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全ページ表示でんし冊子下咽頭がん(かいんとうがん)

更新・確認日:2018年11月29日 [ 履歴 ]
履歴
2018年11月29日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月10日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2013年03月25日 内容を更新しました。
2013年03月14日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年03月16日 内容を更新しました。
1997年05月12日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期(ステージ)

下咽頭がんの病期は、「がんの広がり(T分類)」「頸部のリンパ節に転移したがんの大きさと個数(N分類)」「遠くの臓器への転移の有無(M分類)」によるTNM分類(表1)に基づいて決まります(表2)。
表1 下咽頭がんのTNM分類
表1 下咽頭がんのTNM分類の表
日本頭頸部癌学会編.「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
表2 下咽頭がんの病期分類
表2 下咽頭がんの病期分類の表
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、患者さんの体の状態や年齢、希望なども含めて検討し、担当医とともに決めていきます。
食事をとる、発声するといった機能を温存することも重要ですので、腫瘍の部位や広がりから喉頭の温存を目指す治療が可能かどうかを検討します。
下咽頭がんの治療では、I期やII期といった早期では、喉頭の温存を目指し、放射線による根治的な治療や、喉頭を温存する手術(喉頭温存手術)を行います。がんが進行している場合は手術による治療が主となり、部位によっては喉頭を摘出せざるをえないことがあります。そこでQOLを保つために、喉頭温存手術や薬物療法を併用して放射線治療を行う化学放射線療法を行う場合もあります。
図2は、下咽頭がんに対する根治を目指す治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図2 下咽頭がんの治療の選択
図2 下咽頭がんの治療の選択の図
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成

●妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.内視鏡治療

口から器具を入れてがんを切除する経口的切除術です。下咽頭がんでは、初期の上皮内がんのうちであれば、胃や食道、大腸と同じように、内視鏡で切除をする場合もあります。ただし、下咽頭がんは進行がんとして発見されることが多いため、内視鏡手術が可能な場合は限られます。

3.手術(外科治療)

下咽頭がんに対する手術は、がんとリンパ節の切除が中心となります。切除した部位の機能が失われる場合は、体の別の組織を移植する手術によって切除した部分を再建する「再建手術」を行い、飲み込むことや発声の機能などをできるだけ保つようにします。

1)手術について

(1)下咽頭がんに対する手術

下咽頭がんではがんの進行状態により、口から器具を入れてがんを切除する経口的切除術のほか、頸部の皮膚を切開して喉頭温存・下咽頭部分切除術、下咽頭・喉頭全摘術、下咽頭・喉頭・頸部食道全摘術、下咽頭・頸部食道切除術を行います。
●喉頭温存・下咽頭部分切除術
がんが下咽頭のみか、喉頭に広がっていても程度が軽い場合は、喉頭を温存して、下咽頭の部分的な切除ですむことがあります。喉頭を温存できるため、がんの大きさや場所にもよりますが、手術後もある程度声を出すことができます。
●下咽頭・喉頭全摘術
がんが進行し、喉頭に広がっている場合の下咽頭と喉頭を切除する手術です。喉頭とつながっていた咽頭を閉じてしまうため、呼吸をするための穴(永久気管孔)を首に開ける必要があります。
●下咽頭・喉頭・頸部食道全摘術
がんが進行し、咽頭の周囲に広がっている場合に、下咽頭、喉頭、首の部分の食道まで切除する手術です。喉頭とつながっていた咽頭を閉じてしまうため、呼吸をするための穴(永久気管孔)を首に開ける必要があります。
●下咽頭・頸部食道切除術
切除する範囲は下咽頭と首の部分にある食道で、喉頭は切除しない手術です。

(2)頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)

下咽頭がんでは、高い頻度で頸部リンパ節に転移がみられます。頸部リンパ節に転移している場合や、転移の確率が高い場合、頸部リンパ節を切除する頸部郭清術を行います。取り除く範囲は、がんの状態によって異なります。リンパ節への転移がない場合でも、予防的に頸部郭清術を行うことがあります。周辺の血管や神経、筋肉をできるだけ残しながら手術しますが、がんの状態によってはそれらを残すことができないことがあります。

