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胃がん(いがん)

更新・確認日:2015年10月31日 [ 履歴 ]
履歴
2015年10月31日 「胃癌治療ガイドライン 2014年第4版」などにより、「4.化学療法」などを更新しました。
2013年03月26日 内容を更新しました。
2013年02月14日 「3.内視鏡治療」の図を更新しました。
2012年11月27日 「5.治療に伴う合併症とその対策」を追加しました。
2012年11月27日 「1.手術(外科治療)」「2.腹腔鏡下胃切除」を更新しました。
2012年10月29日 「3.内視鏡治療」「4.薬物療法(抗がん剤治療)」を更新しました。
2012年10月26日 更新履歴を追加しました。
2012年06月22日 内容を更新しました。
2012年06月05日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2007年04月02日 掲載しました。

1.手術(外科治療)

胃がんの標準的な治療法は、手術です。胃を切除する範囲は、がんのある部位と病期(ステージ)の両方から決定します。胃の切除と同時に、胃の周囲のリンパ節を取り除くリンパ節郭清(かくせい)や、食物の通り道をつくり直す再建手術(消化管再建)も行います。

1)手術の種類

手術の方法は、治癒手術(治癒を目的とした手術)と非治癒手術(治癒が難しい場合に症状緩和などを目的とした手術)に大別されます。

治癒手術は、胃の切除範囲とリンパ節郭清の範囲によって、定型手術と非定型手術に、非治癒手術は、目的により緩和手術と減量手術に分けられます。
【手術の種類について、さらに詳しく】

(1)治癒手術

1.定型手術
標準的な術式で、胃がんを完全に切除することを目的とします。胃の2/3以上と、少し離れたリンパ節までを切除します(D2リンパ節郭清*1)。リンパ節転移のある早期胃がんや、進行胃がんが対象になります。

*1 D2リンパ節郭清については、下記の「3)リンパ節郭清 【リンパ節郭清について、さらに詳しく】」を参照してください。
2.非定型手術
縮小手術と拡大手術に大別されます。

●縮小手術
定型手術より、胃の切除範囲やリンパ節郭清の範囲が狭い手術の方法です。リンパ節転移のない早期胃がんが対象になります。

●拡大手術
進行胃がんに対して、定型手術に加えて胃の周辺の別の臓器(膵臓、脾臓[ひぞう]、大腸、肝臓など)も一緒に切除したり、リンパ節郭清を定型手術よりも拡大して行う方法です。

(2)非治癒手術

がんからの出血や狭窄(きょうさく)のために食事が十分にとれないときは、病変がある胃を切除したり、食物の通り道をつくるバイパス手術が行われる場合もあります。
1.緩和手術
出血や狭窄などの症状を改善するために行われます。Ⅳ期の場合、標準治療の1つとなります。
2.減量手術
腫瘍の量を減らすための手術です。腫瘍による症状(出血や狭窄など)の出現を遅らせることや延命を目的として行われます。ただし、標準治療ではないため、病状によって適応が検討されます。
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2)手術の方法

手術の種類は、さらに胃の切除範囲によっていくつかの方法があり、代表的な手術は、胃全摘術、幽門(ゆうもん)側胃切除術、幽門保存胃切除術、噴門(ふんもん)側胃切除術になります。
【手術の方法について、さらに詳しく】

(1)胃全摘術

図9 胃全摘術
図9 胃全摘術の図
噴門(胃の入り口)と幽門(胃の出口)を含めて、胃を全部切除します。病変がある場所が胃の中部から上部付近で、噴門を残す余裕がない場合に行われます。胃と食道の接合部(境目付近)にできたがんが、食道の方にも広がっている場合は、食道(下部食道)も切除します。

