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大腸がん

大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療

大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療、緩和ケアなどがあります。

1.病期と治療の選択

治療は、がんの進行の程度を示す病期(ステージ)やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。大腸がんの治療を選択する際には、次のことを調べます。

1)深達度

大腸がんは、粘膜に発生し、大腸の壁の中を徐々に深く進みます。がんが大腸の壁のどの深さまで広がっているかを示す言葉が深達度です。深達度は、アルファベットの大文字「T」に数字とアルファベットの小文字をつけて表示します。Tis〜T4bに分類され、数字が大きくなるほど、大腸がんが深く広がっています(図5)。

がんの深さが粘膜下層までにとどまるものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」といいます。

図5 大腸がんの深達度
図5 大腸がんの深達度の図
大腸癌研究会編.患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版.2022年,金原出版.より作成

2)病期(ステージ)

がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的で、大腸がんでは0期〜Ⅳ期に分けられ、進行するにつれて数字が大きくなります。

病期は、深達度、リンパ節転移・遠隔転移の有無によって決まります(表1)。

表1 大腸がんの病期
表1 大腸がんの病期の表
大腸癌研究会編.患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版.2022年,金原出版.より作成

3)治療の選択

治療は、標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。

図6は0期~Ⅲ期の、図7はⅣ期の大腸がんの標準治療を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

図6 0期~Ⅲ期の大腸がんの治療の選択
図6 0期~Ⅲ期の大腸がんの治療の選択の図
大腸癌研究会編.大腸癌治療ガイドライン 医師用 2022年版.2022年,金原出版.より作成

0期〜Ⅲ期では、主にがんを切除できるかどうかを判断し、切除できる場合には内視鏡治療または手術が勧められます。また、Ⅲ期もしくは再発リスクが高いⅡ期の場合は、手術のあとに薬物療法を行うことが勧められます(図6)。

図7 Ⅳ期の大腸がんの治療の選択
図7 Ⅳ期の大腸がんの治療の選択の図
大腸癌研究会編.大腸癌治療ガイドライン 医師用 2022年版.2022年,金原出版.より作成

Ⅳ期では、他の臓器に転移したがん(遠隔転移巣)が切除できるかどうかを判断します。遠隔転移巣、原発巣ともに切除可能な場合は、手術が勧められます。遠隔転移巣が切除可能であっても原発巣の切除ができない場合は、原則として、薬物療法、放射線治療などの手術以外の治療法が勧められます。遠隔転移巣の切除が不可能であって原発巣の切除が可能な場合で、原発巣による症状があるときなどは、原発巣の手術を勧められることがあります。

なお、転移しやすい部位は、肝臓や肺、腹膜、脳、骨などです。肝転移・肺転移の治療には、手術、薬物療法、放射線治療があります。転移した部位が切除可能なときは手術が行われることがあり、手術で切除できない場合でも薬物療法の効果があったときには、手術で切除可能となる場合もあります。脳転移の治療には、手術と放射線治療があります。

妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性を温存すること(妊娠するための力を保つこと)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.内視鏡治療

内視鏡を使って、大腸の内側からがんを切除する方法です。治療の適応は、がんがリンパ節に転移している可能性がほとんどなく、技術的に切除できる大きさと部位にある場合です。がんの深さでいうと粘膜下層への広がりが軽度(1mm)までにとどまっているがんです。

開腹手術と比べて体に対する負担が少なく、かつ、安全に行える治療ですが、出血や穿孔せんこう(穴が開く)が起こる場合もあります。治療のために入院が必要かどうかは、施設によって異なります。

切除した病変は病理検査を行い、組織型やがんの広がりの程度などを確認します。その結果、再発やリンパ節転移の危険性があると判明した場合には、後日追加の手術が必要になることがあります。

1)切除の方法

切除の方法には、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があり、病変の大きさや部位、肉眼で見た形(肉眼型)、予測されるがんの広がりの程度などによって治療方法が決まります。

(1)内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)

主に、キノコのような形に盛り上がった茎がある病変に対して行われます。内視鏡の先端からスネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーを出し、スネアを茎に掛けて病変を絞めつけて、高周波電流で焼き切ります。茎のない、1cmまでの小さなポリープに対しては、高周波電流を用いないで、そのままスネアで切り取るコールドポリペクトミーという方法が主に行われます。

