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全ページ表示がんの冊子でんし冊子脳腫瘍〈成人〉(のうしゅよう〈せいじん〉)

更新・確認日:2018年10月12日 [ 履歴 ]
履歴
2018年10月12日 「脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版」「臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2017年08月21日 掲載準備中としました。
2006年10月01日 更新しました。
1997年04月28日 掲載しました。

1.悪性度(グレード)と治療の選択

治療方法は、脳腫瘍の性質や体の状態などから検討します。脳腫瘍の進行の程度は、悪性度(グレード)として分類します。

1)悪性度(グレード)

脳腫瘍では、他のがんのようにTNM分類やステージ分類はありませんが、手術によって摘出した腫瘍組織から、病理学的分類や遺伝子診断に基づき、悪性度(グレード)が診断されます。グレードというのは、治療をしない場合の、腫瘍の増大・進行、予後の目安です。
グレードの診断は、世界保健機関(WHO)2016年分類に基づいて行われます。
これまで、脳腫瘍の分類は、主に顕微鏡で観察した組織学的検査に基づいていましたが、この分類では、腫瘍組織の遺伝学的検査がほぼ必須となっています。
原発性脳腫瘍のうち、患者さんの数が多い上位25種について、グレードおよび年齢の中央値(すべての対象者を年齢順に並べたとき、ちょうど真ん中にきた人の年齢)を表4に示します。
表4 主な原発性脳腫瘍の種類
表4 主な原発性脳腫瘍の種類の表
The Committee of Brain Tumor Resistry of Japan. : Neurologia medico-chirurgica 2017; Suppl: 57より作成
グレード1は良性腫瘍で、手術で取り除くことができると、再発の危険は少なくなります。グレード2〜4は悪性腫瘍で、グレードが上がるにつれて、腫瘍の増殖速度が速くなり、悪性度が増します。
神経膠腫(グリオーマ)、中枢神経系悪性リンパ腫は、脳実質から生じる悪性腫瘍です。
一方、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫は、脳実質外の組織から生じます。これらは基本的に良性で、転移することはありません。

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含めて検討し、担当医とともに決めていきます。
良性腫瘍は、正常組織との境界がはっきりしているため手術で切除できるものが多く、完全に切除すれば治癒が期待できます。脳の奥深くに腫瘍があるなど切除が困難な場合には、手術で腫瘍の一部を切除してから、放射線治療を行うことがあります。腫瘍の増殖速度が遅い場合は、すぐに治療せず、しばらく経過を観察することもあります。
悪性腫瘍では、腫瘍の種類や悪性度に応じて、手術や放射線、薬物療法を組み合わせた治療を行います。
図3は、脳腫瘍に対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図3 脳腫瘍の治療の流れ
図3 脳腫瘍の治療の流れの図
なお、がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

手術によって病変をすべて摘出できれば、それが最も有効な治療法です。特にグレード1の良性脳腫瘍は、手術で完全に摘出できればほとんどの場合再発することはありません。
また、悪性脳腫瘍であっても、手術による生検で中枢神経系悪性リンパ腫や胚細胞腫と診断がつけば、その後の薬物療法や放射線治療の効果が高いと考えられるので、無理に摘出する必要がない場合もあります。

しかし、多くの悪性脳腫瘍の手術の原則は、症状を悪化させないように可能な限り腫瘍を摘出することです。
右前頭葉のようにあまり重要な働きをしていないところに腫瘍ができた場合には、腫瘍を肉眼的に全摘出することが可能です。一方で、運動野(手足の動きの中枢)や言語野(言葉の中枢)に腫瘍が発生した場合には、腫瘍摘出により症状が悪化することがあるので、無理な完全除去は行いません。腫瘍の完全摘出よりも部分摘出による病理診断を行い、放射線や薬物療法での治療が主になります。