(2)幽門側胃切除術

図10 幽門側胃切除術
図10 幽門側胃切除術の図
胃がんのある場所が、胃の中部から下部で、噴門と胃がんの距離が十分離れている場合に行われる術式です。噴門側を約1/3を残して、幽門(ゆうもん:胃の出口)側を約2/3切除します。胃の周囲のリンパ節のつながりは、噴門側の約1/3のところで境界があるため、リンパ節郭清も胃の切除範囲と同様の範囲で行う必要があります。もし、胃の半分程度が残せそうな場合でも、リンパ節郭清を正確に行うために、幽門側を約2/3切除することになります。

(3)幽門保存胃切除術

図11 幽門保存胃切除術
図11 幽門保存胃切除術の図
早期胃がんで、がんのある場所が胃の中部で、幽門側胃切除術の適応の場合、幽門と胃がんの距離が約4cm以上離れていれば、検討される手術の方法です。通常は、胃の上部の約1/3と幽門を残して胃を切除します。早期胃がんの場合、がんを治すのに十分な範囲で胃の機能を温存し、手術を縮小しますが、幽門を残す利点については、専門家の間でも議論される場合があります。

(4)噴門側胃切除術

図12 噴門側胃切除術
図12 噴門側胃切除術の図
早期胃がんで、がんのある場所が噴門側から約1/3の範囲内にあり、噴門を残す余裕がない場合に、検討される手術の方法です。噴門を含めて胃の約1/3を切除します。噴門を残す余裕がなく、病変の位置が、噴門側から1/3を越える場合には胃全摘になります。
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3)リンパ節郭清

胃がんのリンパ節転移は、がん細胞がリンパ液の流れに入って、胃から徐々におなかの深いところにある大動脈の近くまで流れていくことにより、形成されます。手術のときに胃の切除と同時に、周囲のリンパ節を切除することをリンパ節郭清といいます。
【リンパ節郭清について、さらに詳しく】
胃の周囲にあるリンパ節は第1群リンパ節、胃から少し離れたリンパ節を第2群リンパ節、さらに離れたリンパ節(大動脈の周囲など)を第3群リンパ節、というように段階を付けていましたが、現在は第1群リンパ節と第2群リンパ節を合わせて、「領域リンパ節」と呼びます。この領域リンパ節を切除することを「D2リンパ節郭清」といい、標準的に行われるリンパ節郭清の方法です。
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4)消化管再建

消化管再建とは、胃の切除手術と同時に、胃や腸などの消化管を縫い合わせてつなぎ、新しく食べ物の通り道をつくり直すことです。消化管再建の方法は、手術の種類によりいくつかの方法がありますが、それぞれの再建法によって特徴があるため、胃の切除範囲などによって再建法が検討されます。
【消化管再建について、さらに詳しく】

(1)胃全摘術の再建法

食道に空腸をつなぐルーワイ法が一般的です。食道と十二指腸の間に、胃の代用として腸を入れる空腸間置法が行われることもあります。

(2)幽門側胃切除術の再建法

残った胃(残胃[ざんい])と十二指腸を直接つなぎ合わせるビルロートI法や、十二指腸の断端を閉鎖し残胃と空腸(十二指腸から続く上部の小腸)をつなぎ合わせるビルロートII法やルーワイ法があります。

(3)幽門保存胃切除術の再建法

切除後に残胃の上部(噴門)と下部(幽門)をつなぎ合わせる胃胃吻合(いいふんごう)法が行われます。

(4)噴門側胃切除術の再建法

食道と残胃を直接つなぐ食道残胃吻合法や、食道と残胃の間に10〜15cmほどの小腸(空腸)をつなぐ空腸間置法などが用いられます。
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5)周辺臓器の合併切除

胃の周囲を取り囲む臓器は、肝臓、横隔膜、膵臓(すいぞう)、胆のう、横行結腸などです。原発部位や転移した病変がこれらの臓器に直接浸潤した場合、胃の切除と同時に、浸潤している臓器の一部を切除することを、合併切除と呼びます。合併切除は、手術の範囲が広くなりますが、がんを完全に切除し、治癒する目的で行われます。

