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更新・確認日:2019年04月08日 [ 履歴 ]
履歴
2019年04月08日 「胃癌治療ガイドライン医師用 2018年1月改訂(第5版)」「胃癌取扱い規約 第15版(2017年10月)」により、内容を全面的に更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月10日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2015年10月31日 最新の情報を確認し、「3.自分にあった治療法を考える」などを更新しました。
2015年10月31日 「胃癌治療ガイドライン 2014年第4版」などにより、「4.化学療法」などを更新しました。
2015年03月16日 図の出典を更新しました。
2014年10月03日 5年相対生存率データを更新しました。
2013年03月26日 内容を更新しました。
2013年02月14日 「内視鏡治療」の図を更新しました。
2012年11月27日 「治療に伴う合併症とその対策」を追加しました。
2012年11月27日 「手術(外科治療)」「腹腔鏡下胃切除」を更新しました。
2012年11月02日 「治療成績」を更新しました。
2012年10月29日 「内視鏡治療」「薬物療法(抗がん剤治療)」を更新しました。
2012年10月26日 更新履歴を追加しました。
2012年10月15日 内容を更新しました。
2012年06月22日 内容を更新しました。
2012年06月05日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2007年04月02日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類し、ローマ数字を使って表記することが一般的です。胃がんでは、早期から進行につれてI期〜IV期に分類します。

1)病期(ステージ)

胃がんの病期は、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決めます。
Tカテゴリー:がんの深さの程度(深達度[図5])
Nカテゴリー:リンパ節への転移の有無
Mカテゴリー:遠くの臓器への転移(遠隔転移)の有無
図5 胃がんの深達度
図5 胃がんの深達度の図
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成
がんの深さが粘膜および粘膜下層にとどまるものを「早期胃がん」、粘膜下層より深いものを「進行胃がん」といいます。
胃がんの治療方針を決めるためのがんの病期は、次の2つの分類があります。

(1)臨床分類

画像診断や生検、審査腹腔鏡などの結果に基づいて、がんの広がりを推定し、治療方針を決めるときに使う分類です(表1)。
表1 胃がんの臨床分類
表1 胃がんの臨床分類の表
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成

(2)病理分類

手術で切除した病変を病理診断し、実際のがんの広がりを評価した分類です。病理分類は臨床分類と異なる場合があります。病理分類は病気の見通しを立てたり、術後補助化学療法が必要かどうかを判断したりするときなどに使われます(表2)。
表2 胃がんの病理分類
表2 胃がんの病理分類の表
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成

2)治療の選択

胃がんの治療法には、内視鏡治療、手術、薬物療法などがあります。
治療法は、標準治療に基づいて、患者さんの体の状態や年齢、希望なども含めて検討し、担当医と共に決めていきます。
図6は、胃がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図6 胃がんの治療の選択
図6 胃がんの治療の選択の図
日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン医師用 2018年1月改訂(第5版)」金原出版より作成

3)妊娠・出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.内視鏡治療(内視鏡的切除)

胃内視鏡を使って胃の内側からがんを切除する(切り取る)方法です。がんが粘膜層にとどまっており、原則リンパ節転移の可能性がごく低い早期のがんで、一度に切除できると考えられる場合に行われることがあります。
手術と比べると、体に対する負担が少なく、また、がんの切除後も胃が残るため、食生活に対する影響が少ない方法です。合併症として、出血や穿孔(せんこう:穴が開く)が起こることがあります。
内視鏡治療でがんが確実に取りきれたかどうかは、病理診断で確認します。リンパ節への転移の可能性も考えながら、次の治療について決めていきます。がんが確実に取りきれてリンパ節転移の可能性が極めて低い場合(根治度A、B)には、経過を観察します。がんが内視鏡治療では取りきれなかった、あるいは取りきれているが、深さが粘膜下層まで達しているなどの理由でリンパ節転移の可能性がある場合(根治度C)は、後日、追加で手術が必要となります。

1)内視鏡治療の方法

切除の方法には、高周波のナイフで切り取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や輪状のワイヤーをかけてがんを切り取る内視鏡的粘膜切除術(EMR)があります。病変の大きさや部位、悪性度、潰瘍などがあるかにより治療方法を選びます。近年は、治療の適応の拡大や技術的な進歩により、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が普及しています(図7)。
EMRはがんが2cm以下であることが実施の条件ですが、ESDは3cm以下で潰瘍となっている場合にも行われることがあります。
図7 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
図7 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の図