1)術中ナビゲーション

安全に手術を行うために、また、腫瘍が存在する部位を手術中に把握するために、精度の高いナビゲーション装置が使われます。

2)術中モニタリング

運動機能や感覚機能をSEP(体性感覚誘発電位)やMEP(運動誘発電位)といった術中脳波や筋電図でモニタリングしながら手術が行われます。

3)覚醒下手術

言語野や運動野の位置を同定し、言語機能や高次機能、運動機能を温存するために、覚醒下手術(途中に麻酔を緩めて意識をはっきりさせたまま行う手術)が行われます。脳は、体中の痛みを感じることができますが、脳自身の痛みを感じるレセプター(受容体)や領域がなく、脳を切除しても痛くありませんので、手術中に患者さんと会話しながら手術を行います。

4)術中MRI

腫瘍が摘出できたかどうか、術中にMRI撮影を行うこともあります。

手術や生検(せいけん)(腫瘍の一部を採取すること)で得られた腫瘍組織は、病理診断によって腫瘍の性質や遺伝子変異、悪性度を診断し、放射線治療や薬物療法の方針を決定します。
手術中に病理診断を行うことができるかどうかは手術を続ける上で大切です。
用語集
生検 

5)手術の合併症

手術では、脳の機能を温存しながらできるかぎり腫瘍を摘出します。
画像診断の進歩により、腫瘍の部位や広がりを正確に把握することが可能になり、一般に、手術前に比べ手術後の神経症状が悪化することは少ないですが、手術によって起こる合併症は、腫瘍の部位、大きさによってさまざまです。
手術後に一時的に生じる脳の浮腫により症状が悪化することや、てんかんを起こすこともあります。手術前に主治医にどのようなリスクがあるのか、よく聞いておくことがとても重要です。
また、手術中や手術後に出血などが起こると、麻痺や意識障害などの重篤な障害をきたすことがあります。そのため、手術後に強度の頭痛や吐き気がみられたり、意識障害や運動麻痺などが出現した場合には、早急にCT検査を行い、必要に応じて再手術を行います。

3.放射線治療

高エネルギーのX線やそのほかの放射線を照射して、腫瘍を障害する方法です。脳腫瘍の治療において、放射線治療は重要な治療法の1つであり、単独あるいは手術や薬物療法と組み合わせて行われます。
治療の際には、放射線をできるだけ腫瘍部分だけに照射し正常組織には照射しない、もしくは照射量が少なくなるようにします。
用語集
照射 

1)悪性腫瘍に対する放射線治療

悪性腫瘍は正常組織との境界がはっきりしないので、腫瘍のみに放射線をあてることが難しくなります。そのため、悪性腫瘍では1週間に数回、数週間にわたって、腫瘍を中心に一部の正常な脳も含めて放射線をあて、腫瘍を破壊します。
用語集
浸潤 

2)良性腫瘍に対する放射線治療

良性腫瘍は、正常組織との境界がはっきりしているため、正常な脳組織に放射線をあてず、腫瘍だけにピンポイントに、1回か数回に分けて放射線を照射することが可能な場合があります。
これは定位放射線治療と呼ばれ、ミリ単位の正確さで治療が可能で、ガンマナイフ(γ[ガンマ]線)、サイバーナイフ(X線)という特殊な装置を使います。良性腫瘍に対する放射線治療の目的は腫瘍を増大させないことなので、必ずしも腫瘍が小さくなるわけではありません。

●放射線治療の副作用

放射線治療後すぐにあらわれる副作用としては、放射線が照射された部位に起こる皮膚炎、脱毛、中耳炎、外耳炎などや、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲低下などがあります。これらの症状は照射後約1カ月以内で消失します。また、脳そのものの機能に影響が及ぶこともあります。中には、放射線治療が終了して数カ月から数年たってから起こる症状(晩期合併症)もあります。患者さんによって副作用の程度は異なります。

4.薬物療法

悪性脳腫瘍に対しては、腫瘍の種類や個別の状況を踏まえながら、細胞障害性抗がん剤や分子標的薬などが用いられることがあります。良性腫瘍に対しては原則的には薬物療法を行いませんが、一部の下垂体腫瘍では薬物療法だけで腫瘍が小さくなるものもあります。
なお、薬物療法によって副作用が生じることがあるため、体の状態やがんの状態を考慮した上で、適切な治療が選択されます。担当医から、治療の具体的な内容をよく聞き、不安な点やわからない点を十分に話し合った上で、納得できる治療を選びましょう。