(3)救済手術

化学放射線療法や放射線治療のあとで、がんがまだ残っている場合、そのがんを取り除くために行われる手術のことです。

2)手術の後遺症

(1)下咽頭がんの手術の後遺症

下咽頭がんが進行し、喉頭を全部切除した際には、声を出すことができなくなり、呼吸のための穴(永久気管孔)を首の付け根に開けたりします。このような場合は、リハビリテーションが必要です。手術では咽頭や食道の一部または全部を切除することもありますが、腸の一部または皮膚を移植して咽頭や食道を再建することで、多くの場合、食事ができるようになります。

(2)頸部郭清術の後遺症

頸部郭清術の際は、リンパ節だけでなく周囲の血管や筋肉、神経を切除することがあるため、術後に、顔のむくみ、頸部のこわばり、肩の運動障害などの後遺症がみられます。そのため、後遺症を最小限に抑えるために、リハビリテーションを行います。

4.放射線治療

放射線治療は、放射線をあててがん細胞を破壊し、がんを消滅させたり小さくしたりします。下咽頭がんでは、体の表面から放射線をあてる外部照射が6〜7週間で30〜35回くらい行われます。
薬物療法と放射線治療を併用する化学放射線療法を行う場合もあります。薬物を併用することにより放射線治療の効果を高めることができます。
また、頸部リンパ節への転移があり、放射線治療で治療が難しい場合は、頸部郭清術を先に行い、その後に放射線治療を行う場合もあります。
強度変調放射線治療(IMRT)では、さまざまな方向からあてる放射線の量をコンピューターで調節するため、複雑な形のがんでもそれぞれの部位に適切な量の放射線を照射することができます。治療終了後にあらわれる副作用を軽減する効果があります。

●副作用について

放射線治療の副作用は、全身的なものと、治療する部位に起こる局所的なものがあります。また、治療中や治療後すぐにあらわれるものと、治療終了後半年から数年たってあらわれるものがあります。
副作用が原因で治療を中止するという事態を避けるため、副作用を最小限にする支持療法という処置を行うことがあります。場合によっては、歯科医、歯科衛生士、言語聴覚士、栄養士などと連携をとることがあります。

(1)治療中や治療後すぐにあらわれる副作用

声がかれる、皮膚炎、粘膜炎、粘膜炎により飲み込みにくくなるなどの症状があらわれることがあります。治療終了後3カ月くらいで改善することが多いのですが、唾液が出にくくなるため、口や咽頭の乾燥、味がわからないという症状は続く可能性があります。
皮膚炎への対応には、軟こうを用いて、放射線治療によって損傷した皮膚の組織を保湿します。口内炎や粘膜炎への対応には、痛みに対する処置として薬を用いることがあります。口の乾燥が続く症状への対応には、水分をこまめにとるようにしましょう。担当医から人工唾液(じんこうだえき)を処方してもらうこともできます。
口腔や咽頭の粘膜炎などの副作用により、栄養や薬剤を口から適切に摂取できず、それが原因で治療が継続できなくなることがあります。これを防ぐため、放射線治療の前に胃ろう(おなかの皮膚から胃へ管を通す穴)をつくっておくこともあります。治療中や治療後に必要な場合には、胃ろうから直接胃の中に栄養や薬剤を入れることができます。治療が終わって、口から十分食事がとれるようになったら、留置していた管を抜きます。通常、管を抜いたあとの穴は自然にふさがります。

(2)治療終了後半年から数年たってあらわれる副作用

中耳炎、開口障害、唾液が出にくいことによる虫歯の増加、歯の欠損や下顎骨壊死(かがくこつえし)などがあらわれることがあります。治療終了後も口の中をきれいに保つように気をつけることが大切です。まれに、若年性の場合は脳下垂体の障害により第二次性徴へ影響することがあります。

5.薬物療法

下咽頭がんの薬物療法には、化学放射線療法のほか、導入化学療法、術後補助療法、再発や遠隔転移に対する薬物療法があります。

1)化学放射線療法

放射線治療と併用して薬物療法(化学療法)を行う方法です。
一般的にシスプラチンが用いられます。
薬物療法と放射線治療を併用することで治療効果を高めることができる一方で、声がかれる、皮膚炎、粘膜炎、粘膜炎により飲み込みにくい、骨髄抑制などの副作用が強くあらわれることがあります。治療開始前は十分な説明を受けましょう。
シスプラチンが投与できない場合は、カルボプラチンや分子標的薬のセツキシマブを放射線治療と併用することもあります。

