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脳腫瘍〈成人〉

脳腫瘍〈成人〉 治療

脳腫瘍〈成人〉の治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法があります。また、診断されたときから、がんに伴う心と体のつらさなどを和らげる緩和ケア/支持療法を受けることができます。気になることがあれば遠慮せずに医療者や相談支援センターに相談しましょう。

1.悪性度(グレード)と治療の選択

治療法は、がんの性質や進行の程度、体の状態などに基づいて検討します。脳腫瘍の治療を選択する際には、悪性度(グレード)を調べます。治療の選択に関わる腫瘍の悪性度(グレード)や分類について、分からないことや気になることがあれば、遠慮せずに担当医に確認しましょう。

1)悪性度(グレード)

脳腫瘍では、他のがんのようなTNM分類やステージ分類はありませんが、生検や手術によって摘出した腫瘍組織の病理診断や遺伝子検査を基に、悪性度(グレード)を診断します。グレードは、治療をしない場合の、腫瘍の増大・進行、予後の目安で、脳腫瘍では1~4の4段階に分けられます。グレード1は良性腫瘍で、手術で取り除くことができれば、再発の危険はほとんどありません。グレード2~4は悪性腫瘍で、グレードが上がるにつれて、腫瘍の増殖速度が速くなり、悪性度が増します。

グレードの診断(腫瘍の分類)は、WHO(WHO:World Health Organization)分類に基づいて行います。最新版の2021年WHO分類では、腫瘍組織の遺伝子検査を基にした遺伝子診断への移行が進み、病理診断名も変更されています。

原発性脳腫瘍のうち、2016~2019年の「全国がん登録」で、患者の数が多い24種類の組織型・グレードおよび年齢の中央値(対象者を年齢順に並べたとき、ちょうど真ん中になる人の年齢:脳腫瘍は種類によってかかりやすい年齢が異なります)を以下に示します(表5)。

表5 主な原発性脳腫瘍と発生状況
組織型の分類 グレード 脳腫瘍全体に
占める割合(%)
年齢(中央値)
神経上皮性腫瘍 神経膠腫(グリオーマ) 星細胞腫 2 1.2 49
3 1.3 60
乏突起膠腫ぼうとっきこうしゅ 2 0.6 46
3 0.5 51
乏突起星細胞腫 2 0.2 51
膠芽腫こうがしゅ 4 7.0 69
上衣腫じょういしゅ 2 0.2 39
3 0.2 14
上衣下腫 1 0.1 55
毛様細胞性星細胞腫 1 0.5 17
グリア神経細胞系腫瘍 神経節膠腫しんけいせつこうしゅ 1 0.2 33
神経細胞系腫瘍 中枢性神経細胞腫 2 0.1 34
松果体腫瘍 松果体芽腫 4 0.1 45
胎児性腫瘍 髄芽腫ずいがしゅ 4 0.3 10
胚細胞腫瘍 胚腫(ジャーミノーマ) 4 0.5 19
中枢神経系の血液リンパ系腫瘍 中枢神経系悪性リンパ腫 4 3.9 72
髄膜腫 1 32.4 72
2 1.2 69
3 0.6 72
中枢神経系の間葉系、非髄膜性腫瘍 血管芽腫けっかんがしゅ 1 1.0 56
脊索腫せきさくしゅ 2 0.1 61
脳神経および脊髄神経腫瘍 神経鞘腫しんけいしょうしゅ 1 5.0 58
トルコ鞍部腫瘍 下垂体神経内分泌腫瘍 1 14.5 59
頭蓋咽頭腫ずがいいんとうしゅ 1 1.4 50
日本脳神経外科学会・日本病理学会編.臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第5版.2023年,金原出版,5-6ページを参考に作成

神経膠腫(グリオーマ)、中枢神経系原発悪性リンパ腫は、脳実質(大脳、小脳、脳幹など)から生じる腫瘍で、ほとんどが悪性です。一方で、髄膜腫、下垂体神経内分泌腫瘍(下垂体腺腫)、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫は、脳実質外の組織(髄膜、下垂体、脳神経など)から生じます。これらは基本的に良性です。