●脳浮腫に対する治療

悪性脳腫瘍の患者さんでみられる強い脳浮腫に対しては、ステロイド治療が行われます。脳浮腫が強くなって頭痛や手足の麻痺などさまざまな症状があらわれても、ステロイド治療を行うと脳浮腫が改善し症状が劇的によくなることがあります。しかしステロイドの効果は一時的なものです。腫瘍が進行した場合には、ステロイドが増量されますが、胃潰瘍(いかいよう)や糖尿病、感染(肺炎などを起こしやすくなる)、骨折などの副作用に注意が必要となります。

5.主な脳腫瘍の特徴と治療方法

ここでは、原発性脳腫瘍のうちで、脳腫瘍全体における占める割合が多いものと、転移性脳腫瘍について特徴と治療方法の概要を示します。

1)神経膠腫 (グリオーマ)

(1)特徴

脳実質を形成する神経細胞(ニューロン)と神経膠細胞(グリア細胞)のうち、神経膠細胞が腫瘍化したものです。原発性脳腫瘍のうち、髄膜腫(後述)に次いで多くみられます。
神経膠腫は細胞の種類により、星細胞腫(せいさいぼうしゅ)、乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)に大きく分けられます。最も多くみられるのは星細胞腫で、悪性度からグレード2〜4に分けられます。 グレード4の星細胞腫は膠芽腫(こうがしゅ:グリオブラストーマ)と呼ばれます。

(2)症状

症状は、腫瘍の場所によってさまざまですが、膠芽腫のように麻痺などが短期間に急速に進むことがあります。

(3)治療方法

神経膠腫は浸潤性に増殖し、髄液の流れに乗って脳の別の部位に転移することがあります(播種[はしゅ])。また、正常組織との境界がはっきりしないため、腫瘍のすべてを手術で切除することが難しいのが特徴です。手術では、できるだけ多くの腫瘍を切除することを目指し、残った腫瘍に対しては、放射線治療や薬物療法を行います。
また、膠芽腫の治療も、一般に、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせて行います。

2)中枢神経系原発悪性リンパ腫

(1)特徴

脳には明らかなリンパ組織がありませんが、脳から発生した悪性リンパ腫を中枢神経系悪性リンパ腫といいます。脳に悪性リンパ腫が見つかったときに、全身を調べて脳以外に病変がないという診断になって、はじめて中枢神経系原発悪性リンパ腫と診断されます。
全身の悪性リンパ腫は、病理検査で「ホジキン細胞」をはじめとした特徴的な細胞がみられる「ホジキンリンパ腫」と、それ以外の「非ホジキンリンパ腫」に分類されます。他方、中枢神経系原発悪性リンパ腫は「非ホジキンリンパ腫」で、B細胞性という細胞の特徴をもつものがほとんどです。
なお、中枢神経系原発悪性リンパ腫では、眼球内リンパ腫を合併する可能性があるため、眼科や全身的な精密検査が行われます。また中枢神経系原発悪性リンパ腫と診断されていても、数年たってから全身にリンパ腫がみられることがまれにあります。

(2)症状

症状は、腫瘍の場所によってさまざまですが、急速に認知機能障害や麻痺などが進む可能性が高いです。

(3)治療方法

中枢神経系原発悪性リンパ腫は化学放射線療法(薬物療法と併用して放射線治療を行う方法)でいったんは腫瘍が消失することが多いので、手術による生検で診断がつけば、全摘出を目的とした手術は行いません。薬物療法を行ったあとで、放射線を脳全体にあてる治療(全脳照射)を組み合わせて行います。

3)髄膜腫(ずいまくしゅ)

