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子宮体がん (子宮内膜がん) (しきゅうたいがん[しきゅうないまくがん])

更新・確認日:2016年07月13日 [ 履歴 ]
履歴
2016年07月13日 「4.疫学・統計」を更新しました。
2013年12月13日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。

1.子宮について

子宮は全体として中が空洞の西洋梨の形をしています。球形に近い形の体部は胎児の宿る部分であり、下方に続く部分は細長く、その先は腟へと突出しています。この部分が頸部で、腟の方から見ると奥の突き当たりに頸部の一部が見えます。その中央には子宮の内腔に続く入り口があり、この入り口を外子宮口(がいしきゅうこう)と呼んでいます。
【図1 子宮と周囲の臓器】
図1 子宮と周囲の臓器
図1 子宮と周囲の臓器の図
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2.子宮体がん(子宮内膜がん)とは

婦人科のがんで最も多いのは、子宮がんです。子宮がんは子宮頸がんと子宮体がん(子宮内膜がん)に分けられます。子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある、子宮内膜から発生するがんです。一方、子宮頸部や頸管の上皮から発生したがんが、子宮頸がんです。まれに子宮の筋肉の層から子宮肉腫が発生しますが、これは、子宮体がんとはまったく違う病気です。

同じ子宮のがんであっても、子宮体がんと子宮頸がんは、診断・治療・予後いずれに関しても異なることが多いので、子宮体がんと子宮頸がんの違いを正しく理解することが大切です。

3.症状

ほかのがんと同様に、子宮体がんも初期に治療を開始した場合ほど治療成績がよいので、早期に発見(診断)することが大切です。もし、月経とは無関係の出血、おりもの、排尿痛や排尿困難、性交時痛、骨盤領域の痛みなどの症状を感じたら、婦人科医の診察を受けることが大切です。

最もよくみられる症状は出血です。特に、閉経後に少量ずつ長く続く出血がある場合は、早めに婦人科あるいは検診を受診し、子宮体がんの検査を受ける必要があります。そのとき、検診で子宮がんの検査という場合、子宮頸がんの検査だけを指すこともあるので、注意が必要です。

子宮体がんの検査については、「子宮がん検診の勧め」もご参照ください。

4.疫学・統計

子宮がんの罹患数(りかんすう)は、全体として年間約25,200例で、このうち子宮体がんが約13,600例、子宮頸がんが約10,900例、どの部位か情報がない子宮がんが約700例となっています(地域がん登録全国推計値2012年 上皮内がんを除く)。また、子宮がんの死亡数は、全体として年間約6,400人で、このうち子宮体がんが約2,200人、子宮頸がんが約2,900人、どの部位か情報がない子宮がんが約1,300人となっています(人口動態統計2014年)。

子宮体がんは、エストロゲンという女性ホルモンの刺激が長期間続くことが原因で発生する場合と、エストロゲンとは関係ない原因で発生する場合がありますが、約8割はエストロゲンの長期的な刺激と関連していると考えられています。エストロゲンが関係していると考えられる子宮体がんに関しては、肥満、閉経が遅い、出産経験がないなどの場合に、発症のリスクが高くなることがわかっています。また、乳がんの治療でタモキシフェンという薬剤を投与されていたり、更年期障害の治療でエストロゲンの補充療法を受けていたりする場合も、子宮体がんのリスクが高くなるとされています。

わが国で子宮体がんと診断される人は、40歳代から多くなり、50歳から60歳代の閉経前後で最も多くなっています。近年は食生活の欧米化などに伴い増加しているといわれています。
更新・確認日:2013年12月13日 [ 履歴 ]
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2013年12月13日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。

1.がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

がんの疑い

  「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく受診しましょう。
   

受診

  受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
   

検査・診断

  検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。
   

治療法の
選択

  がんや体の状態に合わせて、担当医は治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。
   

治療

  治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、小さなことでも構いませんので、気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。よい解決方法が見つかるかもしれません。
   

経過観察

  治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

2.受診と相談の勧め

がんという病気は、患者さんごとに症状のあらわれ方が異なります。また、症状がなく検診でがんの疑いがあると言われることもあります。何か気にかかる症状があるときや、詳しい検査が必要と言われたときには、医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご自身で判断したり、何か見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、問題がないことを確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

がん診療連携拠点病院がん相談支援センターでは、がんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしていますので、お気軽に訪ねてみてください。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で相談できます。対面だけでなく、電話などでも相談することができますので、わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

詳しくは、「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」をご覧ください。

お近くのがん相談支援センターは「がん相談支援センターを探す」から検索することができます。

3.がんと言われたとき

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。

病気がどのくらい進んでいるのか、果たして治るのか、治療費はどれくらいかかるのか、家族に負担や心配をかけたくない…、人それぞれ悩みは尽きません。気持ちが落ち込んでしまうのも当然です。しかし、あまり思い詰めてしまっては、心にも体にもよくありません。

