「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」の基本的な情報については、「大腸がんについて」をご参照ください。
- Q1 大腸がんの手術を受けたあと、下痢や便秘などが起こりやすくなると聞きました。どのように対処すればよいですか。
- Q2 大腸がんの手術を受けることになりました。手術の前や手術後の食事で注意することはありますか?
- Q3 お酒は飲んでもよいですか?
- Q4 腸を切除したあと、おなかの中には空間ができるのですか?
- Q5 人工肛門を勧められました。人工肛門とはどのようなものですか。日常生活への影響はありますか。
- Q6 一時的な人工肛門(ストーマ)を閉じました。肛門から便がもれないか心配です。
- Q7 薬物療法を受けることになりました。副作用が心配です。
- Q8 治療後どのくらいで治療前のような生活に戻れるでしょうか?手術、内視鏡治療それぞれの場合について教えてください。
- Q9 転移をしていると言われました。どんな治療法がありますか?
- Q10 大腸を切除したあと、大腸に再発が見つかりました。もう一度手術を受けることを勧められましたが、何度も大腸を切除しても大丈夫でしょうか?
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Q1 大腸がんの手術を受けたあと、下痢や便秘などが起こりやすくなると聞きました。どのように対処すればよいですか。
A1大腸がんの手術のあとには、腸を切除した影響や癒着により排便が不規則になり、下痢や便秘になる、おなら(ガス)が出にくくなりおなかが張るといった症状がみられることがあります。多くの場合、手術から1〜2カ月たつと次第に改善してきます。症状ごとの対処法は以下をご確認ください。
下痢
下痢が続くと脱水症状になることがあるため、水や湯冷まし、スポーツ飲料を少しずつ飲みましょう。また、腸の過剰な働きによる下痢は、おなかを温めると症状が和らぐことがあります。食物繊維が多い食品、冷たい飲み物、牛乳、カフェインやアルコール飲料は腸を刺激し、下痢の原因になることがあるため避けたほうがよいでしょう。症状が続く場合には、担当医や看護師に相談しましょう。
便秘・おならが出ない・おなかが張る
便秘や腸閉塞を予防するために、手術後はできるだけ早くから体を動かすように心がけましょう。例えば、手術後の早い時期から歩き始めることで、腸の動きが早く回復し、腸の癒着による腸閉塞を防ぐことができます。
食物繊維を多く含む食品を食べたり、空腹時や起床時に冷水、野菜・果物ジュース、牛乳などを飲んだりすることで、腸が動きやすくなります。ただし、術後1カ月ほどは、消化しにくい食品を多くとると腸閉塞の原因となることがあるので、食物繊維は控えるようにしましょう。便秘になった場合は、便を出しやすくする薬(緩下剤など)を使用することもありますので、担当医に相談してみましょう。
排便が3日以上ないとき、下剤を使っても1~2日以内に便が出ないとき、腹痛や吐き気、嘔吐などの症状があるときは、担当医や看護師に相談しましょう。また、おならが出ない、腹痛、嘔吐、おなかがひどく張る(腹部膨満感がある)などのうち複数の症状がみられる場合は腸閉塞の可能性があるため、すぐに担当医や看護師に連絡しましょう。
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Q2 大腸がんの手術を受けることになりました。手術の前や手術後の食事で注意することはありますか?
A2がんの影響で腸が狭くなっている場合、手術の前は、便秘や腸閉塞にならないように、豆類や海藻などの食物繊維が多い食べ物や、油の多い料理など、消化しにくい食べ物は避けましょう。また、手術の前にいつまで食事がとれるか、食事内容に制限があるかどうかは、病気の状態や予定されている手術によって異なりますので、担当医や看護師に相談してください。
手術直後の入院中の食事は、水分やおかゆなどの消化のよいものから始めて、5日ほどかけて徐々に常食(普通のかたさのごはん)に戻します。退院後の食事に制限はありませんが、手術から間もない時期は、食物繊維が多い食べ物や、消化しにくい食べ物は避けたほうがよいでしょう。手術から1カ月後を目安に、少しずつ手術前の食生活に戻していきましょう。
人工肛門(ストーマ)を造設した場合も、食事に関する制限はありません。
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Q3 お酒は飲んでもよいですか?
A3必ずしも禁酒をする必要はありませんが、治療の内容や体の状態などによっても異なりますので、担当医に確認してみましょう。
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Q4 腸を切除したあと、おなかの中には空間ができるのですか?