6)手術に伴う主な合併症と対策

胃がんの手術後の主な合併症は、腹腔内膿瘍(ふくくうないのうよう)、膵液漏(すいえきろう)、創感染(そうかんせん)、腸閉塞(ちょうへいそく)、出血などがあげられます。合併症が起こった場合には、それぞれの状況に応じて治療が行われます。
【手術の合併症と対策について、さらに詳しく】

(1)腹腔内膿瘍

手術のときに消化管を縫い合わせたところがうまくつながらなかった場合に、つなぎ目から食物や消化液が漏れて、炎症が起こり痛みや熱が出ます。吻合部の周囲に膿(うみ)がたまり、さらにおなか全体に膿が広がってしまうと腹膜炎を起こします。それほど高い頻度で発生する合併症ではありませんが、いったん起こると回復に時間がかかります。
対策
縫合不全が起こることが多いのは、手術後に飲水が開始される術後3日目前後のため、手術のあとはおなかに入っている管から出る排液の状態や、腹痛・発熱などの症状がないかを観察し、縫合不全が起きていないか確認します。痛みや発熱が続くなど、縫合不全が疑われる場合には、炎症や感染の広がりを確かめる画像検査(CT検査)や造影剤をのんで実施する胃X線検査が行われ、状況によっては、再び手術で開腹して腹部の中を洗浄する処置が行われます。

(2)膵液漏

膵臓は、タンパク質や脂肪を消化するための膵液を十二指腸に分泌していますが、膵臓の周りのリンパ節郭清を行った影響で、膵臓の表面から一時的に膵液が漏れ出し、周囲の脂肪を溶かしたり、感染を起こして、膿瘍(のうよう)を形成します。内臓脂肪の多い男性に生じることが多く、おなかに入っている管から膿が出なくなるまで、1カ月から2カ月かかることもあります。
対策
基本的な治療法は、腹部にたまっている膵液の混じった浸出液や膿を管より体の外に出す方法で 、ドレナージと呼ばれます。膿が出なくなるまで洗浄する処置を行う場合や、膵液漏の影響で血管から出血が生じたときは、血管造影によって出血を止めます。

(3)創感染

一般的に、手術後は創(きず)を中心に痛みが生じたり、おなかに力を入れることが難しくなったりします。創の痛みは時間の経過とともに少しずつ治まりますが、細菌などで感染が起こると、創が赤くなったり、腫(は)れたり、痛みが強くなったりする場合もあります。
対策
創の痛みには、痛み止めの薬が使われますが、痛みがつらいときには、担当医に相談しましょう。そのときに、痛みの様子(痛い場所や、時々痛むのか、持続的に痛むのかなど)についても、確認して伝えられるようにしておきましょう。

(4)肺塞栓

手術中やその後、長時間体を動かさないでいたことで、足の静脈の中にできた血のかたまりが、肺の血管に流れて詰まることがあります。肺塞栓の症状は、突然の息切れ、胸の痛みを起こすことがあります。
対策
予防のため、手術前には足を圧迫する医療用の弾性ストッキングをはきます。また、手術後に動き出す時期などについては、担当医や看護師にご相談ください。

(5)腸閉塞

手術のあとで、残胃や腸内の食物の流れが悪くなり、便やガスが出なくなることがあります。症状は、おなかの張り感や痛み、吐き気などです。創の周囲の炎症や、手術の影響で生じた癒着などが原因で起こります。
対策
まずは、食事や水分をとらないで保存的に様子をみます。症状の程度によっては、イレウス管と呼ばれる管を挿入し、腸管の減圧をする処置や再手術を行うことがあります。腸閉塞は退院したあとに生じることもありますので、おなかの張り感や痛み、吐き気、ガスが出ないという症状が重なったら、医療機関を受診する必要があります。
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2.腹腔鏡下胃切除

