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全ページ表示がんの冊子慢性骨髄性白血病(まんせいこつずいせいはっけつびょう)

更新・確認日:2017年07月07日 [ 履歴 ]
履歴
2017年07月07日 「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新し、タイトルを「慢性骨髄性白血病・骨髄増殖性腫瘍」から「慢性骨髄性白血病」に変更、4タブ形式に変更しました。
2014年10月09日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討されます。
がんの進行の程度は、「病期」として分類されます。

1)病期

慢性骨髄性白血病の場合は、慢性期、移行期、急性転化期の3つに分けられます。

(1)慢性期

白血球数と血小板数は増加していますが、自覚症状を認めないことが多く、大部分の患者さんがこの時期に診断されます。この時期に治療を行わなかった場合や、治療を行っても効果が十分得られなかった場合には、3~5年で、移行期を経て急性転化期に進行します。移行期・急性転化期に進行すると、治療の効果が得られにくくなることから、慢性期を維持することが治療の目的です。

(2)移行期

慢性期と急性転化期の間の病期です。白血病細胞の増殖の能力が高まるとともに、分化する能力が失われ、骨髄や末梢(まっしょう)血中に芽球(がきゅう)と呼ばれる未熟な細胞の割合が増加します。その結果、治療による白血球数のコントロールが困難になり、脾臓(ひぞう)の腫大が進行する場合があります。貧血、出血傾向、発熱があらわれることもあります。また、明らかな移行期を経ないで急性転化期に移行する場合もあります。

(3)急性転化期

芽球期、急性期とも呼ばれ、骨髄、末梢血中で芽球が増加し、急性白血病に類似した状態となります。赤血球減少による貧血症状、白血球減少による感染症の合併、発熱、血小板減少による出血症状などがみられます。慢性期と同じような治療では白血球数のコントロールは困難で、白血病細胞が骨、皮膚やリンパ節に腫瘤(しゅりゅう)を形成することもあります。急性転化期では、白血病細胞が脳や脊髄(せきずい)の周りにある脳脊髄液や髄膜、脳自体にも浸潤(しんじゅん)することがあります。

2)治療の選択

中心となる治療は分子標的治療です。病期が進行した場合は、分子標的薬の増量・変更や化学療法との併用、造血幹細胞移植などが検討されます。

図3に、慢性骨髄性白血病の治療の大まかな流れを示しました。担当医と治療方針について話し合う際に参考にしてください。
図3 慢性骨髄性白血病の治療
図3 慢性骨髄性白血病の治療の図
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)、
「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」(日本血液学会)より作成

2.病期別の治療方針

治療の目的は白血病細胞を十分減少させることにより、病期の進行を抑え、慢性期を長期間持続させることです。慢性期を経て移行期・急性転化期に進行すると、同様の治療法では十分な効果が得られないため、治療方針の変更を検討します。

1)慢性期

慢性期と診断された場合は、分子標的薬のイマチニブ・ニロチニブ・ダサチニブのいずれかを選択します。イマチニブは最初に登場した分子標的薬で、長期間内服した場合の効果や安全性に関するデータが十分に蓄積されています。ニロチニブやダサチニブは、イマチニブの後に登場した分子標的薬で、イマチニブに比べて白血病細胞の量を速く減らすことができます。これら3種類の薬剤のいずれかがもっとも優れているわけではなく、薬剤により内服方法や有害事象 (内服に伴う副作用) が異なるため、持病や生活様式に応じて、自分に合った薬を選択することが重要です。また分子標的薬を開始した後は、確実に内服を続けることが非常に重要です。

治療効果が十分ではない場合や、薬の副作用などで内服を続けることが難しい場合には、前記の3種類の中で薬剤を変更したり、ボスチニブやポナチニブなどのほかの分子標的薬へ変更したりします。

※ポナチニブは治療中に生じたBCR-ABL遺伝子変異のうち、T315Iという変異が検出された場合に使われます。承認されて間もない薬のため、副作用について特に慎重に検討がなされています。