2)治療の選択

治療は、腫瘍の種類やグレードに応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。脳腫瘍は種類が非常に多いため、病理診断によるグレード分類が治療方針を決める要となります。ただし、年齢や発生した部位などから、病理診断を行うリスクが高いと考えられる場合で、画像検査による診断が確実と判断されるときは、生検や手術による確定診断を行わずに放射線治療などの治療を選択することもあります。

悪性腫瘍では、腫瘍の種類やグレードに応じて、手術や放射線治療、薬物療法を組み合わせた治療を行います。
良性腫瘍の場合は、腫瘍が大きく症状を引き起こしているときや腫瘍の増殖速度が速いときなどは、病状や機能の改善、悪化の防止を目的として手術を検討します。手術で腫瘍をすべて摘出することができれば治癒が期待できます。脳の奥深くに腫瘍があるなど全摘出が難しいときは、手術で腫瘍の一部を切除してから、放射線治療を行うことがあります。一方で、無症状の場合や腫瘍の増殖速度が遅いときは、すぐに治療をせず、定期的にMRI検査を行うなど、経過観察を選択することもあります。

以下は、脳腫瘍の標準治療の流れです(図6)。

図6 脳腫瘍の治療の選択
図6 脳腫瘍の治療の選択の図

なお、担当医から複数の治療法を提案されることもあります。治療を選ぶにあたって分からないことは、まず担当医に確認することが大切です。悩みや困りごとについては、がん相談支援センターで相談することもできます。

妊孕性の温存について

がんの治療が、性別にかかわらず妊孕性にんようせい(子どもをつくる力)に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕性を温存することが可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

禁煙について

喫煙を続けることは、がんの治療の効果を下げる原因になると考えられています。喫煙している場合には、治療が始まる前に少しでも早く禁煙しましょう。なお、手術までに禁煙できていないときは、手術が延期になることもあります。禁煙治療を希望する場合は、まずはがんの治療の担当医に相談しましょう。

2.手術(外科治療)

脳腫瘍の治療では、手術によって病変(腫瘍)をすべて摘出できれば、それが最も有効とされています。特にグレード1の良性脳腫瘍は、手術で完全に摘出できればほとんどの場合、再発することはありません。また、悪性脳腫瘍の場合でも、神経症状を悪化させないよう配慮しつつ、可能な限り腫瘍を摘出することが治療の原則です。手術は主に、頭蓋骨を開け、腫瘍を摘出する開頭手術を行います。腫瘍の場所によっては、鼻から内視鏡を入れて腫瘍を摘出する経鼻内視鏡手術を行うこともあります。

1)手術の種類

(1)開頭腫瘍摘出術

頭蓋骨の一部を一時的に取り外して脳を露出させ、顕微鏡などを用いて脳腫瘍を直接摘出する手術です。多くの脳腫瘍に適用される標準的な手法です。

(2)腫瘍生検術

腫瘍摘出術によって神経症状(運動や感覚、思考や言語などのさまざまな機能が障害されて起こる症状)が悪化するリスクが高い場合には、腫瘍の一部を採取して診断を確定させる生検(腫瘍生検術)を検討します。手法には、開頭生検術(開頭して腫瘍の一部を採取)、定位生検術(腫瘍の位置をMRIなどで測定し、特殊な針で深部から採取)、神経内視鏡下生検術(内視鏡で確認しながら採取)などがあります。
中枢神経系原発悪性リンパ腫や胚細胞腫瘍など、腫瘍をすべて摘出できなくても放射線治療や薬物療法で寛解が期待できる腫瘍と考えられる場合には、腫瘍生検術を選択します。腫瘍生検術は全身麻酔のほか、局所麻酔でも行われます。腫瘍摘出術と同様に頻度は低いものの、脳出血など重大な合併症を起こすリスクがあります。
脳腫瘍における生検は単なる検査ではなく、脳から組織を採取するための重要な手技として、外科手術の1つに位置づけられています。

(3)経鼻的腫瘍摘出術

神経内視鏡(脳や脊髄など神経組織の診断や治療のための内視鏡)を用い、鼻の穴から(経鼻的に)頭蓋底の骨を削って下垂体や脳の底面にアプローチして腫瘍を摘出する手術です。下垂体神経内分泌腫瘍や頭蓋咽頭腫などに用いられる方法です。