(2)内視鏡的粘膜切除術(EMR)

病変に茎がなく、盛り上がりがなだらかな場合は、スネアが掛けにくいため、病変の下に生理食塩水などを注入してから、病変の周囲の正常な粘膜を含めて切り取ります(図8)。

図8 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
図8 内視鏡的粘膜切除術(EMR)の図

(3)内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

主にEMRで切除が困難な大きな病変に対しての治療法です(図9)。がんを浮きあがらせるために、病変の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムなどを注入してから、病変の周りを高周波ナイフで徐々に切開し、はぎ取る方法です。EMRと比較すると、治療に時間がかかります。また、出血や穿孔などのリスクも少し高くなります。

図9  内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
図9 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の図

2)内視鏡的治療の合併症

治療後に、出血や大腸に穴が開く穿孔が起こることがあります。治療中の出血は少量であることがほとんどです。

出血が起こると、血便が出ることがあります。穿孔が起こったときには、腹痛や発熱などの症状が出てきます。そのほかにも、治療後に何らかの体調の変化を感じたときには、医師や看護師に伝えることが必要です。

3.手術(外科治療)

内視鏡治療でがんの切除が難しい場合、手術を行います。手術では、がんの部分だけでなく、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節も切除します。がんが周囲の臓器にまで及んでいる場合は、可能であればその臓器も一緒に切除します。腸管を切除したあとに、残った腸管をつなぎ合わせます。腸管をつなぎ合わせることができない場合には、人工肛門(ストーマ:肛門のかわりとなる便の出口)をおなかに作ります(図10)。

1)結腸がんの手術

がんの周囲にあるリンパ節を同時に切除するために、がんのある部位から10cmほど離れたところで腸管を切除します。がんがある部位によって切除する腸管の範囲が決まり、部位により回盲部切除術、結腸右半切除術、横行結腸切除術、結腸左半切除術、S状結腸切除術などの方法があります。また、がんを切除できない場合には、便が流れるように迂回路を作る手術(バイパス手術)や人工肛門(ストーマ)を作る手術を行うことがあります。

2)直腸がんの手術

直腸は骨盤内の深く狭いところにあり、周りには前立腺・膀胱ぼうこう・子宮・卵巣があり、出口は肛門につながっています。直腸がんの部位や進行の状況により、直腸局所切除術・前方切除術・直腸切断術・括約筋間直腸切除術の中から適切な方法を選びます。

がんがある場所によって、肛門を残す場合と人工肛門(ストーマ)を作る場合があります。また、直腸の周囲には排尿機能や性機能を調節する自律神経があります。そのため、がんが自律神経の近くに及んでいなければ、手術後に機能障害が最小限ですむよう、自律神経を残す手術を行います(自律神経温存術)。

(1)直腸局所切除術

早期のがんなどで、がんとその近くの部分だけを切除すればよい場合には、がんが肛門のすぐ近くにあれば、がんを直接または内視鏡で見ながら切除する経肛門的切除を行います。それ以外に、うつぶせの状態でお尻側からメスを入れ、仙骨(骨盤の後ろ側の骨)の横からがんを切除する経仙骨的切除や経括約筋的切除と呼ばれる方法があります。

(2)前方切除術

おなか側から切開し、がんがある腸管を切除して、縫い合わせる方法です。腸管の切り口を上部直腸(腹膜反転部より上)で縫い合わせるのが高位前方切除術で、下部直腸(腹膜反転部より下)で縫い合わせるのが低位前方切除術です。低位前方切除術では、一時的な人工肛門(ストーマ)を作る場合があります。

(3)直腸切断術

肛門に近い直腸がんでは、がんを完全に治すことを目指して、直腸と肛門を一緒に切除し、永久的な人工肛門(ストーマ)を作ります。高齢の人では肛門を締める筋肉(肛門括約筋)の力が低下していることが多く、がんが肛門から離れていても、人工肛門の造設を勧められることがあります。また、直腸のみ切除して肛門を残す場合でも、腸管は縫い合わせないで、人工肛門を作るハルトマン手術を行うこともあります。

(4)括約筋間直腸切除術(ISR)