(1)特徴

髄膜は頭蓋骨(ずがいこつ)の内側にある脳を包んでいる3層構造の膜です(外側から、硬膜[こうまく]、クモ膜、軟膜[なんまく]といいます)。髄膜から生じる腫瘍を髄膜腫といい、原発性脳腫瘍の中では、最も多い腫瘍です。
大部分の髄膜腫は良性ですが、まれにグレード2・3の悪性腫瘍もあります。

(2)症状

症状は、腫瘍の場所によってさまざまですが、腫瘍が小さいうちは症状がありません。脳ドックや頭部外傷などでCTやMRI検査を行い、偶然見つかることもあります。
腫瘍が大きくなると、運動麻痺や感覚障害、失語などの局所症状に加え、髄液の流れが悪くなり頭蓋の中にたまる水頭症や、腫瘍が周囲の組織を圧迫して生じる頭蓋内圧亢進(こうしん)症状が起こることがあります。

(3)治療方法

手術で腫瘍を摘出することが基本ですが、再発を繰り返す場合や、手術により合併症を来す可能性が高い場合には、定位放射線治療が行われることがあります。高齢者や、無症状で腫瘍が小さい場合は、経過をみることもあります。

4)下垂体腺腫

(1)特徴

下垂体腺腫は、脳の中心部にある下垂体の一部が腫瘍化したものです。下垂体は、ホルモンの分泌に重要な役割を果たしています。

下垂体腺腫は、以下の2つに分けられます。

●ホルモン産生腺腫
ホルモンを過剰に分泌する腫瘍(プロラクチン産生腺腫、成長ホルモン産生腺腫、副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫[クッシング病]など)

●非機能性下垂体腺腫(ホルモン非分泌性腺腫)
ホルモンを分泌しない腫瘍
ホルモンとは、生体内の特定の器官の働きを調節するための情報伝達を担う物質で、ごく微量で作用します。ホルモンの中枢である下垂体は、視床下部から指令を受けると、全身の各臓器に働きかけ、ホルモンの分泌を促します(表5)。
表5 下垂体から分泌される主なホルモン
表5 下垂体から分泌される主なホルモンの表

(2)症状

下垂体は視神経の下にあるので、腫瘍が大きくなると視力・視野障害が起こることが多くあります。特に視野の外側が見えにくくなる両耳側半盲という症状が特徴的です。また、腫瘍の圧迫でホルモンの産生が障害され(下垂体機能低下症)、女性では月経不順が、男性では体毛が薄くなったり、性機能障害(性欲低下や勃起不全など)がみられます。抗利尿ホルモンの産生が障害されることで、尿が大量に出る尿崩症が起こることがあります。
また、下垂体腺腫では、産生されるホルモンの種類により、以下のようにさまざまな症状が起こります(表6)。
表6 主な下垂体腺腫とその症状
表6 主な下垂体腺腫とその症状の表

(3)治療方法

ホルモンの過剰分泌による症状がなく、視力・視野障害などの症状がない場合には、MRI検査を行い経過観察します。
症状がある場合には手術を行います。下垂体は鼻の奥にあるので、鼻腔から神経内視鏡などを用いて腫瘍を摘出します。
手術で腫瘍を完全に切除できなかった場合などでは、腫瘍を縮小させたり腫瘍の増大を阻止する目的で、定位放射線治療を行うこともあります。
手術で腫瘍を切除するとホルモンの産生が障害されることがあるため、治療後、必要に応じて、ホルモン補充治療を行います。
プロラクチン産生腺腫は、手術せず内服薬での治療が可能です。成長ホルモン産生腺腫に対しては、ホルモン類似薬による治療も有効なことがあります。

5)神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)

(1)特徴

脳から出る神経は、それぞれ頭蓋骨を通り抜けて、目や耳、舌など頭部の各部分につながっています。神経鞘腫は、これらの神経を取り巻いて支えている鞘(さや)のような組織(神経鞘[しんけいしょう])から生じた腫瘍です。
発生部位は、聴神経である前庭神経が最も多く(聴神経鞘腫[ちょうしんけいしょうしゅ])、次いで三叉(さんさ)神経などに生じます。