(4)水頭症に対する手術

腫瘍が脳室内や脳幹、小脳などに発生すると、髄液の流れがせき止められて脳室に液体がたまり、脳を圧迫する水頭症を発症します。水頭症により頭痛や急激な意識障害を起こすことがあり、緊急手術が必要になる場合があります。一般的な手術としては、脳室からチューブを通して腹部に髄液を流し、腹膜で吸収させる脳室腹腔ふくくうシャント術を行います。また、腫瘍の位置によっては、神経内視鏡を用いて第三脳室に小さな孔を開けてバイパス路を作る、第三脳室底開窓術かいそうじゅつを行うこともあります。

2)手術の進め方と安全を支える技術

脳腫瘍は、手術前の画像検査で正確に診断するのが難しいこともあります。手術を開始したあとに違うタイプの脳腫瘍と分かることも少なくありません。したがって、脳腫瘍の場合は手術中におおよその病理検査(術中迅速病理診断)が可能な施設で手術を受けることが望ましいとされています。受診先の施設でこの診断が可能かどうか、あらかじめ担当医に確認しておくとよいでしょう。

脳は部位により役割が決まっています。右前頭葉のようにあまり重要な働きをしていないところに腫瘍ができた場合は、腫瘍を肉眼的に全摘出することが可能です。一方で、運動野(手足の動きの中枢)や言語野(言葉の中枢)に腫瘍ができた場合は、腫瘍の全摘出により症状が悪化することがあるため、無理な摘出は行いません。そのときは、一部分の摘出(生検)によって分子診断、病理診断(病理検査)を行います。そのあとに、放射線治療や薬物療法を主とした治療を行うことになります。

また、悪性脳腫瘍の手術では多くの場合、より正確で安全に腫瘍を摘出するため、以下のような手術支援技術を用います。

手術ナビゲーション

腫瘍の位置を正確に把握して安全に手術を行うために、精度の高いナビゲーション装置を使います。手術直前のCTやMRIの画像データと位置感知カメラから腫瘍とその周辺を立体的に可視化し、手術器具の位置と周辺の情報をリアルタイムに表示して正確な手術をサポートします。

術中電気生理モニタリング

手術による運動麻痺まひなどの後遺症を避けるため、脳の重要な部分に電気刺激を行って、手術中に機能を確かめます。運動機能や感覚機能などをSEP(体性感覚誘発電位)やMEP(運動誘発電位)などの術中脳波や筋電図でモニターしながら手術を行います。使用する術中モニタリングの種類は腫瘍の位置で決まります。

覚醒下手術

言語機能や高次機能、運動機能を守りながら脳腫瘍を摘出する目的で行います。手術の途中で麻酔を調整して意識をはっきりさせ、実際に機能が保たれていることを確認しながら腫瘍を摘出します。脳は、体中の痛みを感じることができますが、脳自体には痛みを感じる神経がないため、会話しながら手術を行うことができます(脳を切除しても痛みを感じません)。

覚醒下手術が受けられる施設は、認定を行っている日本Awake Surgery学会のホームページで調べることができます(関連情報「日本Awake Surgery学会 認定施設」)。

術中MRI

脳などの様子をMRI画像でリアルタイムに確認しながら手術を行うシステムです。腫瘍がどの程度摘出できたかを確認するために、手術中にMRI撮影を行います。悪性脳腫瘍は、正常組織との境界が分かりにくいため、術中MRIは有用と考えられています。ただし、術中MRIが実施できる施設は高度な脳腫瘍手術を行う大学病院や専門病院に限られています。病院公式サイトなどで導入の有無は確認できますが、治療を検討したい場合は、まずは担当医に相談するのがよいでしょう。

3)手術の合併症

手術のリスクは、腫瘍のある部位によって異なります。悪性脳腫瘍の手術では、脳の機能を温存しながら、できる限り腫瘍を摘出することになります。画像診断の進歩により、腫瘍の部位や広がりを正確に把握することが可能になり、一般に、手術前に比べ手術後の神経症状(運動や感覚、思考や言語などのさまざまな機能が障害されて起こる症状)が悪化することは少なくなりました。しかし、手術によって起こる合併症は、腫瘍の部位や大きさによってさまざまです。

手術後には、一時的に生じる脳浮腫(脳のむくみ)により症状が悪化することや、てんかんを起こすことがあります。どのようなリスクがあるのか、手術前に担当医によく聞いておくことがとても重要です。