2)移行期

診断がついた時点で移行期の場合は、まず、ダサチニブやニロチニブの分子標的薬による薬物療法を行います。早期に高い治療効果が得られたときは、これらの薬剤を継続して経過をみることが可能ですが、慢性期の場合より慎重な観察が行われます。
一方、治療中に慢性期から移行期へ病状が進んだ場合は、これまでに使用していない分子標的薬へ変更します。同種造血幹細胞移植ができる場合には、分子標的薬の効果をみながら実施を検討します。

3)急性転化期

薬物療法として、分子標的薬単独ないし、分子標的薬と化学療法(細胞障害性抗がん剤)を併用する治療を行います。化学療法では急性白血病の治療と同様の薬剤を使用することが多くあります。

治療により慢性期に戻った場合でも、効果の持続期間が短いと考えられるため、年齢や体の全身的な状態に問題がなく、骨髄提供者(ドナー)が確保できれば、同種造血幹細胞移植を行います。
移植ができない場合には、分子標的薬などの薬物療法を継続します。薬物療法でも治療効果が得られない場合などには、ヒドロキシカルバミドなどの副作用の比較的軽い細胞障害性抗がん剤を使用して白血球数をコントロールすることで、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の維持を目指す治療が主体になります。

用語集

3.治療効果の判定

一般に血液のがんでは、症状や検査結果でがん細胞を確認できなくなった状態を「寛解(かんかい)」と呼びます。寛解となっても、体内にはがん細胞が残っており、治療を継続しなければ再発するため、完治(完全に治った状態)とは異なりますが、この寛解の状態を得ることが、治療の第一目標となります。

慢性骨髄性白血病では、寛解のかわりに奏効(そうこう)という指標が用いられ、検査の方法や効果の程度により血液学的奏効(HR)、細胞遺伝学的奏効(CyR)、分子遺伝学的奏効(MR)などと評価されます。慢性期の場合には、分子標的薬開始後3カ月、6カ月、12カ月の時点で奏効の程度を評価して、治療効果が十分であるかどうか判断することが一般的です。

1)血液学的奏効(HR:hematologic response)

血液検査で白血球・赤血球・血小板の数や分類が正常化して、かつ肝臓や脾臓の腫(は)れなどの症状が消失した状態を血液学的完全奏効 (CHR:complete hematologic response) といいます。

用語集

2)細胞遺伝学的奏効(CyR:cytogenetic response)

骨髄検査で採取した骨髄液を用いて、Gバンド法やFISH法を行いフィラデルフィア染色体陽性細胞の割合を調べ、以下のように判定します。
  • 細胞遺伝学的部分奏効 (partial cytogenetic response):
    骨髄の細胞のうち、フィラデルフィア染色体陽性細胞が、1~35%に減少した場合
  • 細胞遺伝学的完全奏効 (complete cytogenetic response) :
    フィラデルフィア染色体が検出できないほど減少した場合

3)分子遺伝学的奏効(MR:molecular response)

PCR法という遺伝子を増幅する方法で、血液を用いて検査を行い、BCR-ABL融合遺伝子をもつ細胞の割合を調べ、以下のように判定します。
  • 分子遺伝学的大奏効 (major molecular response):
    BCR-ABL融合遺伝子の割合が0.1%以下となった場合
  • 分子遺伝学的完全奏効 (complete molecular response):
    BCR-ABL融合遺伝子が検出されないほど減少した場合

