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全ページ表示がんの冊子でんし冊子大腸がん(結腸がん・直腸がん)(だいちょうがん[けっちょうがん・ちょくちょうがん])

更新・確認日:2018年06月12日 [ 履歴 ]
履歴
2018年06月12日 「大腸癌治療ガイドライン 2016年版」「大腸癌取扱い規約 第8版(2013年)」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2018年02月21日 「大腸がん」のタイトルを「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」に変更しました。
2016年01月06日 「大腸癌治療ガイドライン2014年版」「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版」より、内容の更新をしました。「表3 手術による治癒が難しい進行・再発がんに対する化学療法」を追加し、「図9 拡大内視鏡写真」と「図13 ESDの施術の模様」を変更しました。
2013年03月26日 内容を更新しました。
2013年02月14日 「1.内視鏡治療」の図を更新しました。
2013年01月24日 「1.内視鏡治療」を更新しました。
2012年10月26日 更新履歴を追加しました。タブ形式に変更しました。
2011年11月09日 内容を更新しました。
1997年09月22日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。

1)深達度

大腸がんは、粘膜に発生し、大腸の壁の中を徐々に深く進みます。大腸の壁は、5つの層に分かれており、内側から粘膜(M:mucosa)、粘膜下層(SM:submucosa)、固有筋層(MP:muscularis propria)、漿膜下層(SS:subserosa)、漿膜(SE:serosa)に分かれています(図6)。
図6 大腸壁の構造
図6 大腸壁の構造図
大腸癌研究会編「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2014年版」(金原出版)より作成
がんが壁のどの深さまで広がっているかを示す言葉が深達度です。アルファベットの略語で「T」と表示されます。深達度はTis〜T4bに分類され、数字が大きくなるほど、大腸がんが深く広がっています(図7)。
がんの深さが粘膜および粘膜下層にとどまるものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」といいます。
図7 大腸がんの深達度
図7 大腸がんの深達度の図
大腸癌研究会編「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2014年版」(金原出版)より作成

2)病期(ステージ)

がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。
病期は、深達度、リンパ節転移・遠隔転移の有無によって決まります。
病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。
病期は、0期、I期、II期、III期、IV期に分類されます(表1)。
表1 大腸がんの病期
表1 大腸がんの病期の表
大腸癌研究会編「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2014年版」(金原出版)より作成

3)治療の選択

大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。治療法は、がんの進み具合(病期)、全身状態、年齢、合併するほかの病気などを考慮して決定されます。
0期〜III期では、主にがんを切除できるかどうかを判断し、切除できる場合には内視鏡治療または手術を行います。切除できない場合には、薬物療法を中心とした治療を行います。IV期の場合は、治療方法を総合的に判断します。
図8は病期と治療の選択を図にしたものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図8 大腸がんの治療の選択
図8 大腸がんの治療の選択の図
大腸癌研究会編「大腸癌治療ガイドライン 2016年版」(金原出版)より作成

●生殖能力について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.内視鏡治療

内視鏡を使って、大腸の内側からがんを切除する方法です。治療の適応は、リンパ節に転移している可能性がほとんどなく、一括でとれる大きさと部位にある場合になります。がんの深さでいうと粘膜下層への広がりが軽度(1mm)までにとどまっているがんです。

1)内視鏡治療の長所と短所

大腸の内側からがんを切除するため、手術と比べて体に対する負担が少ない治療です。安全に行える治療ですが、出血や穿孔(せんこう:穴が開く)などが起こる場合もあります。治療に入院が必要になるかどうかは、施設によって異なります。
切除された病変は病理検査を行い、がんの広がりの程度などを確認します。その結果、治療の適応を超えており、リンパ節転移の危険性があることが判明した場合には、後日追加の手術が必要になることがあります。

2)切除の方法

切除の方法には、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があり、病変の大きさや部位、肉眼で見た形(肉眼型)、予測されるがんの広がりの程度などによって治療方法が決定されます。

(1)内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)

主に、キノコのように隆起した形の病変に対して行われます。内視鏡の先端からスネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーを出し、病変を絞め付けて、高周波電流で焼き切ります。最近では高周波を用いないで、そのままスネアで切り取るコールドポリペクトミーという方法も行われています。

(2)内視鏡的粘膜切除術(EMR)

