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子宮体がん(子宮内膜がん)

子宮体がん(子宮内膜がん) 治療

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期(ステージ)

子宮体がんの病期は、がんの大きさだけでなく、子宮の筋肉の層内にがんがどの程度深く入っているか、リンパ節転移や肺などへの遠隔転移があるかどうかで分類されています。

子宮体がんでは、手術で摘出したものを病理学的に診断した結果をもとに、がんがどの程度広がっていたかを調べて決定する、手術進行期分類を用いています(表1)。このため、手術前に推定される臨床病期とは一致しないことがあります。最初の治療で手術をしなかった場合は、CT検査やMRI検査、PET-CT検査などの画像診断により病期を推定します。

表1 子宮体がんの手術進行期分類(日産婦2011、FIGO2008)
表1 子宮体がんの手術進行期分類(日産婦2011、FIGO2008)の表
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「子宮体癌取扱い規約 病理編 第4版(2017年)」(金原出版)より作成

2)術後の再発リスク分類

手術後の治療方針を決めるために、手術で採取したがん細胞の組織型や悪性度と、がんの広がりから再発のリスクを予測します。

子宮体がんは、組織型や悪性度により3つのグループに分けられます。具体的には、再発の低い順に、「類内膜るいないまくがんのうち悪性度が比較的低いもの」「類内膜がんのうち悪性度が高いもの」「漿液性しょうえきせいがん・明細胞めいさいぼうがん」の3つです。

手術後は、これら3つのどのグループに所属するのかと、子宮の筋肉の層、血管、リンパ管、子宮頸部、子宮の周りへのがんの広がりから、再発リスク分類のうち、低リスク、中リスク、高リスクのどれに当てはまるか予測した上で治療方針を決めていきます(図2)。

図2 組織型や悪性度とがんの広がりによる術後の再発リスク分類
図2 組織型や悪性度とがんの広がりによる術後の再発リスク分類の図
日本婦人科腫瘍学会編「子宮体がん治療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成

3)治療の選択

子宮体がんの治療では、手術により、子宮と両側付属器(卵巣・卵管)を取り除くことが基本です。手術後は、病期の確定と、術後の再発リスク分類による判定を行い、結果に応じて治療法を選択します。

図3は、子宮体がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

図3 子宮体がんの治療の選択
図3 子宮体がんの治療の選択の図
日本婦人科腫瘍学会編「子宮体がん治療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成

子宮体がんの標準治療は、子宮と卵巣・卵管の摘出です。しかし、一定の条件を満たした場合には、卵巣や子宮を残すことが可能になる場合があります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕性にんようせい温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

(1)卵巣を残すことが可能になる場合

年齢が若く、類内膜がんで悪性度が低いこと、筋肉の層への広がりが浅いこと、そして卵巣を残すことによるリスクについて説明を受け、納得ができている場合です。

(2)子宮を残すことが可能になる場合

早期がんまたは類内膜がんで悪性度が低いことに加えて、黄体おうたいホルモン(卵巣から分泌される女性ホルモン)によって成長が抑制される性質をもったがんの場合です。

卵巣や子宮を残すかどうかの検討は、担当医とよく話し合い、卵巣や子宮を残すことのできる条件が限られていることや、デメリットなどを十分理解した上で行うことが大切です。

2.手術(外科治療)

子宮体がんの治療の第一選択は手術です。手術によりがんを取り除くと同時に、がんの広がりを正確に診断し、放射線治療や薬物療法などを追加する必要があるかどうかを判断します。

手術方法は、基本的に開腹手術で、切除する範囲によって異なります。がんが進行していると切除する範囲を広げる必要がありますが、切除が広範囲にわたると合併症が起こることがあるため、十分に検討した上で適切な手術方法を選択します。

早期の子宮体がんでは、腹腔鏡下手術や手術用ロボットを遠隔操作して行うロボット支援下手術が可能な場合もあります。出血が少ない、入院が短期間になるなどのメリットがありますが、がんの進行の程度や、年齢、他にかかっている病気などによっては、行えない場合があります。手術の方法については、担当医とよく相談しましょう。