3.手術(外科治療)

遠隔転移がない胃がんで、内視鏡治療による切除が難しい場合には、手術による治療が推奨されています。手術では、がんと胃の一部またはすべてを取り除きます。同時に胃の周囲のリンパ節を取り除くリンパ節郭清(かくせい)や、食物の通り道をつくり直す再建手術(消化管再建)も行います。おなかを20cmほど切開する開腹手術と、小さい穴を開けて専用の器具で手術を行う腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術があります。腹腔鏡下手術が長期的にみて有効かについてはまだ十分わかっていないので、この手術を検討するときは、担当医とよくご相談してください。

1)手術の方法

(1)胃切除

切除する胃の範囲は、がんのある部位と病期(ステージ)の両方から決めます。胃の切除範囲によっていくつかの方法があり、代表的なものは、胃全摘術、幽門(ゆうもん)側胃切除術、幽門保存胃切除術、噴門(ふんもん)側胃切除術です(図8)。
図8 胃切除の方法
図8 胃切除の方法の図

(2)リンパ節郭清

胃切除の際に、胃とともに胃の周囲にあるリンパ節を切除します。胃のすぐそばのリンパ節と、胃から少し離れたリンパ節を合わせて切除する「D2リンパ節郭清」が標準的に行われます。早期がんでは郭清するリンパ節の範囲を狭くした手術を行います(D1またはD1+郭清)。

(3)消化管再建

消化管再建とは、胃の切除手術の際に、胃や腸などの消化管を縫い合わせてつなぎ、新しく食べ物の通り道をつくり直すことです。再建の方法は、いくつかの種類があり、胃の切除範囲などによって決めていきます。

(4)周辺臓器の合併切除

胃の周囲には、肝臓、横隔膜、膵臓、胆のう、横行結腸などの臓器があります。これらの臓器にがんが広がっている場合、胃の切除と同時に、がんが浸潤している臓器の一部を切除することがあります。これを合併切除といいます。手術の範囲は広くなりますが、がんを完全に切除することを目指して行います。

2)手術に伴う合併症とその対策

胃がんの手術に伴う主な合併症として、縫合不全(ほうごうふぜん)、膵液漏(すいえきろう)、腹腔内腫瘍、肺塞栓(はいそくせん)などがあります。気になることがあれば、担当の医師や看護師にご相談ください。

(1)縫合不全

手術のときに消化管を縫い合わせたところがうまくつながらなかった場合に、つなぎ目から食物や消化液が漏れることをいいます。炎症が起こり痛みや熱が出ます。縫合不全が生じると腹膜炎を併発し、再手術になる場合があります。

(2)膵液漏

膵臓の周りのリンパ節郭清を行ったときに、一時的に膵液が漏れ出すことがあります。これを膵液漏といいます。膵液は、タンパク質や脂肪を分解する酵素を含むので、膵液漏が起こると、その周囲の臓器や血管を溶かして膿瘍(のうよう)ができてしまうことがあります。

(3)腹腔内膿瘍

縫合不全や膵液漏により、感染を伴いおなかの中に膿のかたまりをつくった状態をいいます。できる場所により症状は異なりますが、大半が腹痛を起こし、またしばしば発熱を起こします。画像診断で確認し、膿瘍が起きていれば、感染を抑えるために抗菌薬を使います。また、膿を外に出すためのカテーテルを体の中に一定期間入れておかなければならない場合もあります。

(4)肺塞栓

手術中やその後に長時間体を動かさないでいたことで、足の静脈の中にできた血のかたまり(血栓:けっせん)が、歩き始めたときになどに血管壁からはがれ、肺の血管に流れ詰まることがあります。これを肺塞栓といいます。肺塞栓の症状は、突然の息切れ、胸の痛みです。予防のため、手術前には足を圧迫する医療用の弾性ストッキングをはきます。

4.薬物療法(化学療法)

がんや全身の状態により、さまざまな薬を単独または組み合わせて使います。

1)胃がんの薬物療法で使われる薬 

胃がんの薬物療法に使う薬には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬そして免疫チェックポイント阻害薬があります。

(1)細胞障害性抗がん薬

胃がんの治療では、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1:ティーエスワン)、カペシタビン、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、イリノテカンなどが使われます。

