がんの子どもの心や体のケア、家族へのケア、周りの方ができること、制度やサービス、入院治療後の生活、長期フォローアップなどの情報を掲載しています。併せてご活用ください。
1.入院治療中の療養
子どもにとっての入院生活は、検査や治療に向き合う療養生活に加え、発達を促すための遊びや学びの場でもあります。医師、看護師、保育士、療養支援の専門職(チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)、ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS)、子ども療養支援士など)、薬剤師、管理栄養士、理学療法士やソーシャルワーカー、各専門チーム、院内学級の教員などが連携し、多方面から患者とご家族を支援していきます。
また、きょうだいがいる場合には、保護者が患者に付き添う時間がどうしても多くなるため、きょうだいの精神的なサポートも重要になります。
入院中のさまざまな不安が軽減できるよう、抱え込まずに、多方面と効果的にコミュニケーションを取ることが大切です。
網膜芽細胞腫の入院治療は短期間の治療を繰り返すことが多くなります。全身麻酔を必要とするため、一般的な体調管理に加えて、ご家族の理解と協力が欠かせません。
医療費のことも含めさまざまな支援制度が整っています。「どこに相談したらいいのか分からない」というときには、まずは「がん相談支援センター」に相談することから始めましょう。また、各医療機関の相談窓口、ソーシャルワーカー、各自治体の相談窓口に尋ねてみることもできます。
2.日常生活について
退院して間もなくは、入院生活と治療の影響により体力や筋力が低下しているので、あせらずゆっくりと日常生活に慣れていくことが大切です。
また、経過観察中は感染を防御する力が十分には回復していないこともあるため、感染予防に努めましょう。全身化学療法を受けた場合は、治療後しばらくの間、予防接種が受けられません。近くでみずぼうそうや、はしかなどの特別な感染症が流行した場合は、対応について担当医にご相談ください。
食欲が低下して食事内容が偏る場合がありますので、栄養のバランスを考慮した食事を心がけるようにしましょう。
就園・就学や復学については、子どもの状態や受け入れ側の態勢によって状況が異なります。担当医やソーシャルワーカーと、時期や今後のスケジュール、さらに、活用できる社会的サポートについてよく話し合いながら進めていくことが大切です。
学校生活では子どもの様子を見ながら、担任の先生や養護教諭などと相談し、できることから徐々に慣らしていきましょう。
少なくとも片眼の視力が保たれている場合には、特別な対応は必要ありません。良い方の目の視力が0.3以上ある場合には、普通学校への通学が可能です。自治体によっては特別学級や、補助教員の手配などを検討することがあります。また、必要に応じて適切なロービジョン機器を使うこともありますので、教育委員会や学校と事前によく相談することが大切です。良い方の目の視力が0.3未満の場合は特別視覚支援学校(盲学校)への入学が選択肢に入ってきます。
日常生活を送る上での特別な注意はありません。紫外線による健康影響が懸念される過度の日焼けや疲れが残る強度の運動は避ける必要がありますが、できるだけ普段の生活リズムに沿った日常生活を送りましょう。
3.経過観察
眼球が温存できた場合は、眼球の中で再発していないかどうか、別に新しい腫瘍が生じていないかどうかなど、治療後の眼球の状態を確認することが必要となります。
眼球を摘出した場合は、義眼の具合や眼窩内で再発していないかなどを確認します。
診察の間隔は治療内容や眼の状態によって変わりますが、治療後半年は月1回、その後は2カ月ごとと少しずつ間隔をのばしていきます。必要があれば血液検査や頭部MRI検査を行います。
4.晩期合併症/長期フォローアップ
晩期合併症には、眼球に生じるものと、全身に生じるものがあります。
眼球の晩期合併症は、白内障、角膜障害、網膜障害、眼球萎縮などがあります。また視力不良の場合は斜視が生じやすくなります。眼球の合併症については腫瘍の経過観察とともに眼科診察を行い、必要に応じて治療を行います。
全身の晩期合併症は、成長や発達への影響、生殖機能への影響、臓器機能への影響、二次がんなどがあります。多くの合併症は全身化学療法に伴うものであり、成長に応じて小児科で評価されます。
二次がんは、遺伝性の場合に生じることが多く、治療後数年以上経過してから生じます。肉腫(筋肉、骨、神経などから発生する悪性腫瘍)の頻度が高く、早期発見のために有効な検査がないため、症状に応じて適切な検査を行うことが重要となります。
最近では、小児がん共通の長期フォローアップの重要性が指摘されており、眼以外の症状については他の腫瘍と同様のフォローアップを行うことが望ましいと考えられるようになってきました。
晩期合併症に適切に対処するためには、長期にわたる定期的な診察と検査による長期間のフォローアップが必要となります。また、治療の記録(薬物療法で使用した薬剤の名前や量、放射線治療の部位や量など)を残していくことも重要です。転居や結婚などにより生活環境や通院する医療機関が変わったときにも継続していきましょう。
晩期合併症の1つである妊孕性(妊娠するための力)の低下については、近年、卵子や精子、受精卵を凍結保存する「妊孕性温存治療」という選択肢も加わってきました。妊孕性温存治療ができるかどうかについて、治療開始前に担当医に相談してみましょう。
子どもは治療後も成長を続けていくため、発達段階に応じた、幅広いフォローアップケアが重要です。治療後は一人一人の患者に合わせて、いつ・どこで・どのようにフォローアップケアを行うかといった、長期フォローアップの方針を決めていきます。
治療部位以外でも体のことについて気になることがあれば、担当医に相談しましょう。