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軟部肉腫〈小児〉

軟部肉腫〈小児〉 治療

軟部肉腫の治療は、手術(外科治療)、薬物療法、放射線治療などがあります。また、診断されたときから、がんに伴う心と体のつらさなどを和らげるための緩和ケア/支持療法を受けることができます。

子どものがんの治療は、大人のがん治療とは異なる部分があります。小児がんと診断された場合は、小児がんの医療を専門的に行っている病院(例えば小児がん拠点病院、小児がん連携病院など)で治療を受けるようにしましょう。できれば子どもの成長・発達に配慮した設備、医療者などの環境が整っている病院がよいでしょう。

横紋筋肉腫の治療については、「横紋筋肉腫〈小児〉 治療」のページをご参照ください。

手術(外科治療)、薬物療法、放射線治療、緩和ケアについて、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。
国立成育医療研究センターでは、小児がんの病院の紹介、小児がんの診断や治療などの医療に関する相談を随時、受け付けています。

1.病期(ステージ)と治療の選択

治療方法は、腫瘍(がん)の進行の程度を示す病期(ステージ)やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。

1)病期分類

すべての軟部肉腫に適用されるわけではありませんが、一般的には国際的な基準(TNM分類)を使って病期分類を行います。この基準では、がんの大きさ(T)、リンパ節への広がり(N)、他の臓器への転移(M)があるかどうかを調べます。これに加えて、顕微鏡で見た細胞の形や増殖のスピードから、がんの性質の悪さ(悪性度)を評価します。

軟部肉腫には非常に多くの種類(組織型)があります。そのため、これらをまとめて評価できるように、おなかや背中(体幹)、脚や腕(四肢)、おなかの奥(後腹膜)にできた軟部腫瘍については、病期分類の評価項目の1つとして悪性度が用いられています(表1)。
頭や首(頭頸部)、胸(胸腔)、おなかの中の臓器(腹腔内臓器)にできた軟部肉腫については、病期の定義はありません。がんがどの程度広がっているかを示す進展度を使って分類します(表2、表3)。

表1 軟部肉腫【体幹、四肢、後腹膜】の病期とTNM分類
病期 腫瘍のサイズ 1) リンパ節転移 2) 遠隔転移 3) 悪性度 4)
ⅠA T1 N0 M0 Grade 1、Grade X(低悪性度)
ⅠB T2、T3、T4 N0 M0 Grade 1、Grade X(低悪性度)
Ⅱ T1 N0 M0 Grade 2、Grade 3(高悪性度)
ⅢA T2 N0 M0 Grade 2、Grade 3(高悪性度)
ⅢB T3、T4 N0 M0 Grade 2、Grade 3(高悪性度)
Ⅳ Any T
(腫瘍のサイズは問わない)
N1 M0 Any Grade(Gradeは問わない)
Ⅳ Any T
(腫瘍のサイズは問わない)
Any N
(転移の有無は問わない)
M1 Any Grade(Gradeは問わない)
  • 1)T1(最大径≦5cm)、T2(5cm<最大径≦10cm)、T3(10cm<最大径≦15cm)、T4(15cm<最大径)、Any T(腫瘍のサイズは問わない)
  • 2)N0(すぐ近くにある領域リンパ節への転移なし)、N1(領域リンパ節への転移あり)、Any N(転移の有無は問わない)
  • 3)M0(離れた臓器などへの遠隔転移なし)、M1(遠隔転移あり)
  • 4)FNCLCC分類(悪性度はGrade 1<Grade 2<Grade 3); Grade 1(合計スコア2または3)、Grade 2(合計スコア4または5)、Grade 3(合計スコア6または7または8)、Grade X(分化度の評価が不可能)、Any Grade(Gradeは問わない)
James D.Brierleyほか編.TNM悪性腫瘍の分類 第8版 日本語版.2017年,金原出版.より作成
表2 軟部肉腫【頭頸部】の進展度とTNM分類
進展度 TNM分類
限局1) T1(最大径≦2cm)
  T2(2cm<最大径≦4cm)
  T3(4cm<最大径)
領域リンパ節転移 N1
隣接臓器浸潤 T4a(眼窩がんか 2)/頭蓋底ずがいてい 3)/硬膜こうまく 4)/正中臓器せいちゅうぞうき 5)/顔面骨格がんめんこっかく/翼突筋よくとつきん 6)に浸潤)
T4b(脳実質のうじっしつ 7)/椎前筋ついぜんきん 8)/中枢神経に浸潤しんじゅん/頸動脈けいどうみゃくを取り囲む)
遠隔転移 M1
  • 1)腫瘍が発生した場所にとどまっていて、周囲や別の部位へ広がっていない状態
  • 2)眼球が収まっている骨で囲まれた空間(目のくぼみ)
  • 3)頭蓋骨の底の部分で、脳を下から支えている骨
  • 4)脳や脊髄を包む膜のうち、最も外側にある膜
  • 5)体の中央付近に位置する臓器
  • 6)あごを動かしたり食べ物をかんだりするときに働く筋肉
  • 7)脳の本体にあたる組織
  • 8)首の骨(頸椎)の前側にある筋肉
James D.Brierleyほか編.TNM悪性腫瘍の分類 第8版 日本語版.2017年,金原出版.より作成
表3 軟部肉腫【胸腔、腹腔内臓器】の進展度とTNM分類
進展度 TNM分類
限局 T1(単一臓器に限局)
領域リンパ節転移 N1
隣接臓器浸潤 T2a(漿膜しょうまく/臓側腹膜ぞうそくふくまく 1)に浸潤)
  T2b(漿膜を超える顕微鏡的進展)
  T3(2臓器浸潤/漿膜を超える肉眼的進展)
  T4a(2部位以下浸潤多病巣性腫瘍たびょうそうせいしゅよう 2))
  T4b(3-5部位浸潤多病巣性腫瘍)
  T4c(6部位以上浸潤多病巣性腫瘍)
遠隔転移 M1
  • 1)臓器などの表面を包んでいる薄くて潤いのある保護膜(漿膜/臓側腹膜)
  • 2)1つの臓器や部位に、複数の腫瘍が発生している状態
James D.Brierleyほか編.TNM悪性腫瘍の分類 第8版 日本語版.2017年,金原出版.より作成