(2)症状

聴神経鞘腫では、聴力低下、耳鳴り、めまい、歩行時のふらつき、顔面麻痺などの症状が生じることがあります。
また三叉神経鞘腫では、顔面の痛み・感覚低下が生じます。

(3)治療方法

腫瘍が大きい場合は、手術で摘出します。手術により顔面神経麻痺などが生じる可能性があるので、手術は脳波や顔面神経モニタリングなどが必要です。腫瘍の大きさや患者さんの状態によっては、腫瘍の増大を阻止する目的で定位放射線治療を行います。
症状がなく腫瘍が小さい場合には、定期的にMRIを撮影して経過観察することもあります。

6)頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)

(1)特徴

下垂体と視神経の近くに生じる腫瘍です。小児に多くみられますが、大人にも発症します。

(2)症状

腫瘍が大きくなると、腫瘍のすぐ近くにある視神経や視神経交叉(こうさ)部を圧迫するため、視力や視野の障害が起こります。また、下垂体や視床下部の圧迫によりホルモンの産生が低下し、月経不順や性機能障害、甲状腺機能低下などが起こりますが、尿が大量に出る尿崩症が特徴的です。

(3)治療方法

手術が基本です。下垂体腫瘍と同じように、鼻腔からの神経内視鏡により治療することが増えてきました。再発を繰り返す腫瘍では定位放射線治療を行います。手術で腫瘍を切除することによって、下垂体ホルモンが低下した場合は、ホルモン補助療法が必要になります。

7)転移性脳腫瘍

(1)特徴

転移性脳腫瘍は、他の臓器で生じたがんが、血液の流れによって脳に運ばれ、そこで増えることによって発生したものです。転移のもととなるがん種として、肺がんが約半数と多く、次いで、乳がん、大腸がんなどが多いとされます。

(2)症状

転移性脳腫瘍の症状は、頭蓋内圧亢進症状や局所症状など、腫瘍の大きさや位置によって異なります。また、てんかん発作、高次機能障害、精神症状などが発生することもあります。

(3)治療方法

転移した脳腫瘍の数と大きさ、分布、原発巣(げんぱつそう:最初にがんが発生した部位)のがんや全身の状態によって、手術、放射線治療、薬物療法を、単独もしくは組み合わせながら治療を行います。
特に、放射線治療は重要な役割を果たしています。転移した腫瘍が小さく、個数が少ない場合には、腫瘍だけにピンポイントに放射線をあてる定位放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフ)が行われます。患者さんの状況によっては脳全体に放射線をあてる全脳照射が有効なこともあるため、個々の状況を踏まえた検討がされます。
一般に、腫瘍の大きさが3cm以上の場合には、定位放射線治療の効果が得られにくく、症状を伴うことが多いため、手術が行われます。
また、分子標的薬の効果が見込まれる腫瘍であれば薬物療法を検討することもあります。
転移性脳腫瘍の治療は、原発巣のがんの担当医を中心に、放射線科や脳神経外科など複数の科の医師が、連携をとりながら進めていきます。不安や疑問点があった際には、まず原発巣のがんの担当医にしっかりと相談をすることが大切です。

6.生存率

脳腫瘍の治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、原発性脳腫瘍のうち、患者さんの数が多い上位25種について、脳腫瘍全国集計調査委員会(The Committee of Brain Tumor Registry of Japan)が公表している全国調査から算出された5年生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前の腫瘍の診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【原発性脳腫瘍の生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。
表7 原発性脳腫瘍の生存率(2005-2008年に治療を行った患者さん)
表7 原発性脳腫瘍の生存率(2005-2008年に治療を行った患者さん)の表
The Committee of Brain Tumor Resistry of Japan. : Neurologia medico-chirurgica 2017; Suppl: 57より作成
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7.リハビリテーション

脳腫瘍では、腫瘍や治療の影響で、運動や認知の機能にさまざまな障害が生じる可能性があります。しかし、障害が軽度の場合には、自分で気が付くことが困難なことも少なくありません。また、入院中にはわからなくても、退院後、日常生活の中で、記憶や注意などに問題を来すこともあります。