病変に茎がなく、隆起がなだらかな場合などは、スネアが掛けにくいため、病変の下に生理食塩水などを注入して、病変の周囲の正常な粘膜を含めて切り取ります(図9)。
図9 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
図9 内視鏡的粘膜切除術(EMR)の図

(3)内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

主に大きな病変などEMRで切除が困難な病変に対しての治療方法になります(図10)。病変の粘膜下層に、ヒアルロン酸ナトリウムなどの薬剤を注入して、病変の周りや下を電気メスで徐々に切開しはぎ取る方法です。EMRに比較すると治療に時間がかかります。また、出血や穿孔などのリスクも少し高くなります。
図10  内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
図10  内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の図

3.手術(外科治療)

内視鏡治療でがんの切除が難しい場合、手術を行います。手術では、がんの部分だけでなく、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節も切除します。がんが周囲臓器にまで及んでいる場合は、可能であればその臓器も一緒に切除します。腸管を切除した後には、残った腸管をつなぎ合わせます。腸管をつなぎ合わせることができない場合には、人工肛門(ストーマ:肛門の代わりとなる便の出口)をおなかに作ります。

1)結腸がんの手術

がんの周囲にあるリンパ節を同時に切除するために、がんのある部位から10cmほど離れたところで腸管を切除します。がんがある部位によって切除する腸管の範囲が決まるため、手術には回盲部切除術、結腸右半切除術、横行結腸切除術、結腸左半切除術、S状結腸切除術などがあります。一方、大腸ががんでふさがれていて、がんを切除できない場合には、食べ物や便が流れるように迂回路を作る手術(バイパス手術)を行うことがあります。

2)直腸がんの手術

直腸は骨盤内の深く狭いところに位置しており、その周囲には前立腺・膀胱(ぼうこう)・子宮・卵巣があり、その出口は肛門に連続しています。直腸がんはその部位や進行の状況により、直腸局所切除術・前方切除術・直腸切断術・括約筋間直腸切除術などの術式の中から適切な術式を選んで手術を行います。また、直腸の周囲には排尿機能や性機能を調節する自律神経があり、がんがこの自律神経の近くに及んでいなければ、手術後に機能障害が最小限ですむよう、自律神経を手術中に確認して残す手術を行います(自律神経温存術)。

(1)直腸局所切除術

早期の直腸がんのように、がんとその近くの部分だけを切除すればよい場合、がんが肛門のすぐ近くにある場合には、がんを直視または内視鏡で見ながら切除する経肛門的切除を行います。それ以外に、うつ伏せの状態でお尻側から切開する経仙骨的切除および経括約筋的切除があります。

(2)前方切除術

おなか側から切開し、がんがある腸管を切除して、縫い合わせる手術方法です。腸管の切り口を腹膜反転部より上で縫い合わせるのが高位前方切除術で、下で縫い合わせるのが低位前方切除術です。低位前方切除術では、一時的な人工肛門(ストーマ)を作る(造設する)場合があります(図11)。

(3)直腸切断術

肛門に近い直腸がんや肛門にできたがんでは、直腸と肛門を一緒に切除し、永久人工肛門(ストーマ)を造設します(図11)。高齢の方では肛門括約筋の力が低下している方が多く、がんが肛門から離れていても、人工肛門の造設を勧めることがあります。また直腸を切除するが、肛門は切除せず、腸管は縫い合わせないで、人工肛門を作るハルトマン手術を行うこともあります。

(4)括約筋間直腸切除術(ISR)

肛門に近い下部直腸がんでも、一定の条件を満たしていれば、肛門括約筋(肛門を締める筋肉)の一部のみ切除して肛門を温存し、永久的な人工肛門を回避する手術をすることができる場合があります。ただし、がんが完治するかどうか、および患者さんの生活に大きな影響を及ぼす手術後の排便機能がどの程度保てるかについての研究はまだ十分とはいえず、担当医とよく相談して決める必要があります。
図11 人工肛門(ストーマ)
図11 人工肛門(ストーマ)の図

3)腹腔鏡(ふくくうきょう)下手術

腹腔鏡下手術は、炭酸ガスでおなかをふくらませ、おなかの中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら手術を行います。腹腔鏡下手術は開腹手術に比べておなかのきず(創)が小さいため、手術後の痛みが少なく回復が早いという長所がある一方、開腹手術に比べて手術時間が長くなりやすく、手術費用が若干高くなります。がんの部位や患者さんの体格、患者さんが以前に受けた手術などにより、手術の難しさが左右されるため、腹腔鏡下手術を考える際には、担当医とよく相談してください。