2)治療の選択

治療法は、病期や進展度に基づいて、手術(外科治療)、薬物療法、放射線治療などについて検討します。年齢や体の状態、生活環境などを考慮しながら、子ども本人の希望や気持ちを尊重し、担当医とよく話し合って決めていきます。

手術、放射線治療はがんがある部分を集中的に治療する局所の治療で、薬物療法は全身的な治療です。転移があったり転移が疑われたりする場合は、全身的な治療(薬物療法)が必要となります。現在、軟部肉腫の治療の中心は手術ですが、悪性度の高い場合は、転移が見つからなくても全身的な治療を組み合わせることがあります。また、必要に応じて手術、薬物療法、放射線治療を組み合わせた「集学的治療」を行うこともあります。

温熱療法、免疫療法と呼ばれる治療法については、現在のところ、軟部肉腫の治療法として確立されたものはありません。

なお、担当医から複数の治療法を提案され、選択を求められることもあります。治療を選ぶにあたって分からないことは、まず担当医に確認することが大切です。治療の選択に関する悩みや困りごとは、がん相談支援センターで相談することもできます。

病期別の治療例

ⅠA、ⅡB、Ⅱ期については通常は、がんの周囲の正常な組織を含めて切除する手術(広範切除)のみで治療します。

ⅢA、ⅢB期についても広範切除が基本です。ただし、深部に発生した5cmを超えるような軟部肉腫で、悪性度が高く、薬物療法(化学療法)の効果が期待できる場合(例えば滑膜肉腫かつまくにくしゅなど)は、手術前や手術後に補助的に抗がん薬を全身投与する薬物療法(補助化学療法)を行うことが推奨されます。

Ⅳ期については、リンパ節転移のみであれば、Ⅲ期と同じ治療方法で治癒を目指した治療ができる場合があります。一方、遠隔転移(がんが離れた臓器に広がった状態)がある場合は、すべての病巣が切除可能であれば、積極的に切除手術と薬物療法を組み合わせた治療を行うこともあります。しかし、全体としては完治が難しい場合が多く、基本的には薬物療法が中心となります(表1)。