また、手術中や手術後に出血や脳梗塞などが起こると、麻痺や意識障害などの重い障害を起こすことがあります。そのため、手術後に強い頭痛や吐き気が見られたり、意識障害や運動麻痺などがあらわれたりした場合は、早急にCTやMRI検査を行い、必要に応じて再手術を検討します。

手術後数日間は脳浮腫が強まり、神経症状が悪化することがありますが、多くの場合、適切な薬を使うこと(支持療法)により改善します。

脳腫瘍の手術を受けるときは、合併症のリスクについて説明があります。多くの場合、手術の翌日から食事ができ、手術後1週間程度で退院が可能です。

3.放射線治療

高エネルギーのX線やそのほかの放射線を照射して、腫瘍細胞にダメージを与える治療方法で、腫瘍の性質に合った照射法を選択して行います。脳腫瘍の治療において、放射線治療は重要な治療法の1つであり、手術や薬物療法と組み合わせて行うこともあります。治療の際は、放射線をできるだけ腫瘍部分だけに照射し、正常組織には照射しないように、もしくは照射量が少なくなるようにします。

1)悪性脳腫瘍に対する放射線治療

悪性の脳腫瘍は正常組織との境界がはっきりしないため、腫瘍部分のみに放射線を照射することが難しいという特徴があります。そのため、通常は腫瘍と腫瘍が浸潤している周辺部分も含めて広めに照射する局所照射を行います。具体的には、1週間に数回、数週間にわたって放射線を分割して照射する分割照射を用いることで、正常組織への障害を抑えつつ、腫瘍にダメージを与えます(局所放射線治療)。

また、中枢神経系原発悪性リンパ腫や髄芽腫などの一部の原発性脳腫瘍や、転移性脳腫瘍では、脳全体に放射線を照射する全脳照射を行うこともあります。

2)良性脳腫瘍に対する放射線治療

良性の脳腫瘍は正常組織との境界が比較的はっきりしているため、腫瘍だけにピンポイントで、高い線量の放射線を照射できる場合があります。この技術は定位放射線治療と呼ばれ、主に直径3cm以下の腫瘍に対して行います。特に、ガンマナイフ(γガンマ線)やサイバーナイフ(Xエックス線)といった専用の装置を使うことで、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えつつ、1回から数回程度の短い期間で精度の高い治療を行うことが可能です。

良性腫瘍に対する放射線治療の目的は、腫瘍の成長を抑制し、症状の悪化を防ぐことです。必ずしも腫瘍を小さくすることだけが目的ではありません。

3)放射線治療の副作用

放射線治療の開始後、比較的早い段階であらわれる副作用としては、放射線が照射された部位に起こる皮膚炎、脱毛、中耳炎、外耳炎などのほか、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気、嘔吐おうと、頭痛、食欲低下などがあります。これらの症状の多くは軽症で、通常、照射後約1カ月で消失します。一方、放射線治療が終了して数カ月から数年たってから、脳の組織が縮小する脳委縮や脳の一部が壊死する放射線脳壊死などによって、認知機能の低下や運動機能障害が起こることもあります(晩期合併症)。こうした影響は高齢者にやや多い傾向がみられますが、副作用のあらわれ方や程度には個人差があります。

4.薬物療法

脳腫瘍に対する薬物療法は、腫瘍の種類や悪性度、個々の病態や体力(全身状態)などをもとに検討します。

1)悪性脳腫瘍に対する薬物療法

悪性の脳腫瘍に対しては、腫瘍の種類や個別の状況を踏まえながら、細胞障害性抗がん薬や分子標的薬などを用いた治療を行うことがあります。

2)良性脳腫瘍に対する薬物療法

良性の脳腫瘍に対しては原則として薬物療法は行いませんが、一部の下垂体神経内分泌腫瘍など高い治療効果が期待できる場合は行うこともあります。

3)薬物療法の副作用について

薬物療法の副作用については、使用する薬ごとに異なり、その程度も個人差があります。最近では副作用を予防する薬なども開発され、特に吐き気や嘔吐については、以前と比べて症状を予防・軽減することができるようになってきました。

しかし、副作用の種類や程度によっては、治療が継続できなくなることもあります。自分が受ける薬物療法について、いつどんな副作用が起こりやすいか、どう対応したらよいか、特に気をつけるべき症状は何かなど、治療が始まる前に担当医によく確認しておきましょう。また、副作用と思われる症状がみられたときには、迷わずに担当医に伝えましょう。