肛門に近い下部直腸がんでも、がんを切除でき、手術後に肛門の機能が保てることが見込めるときは、肛門括約筋の一部のみ切除して肛門を温存し、永久的な人工肛門(ストーマ)を避ける手術ができる場合があります。ただし、がんの深達度が深くなるにつれ再発率が高くなるという報告や、手術後に排便機能が低下する可能性もあるため、この手術が可能かどうかは、担当医とよく相談して決める必要があります。

人工肛門(ストーマ)について

人工肛門(ストーマ)をおなかに作る場合には、多くの人が不安を感じます。ストーマは一見「痛そう」に見えますが、痛みを伝える神経がないので、排泄時や触れた際に痛みを感じることはありません。

手術後に便を処理する方法や、ケアの方法を看護師とともに練習します。便をためるストーマ袋には防臭加工がされているため、トイレで便を処理するとき以外は臭うことはほとんどなく、扱いに慣れれば漏れることもありません。また、仕事や外出、軽い運動や入浴など、通常の生活を送ることができます。

図10 人工肛門(ストーマ)
図10  人工肛門(ストーマ)の図

3)腹腔鏡ふくくうきょう下手術・ロボット支援下手術

腹腔鏡下手術では、二酸化炭素でおなかをふくらませ、おなかの中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら手術を行います。腹腔鏡下手術は開腹手術に比べておなかのきず(創)が小さいため、手術後の痛みが少なく回復が早いという長所がある一方、開腹手術に比べて手術時間が長くなりやすくなります。がんの部位や体格、以前に受けた手術などにより、手術の難しさが左右されるため、腹腔鏡下手術を受けるかどうかは、担当医とよく相談してください。

また、腹腔鏡下手術と同じように、二酸化炭素でおなかをふくらませ、内視鏡と関節のついたロボットアームを挿入して手術を行うロボット支援下手術があります。腹腔鏡下手術と比較して、より繊細な手術操作が可能となると期待されています。しかし、長期的な治療成績についてはまだ十分には分かっていないため、ロボット支援下手術が可能かどうかは、担当医とよく相談してください。

4)術後合併症

縫合不全、創感染そうかんせん腸閉塞ちょうへいそくなどが起こることがあります。合併症が起こった場合には、それぞれの状況に応じて治療が行われます。

(1)縫合不全

腸管を縫い合わせたつなぎ目(吻合部ふんごうぶ)から腸の内容物が漏れることです。周囲に腹膜炎(腹腔の内面や臓器の表面を覆っている膜の炎症)が起こり、発熱や腹痛などの症状が出ます。直腸がんのように肛門に近いところでつなぐ手術では、ほかの場所に比べて縫合不全が起こりやすくなります。感染や炎症が軽い場合は食事の中止や、点滴治療で治ることもありますが、腹膜炎の症状がある場合は、再手術でおなかの中を洗浄し、人工肛門(ストーマ)を作ることが原則です。

(2)腸閉塞

腸閉塞は、腸の炎症による部分的な癒着ゆちゃく(本来はくっついていないところがくっついてしまうこと)などによって、腸管の通りが悪くなる状態のことをいいます。便やガスが出なくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐おうとなどの症状が出ます。多くの場合、食事や水分を取らずに点滴をしたり、胃や腸に鼻からチューブを入れて胃液や腸液を出したりすることなどで回復しますが、手術が必要になることもあります。

(3)排尿障害

手術の内容によっては、排尿を調節している自律神経が影響を受けることがあり、尿意を感じない、排尿してもスッキリしない、などの症状があらわれることがあります。また、尿が出せなくなることもあります。薬で改善することが多いですが、導尿(カテーテルという細い管を尿道から膀胱に挿入して尿を採る処置)が必要になることがあります。担当医と相談して、必要に応じて泌尿器科の医師の診察を受けるとよいでしょう。

(4)排便障害

手術後には、腸を切除した影響や癒着によって排便が不規則になったり、下痢や便秘、ガスが出にくくなりおなかが張ったりする症状があらわれる場合があります。多くの場合、手術から1〜2カ月たつと落ち着きます。

直腸がんの手術後には、1日に何度も便意を感じることがあります。下痢が起こった場合は、脱水症状を避けるため、水分を多めに取りましょう。担当医から整腸剤を処方されることがあります。