病期のない軟部肉腫については、腫瘍のできた場所と種類によって治療法が異なります。そのため、それぞれの進展度に応じた最適な治療を行います(表2、表3)。

一般に、血管の流れに乗ってがんが広がる血行性転移を起こしている小児の軟部⾁腫の場合は、どのタイプの腫瘍でも治療が難しくなりやすいとされており、一律に決まった治療方法はありません。基本的な治療は薬物療法になりますが、一人ひとりの状況に応じてもともとの病巣(原発巣)や転移した病巣(転移巣)の切除を行ったり、放射線治療を組み合わせたりすることがあります。

手術(外科治療)、薬物療法、放射線治療、集学的治療、肉腫(サルコーマ)の分類、免疫療法、がん相談支援センターについて、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。

妊孕性にんようせい温存(妊娠するための力を保つこと)について

がんの治療が、将来の妊娠や出産に影響することがあります。近年、卵子や精子、受精卵、卵巣や精巣などの組織を凍結保存する「妊孕性温存治療」という選択肢も加わってきました。ただし、年齢や発達の状況によって利用できる方法は異なり、乳幼児などでは選択肢が限られる場合があります。まずは治療を開始する前に、妊孕性温存治療ができるかどうか、担当医に相談してみましょう。

妊孕性について、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。

2.手術(外科治療)

がん(腫瘍)が他へ広がらず、発生した部位(局所)だけにとどまっている場合、その部分の腫瘍を切除します。このとき、できるだけ再発を防ぐ工夫をして手術を行います。がんは成長するときに、周りに反応層と呼ばれる膜のような領域をつくります。しかし、この反応層の中にはすでにがん細胞が入り込んでいます。そのため、反応層のぎりぎりで切除すると再発する可能性が高くなってしまいます。これを防ぐために、反応層の外側にある正常な組織も含めて大きめに切除する手術を行います(広範切除術)。

近年では、再建の技術が大きく進歩し、がんを切除したところに別の部位の皮膚、筋肉、骨などを持ってきて細い血管をつないだり(再建手術)、静脈や人工血管を使って血管を移植したりできるようになりました。これにより、以前であれば切断するしかなかった場合でも、手足を残して機能を保つ手術(患肢温存術)を選べる機会が増えています。

ただし、がんが大きくなって血管や神経を巻き込んでいる場合は、やむを得ず手足の一部を切断する手術が必要になることもあります。

また、リンパ節への転移が疑われる場合は、そのリンパ節を切除します。しかし、転移が確認されていない周りのリンパ節まで含めて予防的に切除するリンパ節郭清かくせいを行うべきかどうかについては、まだはっきりとした結論が出ていません。

手術(外科治療)について、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。

3.薬物療法

薬物療法は薬を使って全身のがんを治療する治療法です。静脈から点滴で投与(全身投与)された抗がん薬は、血液の流れで運ばれて全身に行き渡り、がん細胞に作用して死滅させたり、増殖を抑えたりします。

軟部肉腫の薬物療法には、主に次の2つがあります。1つ目は手術の前後に行う薬物療法(補助化学療法)、2つ目はがんの進行を抑える目的で行う薬物療法です。

軟部肉腫では、手術後に再発して転移がみられることがあります。この場合、現在の検査では発見できない小さな転移(微小転移)が手術の時点ですでにあったと考えられます。このような微小転移を治療するため、手術前や手術後に補助的に抗がん薬を全身投与する薬物療法を補助化学療法といいます。

また、すでに肺などへの転移がある場合や、手術による切除が難しい場合には、病気の進行を抑える目的で薬物療法を行うことがあります。

軟部肉腫の治療に使用する主な薬剤には、細胞障害性抗がん薬(がん細胞の増殖を抑える薬)のドキソルビシン、イホスファミド、トラベクテジン、エリブリン、分子標的薬(がん細胞に特徴的な目印を狙って攻撃する薬)のパゾパニブなどがあります。トラベクテジン、エリブリン、パゾパニブは国内で小児に対する安全性が確認されていないため、原則として16歳以上が対象となります。ドキソルビシンとイホスファミドは併用する場合があります。

病気の種類に応じた薬剤を使って治療を行うこともあります。
乳児線維肉腫せんいにくしゅでは、最初の手術で大切な機能を残して切除することが難しい場合に、細胞障害性抗がん薬(ビンクリスチン+アクチノマイシンD)を用いる治療や分子標的薬のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害剤を用いる治療を検討することがあります。