腹腔鏡手術は、腹部に小さい穴を数カ所開けて、専用のカメラや器具で手術を行う方法です。通常の開腹手術に比べて、手術による体への負担が少なく、手術後の回復が早いことが期待されているため、手術件数は増加しています。
胃癌治療ガイドラインでは、治療前の診断の臨床病期がstageⅠで幽門側胃切除術が適応となる場合は、腹腔鏡下胃切除術も治療法の選択肢の1つとなりますが、手術の方法によっては臨床試験による十分な治療成績が明らかにされていません。
開腹手術と比べてリンパ節郭清が難しいこと、消化管をつなぎ直す技術の確立が十分とはいえないことなどから、通常の手術より合併症の発生率がやや高くなる可能性も指摘されています。
また、がんがどれくらい治るかについての長期成績がまだ出ていないのが現状です。腹腔鏡手術を検討する場合には、担当医とよくご相談ください。

3.内視鏡治療

図13 内視鏡治療(イメージ図)
図13 内視鏡治療(イメージ図)の図
内視鏡を使って、胃の内側からがんを切除する方法です。切除後も胃が温存されるため、食生活に対する影響がほとんどなく、生活の質(QOL)を保ちながら、がんの治療を行えることが最大の利点です。

切除の方法には、内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ:EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ:ESD)があります。

治療の適応は、早期の胃がんでがんの深さ(深達度)が粘膜にとどまっていて、リンパ節に転移している可能性がない場合です。近年は、治療の適応の拡大や技術的な進歩により、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が普及しています。

内視鏡治療で胃がんが確実に切除されたかどうかは病理検査・病理診断で確認し、内視鏡治療の適応を超えてがんが進行していた場合は、後日、追加の手術(外科治療)が必要となります。
【内視鏡治療について、さらに詳しく】

1) 内視鏡治療の適応条件

内視鏡治療の適応の原則は、胃がんがリンパ節に転移している可能性が極めて低いと考えられるもので、その病変が一括で切除できる大きさと部位にあることです。

胃癌治療ガイドライン【第4版】によると、潰瘍を伴わない2cm以下の、肉眼的に深達度が粘膜内にとどまっていると診断される分化型癌を「絶対適応病変」としており、この病変に対するESD・EMRを日常臨床として推奨しています。

一方で、(1)2cmを超える潰瘍のない分化型の粘膜内の癌、(2)3cm以下の潰瘍がある分化型の粘膜内の癌、(3)2cm以下の潰瘍のない未分化型の粘膜内の癌は「適応拡大病変」として内視鏡治療の対象にしています。しかし、その有効性は現在検証中であるため、臨床研究として行われるべきとされています。これらの適応拡大病変に対しては、一括して切除が可能なESDによる切除が行われます。

切除された病変は、病理診断が行われ、内視鏡治療によって胃がんがリンパ節転移の可能性なしに完全に取りきれたかどうかの評価(根治性の評価)が行われます。内視鏡治療の根治性は胃癌治療ガイドライン【第4版】にしたがい、「治癒切除」、「適応拡大治癒切除」、「非治癒切除」のいずれかに判定されます。

具体的には、腫瘍が一括切除され、切除検体の切り口に癌がなく完全に切除されていて(切除断端陰性)、癌がリンパ管や静脈の中に認められず(脈管侵襲陰性)、かつ腫瘍径が2cm以下、分化型癌で、深達度が粘膜内にとどまっている場合には「治癒切除」と判定されます。

一方で、腫瘍が一括切除され、切除断端陰性、かつ脈管侵襲陰性で、(1)2cmを超える潰瘍のない分化型の粘膜内の癌、(2)3cm以下の潰瘍がある分化型の粘膜内の癌、(3)2cm以下の潰瘍のない未分化型の粘膜内の癌、または(4)3cm以下の分化型かつ深達度が粘膜下層の浅い部分(粘膜筋板から500μm未満)までにとどまっている癌のいずれかであった場合には、「適応拡大治癒切除」と判定されます。