ガスが出にくくておなかが張ったり、便秘になったりした場合には、おなかを温めたり、マッサージをしたり、水分を十分に摂取することが大切です。担当医から緩下剤(便を柔らかくする薬)を処方されることがあります。排便や排ガスが全くない場合は腸閉塞の前触れの可能性があります。すぐに担当医に相談しましょう。

(5)性生活への影響

骨盤内には性機能に関係する神経があるため、男性では、直腸がんの手術後に勃起不全や射精障害などの性機能障害が起こることがあります。女性では感覚が弱まることがありますが、大きな障害になることはありません。多くの人が経験する悩みであり、治療などで機能が回復する場合もありますので、恥ずかしがらずに担当医に相談してみましょう。

4.薬物療法

大腸がんに対する薬物療法には、以下の2つがあります。

1)手術後の再発を防ぐ目的で行う「補助化学療法」
2)手術によりがんを取りきることが難しく、症状を緩和する目的で行う「切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法」

大腸がんの薬物療法で使う薬には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。治療は、これらの薬を単独または組み合わせて、点滴もしくは内服で行います。

細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を邪魔することで、がん細胞を攻撃する薬です。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質などを標的にして、がんを攻撃する薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぐ)薬です。

薬物療法で使用する薬の組み合わせは複数あります。どの種類の薬を使うかは、治療の目的、がんの状態や臓器の機能、薬物療法に伴って起こることが想定される副作用、点滴や入院の必要性や通院頻度などについて、本人と担当医が話し合って決めていきます。薬に関する詳しい情報は、治療の担当医や薬剤師などの医療者に尋ねてみましょう。

薬物療法で使われる薬の種類に関する情報は以下のページをご覧ください。

1)補助化学療法

手術後の再発を防ぐ目的で、Ⅲ期または再発のリスクが高いⅡ期の大腸がんの場合に行うことが推奨されています。補助化学療法では、細胞障害性抗がん薬を内服または点滴で用います。内服と点滴を併用する場合もあります。6カ月行うことが一般的ですが、がんの状態や用いる薬の種類によっては、3カ月で終わる場合もあります。

2)切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法

手術によりがんを取りきることが難しいと診断された場合に行います。がんを小さくして手術ができるようにしたり、がんの進行を抑え、延命および症状を軽減したりすることが目的です。薬物療法のみで完治することは難しいですが、薬物療法を行った方が、生存期間が延長し、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)が向上することが分かっています。

薬物療法を受けることができるかどうかは、以下の条件などを参考に検討し、「適応となる」「問題がある」「適応とならない」の判断をします(図11)。

  • 少なくとも、自分で歩くことができ、身の回りのことを行える
  • 肝臓や腎臓などの主な臓器の機能が保たれている
  • ほかに重い病気がない

「適応となる」のは、これらの条件が満たされており、一次治療の細胞障害性抗がん薬や分子標的薬の併用に問題がないときです。「問題がある」のは、これらの条件を十分に満たさないため、「適応となる」場合と同じ薬を使うことは難しいものの、体の状態や臓器の機能などに応じた薬物療法を受けることができるときです。体の状態が良くない、または主な臓器の機能が保たれていない、ほかに重い病気がある場合は「適応とならない」と判断されます。

また、大腸がんでは、一次治療を始める前に、がんの組織の遺伝子を調べる検査(RAS遺伝子検査、BRAFV600E遺伝子検査、MSI検査)を行い、その結果によって治療を検討することが勧められています。治療は、MSI検査で、MSI-Highの場合(遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくい状態の場合)と、そうでない場合とで分かれます(図11)。

また、このほかに、HER2ハーツ―と呼ばれるがん細胞の増殖に関わるタンパク質があるかどうかの検査を行うことも妥当と考えられています。

図11 一次治療を決定する際のプロセス
図11 一次治療を決定する際のプロセスの図
大腸癌研究会編.大腸癌治療ガイドライン 医師用 2022年版.2022年,金原出版.より作成

薬物療法には、複数のレジメン(薬剤の用量や用法、治療期間を明記した治療計画のこと)があります。まずは一次治療から開始し、治療の効果が低下した場合や、副作用が強く治療を続けることが難しい場合には二次、三次……と順に別のレジメンを続けていきます。どの段階まで治療が可能かはその人の状況によって異なります。