(2)分子標的薬

がん細胞の増殖などに関わる分子を標的とした薬を分子標的薬といいます。
胃がんでは、HER2(ハーツ—)と呼ばれるタンパク質ががん細胞の増殖に関わっている場合があります。治療前に病理検査を行い、HER2陽性の場合にはHER2タンパク質の働きを抑えるトラスツマブを細胞障害性抗がん薬と併用して使うことがあります。また、がん細胞の増殖に関わる別のタンパク質の働きを抑えるラムシルマブを使う場合もあります。

(3)免疫チェックポイント阻害薬

がん細胞が免疫から逃れようと体内の免疫(T細胞など)にブレーキをかけるのを防いで、体内にもともとある免疫細胞の活性化を持続する薬です。ニボルマブなどが保険適用されています。(図9)。

2)胃がんの薬物療法の種類

胃がんの薬物療法には、大きく分けて「手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法」と再発の予防を目的とする「術後補助化学療法」があります。

(1)手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法

遠隔転移がある場合など、手術によりがんを取りきることが難しい場合や、がんが再発した場合に行います。薬だけでがんを完全に治すことは困難ですが、がんの進行を抑えることにより、生存期間が延長したり、症状を和らげたりすることがわかっています。患者さんのがんの状況や臓器の機能、化学療法に伴う想定される副作用、点滴の必要性、入院の必要性や通院頻度などについて担当医と患者さんで話し合って、どのような薬を使うかを決めていきます。
一次化学療法から三次化学療法までの段階があり、まずは一次化学療法から始め、効果が低下した場合や副作用が強く継続が難しい場合には二次、三次と治療を続けていきます(図9)。
図9 手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する標準的な化学療法
図9 手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する標準的な化学療法脳
日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン医師用 2018年1月改訂(第5版)」(金原出版)より作成

(2)術後補助化学療法

手術でがんを切除できた場合でも、目に見えないようなごく小さなながんが残っていて、のちに再発することがあります。こうした小さながんによる再発を予防する目的で行われる化学療法を術後補助化学療法といいます。手術後の患者さんの全身状態やがんの進行度を考慮しながら、TS-1のみあるいはほかの薬とともに使う方法を検討します。

●副作用について

細胞障害性抗がん薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも障害を与えます。このために、治療による副作用が出てくることがあります。副作用は、血液細胞の数、肝機能や腎機能など検査でわかるものと、口内炎、吐き気、脱毛、下痢など自分でわかるものがあります。副作用の有無や程度は人によりさまざまです。最近は副作用を予防する薬も開発され、特に吐き気や嘔吐に対しては以前と比べて多くの人に予防ができるようになってきました。
副作用の症状や対処について、担当の医師や薬剤師・看護師よりよく説明を受けましょう。
分子標的薬のトラスツマブの副作用として、吐き気・嘔吐、食欲不振があります。また、パクリタキセルとラムシルマブを組み合わせた治療では、副作用として、疲労、下痢、出血 (鼻血など)、高血圧などがあげられます。免疫チェックポイント阻害薬の副作用については、関連情報をご覧ください。

●治療効果の判定について

治療効果の判定は、内視鏡やCTで行います。また、転移した臓器に対しては主としてCTを使います。また、MRI、PETなどを使うこともあります。

5.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんの希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

6.リハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

7.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●胃がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

8.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。生存率とは、がんと診断されてからある一定の期間経過した時点で生存している割合のことで、通常はパーセンテージ(%)で示されます。がんの治療成績を表す指標としては、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます。
なお、生存率には大きく2つの示し方があります。1つは「実測生存率」といい、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。他方を「相対生存率」といい、がん以外の死因を除いて、がんのみによる死亡を計算した生存率です。
以下のページに、国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センターが公表している院内がん登録から算出された生存率を示します。ここでは、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供する目的で、5年生存率より新しいデータで算出をした3年生存率についても情報提供をしています。
※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではありません。

9.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。
胃がんの転移として、主に以下の3つのものがあります。
(1)血行性転移:がん細胞が血液に乗って、肺や肝臓に転移する。
(2)リンパ行性転移:リンパ管に入り、リンパ節に転移する。
(3)腹膜播種:胃の一番外側の膜(漿膜)を破り、お腹の中にがん細胞が散らばって広がる。
再発とは、初回の手術(内視鏡あるいは開腹手術)のときに目で見える範囲の胃がんをすべて取り除いたあとや、術後補助化学療法を行ったあとに、治療を行った場所または離れた別の臓器やリンパ節に再び胃がんができることをいいます。
再発に対する治療は、再発した部位、その時の全身状態や前回行った治療法とその時の効果などにより決められます。薬物療法による治療が一般的です。
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