さらに治癒切除と適応拡大治癒切除の条件に1つでも当てはまらない場合は「非治癒切除」と判定され、例えば、がん細胞が粘膜下層の深いところにまで達している場合や、脈管侵襲が陽性の場合には、リンパ節への転移の可能性が高く、原則的に根治治療のために後日あらためて追加の外科手術を行う必要性が出てきます。

2)内視鏡的粘膜切除術(EMR)

胃がんの下の粘膜下層に生理的食塩水などを注入して病変部を浮き上がらせ、内視鏡の機材の挿入口から胃内に挿入されたスネアと呼ばれる輪状の金属のワイヤーで、その浮き上がった部分を絞めて、高周波電流を用いて切除する方法です。
図14 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
図14 内視鏡的粘膜切除術(EMR) の図

3)内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

胃がんの下の粘膜下層に生理的食塩水やヒアルロン酸ナトリウムなどの薬剤を注入して、病変とその周りの組織を電気メスで徐々にはぎ取る方法で、大きな病変や潰瘍がある場合も一括して切除が可能です。内視鏡的粘膜切除術(EMR)と比較すると高度な技術を要し、切除する際の時間もかかりますが、一括して切除でき治療成績が良好なため、現在では早期胃癌に対する治療の主流になっています。
図15 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
図15 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) の図

4)内視鏡治療の合併症と対策

内視鏡を使って胃の内側からがんを切除するため、手術(外科治療)と比べて入院期間も短く、切除後も胃が温存されるため、体にも負担が少ない治療です。一方で、合併症として出血や穿孔(せんこう:内視鏡治療によって胃に小さな穴が開くこと)があります。治療後は切除した創が潰瘍になるため、軽い痛みが生じる場合があります。処方された内服薬を医師の指示どおりにのみ、消化のよい食事をとることなどを心がけましょう。痛みの程度が強くなったり持続するとき、または黒色の便が出たり、血液混じりのものを吐いたりした場合には担当医や当直医などに連絡の上で医療機関を受診しましょう。
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4.化学療法

胃がんの薬物療法(化学療法)には、手術と組み合わせて行われる「補助化学療法」と、手術による治癒が難しい状況で延命や症状コントロール目的で行われる緩和的化学療法があります。緩和的化学療法は、胃がんを完全に治すことが難しい場合でも、がん自体の進行を抑え、延命および症状を軽減することを目標として行われます。ただし、化学療法の副作用は人によって程度に差があるため、効果と副作用をよくみながら行います。

使用する薬剤は、フルオロピリミジン系薬剤(フルオロウラシル[商品名:5-FU]、S-1、カペシタビンなど)、プラチナ系薬剤(シスプラチン、オキサリプラチン)、タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)、塩酸イリノテカン、ラムシルマブなどの抗がん剤が単独または組み合わせて用いられます。

また、胃がんの10~20%では、「HER2(ハーツー)」と呼ばれるタンパク質ががん細胞の増殖に関与しているため、HER2検査が陽性の場合は、分子標的薬のトラスツズマブを併用した化学療法が行われます。

1)手術による治癒が難しい進行・再発がんに対する化学療法

化学療法の開始前にHER2検査を行います。その結果により使用する薬剤を決めます(図16)。HER2陽性の場合は、トラスツズマブとの併用が標準治療となります。このように、効果や副作用の情報が十分にある標準治療以外にも、新薬や既存薬の新規組み合わせなど、新たな治療法の開発を目的とした臨床試験に参加して治療を行う選択肢もあります。
図16 化学療法の薬剤と治療の選択
図16 化学療法の薬剤と治療の選択の図
日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン2014年第4版」(金原出版)より作成