1)手術の種類

手術の種類には、(1)単純子宮全摘出術、(2)準広汎こうはん子宮全摘出術、(3)広汎子宮全摘出術があります。

(1)単純子宮全摘出術

開腹して子宮と両側付属器(卵巣・卵管)を摘出します。手術進行期分類(表1)のⅠ期でも再発のリスクが高いと想定される場合や、Ⅱ期以上が疑われた場合には、骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行うこともあります。

図4 単純子宮全摘出術と両側付属器摘出術の範囲
図4 単純子宮全摘出術と両側付属器摘出術の範囲の図

(2)準広汎子宮全摘出術

子宮を支える組織の一部を含め、子宮と両側付属器(卵巣・卵管)を摘出します。骨盤内と腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行うこともあります。

図5 準広汎子宮全摘出術と両側付属器摘出術の範囲
図5 準広汎子宮全摘出術と両側付属器摘出術の範囲の図

(3)広汎子宮全摘出術

卵管、卵巣、腟および子宮周囲の組織を含めた広い範囲で、子宮を摘出します。この手術方法は、手術前の診断で、がんが子宮の頸部に及んでいる場合(Ⅱ期およびⅢ期の一部)に行うことがあります。通常、広汎子宮全摘出術の場合は、骨盤内のリンパ節郭清を行います。同時に、腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合もあります。

図6 広汎子宮全摘出術の範囲
図6 広汎子宮全摘出術の範囲の図

2)手術後の合併症

子宮体がんでは、手術の範囲によって、治療後の経過が大きく異なります。術後はしばらく傷が痛むため、起き上がったり、立ち上がったりするときに、治療部分である下腹部に力を入れることが難しく、移動や、排尿・排便に苦労することがあります。傷の状態が安定し、痛みがとれてくると、少しずつ動ける範囲が広まります。その他には、足がむくんだり(リンパ浮腫)、更年期障害のような症状が現れたりすることがあります。気になる症状があるときには、担当医や看護師に相談してみましょう。

(1)排尿のトラブル

広汎子宮全摘出術などで子宮の周りの組織を含めて広範囲に切除する手術を行った場合、尿の排泄を調節する神経が傷ついたり、うまく働かなくなったりすることによって、排尿についての合併症が多く起こります。尿が出にくくなる、尿がたまっても尿意を感じない、尿が漏れるなどの症状がみられます。

(2)便秘

広汎子宮全摘出術などで子宮の周りの組織を含めて広範囲に切除する手術を行った場合、排尿障害と同じように、排便を調節する神経が傷ついたりうまく働かなくなったりすることによって、便秘になる場合があります。放射線治療を行った場合にも、しばらくしてから腸の動きが悪くなり、便秘になることがあります。

(3)足がむくむ(リンパ浮腫)

骨盤内や足の付け根(鼠径部そけいぶ)のリンパ節を取り除いた場合、両足から骨盤を通って心臓に向かうリンパの流れが滞り、下半身がむくむことがあります。このむくみを、リンパ浮腫といいます。治療後早期にあらわれることもありますが、数年たってから出ることも少なくありません。リンパ節を取り除いた後に、放射線治療を追加した場合は、よりむくみが出やすくなります。

(4)更年期障害のような症状

閉経前に両側の卵巣を切除する手術をした場合や、放射線治療で卵巣の機能が失われた場合、女性ホルモンが減少し、更年期障害に似た症状(卵巣欠落症状らんそうけつらくしょうじょう)が起こりやすくなります。具体的には、ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸どうき、不眠、腟からの分泌液の減少、骨粗しょう症、高脂血症こうしけっしょうなどの症状があらわれます。症状の強さや発症する期間は人によって異なりますが、特に年齢が若いと症状が強くなる傾向があります。

症状を軽くするためには、血行をよくしたり、精神的にリラックスしたりすることが大切です。時間の経過とともに、症状は徐々に消えますが、つらいときは我慢しないで担当医に伝えましょう。必要に応じて症状を和らげる薬が処方されます。