2)導入化学療法

放射線治療や手術を行うときに、これらの治療の前に行う薬物療法のことです。
導入化学療法には、シスプラチンとフルオロウラシル(5-FU)を併用するPF療法、PF療法にドセタキセルを加えたTPF療法があります。
喉頭を温存する目的では一般的にTPF療法を行います。また、導入化学療法後、放射線治療の効果を高めるために、分子標的薬のセツキシマブを放射線治療と併用することがあります。

3)術後補助療法

手術のあと、がんが取り切れなかった場合や、再発の可能性が高い場合に行う薬物療法のことです。
一般的にシスプラチンが用いられています。放射線治療を併用することが勧められています。

6.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。
以下に、全国がんセンター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【下咽頭がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表3 下咽頭がんの病期別生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)
表3 下咽頭がんの病期別生存率(対象:2007〜2009年に診断を受けた患者さん)の表
全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2018年9月集計)による
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7.リハビリテーション

手術の合併症を予防し、後遺症を最小限に抑えることや、回復を早めるために、手術前後の時期にリハビリテーションを行います。

1)飲み込みのリハビリテーション

飲食物を食道へ、空気を気管へふり分ける働きが低下すると、誤嚥(ごえん)による誤嚥性肺炎が生じる恐れがあります。これを防ぐために、言語聴覚士や看護師などと共に、安全に食事をとるリハビリテーションを行います。舌やのどの筋力強化の訓練や実際に食事をするリハビリテーションがあります。

2)食べ物をよくかみ砕くためのリハビリテーション

手術で下あごの骨を切除したあとにかむ動作がしにくくなった場合は、鏡を見ながら、口の開け閉めを練習するようにします。退院後、ひとりでも練習できるように、担当医やスタッフにリハビリテーションの方法を確認しておきましょう。

3)頸部郭清術による症状のリハビリテーション

頸部郭清術を行った場合、手術後の顔のむくみ、頸部の変形・こわばり、肩の運動障害などが問題となります。理学療法士などの指導を受けながら、腕をあげたり、肩や首を回したりする運動を行い、退院後も継続することで不快感は軽減されます。

4)発声のリハビリテーション

喉頭全摘術により声を出せなくなった場合は、代用音声を獲得する方法があります(図3)。

(1)食道発声

食道に吸い込んだ空気を出すときに食道を振動させて発声する方法です。習得に時間がかかりますが、音質がよく、器具を必要としません。食道発声法は経験者の話が役に立つことがあります。患者会などでコツを聞くとよいでしょう。

(2)電気喉頭

電動で振動する器械をのどにあて、口、のど、鼻を振動させて発声する方法です。機械的な音声で、片手がふさがってしまいますが、習得は簡単です。器械が入手できれば、入院中から練習を始められます。

(3)シャント発声

気管と食道をつなぐ道をつくり、肺から食道へ空気を送り発声する方法です。つくった道に器具を入れて誤嚥を防ぐ方法もあり、この場合は器具のメンテナンスが必要ですが、食道発声より簡単で10日ほどで習得できます。
それぞれメリット、デメリットがあるため、患者さんに合った方法を選びます。
気になることがあれば、担当医や看護師、言語聴覚士などに聞いてみましょう。
図3 発声法の種類
図3 発声法の種類の図

8.緩和ケア

緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持や改善するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。患者さん本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えるようにしましょう。

9.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●下咽頭がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。
参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

10.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。
下咽頭がんでは、発見時に頸部リンパ節に転移していることも少なくありません。また、肺、肝臓、骨などの他の臓器に転移することもあります。

1)局所再発に対する放射線治療・手術

放射線治療は同じ場所に対して原則として繰り返し行うことができないため、はじめの治療で放射線治療を行ったあとに再発した場合は手術を行います。一方で、はじめの治療で放射線治療を行っていない場合は、放射線治療を含めて治療法を検討します。

2)再発や転移に対する薬物治療

初回の治療後に再発し、手術ができない場合や遠隔転移が出現した場合には、薬物療法を行うことがあります。患者さんの状態に応じて、いくつかの薬を併用したり、単剤で治療したりします。
一般的にシスプラチンとフルオロウラシル(5-FU)を併用するPF療法をします。PF療法に分子標的薬のセツキシマブを併用することもあります。
また、シスプラチンなどが効かなくなった場合に、免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブを使用することがあります。免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療では、思わぬ副作用がいつ生じるか予測がつかないため注意が必要です。副作用が生じた場合の対策をしっかり行っている病院かどうかについて確認しましょう。
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