(1)一次化学治療

1.HER2陰性の場合
初回治療として、基本的にはフルオロピリミジン系薬剤(フルオロウラシル[商品名:5-FU]、S-1、カペシタビンなど)、プラチナ系薬剤(シスプラチン、オキサリプラチン)の2剤併用療法が推奨されます。現在、S-1+シスプラチン療法が日本では最も広く使用されていますが、その他の選択肢として、カペシタビン+シスプラチン療法や、外来での治療を希望するときなどは、シスプラチンに代えてオキサリプラチンを使用することもできます。シスプラチンを用いるときには主に数日間の入院が必要ですが、外来治療が可能な、S-1+オキサリプラチン併用(SOX)療法やカペシタビン+オキサリプラチン併用(CapeOX)療法も選択肢の1つとなっています。
2.HER2陽性の場合
初回治療として、カペシタビン(または5-FU)+シスプラチン+トラスツズマブ療法が世界中でも最も広く使われています。S-1+シスプラチン+トラスツズマブ療法が選択される場合もあります。

(2)二次化学療法

一次化学療法が効かなくなった場合や、副作用などの理由で一次化学療法を中止した場合でも、全身状態が良好であれば、二次化学療法が行われます。使用する薬剤は、ドセタキセルまたはパクリタキセル、イリノテカンのいずれかより選択されます。パクリタキセルとの併用療法により治療効果がさらに高まることが示されたため、2015年からは、パクリタキセルと併用してラムシルマブが使用可能となりました。(図16には、2015年承認のラムシルマブについては未記載)

(3)三次化学療法

二次化学療法の治療効果が期待できない場合でも、全身状態が良好であれば、三次化学療法が行われます。使用する薬剤は、ドセタキセルまたはパクリタキセル、イリノテカンのうち、二次化学療法で使用していない薬剤を選びます。
【化学療法について、さらに詳しく】
S-1+シスプラチン療法は、食事がとれないときやおなかに腹水がたまる(腹水貯留)、腸管が狭窄している(腸閉塞)、腎臓の機能が低下している場合など、これらの薬剤が投与できない、あるいは減量して投与しなくてはならないことがあります。また、高齢者についても十分な効果や安全性が証明されていないため、このような症例については投与量や、スケジュールについて、慎重に検討します。S-1+シスプラチン療法の適応が難しい場合、食事がとれるときにはS-1単独療法、食事がとれないときには5-FU単独療法などの選択肢があります。
また、高度腹膜転移(腹膜転移の進行)により食事がとれない場合、あるいは大量の腹水がみられる場合は、パクリタキセルも選択可能です。
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2)術後補助化学療法

手術で切除できたと思われる場合でも、目に見えないような微小ながんに対して、再発予防を目的として行われる治療です。適応となる対象はII期/III期(T1および、リンパ節転移のないT3を除く)であり、S-1という抗がん剤を手術後1年間内服する治療が標準治療となっています。これにより、治癒率(5年生存割合)が約10%向上することが知られています。

3)術前補助化学療法

再発の要因となる、目に見えないような小さな転移(微小転移)に対して、また比較的大きく、切除が難しいがんを小さくして、切除しやすくする目的などで行われる治療です。さまざまな薬剤の組み合わせで、治療が試されていますが、術後補助化学療法と比べて、上乗せされる効果が確定されていないため、臨床試験として行うべき治療として位置付けられています。

4)副作用

化学療法は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします。特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄など細胞分裂の盛んな細胞が影響を受けやすく、その結果として、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなったりすることがあります。
その他、全身のだるさ、吐き気、手足の腫(は)れ、色素沈着、しびれ、心臓への影響として動悸(どうき)や不整脈、また肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。

こうした副作用は、用いる薬の種類によって異なり、その程度も個人差があります。また、自分でわかる自覚的なものと、検査などによってわかる他覚的なものに大別されます。
副作用が著しい場合には治療薬を減量したり、治療の休止、中断を検討することもあります。
【参考文献】
  1. 日本胃癌学会編:胃癌取扱い規約 第14版(2010年3月);金原出版
  2. 日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン 2014年第4版;金原出版
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