしゅの治療では、初回手術での機能温存切除が困難である場合の薬物療法として、細胞障害性抗がん薬(ビンクリスチン+アクチノマイシンD)を用いる化学療法や分子標的薬のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害剤の使用が選択肢として考慮されることがあります。

従来、薬物療法は副作用が強く、つらい治療の1つでしたが、最近は副作用を軽減する新しい薬剤やいろいろな支持療法が⾏われ、安全に行うことができるようになっています。

4.放射線治療

腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍を小さくするために行います。しかし、軟部肉腫は放射線治療が比較的効きにくいものが多く、放射線治療を第一に選択することはあまりありません。

手術ができない場合や、手術前に放射線治療を行って腫瘍をできるだけ小さくして手術の際に大事な臓器を温存するためや、手術後に腫瘍の取り残しが考えられる場合などに行います(補助的放射線療法)。

5.病期別の治療

ⅠA、ⅠB、Ⅱ期については広範切除のみで治療します。ⅢA、ⅢB期についても広範切除が基本ですが、例えば滑膜肉腫かつまくにくしゅのように比較的化学療法の効果が高いことが期待される悪性度が高い腫瘍で、深部に発生した5cmを超えるような肉腫に対しては補助化学療法が推奨されます。

Ⅳ期でもリンパ節転移のみであれば、Ⅲ期と同じ治療方法をとることが可能な場合もあります。

遠隔転移がある場合は、すべての病巣が切除可能であれば、積極的に切除と化学療法が行われることもありますが、基本的には治癒は難しく、薬物療法が主体となります。

血行性転移を認める小児の軟部⾁腫の場合は、どの種類の腫瘍でも予後は悪く、決まった治療方法はありません。基本的な治療は薬物療法になりますが、状況に応じて原発巣や転移巣の切除が行われたり、放射線治療が行われることがあります。

6.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、学校のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケアは、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげます。がんと診断されたときから始まり、がんの治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます。

支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。

子どもの素晴らしい点は、適応能力がすぐれていることです。周りの人が障害を理解できれば、子どもは障害を克服する、すぐれた資質をもっています。

本人にしか分からないつらさもありますが、幼い子どもの場合、つらさを我慢したり、あるいは自分で症状を上手く表現できなかったりすることもあります。そのため、周りの人が本人の様子をよく観察したり、声に耳を傾けたりすることが大切です。気になることがあれば積極的に医療者(医師、看護師、薬剤師、理学療法士など)へ伝えましょう。

7.再発した場合の治療

再発腫瘍の予後は良くありません。治療の選択は、以前に行われた治療の種類や再発の場所、さらには全身状態などに左右され、標準的な方法はありません。唯一、局所のみの再発例に対して手術による広範切除が勧められますが、治療成績は良くありません。

遠隔転移で再発した場合、転移や子どもの状況に合わせて薬物療法や放射線治療が行われることもありますが、子どもの体力、病状の進行状況次第では緩和治療が最も優れた治療になることもあります。

更新・確認日:2022年10月28日 [ 履歴 ]
履歴
2022年10月28日 「小児がん診療ガイドライン 2016年版」および「軟部腫瘍診療ガイドライン2020」より内容を更新し、ウェブページで公開しました。
2021年07月01日 小児がん情報サービスから移動し、PDFで公開しました。
2014年04月22日 小児がん情報サービスで掲載しました。
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