(1)MSI-Highの場合

一次治療では、免疫チェックポイント阻害薬を用いることが勧められています。

二次治療では、一次治療で使用しなかった細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を併用する複数のレジメンの中から検討します。一次治療で免疫チェックポイント阻害薬を使用しなかった場合には、二次治療で免疫チェックポイント阻害薬を用いることがあります。

三次治療以降では、二次治療までに使用しなかった細胞障害性抗がん薬もしくは分子標的薬のいずれか、または細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を併用する複数のレジメンの中から検討します。なお、二次治療までに免疫チェックポイント阻害薬を使用しなかった場合には、三次治療以降で免疫チェックポイント阻害薬を用いることがあります。

(2)MSI-Highでない場合

一次治療では、RAS遺伝子検査、BRAFV600E遺伝子検査の結果に関わらず、細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を併用する複数のレジメンの中から検討します。なお、RAS遺伝子検査、BRAFV600E遺伝子検査で遺伝子変異がなく、かつ、がんが下行結腸、S状結腸、直腸にある場合には、分子標的薬のみのレジメンを用いることがあります。

二次治療では、一次治療で使用しなかった細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を併用する複数のレジメンの中から検討します。また、RAS遺伝子検査、BRAFV600E遺伝子検査のいずれかで遺伝子変異が認められ、一次治療で分子標的薬のみの治療を行わなかった場合には、二次治療で分子標的薬のみを用いることがあります。

三次治療以降では、二次治療までに使用しなかった細胞障害性抗がん薬もしくは分子標的薬のいずれか、または細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を併用する複数のレジメンの中から検討します。また、RAS遺伝子検査、BRAFV600E遺伝子検査のいずれかで遺伝子変異が認められ、二次治療までに分子標的薬のみの治療を行わなかった場合には、三次治療以降で分子標的薬のみのレジメンを用いることがあります。

このページの情報は、2022年10月現在のものです。薬物療法に関する最新情報は、大腸癌研究会ホームページで「最新情報」として公開されますので、以下の情報もご確認ください。

3)薬物療法の副作用

細胞障害性抗がん薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えるため副作用が起こります。副作用には、だるさ、吐き気・嘔吐、食欲不振、便秘、下痢、口内炎、手や足の一部が赤くれたりしびれたりする(手足症候群)などの自分で気づく症状と、白血球の減少、血小板の減少、貧血、肝機能や腎機能の悪化などの検査で分かる副作用があります。

副作用の程度は人により異なりますが、副作用を予防する薬も開発されており、特に吐き気や嘔吐、便秘や下痢は、以前と比べて症状を落ち着かせることができるようになってきました。

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は、薬ごとにさまざまな副作用があらわれます。自分が受ける薬物療法について、いつどんな副作用が起こりやすいか、どう対応したらよいか、特に気をつけるべき症状は何かなど、治療が始まる前に担当医に確認しておきましょう。

5.免疫療法

免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2022年10月現在、大腸がんの治療に効果があると証明されている方法は、MSI-Highの場合に免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです。免疫チェックポイント阻害薬を使用する方法は、薬物療法の1つでもあります。免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法に関する情報は、関連情報「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療 4.薬物療法」をご覧ください。

なお、その他の免疫療法で、大腸がんに対して効果が証明されたものはありません。

6.放射線治療

主に、直腸がんの骨盤内の再発を抑える目的で行う「補助放射線治療」と、痛みや吐き気、嘔吐、めまいなどのがんの再発や転移による症状を和らげることを目的とした「緩和的放射線治療」があります。

1)補助放射線治療

切除が可能な直腸がんが対象で、主に、骨盤内の再発を抑えることを目的に、手術前に行うことがあります(術前照射)。多くの場合、薬物療法と一緒に行います。

2)緩和的放射線治療

直腸がんなどの骨盤内の腫瘍による痛みや出血、便通障害、骨への転移による痛みや骨折の予防、脳への転移による吐き気、嘔吐、めまいなどの神経症状などを改善する目的で行われ、腹部や頭部などに放射線を照射します。多くの場合、症状が改善します。なお、脳への転移に対する放射線治療には、転移の個数や大きさによって、脳全体に放射線を当てる全脳照射、転移した場所に放射線を集中させて当てる定位放射線照射があります。