4.薬物療法

初回の治療は分子標的薬を使用し、病期が進行した場合は分子標的薬の増量や変更を検討します。症状を緩和する目的で化学療法を行う場合もあります。

1)分子標的薬

初回治療では、イマチニブ・ニロチニブ・ダサチニブのいずれかを選択します。効果が得られない場合は、この3種類に加えてボスチニブ、ポナチニブなどの中から投与中の薬剤以外へ変更します。治療効果が良好な場合は投与を続けます。
分子標的薬は内服する薬であり、病状や合併症、年齢などを考慮し、問題がなければ外来で治療することが一般的です。BCR-ABLタンパク質を標的とする分子標的薬は効果がみられることが多く、病状を抑えることが可能です。しかし、薬を飲み忘れると効果が弱まるため、飲み忘れないよう注意が必要です。
現時点では、この分子標的治療は生涯にわたって継続する必要があるとされています。ただし、分子遺伝学的完全奏効のような高い治療効果が得られ、一定期間以上維持している患者さんを対象として、分子標的治療を中止する臨床試験が行われており、治療を中止できる可能性も期待されています。

※ポナチニブは承認されて間もない薬のため、副作用について特に慎重に検討がなされています。

2)細胞障害性抗がん剤(化学療法)

発熱や倦怠感、肝臓や脾臓の腫れなど白血病による症状の緩和と血球数を抑えることを目的として、細胞障害性抗がん剤のヒドロキシカルバミドやブスルファン、シタラビン(低用量)が使用されます。
慢性骨髄性白血病の診断がつくまでの短期間にヒドロキシカルバミドが投与される場合もあります。

5.造血幹細胞移植

造血幹細胞移植とは、大量の化学療法や全身への放射線治療などからなる移植前処置を行った後に、骨髄機能を回復させるため事前に採取した造血幹細胞を投与する治療です。慢性骨髄性白血病では、他の人(ドナー)の造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植により治癒(ちゆ)が期待できる場合もあります。移植によって、ドナー由来の血液細胞が、免疫作用により白血病細胞を排除することを期待します(この作用のことを移植片対白血病効果[graft versus leukemia effect] と呼ぶことがあります)。

分子標的治療の効果がなく慢性期から移行期・急性転化期に進行した場合や、初発で移行期・急性転化期にある患者さんの場合、全身状態や年齢、ドナーが見つかるかなどを考慮して移植ができるかを検討します。

移植を実施する場合に使用する造血幹細胞の種類は、骨髄、末梢血、臍帯血(さいたいけつ)などがあります。また年齢に応じて、前処置の強度を調節することがあります (骨髄非破壊的移植) 。

6.支持療法

支持療法とは、白血病細胞そのものを減少や死滅させる治療ではありませんが、症状や合併症、治療に伴う副作用を予防、軽減する治療で、血液のがんの治療を進めていく上で重要になります。

具体的には、治療に伴う白血球減少に備え、感染しやすい場所(口の中、気道、肛門周囲など)の治療やケア、白血球減少の状況での感染症の予防や治療のための抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌(カビ)薬の投与、貧血に対する輸血、血小板減少に対する血小板の輸血、その他血液製剤や吐き気止めの使用などです。長期にわたることの多い治療の間の精神的な支援を含めて、幅広い内容の支持療法が行われます。

7.臨床試験

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験や治験などの研究段階の医療が行われています。

関連情報

1)慢性骨髄性白血病の臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

関連情報

8.再発など

治療によって、がん細胞が正常な細胞に占める割合がある基準を下まわった場合に、寛解として治療効果があったとみなすことがあります。治療の効果により寛解あるいは治癒と判断された後でも、再びがんが出現することがあり、再発、再燃といいます。

慢性骨髄性白血病では、当初有効であった分子標的薬の治療効果が失われた場合や、治療中に移行期や急性転化期へ進行した場合に増悪(ぞうあく)とみなされます。
その際は、患者さんの状況に応じた治療方針が検討され、分子標的薬の変更や、細胞障害性抗がん剤による治療が行われます。移行期や急性転化期に進行した場合でも、これらの治療により再び慢性期を得られることがあります。また、移植により再び寛解が得られることもあります。

なお、移植後の再発の場合は、造血幹細胞を提供したドナーのリンパ球を投与するドナーリンパ球輸注(DLI)を行う場合もあります。

治療効果が得られない場合は、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持しながら病気と付き合っていくことを目指した治療を行うことになります。

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