また、胞巣状軟部肉腫では、最初に発生したがん(原発巣)や転移したがん(転移巣)の切除が難しい場合に、免疫チェックポイント阻害薬(患者自身の免疫力を高めることでがんを攻撃する薬)の抗PD-L1抗体による治療を検討することがあります。

以前は、薬物療法は副作用が強くつらい治療の1つと考えられていました。しかし最近では、副作用を軽減する新しい薬剤の開発や支持療法の進歩により、副作用やつらさを和らげながら、より安全に治療を行うことができるようになっています。

薬物療法について、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。
医療用医薬品を製品名等で検索できるウェブサイトです。

4.放射線治療

放射線治療は高いエネルギーの放射線をがんに照射する治療法です。がん細胞を死滅させて、腫瘍(がんの塊)を小さくするために行います。ただし、軟部肉腫は放射線治療が効きにくいものが多いため、最初から放射線治療だけをメインに選択することはあまりありません。

手術ができない場合や、手術前に放射線治療を行って腫瘍をできるだけ小さくしたい場合、手術後にがんの取り残しが考えられる場合などに行います(補助的放射線療法)。

放射線治療について、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。

5.緩和ケア/支持療法

小児がんになると、体や治療のことだけではなく、学校のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケアは、がんに伴う心と体のつらさや社会的なつらさを和らげます。がんと診断されたときから始まり、がんの治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます。

支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。

本人にしか分からないつらさもありますが、幼い子どもの場合、つらさを我慢したり、あるいは自分で症状をうまく表現できなかったりすることもあります。そのため、周りの人が本人の様子をよく観察したり、話をよく聞いてあげたりすることが大切です。気になることがあれば積極的に医療者(医師、看護師、薬剤師、理学療法士など)へ伝えましょう。

緩和ケア、さまざまな症状への対応について、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。

6.リハビリテーション

リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行います。また、心と体のさまざまなつらさを和らげる緩和ケアの一環としても、非常に重要な役割をもっています。

子どもは、がんやその治療の影響によって日常生活動作(ADL)が低下しやすく、リハビリテーションの強さや回数の調節が難しい面があります。年齢や性格に合わせて遊びの要素を取り入れたり、無理をさせないように配慮したり、工夫しながら進めます。

軟部肉腫の場合、全身のあらゆる部位から発生するため、発生した部位によって必要なリハビリテーションも異なります。治療の経過を見ながら、早期に、関連する診療科(例えば、形成外科や口腔外科、整形外科など)と連携し、一人ひとりに最適なリハビリテーションを行います。

がんとリハビリテーション医療、緩和ケアについて、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。

7.再発した場合の治療

再発とは、治療によってがんがなくなったと判断されたあとに、再びがんがあらわれることです。最初に発生したがん(原発巣)のあった場所やその近くに、再びあらわれることだけでなく、別の臓器で「転移」した状態で見つかることも含めて再発といいます。
軟部肉腫が再発した場合の治療は、再発した部位やこれまでに受けた治療内容、さらには全身状態などによって異なります。そのため、共通する標準的な治療方法はなく、一人ひとりの状態に合わせて治療を検討します。
最初のがんが発生した部位(局所)だけに再発した場合は、手術による広範切除(腫瘍の周りを含めて広く切除すること)が推奨されていますが、手術だけではがんを抑えることが難しいこともあります。

遠隔転移で別の臓器に再発した場合は、転移の状況や病状に合わせて薬物療法や放射線治療を行うことがあります。また、子どもの体力や病状の進行状況次第では、病気に伴う体や心のつらさを和らげ、家族と穏やかに過ごすための緩和ケアに重点を置くことが最も適した選択になる場合もあります。

薬物療法、放射線治療、緩和ケアについて、詳しく掲載しています。こちらのページは、小児がんに限らず全世代向けの情報です。
更新・確認日:2026年10月14日 [ 履歴 ]
履歴
2026年10月14日 「小児がん(血液腫瘍・固形腫瘍)診療ガイドライン 2026年版」より、内容を更新しました。
2022年10月28日 「小児がん診療ガイドライン 2016年版」および「軟部腫瘍診療ガイドライン2020」より内容を更新し、ウェブページで公開しました。
2021年07月01日 小児がん情報サービスから移動し、PDFで公開しました。
2014年04月22日 小児がん情報サービスで掲載しました。
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