3.放射線治療

放射線による治療では、高エネルギーのX線やガンマ線でがん細胞を傷つけ、がんを小さくします。

手術後の再発予防を目的として、体の外から放射線を照射する外部照射、または、腟内から子宮の中に放射線を照射する腔内くうない照射を行います。

高齢者や他にかかっている病気などによって手術ができないとき、また、がんの進行や転移による痛みなどのがんによる症状や、止血の難しい出血をおさえるときに行うこともあります。

副作用として、子宮体がんの放射線治療の場合、直腸炎、膀胱炎、小腸の閉塞へいそく(ふさがること)や下痢などが起こることもあります。治療が終わって数カ月から数年たって起こる症状(晩期合併症)もあります。患者さんによって副作用の程度は異なります。

4.薬物療法

子宮体がんでは、再発のリスクを減らすことを目的として、手術後に点滴や飲み薬による薬物療法を行うことがあります。また、手術でがんが切除できない場合や、切除しきれない場合、がんが再発した場合にも薬物療法を行います。

1)細胞障害性抗がん薬

再発のリスクが高いと判断された場合、手術ができない場合、再発した場合に、細胞障害性抗がん薬を使います。一般的に、ドキソルビシンとシスプラチンを併用するAP療法やパクリタキセルとカルボプラチンを併用するTC療法を行います。薬剤の選択は、患者さんの状態や副作用などを考えて決めていきます。

2)内分泌療法薬

再発リスクが高い場合の補助的な治療として行うことがあるほか、AP療法やTC療法の効果が不十分な場合やできない場合に、黄体ホルモン薬を用いた内分泌療法を行うことがあります。

5.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。

なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。

本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

6.リハビリテーション

がんそのものや治療に伴う合併症や副作用などから、患者さんが受けるさまざまな身体的・心理的な障害の緩和や、能力の回復・維持を目的に行われています。

1)排尿のトラブルに対するリハビリテーション

子宮を含めて広範囲にわたり切除するため、排尿のトラブルや便秘が起こることがあります。排尿がうまくできない場合には、カテーテルを尿道から膀胱へゆっくり挿入し、カテーテルを通して尿を出す、間欠導尿法かんけつどうにょうほうを行うことがあります。

2)身体機能低下に対するリハビリテーション

子宮体がんの治療中や治療後は、身体活動が低下してしまうことが多くなり、肥満やクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の低下などの問題が起きやすくなります。特に肥満を伴う子宮体がんの患者さんには、運動療法が効果的であるといわれています。

7.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

1)転移

子宮の壁の外側半分には血管が多く存在することから、子宮体がんが筋肉の層の深い部分に広がると、転移の可能性が大きくなります。子宮体がんでは、がんが卵巣・卵管に広がることが比較的多いのが特徴です。その他、リンパ節、腟、内臓の表面をおおっている膜である腹膜、肺に転移することもあります。

転移した場合は、薬物療法や放射線治療だけでなく、痛みや食欲の低下に対する治療を含め、患者さんの状態や症状に応じて、治療の方針を決めていきます。

2)再発

子宮体がんでは、子宮や腟などの骨盤内で起こる限られた範囲(局所)での再発のほか、肺や肝臓などの子宮から離れた臓器で転移として再発が見つかることがあります。

局所での再発の場合は、手術を行うこともありますが、薬物療法や放射線治療を行うことがほとんどです。再発といっても、それぞれの患者さんで病気の状態は異なります。がんの広がりや再発した時期、これまでの治療法などによって、今後の方針を決めていきます。

更新・確認日:2019年07月11日 [ 履歴 ]
履歴
2019年07月11日 「子宮体がん治療ガイドライン2018年版」「子宮体癌取扱い規約 病理編 第4版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月12日 5年相対生存率データを更新しました。
2016年01月27日 「子宮体がん治療ガイドライン2013年版」より、「子宮体がんの病期と治療方法」の図を更新しました。
2014年10月03日 5年相対生存率データを更新しました。
2013年12月13日 「子宮体がん治療ガイドライン2009年版」に準じて内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。
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