4)その他の治療

けいれん発作(てんかん)に対する治療

脳の神経細胞は、その一つ一つが適切な信号を送り出すことによって、体の働きを調節しています。ところが、何らかの刺激が原因で、脳のある場所の神経細胞が過剰に興奮し、一斉に信号を送ってしまうことがあります。このときに起こる発作をけいれん発作といい、発作が繰り返し起こる場合をてんかんと呼びます。脳腫瘍によって引き起こされるほか、その摘出後でも起こることがあります。

けいれん発作は興奮した脳とは反対側の手または足が自分の意思に反して震える、言葉が話せなくなる、異常なしびれや違和感が生じるなど、さまざまな症状があらわれます。脳全体に神経細胞の異常な興奮が広がると意識を失い、全身の筋肉が震えたり、つっぱったりする大発作となります。大発作が起こると、脳に酸素が十分行き渡らなくなり、重篤な事態を引き起こす可能性もあるため、速やかに医療機関を受診して発作を止める処置をしてもらう必要があります。

けいれん発作(てんかん)を予防するために、抗てんかん薬を使うことがあります。規則正しく服用を続けることで、発作を起こさずに生活することが期待できます。自らの判断で薬の飲み方を変えたり、服用をやめたりしないことが重要です。ただし、皮膚や粘膜が赤くなったり、かゆみなどの症状が出たりした場合は、すぐに医師か薬剤師に相談してください。なお、けいれん発作がある場合や起こす危険がある場合には、原則として車の運転はできません。

脳浮腫に対する治療

強い脳浮腫に対しては、ステロイド薬を用いた治療を行うことがあります。脳浮腫によって頭痛や手足の麻痺などさまざまな症状があらわれても、ステロイド治療により症状が改善することがあります。ただし、ステロイド薬の効果は一時的なものであることも多いです。また、腫瘍が大きくなる傾向にある場合には、ステロイド薬を増量しますが、胃潰瘍いかいようや糖尿病、感染(肺炎などを起こしやすくなる)、骨折、肥満などの副作用に注意が必要です。

5.主な脳腫瘍の治療方法

ここでは、原発性脳腫瘍のうち患者の数が多いものと、転移性脳腫瘍について、治療方法の概要を示します。

1)神経膠腫(グリオーマ)の治療

神経膠腫(グリオーマ)の治療は、可能な限り手術で腫瘍を摘出し、病理診断後に放射線治療および薬物療法を追加することが原則です。治療の詳細については上の関連情報をご参照ください。

2)中枢神経系原発悪性リンパ腫の治療

中枢神経系原発悪性リンパ腫は化学放射線療法(薬物療法と併用して放射線治療を行う方法)でいったんは腫瘍が消失することが多いため、生検で診断がつけば、全摘出を目的とした手術は行いません。通常は、薬物療法を先行し、経過を確認しながら放射線を脳全体にあてる全脳照射を組み合わせて治療を行います。高齢者に対しては、副作用を軽減するために薬物療法のみを行うこともあります。

3)髄膜腫ずいまくしゅの治療

初発の髄膜腫の治療で、腫瘍が摘出可能な部位にあるときは、手術で摘出することが基本です。再発を繰り返す場合や、手術により合併症を起こす可能性が高い場合は、定位放射線治療を行うことがあります。また、手術と定位放射線治療を組み合わせることもあります。なお、高齢者の場合や、症状がなく腫瘍が小さい場合は、治療を行わずに経過を観察することもあります。

4)下垂体神経内分泌腫瘍(下垂体腺腫)の治療

ホルモンの過剰分泌による症状がなく、視力・視野障害などの症状がない場合は、定期的にMRI検査を行いながら経過観察します。

症状がある場合は手術を行います。下垂体は鼻の奥にあるため、鼻の穴から神経内視鏡(脳や脊髄など神経組織の診断や治療のための内視鏡)などを用いて腫瘍を摘出します。
手術で腫瘍を完全に切除できなかった場合は、腫瘍を小さくしたり、大きくなることを防いだりする目的で、定位放射線治療を行うこともあります。また、手術で腫瘍を切除するとホルモンの産生が障害されることがあるため、治療後は、必要に応じてホルモンを補充する治療を行います。