こうしたことから、脳腫瘍では、病状と身体機能や認知機能を適切に評価しながら、必要に応じてリハビリテーションの実施が検討されます。

1)運動障害に対するリハビリテーション

脳腫瘍では、良性・悪性や転移の有無に関わらず、運動障害(片麻痺や運動失調など)が残った場合に、リハビリテーションが有効であることが示されているため、実施が推奨されています。
リハビリテーションの内容は、個々の患者さんの状況に応じて計画が立てられます。一般的には、理学療法や作業療法、言語療法、レクリエーション、看護、ケースワークなどを組み合わせた包括的なリハビリテーションが効果的とされており、治療後だけでなく、治療と並行して行うこともあります。

2)高次脳機能障害に対するリハビリテーション

脳腫瘍の患者さんで、腫瘍や治療の影響で、高次脳機能障害(注意障害、記憶障害、遂行機能障害)が残った場合に、さまざまな訓練法を組み合わせた認知リハビリテーションの実施が推奨されています。
退院後、日常生活に不具合が生じたり、仕事が以前と同じようにできないことで障害に気が付くこともあります。しかし、患者さん本人は気が付かないことも多いため、家族や周囲の人が、これまでと変わったことはないかなど、患者さんの様子を注意深く観察することも重要です。

8.合併症に対する治療

●てんかんについて

脳の神経細胞は、その一つ一つが適切な信号を送り出すことによって、体の働きを調節します。ところが、脳腫瘍やその治療の影響で、脳のある場所の神経細胞が一斉に興奮し、一度に信号を送ることがあります。 このときに起こる発作をけいれん発作といいます。
刺激される脳の部位によって、症状はさまざまです(例:片方の手や足が自分の意思に反して震える、言葉が話せなくなるなど)が、脳腫瘍の患者さんは、けいれん発作を繰り返すてんかんを合併することが少なくありません。
脳全体に神経細胞の異常な興奮が広がった場合には、 意識を失い、全身の筋肉が震えたり、つっぱるなどの大発作となります。大発作は、脳に酸素が十分行き渡らなくなり、重篤な事態を引き起こす可能性があるため、すぐに発作を止める処置を医師にしてもらう必要があります。
てんかんを予防するために、抗てんかん薬が処方されます。規則正しく服用を続けることで、発作を起こさずに生活することが期待されますが、抗てんかん薬を服用していれば絶対に発作が起きない、ということではありません。自らの判断で薬ののみ方を変えたり、薬をのむことをやめたりすると、発作が起きる可能性があります。
発作のある方や起こす危険がある方は、車の運転はできません。

9.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんに伴う症状や治療による副作用に対しての予防、症状を軽減させる治療のことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

10.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●脳腫瘍の臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

11.転移・再発

転移とは、腫瘍細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果により目に見える大きさの腫瘍がなくなったあと、再び腫瘍が出現することや、残っていた腫瘍が再増大することをいいます。
良性腫瘍が転移することはありませんが、悪性脳腫瘍でも肺や肝臓などに転移することはほとんどありません。ただし、脳と脊髄(せきずい)はつながっているので、頭蓋内に発生した腫瘍が髄液を伝わって脳の別の部分や脊髄に転移すること(播種[はしゅ])があります。悪性脳腫瘍の治療中に、強い背中や腰の痛み、足のしびれや運動麻痺などがあった場合には、脊髄への転移を疑って脊髄MRI検査を行います。
腫瘍がどのように再発するかは腫瘍の種類によって異なりますが、多くの場合、もともと腫瘍があった場所に近い場所で再発(局所再発)が起こります。
再発といってもそれぞれの患者さんで状態は異なります。 病気の広がりや、再発した時期、これまでの治療法などによって総合的に治療法を判断する必要があります。再手術を行ったり、悪性脳腫瘍では薬物療法を再開したり、薬を変えたりすることがあります。それぞれの患者さんの状況に応じて、治療やその後のケアを決めていきます。
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