1.皮膚のリンパ腫について
1)皮膚のリンパ腫とは
皮膚のリンパ腫は、悪性リンパ腫の種類の1つです。皮膚組織の中のリンパ球ががん化したもので、通常の皮膚がんとは区別されています。また、リンパ節や臓器に発生した悪性リンパ腫が皮膚に浸潤することもありますが、その場合はそれぞれの悪性リンパ腫に対する治療が行われます。このページで紹介する皮膚のリンパ腫は、皮膚に初めに発生したリンパ腫です。
病型(病気の分類)は、皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫の2つに大きく分けられます。
皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫は菌状息肉症、セザリー症候群、原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD4陽性小型・中型T細胞リンパ増殖異常症、成人T細胞白血病リンパ腫(皮膚だけに病変がある場合)など、多くの病型に分けられています。
皮膚B細胞リンパ腫は、粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・下肢型などの病型に分けられます。
皮膚のリンパ腫は、非常にまれな病気ですが、その中でも菌状息肉症・セザリー症候群は約半数を占めています。
2)リンパ球について
血液の中にある赤血球、白血球、血小板などを血液細胞といいます。リンパ球は白血球の成分の1つで、B細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)、NK細胞などに分類されます(図1)。
これらの細胞はチームをつくってウイルスなどの病原体やがん細胞などの異物を攻撃します。さらに、体内に侵入した異物を記憶し、その異物が再び侵入してきたときには、記憶に基づいてすばやく対応し、排除する働きをもっています。
3)症状
皮膚のリンパ腫は、早期には、主に赤く色がかわった部分(紅斑)や、皮膚の表面が小さく盛り上がった部分(丘疹)、しこりなどの皮膚症状があらわれます。進行すると、皮膚が赤くなる部分が広がったり(紅皮症)、リンパ節や他の臓器に病変が広がったりします。
2.検査
皮膚のリンパ腫では、医師の問診や身体診察、皮膚生検、血液検査が行われます。病気の広がりを確認するため、CT検査やPET-CT検査などの画像検査や骨髄検査、内視鏡検査などを行うこともあります。診断を確定する方法は皮膚生検で、病変のある部分の皮膚を一部切り取って詳しく調べる病理検査を行います。
3.治療
皮膚のリンパ腫は、病型により治療が異なります。外用薬の塗布、手術、放射線治療、薬物療法、造血幹細胞移植などさまざまな治療があります。以下では、主な病型ごとに治療の概要を説明しています。
なお、がんの診断から治療までの流れなどについては「8.関連する情報」、手術・薬物療法・放射線治療などの主な治療法に関する情報は「診断と治療」をご覧ください。「妊孕性(にんようせい)」には、妊娠や出産に関する情報を掲載しています。
1)皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫
(1)菌状息肉症・セザリー症候群
早期の段階では、副腎皮質ステロイドの塗布や紫外線治療などの皮膚に対する治療を主に行い、症状に応じて薬物療法を併用します。治療後も長期的に医師の診察を受けていきます。進行した段階では、早期の段階に行う治療に加え、薬物療法や放射線療法、造血幹細胞移植などを行います。
(2)原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫
一般的に、腫瘍が1つもしくは狭い範囲にとどまっている場合は、手術や放射線療法による局所療法(がんができている部位とその周辺に対して行われる治療)を行います。腫瘍が2つ以上で局所療法が難しい場合は、化学療法を含めた全身療法(がんができている部分だけでなく、全身に対して行われる治療)を検討し治療を行います。また、リンパ節や内臓に浸潤した場合、リンパ節や臓器に発生した通常のリンパ腫と同様に、分子標的薬や細胞障害性抗がん薬を含む数種類の薬剤を組み合わせた多剤併用化学療法を行います。
(3)皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫
血球貪食症候群(細菌などの異物を食べる役割を持つ細胞に、赤血球、白血球、血小板などが食べられてしまう状態)を合併していない場合、副腎皮質ステロイドによる治療などが行われます。血球貪食症候群を合併している場合は、数種類の薬剤を組み合わせた多剤併用化学療法や副腎皮質ステロイドの内服、免疫抑制剤などを使用する治療を状況に合わせて行います。造血幹細胞移植を行うこともあります。
(4)原発性皮膚CD4陽性小型・中型T細胞リンパ増殖異常症
主に、手術、放射線療法、副腎皮質ステロイドを使用した治療が行われています。病変が小さく症状があまりない場合には、無治療経過観察(積極的な治療をせずに医師が経過を見ていくこと)も選択肢となります。
2)皮膚B細胞リンパ腫
(1)粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫
腫瘍が1つもしくは狭い範囲にとどまっている場合は、手術や放射線療法を行います。腫瘍が2つ以上、広範囲に広がっている場合は、分子標的薬などの薬物療法が行われています。病変が小さく症状があまりない場合には、無治療経過観察も選択肢となります。
(2)原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・下肢型
腫瘍が1つもしくは狭い範囲にとどまっている場合でも全身性のリンパ腫と同様に、分子標的薬や細胞障害性抗がん薬を含む数種類の薬剤を組み合わせた多剤併用化学療法を行います。
患者向けの情報
医療従事者向けの情報
4.療養
「症状を知る/生活の工夫」には、がんの治療に伴う症状や自宅での生活の工夫などに関する情報を掲載しています。
がんと診断されてからの仕事については「がんと仕事」、医療費や利用できる制度、相談窓口などのお金に関する情報は「がんとお金」をご参照ください。また、「がん相談支援センター」でも、仕事やお金、生活の工夫や利用できるサポート等、困ったときにはどんなことでも相談することができます。
「地域のがん情報」では、各都道府県等が発行しているがんに関する冊子やホームページへのリンクを掲載しています。併せてご活用ください。
5.臨床試験
国内で行われている皮膚のリンパ腫の臨床試験が検索できます。
がんの臨床試験を探す チャットで検索
※入力ボックスに「皮膚リンパ腫」と入れて検索を始めてください。チャット形式で検索することができます。
がんの臨床試験を探す カテゴリで検索 悪性リンパ腫
※「カテゴリで検索」では、広い範囲で検索します。そのため、お探しのがんの種類以外の検索結果が表示されることがあります。
臨床試験への参加を検討する際は、以下の点にご留意ください
- 臨床試験への参加を検討したい場合には、担当医にご相談ください。
- がんの種類や状態によっては、臨床試験が見つからないこともあります。また、見つかったとしても、必ず参加できるとは限りません。
6.患者数(がん統計)
年に日本全国で悪性リンパ腫と診断されたのは、皮膚のリンパ腫も含め例(人)です。
7.相談先・病院を探す
情報や病院などが見つからないときにはご相談ください。
8.関連する情報
がんの治療を始めるにあたって、参考となる情報です。
9.参考資料
- 日本皮膚科学会,日本皮膚悪性腫瘍学会編.皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版.2022年,金原出版.
- 厚生労働省ウェブサイト.がん登録 全国がん登録 罹患数・率 報告 平成31年報告;2022年(閲覧日2023年8月4日)https://www.mhlw.go.jp/
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