なお、下垂体プロラクチン細胞神経内分泌腫瘍(プロラクチン細胞腺腫)などは、手術を行わずに薬物療法(内服薬)で治療する場合が多いです。下垂体成長ホルモン細胞神経内分泌腫瘍(成長ホルモン細胞腺腫)でも、薬物療法が有効な場合もあります。

5)神経鞘腫しんけいしょうしゅの治療

腫瘍が大きい場合は、手術で摘出します。手術によって顔面神経麻痺などが起こる可能性があるため、脳波や顔面神経モニタリングなどが必要となります。また、腫瘍の大きさや体の状態によっては、腫瘍の増大を阻止する目的で定位放射線治療を行うことがあります。

症状がなく腫瘍が小さい場合は、治療は行わず定期的にMRIを撮影して経過を観察することもあります。

6)頭蓋咽頭腫ずがいいんとうしゅの治療

症状がある場合は手術を行うのが基本です。腫瘍が大きい場合は開頭手術も検討しますが、下垂体神経内分泌腫瘍と同じように、鼻腔からの神経内視鏡で腫瘍を摘出することが増えています。また、手術で腫瘍を取りきれなかった場合や、再発を繰り返す腫瘍では、定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)などの治療を行います。なお、手術で腫瘍を切除することによって、下垂体ホルモンが低下した場合は、ホルモンを補充する治療が必要になります。

7)転移性脳腫瘍の治療

転移した脳腫瘍の数、場所と広がり、原発巣げんぱつそう(最初に発生したがん)や全身の状態によって、手術、放射線治療、薬物療法を単独もしくは組み合わせながら治療を行います。転移性脳腫瘍の治療は、最初のがんを治療した担当医を中心に、放射線科や脳神経外科など複数の科の医師が、連携をとりながら進めていきます。不安や疑問点が生じたときは、まず、最初のがんの担当医に相談をすることが大切です。治療では放射線治療が重要な役割を果たしますが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などを用いた薬物療法が有効な場合もあります。

一般的に腫瘍の直径が3cm未満と小さく、転移性腫瘍の個数が1~4個程度と少ない場合には、腫瘍だけにピンポイントで放射線をあてる定位放射線治療(定位照射:ガンマナイフ、サイバーナイフ)を行います。通常10個程度までは定位照射が可能ですが、個数が多い場合には、脳全体に放射線をあてる全脳照射が有効です。具体的な照射方法については個々の状況を踏まえて検討します。
神経症状が強い場合や、腫瘍の大きさが直径3cm以上と大きい場合は、定位放射線治療の効果が得られにくいため、手術を行います。手術後に定位照射や全脳照射を追加して行いますが、手術で腫瘍をすべて切除できた場合は、経過観察を行うこともあります(図7)。
転移性脳腫瘍が進行すると、髄膜ずいまく癌腫症がんしゅしょう(脳や脊髄を包む髄膜にがん細胞が広がって髄液中で増殖する状態)から水頭症を起こし、頭痛や意識障害の症状が出ることがあります。その場合には、脳室腹腔シャント術など髄液の流れを改善する手術を行うこともあります。詳しくは関連情報「脳腫瘍〈成人〉 治療 2.手術(外科治療) 1)手術の種類 (4)水頭症に対する手術」をご覧ください。

図7 転移性脳腫瘍の治療
図7 転移性脳腫瘍の治療の図
日本脳腫瘍学会編.脳腫瘍診療ガイドライン 成人脳腫瘍編2024年版.2024年,金原出版より作成

6.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するかもしれません。

緩和ケア/支持療法は、がんに伴う心と体のつらさ、社会的なつらさを和らげたり、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用、合併症、後遺症を軽くしたりするために行われる予防、治療およびケアのことです。決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まります。

緩和ケア/支持療法は、つらさを感じるときには、がんの治療とともに、いつでも受けることができます。我慢せずに医療者やがん相談支援センターなどに相談することも大切です。また、必要に応じて地域の病院と連携し、自宅でケアを継続することも可能です。お住まいの地域の医療機関や緩和ケアの詳細については、病院のソーシャルワーカーにご相談ください。

なお、がんやがんの治療によって、脱毛や皮膚・爪の変化などで外見が変化することがあります。支持療法の中でも、外見の変化によって起こるさまざまな苦痛を軽減するための支援として行われているのが、「アピアランス(外見)ケア」です。外見が変化することによる悩みや心配についても、医療者やがん相談支援センターに相談できます。