4)術後合併症

手術後の合併症とは、手術後の好ましくない症状や状態のことをいいます。縫合不全、創感染(そうかんせん)、腸閉塞(ちょうへいそく:イレウス)などです。合併症が起こった場合には、それぞれの状況に応じて治療が行われます。

(1)縫合不全

腸管のつなぎ目(吻合部:ふんごうぶ)から便が漏れることです。周囲に腹膜炎が起こり、発熱や腹痛などの症状が出ます。直腸がんのように肛門に近いところでつなぐ手術では、ほかの場所に比べて縫合不全が起こりやすいです。縫合不全がある場合に、腹膜炎の症状がある場合は、再手術でおなかの中を洗浄し、人工肛門を作ることが原則です。腹膜炎の症状がない場合は食事を止めて様子を見ることもあります。

(2)創感染

手術のときにできたおなかのきず(創)の縫合部分に、細菌などによる感染が起こることがあります。赤く腫れて膿が出る、痛みや発熱といった症状が起こります。抜糸や切開により膿を出す、抗生物質を投与するなどして改善します。

(3)腸閉塞

手術後に腸の動きが悪い、腸のどこかが癒着(ゆちゃく)などで狭くなるといった理由で、便やガスが出にくくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐(おうと)が起こるようになります。食事や水分をとらずに点滴を行ったり、鼻からチューブを胃や腸に入れ胃液や腸液を排出したりすることで多くが改善します。

(4)排尿障害

手術の内容によっては、排尿を調節している自律神経が影響を受けることがあり、尿意を感じない、排尿してもスッキリしない、などの症状があらわれることがあります。また、尿が出せなくなることもあります。薬物療法で改善することが多いですが、導尿(カテーテルという細い管を尿道から膀胱に挿入して尿をとる処置)が必要になったりすることがあります。担当医と相談して、必要に応じて泌尿器科の医師の診察を受けるとよいでしょう。

(5)排便障害

手術後には、癒着や腸を切除した影響などで排便が不規則になったり、便秘や下痢、ガスが出にくくなりおなかが張ったりする症状があらわれる場合があります。多くの場合、症状は手術後1〜2カ月で落ち着きます。
直腸がんの手術後には、一日に何度も便意を感じることがあります。下痢が起こった場合は、脱水症状を避けるため、水分を多めにとりましょう。担当医から整腸剤を処方されることがあります。
ガスが出にくくておなかが張ったり、便秘になったりした場合には、おなかを温めたり、マッサージをしたり、水分を十分に摂取することが大切です。担当医から緩下剤(便を柔らかくする薬)を処方されることがあります。排便や排ガスが全くない場合は腸閉塞の前触れの可能性があります。すぐに担当医に相談しましょう。

(6)性生活への影響

骨盤内には性機能に関係する神経があるため、直腸がんの手術後の男性では、勃起不全や射精障害などの性機能障害が生じることがあります。女性では感覚が弱まることがありますが、大きな障害になることはありません。多くの患者さんが経験する悩みであり、薬物療法などにより機能を回復する場合もありますので、恥ずかしがらないで担当医に相談してみましょう。

(7)人工肛門(ストーマ)

人工肛門(ストーマ)をおなかに作る場合には、多くの人が不安を感じます。ストーマは一見「痛そう」に見えますが、痛みを伝える神経がないので、排泄時や触れた際に痛みを感じることはありません。手術後に看護師とともに便の破棄の方法や、ケアの方法を練習します。防臭加工がされているため、トイレで便を破棄するとき以外は臭うことはほとんどなく、外出、入浴など通常の生活を送ることができます。

4.放射線治療

直腸がんの骨盤内の再発を抑える、人工肛門を避けるなどの目的で行う「補助放射線治療」と、痛みや吐き気、嘔吐、めまいなどのがんの再発や転移による症状を和らげることを目的とした「緩和的放射線治療」があります。

1)補助放射線治療

切除が可能な直腸がんが対象となります。放射線治療は主に手術前に行い(術前照射)、薬物療法と一緒に行う場合もあります。

2)緩和的放射線治療

直腸がんなどの骨盤内の腫瘍による痛みや出血、骨への転移による痛み、脳への転移による吐き気、嘔吐、めまいなどの神経症状などを改善する目的で行われます。多くの場合、症状が改善します。