A4手術の方法によりますが、がんがある部分を切除したあとは、残った腸管をつなぎ合わせます。そのため、おなかの中のもとの空間には、少し短くなった腸管がおさまることになります。
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Q5 人工肛門を勧められました。人工肛門とはどのようなものですか。日常生活への影響はありますか。
A5人工肛門とは、人工的に造られた肛門(便の出口)のことで、ストーマともいいます。一時的なもの(一時的人工肛門)と生涯使用するもの(永久人工肛門)があります。永久人工肛門は、主に、がんとともに肛門を切除した場合に使用します。
排便の方法としては、おなかに造った人工肛門部に袋(パウチ)を貼って、その中に便を集める方法(自然排便法)が一般的です。
自然排便法は多くの人が安心して使える方法ですが、排便や排ガスのタイミングを調整できず、パウチを貼った付近の皮膚がかぶれる、パウチと皮膚の間のすきまから便がもれるなどのトラブルが起こることもあります。このため、ストーマを造る場合は、日々のケアのポイントや、便を処理する方法など、ストーマの管理方法のコツを看護師などとともに練習して、手術後の生活を安心して送れるようにします。便をためるストーマ袋には防臭加工がしてあるため、トイレで便を処理するとき以外は臭うことがほとんどなく、仕事や旅行、お風呂、過度にならない程度の運動なども可能です。パウチにはさまざまなサイズや色のものがありますので、体や用途に合うものを選びましょう。食事にも特別な制限はありません。
ほかには、人工肛門からぬるま湯を入れて腸を刺激して便を洗い出す浣腸排便法という方法もあります。排便のタイミングを調節できる点がメリットですが、浣腸に1時間ほど時間がかかり、多量のお湯を腸の中に注入するためやり方にコツが必要などのデメリットもあります。自分の場合どちらがよいか、担当医や看護師などに相談してみましょう。
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Q6 一時的な人工肛門(ストーマ)を閉じました。肛門から便がもれないか心配です。
A6一時的なストーマを閉じたあと1カ月ほどの間は、肛門から便がもれる(便失禁する)ことがあります。これは、便をためる直腸や、肛門を締める筋肉を手術した影響によって起こります。便失禁は半年~2年ほどかけて徐々によくなっていきますが、切除した直腸やその周りの筋肉の状態には個人差があるため、その後も便失禁が続く場合があります。手術後の排便コントロールの見通しや、便失禁があった場合の対処の方法については、担当医や看護師によく確認しておきましょう。
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Q7 薬物療法を受けることになりました。副作用が心配です。
A7大腸がんの薬物療法で使う薬には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの種類があります。
なかでも、大腸がんの薬物療法の基本となるのは、細胞障害性抗がん薬です。細胞障害性抗がん薬で起こりやすい副作用の例としては、吐き気・嘔吐、食欲不振、体のだるさ、口内炎、味覚障害、下痢などがあります。また、手足症候群(手足の赤み、痛み)や、手足のしびれ、口やのどの締め付け感などが起こることもあります。
この中で、吐き気や嘔吐については、制吐薬によって予防したり和らげたりすることができるようになってきました。またこのほかにも、医療の進歩により、治療による副作用の症状を軽くするための予防、治療、ケアの方法が工夫されてきています(支持療法)。
副作用の種類や程度は、使用する薬や、個人の体質によって異なります。また、すべての副作用が起こるわけではありません。副作用を過度におそれることなく、治療を受ける前に、起こるかもしれない副作用の症状やその対処の方法を、担当医や薬剤師、看護師に確認しておきましょう。また、どのような症状があったらすぐに病院に連絡したほうがよいか、併せて確認しておくとよいでしょう。
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Q8 治療後どのくらいで治療前のような生活に戻れるでしょうか?手術、内視鏡治療それぞれの場合について教えてください。
A8手術の場合は、手術後1カ月が目安です。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動から始めて、1~3カ月程度で手術前の日常生活が送れるように、こまめに体を動かしましょう。ただし腹筋を使う激しい運動は、数カ月間は控えましょう。
気持ちや体力すべてが回復したと感じる時期は手術から2~3カ月後、という調査結果もあります。自分の体力に合わせて、徐々に活動の範囲を広げていくことが大切です。
内視鏡治療では、治療後1週間程度で治療前と同じような日常生活が送れるようになることがほとんどです。
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Q9 転移をしていると言われました。どんな治療法がありますか?
A9転移した場所や体の状態にもよりますが、大腸のがんと転移したがんの両方を切除できる場合は、両方とも切除することを検討します。転移したがんが切除できない場合は、薬物療法や放射線治療などを検討します。大腸のがんのみ切除できる場合には、大腸のがんを切除して、転移したがんに対する薬物療法や放射線治療などを行うこともあります。
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Q10 大腸を切除したあと、大腸に再発が見つかりました。もう一度手術を受けることを勧められましたが、何度も大腸を切除しても大丈夫でしょうか?
A10手術でがんを切除したあとに、再発することがあります。再発したがんが手術で完全に切除でき、手術による体への影響が許容できる範囲と判断された場合には、再手術を行うことがあります。分からないことや不安があるときには、担当医に相談しましょう。
「大腸がん(結腸がん・直腸がん) Q&A」参考文献
- 大腸癌研究会編.大腸癌治療ガイドライン 医師用 2024年版.2024年,金原出版.
- 大腸癌研究会編.患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版.2022年,金原出版.
- 日本がん看護学会監修.病態・治療をふまえたがん患者の排便ケア.2016年,医学書院.