「さまざまな症状への対応」には、症状別に、がんそのものやがんの治療に伴って起こることがある症状や原因の説明、ご本人や周りの人ができる工夫などを紹介しているページへのリンクを掲載しています。
脳腫瘍の患者が利用できる社会保障制度や自宅での生活の注意点、支持療法に関する情報を掲載しています。
からだ・こころ・くらし、緩和ケア/支持療法、アピアランスケアに関する疑問や質問などは、がん相談支援センターにも相談できます。
がんの治療による外見の変化と、それに対するアピアランスケアについて紹介しています。

7.リハビリテーション

リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行います。また、緩和ケアの一環として、心と体のさまざまなつらさに対処する目的でも行います。

一般的に、治療中や治療終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについては、医師や看護師などの医療スタッフに確認しましょう。

脳腫瘍では、腫瘍や治療の影響で、運動や認知の機能にさまざまな障害が生じる可能性があります。しかし、障害の種類や程度によっては、自分で気が付くことが難しいことも少なくありません。また、入院中には分からなくても、退院後、日常生活の中で、記憶や注意などに問題が出てくることもあります。

ご家族や周りの人が、患者の様子を注意深く見守ることも重要となってきます。

脳腫瘍では、治療・リハビリテーションに関わる専門家(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)が病状と身体機能や認知機能を適切に評価しながら、リハビリテーションの実施を検討します。

1)運動障害に対するリハビリテーション

脳腫瘍では、運動機能に障害が残った場合に、リハビリテーションの実施が推奨されています。内容は、個々の患者の状況によって異なりますが、一般的には、理学療法や作業療法、言語療法、レクリエーション、ケースワーク(日常生活が困難な人に対して相談や援助を行うこと)などを組み合わせた包括的なリハビリテーションが効果的とされています。治療後だけでなく、治療中や、治療前に行うこともあります。

2)高次脳機能障害に対するリハビリテーション

脳腫瘍では、腫瘍や治療の影響により、注意障害(物事に集中できない、すぐに気が散ってしまう)、記憶障害、認知機能障害、遂行機能障害(計画を立てて物事を順序立てて行うことができない)などの高次脳機能障害が残った場合に、さまざまな訓練法を組み合わせた認知リハビリテーションの実施が推奨されています。

8.再発した場合の治療

再発とは、治療によって、見かけ上なくなったことが確認されたがんが、再びあらわれることです。原発巣のあった場所やその近くに、がんが再びあらわれることだけでなく、別の臓器で「転移」として見つかることも含めて再発といいます。

どのように再発するかは腫瘍の種類によって異なりますが、多くの場合、もともと腫瘍があった場所に近い場所で再発(局所再発)が起こります。

再発といっても一人ひとり状況は異なります。 病気の広がりや、再発までの期間、これまで受けてきた治療内容などによって総合的に治療法を検討します。例えば、再手術や放射線治療を行ったり、悪性脳腫瘍では薬物療法を再開したり、薬を変えたりすることがあります。それぞれの状況に応じて、治療やその後のケアを決めていきます。

転移について

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。原発性悪性脳腫瘍が肺や肝臓、骨などに転移することはほとんどありません。ただし、脳と脊髄せきずいはつながっているため、頭蓋内に発生した腫瘍が髄液(脳脊髄液)を伝わって脳の別の部分や脊髄に転移すること(播種はしゅ)があります。

悪性脳腫瘍の治療中に、背中や腰の強い痛みや足のしびれ、運動麻痺などがあった場合は、脊髄MRI検査を行って転移の有無を確認します。
なお、良性の脳腫瘍が転移することはありません。

更新・確認日:2026年03月27日 [ 履歴 ]
履歴
2026年03月27日 「脳腫瘍診療ガイドライン 成人脳腫瘍編 2024年版」「脳腫瘍取扱い規約 第5版」より、内容を更新しました。
2023年06月22日 「脳腫瘍診療ガイドライン 1.成人脳腫瘍編・2.小児脳腫瘍編 2019年版」より内容を更新しました。
2018年10月12日 「脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版」「臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2017年08月21日 掲載準備中としました。
2006年10月01日 更新しました。
1997年04月28日 掲載しました。
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