●副作用について

放射線治療の副作用は、放射線を照射している期間中に起こるもの(早期合併症)と、治療が終了して数カ月から数年後に起こるもの(晩期合併症)があります。また、放射線が照射されている部位により症状は異なります。
治療期間中に起こる副作用は、だるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、皮膚炎(日焼けに似たもの)、白血球減少などがあります。頭部への照射では頭痛、嘔気、脱毛が、腹部や骨盤への照射では下痢、腹痛などがあります。
治療後しばらくして起こる副作用は、腸管や膀胱などからの出血や膀胱炎・腸炎、頻回の排便、頻尿、隣接する臓器と交通(瘻孔[ろうこう])ができることなどがあります。

5.薬物療法

薬物療法には、以下の2つがあります。
1)手術後の再発抑制を目的とした「補助化学療法」
2)手術による治癒が難しい状況で行われる「切除不能進行・再発大腸がんに対する化学療法」
副作用の対策が進歩したことから、多くの患者さんは、日常生活を送りながら外来で化学療法を受けることができるようになりました。
化学療法の基本となる薬は、フルオロウラシル(5-FU)です。5-FUの投与方法は、点滴とのみ薬があります。5-FUはその他の薬と組み合わせて使用されることも多く、5-FU(点滴)とレボホリナート(l-ロイコボリン、アイソボリン)に加えて、オキサリプラチンを組み合わせたフォルフォックス(FOLFOX)療法とイリノテカンを組み合わせたフォルフィリ(FOLFIRI)療法の2つの療法が柱となっています。
なお、上記の2)「切除不能進行・再発大腸がんに対する化学療法」では、分子標的薬と併用されることもあります。
分子標的薬としては、点滴のベバシズマブ(アバスチン)、ラムシルマブ(サイラムザ)、セツキシマブ(アービタックス)、パニツムマブ(べクティビックス)、アフリベルセプト(ザルトラップ)※1が使われます。その他にのみ薬のレゴラフェニブ(スチバーガ)、トリフルリジン(ロンサーフ)も使われます。
※1:大腸癌研究会ウェブサイト 大腸癌治療ガイドライン医師用2016年版の「切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法」に追記すべき臨床試験の結果について(2017年12月)

1)補助化学療法

一般的に、根治切除が行われたステージIII大腸がんの患者さんに対して、3カ月〜6カ月行われます。
補助化学療法としては、のみ薬であるカペシタビン(ゼローダ)、テガフール・ウラシル配合剤(UFT:ユーエフティ)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1:ティーエスワン)や、点滴で行うフォルフォックス療法、のみ薬と点滴を組み合わせるカペオックス(CapeOX:カペシタビンとオキサリプラチンの併用)療法が勧められています。

2)切除不能進行・再発大腸がんに対する化学療法

手術による治癒が難しい場合、がん自体を小さくして手術ができるようにしたり、がん自体の進行を抑え、延命および症状を軽減したりすることを目的として全身化学療法を行います。化学療法のみで完治することは難しいですが、化学療法を行ったほうが生存期間を延長し、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を向上させることがわかっています。
全身化学療法で使用する薬剤の組み合わせは複数あり、全身状態、合併症の有無、腫瘍の状態(がんの遺伝子の状態など)から治療方針を決定します。
一次治療から五次治療まで選択肢があり、まずは一次治療から開始し、効果が低下した場合は二次、三次と順に治療を続けていきます。五次治療まで進みますが、どの段階まで治療が可能かは患者さんの状況によって異なります。

(1)フルオロウラシル(5-FU:点滴)、カペシタビン(ゼローダ)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1)

副作用は比較的軽微ですが、下痢や口内炎などの粘膜障害、白血球の減少、手足の腫(は)れ、皮膚のしみ(色素沈着)や感覚異常、吐き気や食欲の低下などが起こる場合があります。

(2)フォルフォックス(FOLFOX)療法、カペオックス(CapeOX)療法、ソックス(SOX)療法

副作用としてしびれ(感覚性末梢[まっしょう]性神経障害)、白血球減少や血小板減少(骨髄抑制)、吐き気、下痢、口内炎、脱毛などがあります。フォルフィリ療法と比べて、吐き気などは軽い場合が多く、脱毛も軽くすむ可能性がありますが、投与された患者さんの8〜9割に感覚性の末梢神経障害があらわれる特徴があります。
この末梢神経障害は、寒冷刺激により誘発され、冷たいものを触ったり、冷たい飲み物を飲んだりすることで、手先にビリっとする感覚や、喉(のど)の違和感がみられます。治療開始当初は2〜3日で消失しますが、治療を継続するにしたがい回復が遅れ、治療後4〜5カ月で、1割の患者さんで日常生活に支障(箸が持ちにくくなるなど)を来すことがあります。

