脳腫瘍が疑われる場合、腫瘍の位置や大きさを確かめるために、CT検査やMRI検査などの画像診断を行います。また、脳に栄養を供給している血管と腫瘍との関係を確認するために、脳血管造影検査を行うこともあります。最終的には生検(腫瘍の一部を採取すること)もしくは手術を経て、病理組織検査と遺伝子解析(遺伝子検査)を行うことによって、詳細な診断を確定します。
1.CT検査、MRI検査
CT検査はX線を、MRI検査は磁気を使った検査です。
頭蓋骨の内部を描き出し、腫瘍の存在を調べます。多くの施設では、CT検査はMRI検査に比べて迅速に検査することができるため、緊急性があるときはCT検査を行います。CT検査やMRI検査では、病巣(腫瘍)をより鮮明に描き出すために、必要に応じて造影剤を使った検査を行います。造影剤を使うと、腫瘍の広がりや悪性度なども術前に推定することができます。
また、通常のCT検査やMRI検査に加え、特殊なMRI検査を行うことがあります。例えば、脳の血液の変化を視覚化するfMRI(functional MRI)を用いて、脳の運動野(手足の動きに関与する脳の部位)や言語野(言葉に関与する脳の部位:言語中枢)の位置を調べることがあります。
2.脳血管造影検査
造影剤を用いてX線で脳の血液の流れを撮影する検査です。従来は、大腿部の動脈に挿入したカテーテル(細い管)から造影剤を注入して、血管の走行と腫瘍との関係を調べていましたが、頻度は少ないものの脳梗塞が起こることがあり、脳腫瘍の手術前の検査としては避けることが増えています(必要と判断された場合には行います)。一方で、最近では脳血管造影のかわりに、CT装置やMRI装置を用いた比較的体への負担が少ない検査が行われることが多くなっています。
- 3D-CTアンギオ検査:造影剤とヘリカルCT(らせん状に連続回転して撮影していく方式のCT装置)を用い、脳血管の構造を立体的に映し出して詳しく調べる検査です。
- MRA検査:MRI装置を用い、脳の血管の様子を立体的に観察して詳しく調べる検査です。
その他、脳血管造影検査時に麻酔薬を使用して左右大脳半球(左脳、右脳)の優位半球を判定する(言語中枢が左右のどちらにあるかを確認する)検査が行われることもあります(和田テスト:プロポフォールテストともいいます)。
これらの診察や検査によって、腫瘍の発生部位や広がりなどを推測することが可能です。しかし、診断を確定するためには、手術によって腫瘍を採取しての病理検査(病理診断)や遺伝子検査が必要です。
3.腫瘍マーカー検査
現在のところ、脳腫瘍では、診断や治療効果の判定に使用できるような特定の腫瘍マーカーはありません。