3)放射線治療の副作用

放射線治療の副作用は、放射線を照射している期間中に起こるもの(早期合併症)と、治療が終了して数カ月から数年後に起こるもの(晩期合併症)があります。照射する部位によって、起こる可能性がある副作用はさまざまです。

治療期間中に起こる副作用は、だるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、皮膚炎(日焼けに似たもの)、白血球減少などがあります。頭部への照射では頭痛、嘔気、脱毛が、腹部や骨盤への照射では下痢、腹痛などがあります。

治療後しばらくして起こる副作用は、腸管や膀胱などからの出血や膀胱炎・腸炎、頻回の排便、頻尿、隣接する臓器とつながる穴(瘻孔ろうこう)ができることなどがあります。

7.再発した場合の治療

再発とは、治療によって、見かけ上なくなったことが確認されたがんが、再びあらわれることです。原発巣やその近くに、がんが再びあらわれることだけでなく、別の臓器で「転移」として見つかることも含めて再発といいます。大腸がんが再発する部位は、肝臓、肺、局所(がんがあったところの周辺)、腹膜、リンパ節で、吻合部(手術で腸管を縫い合わせたつなぎ目)に発生することもあります。

進行したがんほど再発率は高くなります。粘膜内にとどまるがん(0期のがん)はがんを完全に切除すれば、再発を起こすことはほとんどありません。Ⅰ期では約6%、Ⅱ期では約15%、Ⅲ期は約30%の再発率です。再発する人の約85%は手術後3年以内に、95%以上は5年以内に見つかります。

治療法としては、手術、薬物療法、放射線治療が中心です。再発といってもそれぞれの人で状態は異なりますので、状況に応じて治療法やその後のケアを決めていきます。

手術は、再発した臓器が1つで、完全に切除できる場合に検討します。再発した臓器が2つ以上で、それぞれが切除できる場合は手術を検討してもよいとされています。切除できない場合には、体の状態や再発した部位に合わせて、薬物療法や放射線治療または対症療法が勧められます。

なお、吻合部での再発や局所再発の場合は、手術によって治癒する可能性もあります。がんの再発によって腸閉塞になった場合は、バイパス手術や人工肛門(ストーマ)を作ることで食事ができるようになることがあります。

8.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケアは、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげます。決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まり、がんの治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます。

支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。本人にしか分からないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

なお、大腸がんでは、がんによって腸がふさがっている場合で、緊急の手術を避けるときや、薬物療法などの治療を行わないときには、症状を和らげるために、ステントと呼ばれるチューブのような器具を入れることもあります。

「さまざまな症状への対応」には、症状別に、がんそのものやがんの治療に伴って起こることがある症状や原因の説明、ご本人や周りの人ができる工夫などを紹介しているページへのリンクを掲載しています。

9.リハビリテーション

リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行われます。また、緩和ケアの一環として、心と体のさまざまなつらさに対処する目的でも行われます。

一般的に、治療中や治療終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

更新・確認日:2022年11月10日 [ 履歴 ]
履歴
2022年11月10日 「大腸癌治療ガイドライン 医師用 2022年版」より、内容を更新しました。
2020年10月27日 「3.手術(外科治療) 4)術後合併症 (3)腸閉塞」を更新しました。
2020年04月09日 「図8 大腸がんの治療の選択」を更新しました。
2020年01月30日 「大腸がん治療ガイドライン2019年版」より、内容の更新をしました。「5.薬物療法」「図8 大腸がんの治療の選択」を更新しました。「図12 腹腔鏡下手術」を追加しました。
2018年06月12日 「大腸癌治療ガイドライン 2016年版」「大腸癌取扱い規約 第8版(2013年)」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2018年02月21日 「大腸がん」のタイトルを「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」に変更しました。
2016年01月06日 「大腸癌治療ガイドライン2014年版」「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版」より、内容の更新をしました。「表3 手術による治癒が難しい進行・再発がんに対する化学療法」を追加し、「図9 拡大内視鏡写真」と「図13 ESDの施術の模様」を変更しました。
2013年03月26日 内容を更新しました。
2013年02月14日 「1.内視鏡治療」の図を更新しました。
2013年01月24日 「1.内視鏡治療」を更新しました。
2012年10月26日 更新履歴を追加しました。タブ形式に変更しました。
2011年11月09日 内容を更新しました。
1997年09月22日 掲載しました。
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