(3)フォルフィリ(FOLFIRI)療法、アイリス(IRIS)療法、カペイリ(CapeIRI)療法※2

副作用としては、骨髄抑制、吐き気、下痢、口内炎、脱毛などがあります。投与後24時間以内、特にイリノテカン投与中の早期にあらわれる下痢症状には、多くの場合、抗コリン薬が有効です。食欲の低下に対しては、制吐剤(吐き気止め)などを用いますが、症状を抑えることは難しい場合もあります。
※2:大腸癌研究会ウェブサイト 大腸癌治療ガイドライン医師用2016年版の「切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法」に追記すべき臨床試験の結果について(2018年5月)

(4)ベバシズマブ(アバスチン)、ラムシルマブ(サイラムザ)、アフリベルセプト(ザルトラップ)

一般的な化学療法の薬に比べて、だるさ、吐き気、嘔吐などの副作用は少ないとされていますが、高血圧、鼻出血や蛋白尿がみられます。まれ(1%前後)に出血が止まらない、消化管穿孔(しょうかかんせんこう:消化管に穴が開く)、血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう:血液のかたまりが生じて血管が詰まる)、高血圧緊急症や脳症といった重大な副作用が生じることがあります。

(5)セツキシマブ(アービタックス)/パニツムマブ(ベクティビックス)

がんの組織の遺伝子を調べて、RAS遺伝子(ラス遺伝子)の変異がない場合(約半数)に使います。
副作用として、吹き出物や乾燥、ひび割れといった皮膚症状があらわれます。この副作用が強くあらわれるほど薬の効果も高いとされています。症状が出る前から保湿剤を使ったスキンケアを行い、症状があらわれたときにはステロイド外用剤などで早めに対処することが必要です。

6.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。
以下に、全国がんセンター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【大腸がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表2 大腸がん(結腸・直腸)の病期別5年相対生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)
表2 大腸がん(結腸・直腸)の病期別5年相対生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)の表
全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2018年6月集計)による
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7.リハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

8.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんに伴う症状や治療による副作用に対しての予防、症状を軽減させる治療のことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。
大腸がんでは、骨転移などによる疼痛を緩和するための放射線照射や、腸閉塞の改善を目的としたバイパス手術や、疼痛緩和を目的としたステロイド剤による治療など、症状に合わせた治療を行うことがあります。

9.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●大腸がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。
参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

10.転移・再発

転移とは、がん細胞がおなかの中にこぼれ落ちたり、リンパ液や血液の流れなどに乗ったりして別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。再発とは、目に見えるがんを手術で全部切除できたようにみえても、時間がたってから再びがんが出現することをいいます。

1)転移

転移しやすい部位は、肝臓や肺、腹膜、脳、骨などです。転移した部位によって治療法が異なります。

(1)肝転移・肺転移の治療

手術、化学療法、熱凝固療法、放射線治療があります。転移した部位が切除可能なときは手術が行われます。また、手術で切除できない場合でも化学療法の効果があったときには、手術で切除可能となる場合もあります。

(2)脳転移の治療

脳転移の治療には、手術と放射線治療があります。放射線治療には、定位放射線照射、全脳照射があります。

2)再発

再発する部位は、肝臓、肺、局所(がんがあったところの周辺)、腹膜、リンパ節で、吻合部(ふんごうぶ:つないだところ)に発生することもあります。再発する人の約80%は手術後3年以内に、95%以上は5年以内に見つかります。
がんが進行するにしたがい再発率は高くなります。粘膜内がんはがんを完全に切除すれば再発は起こりません。固有筋層まで広がったがん(T2がん)では約6%、ステージIIでは約13%、ステージIIIは約30%の再発率です。
転移・再発といってもそれぞれの患者さんでの状態は異なりますので、状況に応じて治療法やその後のケアを決めます。肝転移・肺転移や吻合部での再発、局所再発では手術によって治癒する可能性もあります。腸閉塞になった場合は、バイパス手術や人工肛門を作ることで食事ができるようになることがあります。
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