この一大事を乗りきるためには、がんと向き合い、現実的かつ具体的に考えて行動していく必要があります。そこで、まずは次の2つを心がけてみませんか。

1)情報を集めましょう

まず、自分の病気についてよく知ることです。担当医は最大の情報源です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。また、あなたが集めた情報が正しいかどうかを、あなたの担当医に確認することも大切です。

「知識は力なり」。正しい知識は、あなたの考えをまとめるときに役に立ちます。

2)病気に対する心構えを決めましょう

大きな病気になると、積極的に治療に向き合う人、治るという固い信念を持って臨む人、なるようにしかならないと受け止める人などいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためには、あなたが自分の病気のことをよく知っていることが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医からよく説明を受け、いつでも率直に話し合い、その都度十分に納得した上で、病気に向き合うことに尽きるでしょう。

情報不足は、不安と悲観的な想像を生み出すばかりです。あなたが自分の病状について理解した上で治療に取り組みたいと考えていることを、担当医や家族に伝えるようにしましょう。

お互いが率直に話し合うことが、お互いの信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。
更新・確認日:2013年12月13日 [ 履歴 ]
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2013年12月13日 「子宮体癌取扱い規約」2012年4月(第3版)に準じて内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。

1.検査

子宮体がんの検査では、子宮内膜を少しとり、細胞と組織に異常がないかを調べる病理検査・病理診断を行います。がんの広がりを調べる検査としては、内診・直腸診、子宮鏡検査、超音波(エコー)検査CT検査MRI検査などがあります。

1)病理検査・病理診断

(1)細胞診

細いチューブやブラシのような器具で子宮内膜の細胞を少しとり、正常な細胞かどうかを顕微鏡で観察します。個人差はありますが、チクッとした痛みを感じる場合があります。細胞診の結果は「陰性」「偽陽性」「陽性」の3段階で示されますが、子宮頸部細胞診の結果と同様に「クラス」で示されることも多いです。その場合、がんの進み具合をあらわす「病期(ステージ)」とは違う分類であることに注意し、混同しないようにしましょう。

(2)組織診

細胞診で異常があった場合は、細いスプーンやチューブのような器具で、疑わしい部分の内膜を削り取ったり吸い取ったりして、顕微鏡で観察します。内膜全部を採取する場合は全面掻爬といい、痛みを伴うので麻酔をかけて行います。掻爬のかわりに、はさみのような器具で子宮内膜の組織をつまんで採取し、検査する場合もあります。

2)内診・直腸診

子宮や卵巣の状態を、腟から指をさし入れて調べます。直腸やその周囲に異常がないかを、肛門から指をさし入れて調べることもあります。

3)子宮鏡検査

がんの位置や形状を直接確認するため、内視鏡を腟から子宮体部に入れて観察することがあります。病理診断と組み合わせて行う場合が多く、直径3mm程度の細いカメラを用いるので、痛みはほとんどありません。

4)超音波(エコー)検査

体の表面に当てた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。子宮体がんでは主に、超音波を発する器具を腟に入れて、子宮体部内の様子を観察する方法が用いられます。超音波(エコー)検査によって、腫瘍と周囲の臓器との位置関係を調べます。

5)CT検査、MRI検査

CT検査では、X線を使って体の内部を描き出し、治療前に転移や周辺臓器へのがんの広がりを調べます。MRI検査では磁気を使います。CTやMRIを使った検査は、肺、肝臓などの臓器への遠隔転移の有無、リンパ節転移(リンパ行性転移)の診断、周辺臓器への広がりがどの程度かを診断する場合に有用です。特にMRI検査は、腫瘍が子宮の筋肉にどの程度まで食い込んでいるか、卵巣に病変がないかといった局所の評価に有用です。造影剤を使用する場合、アレルギーが起きることがあります。薬剤などによるアレルギーの経験がある人は、医師に申し出てください。

2.病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてStage(ステージ)ともいいます。医師による説明では「ステージ」という言葉を使われることが多いかもしれません。病期にはローマ数字が使われ、がんの大きさだけでなく、子宮筋層内にがんがどの程度深く入っているか、リンパ節転移(リンパ行性転移)や肺などへの遠隔転移があるかどうかで分類されています。

子宮体がんの最終的な病期は、手術の結果、がんがどの程度広がっているか判明した時点で決まります。このため、手術前に推定される臨床病期とは一致しないことがあります。
表1 子宮体がんの病期
I期 がんが子宮体部にのみ認められるもの
(子宮頸部、その他にがんは認められない)
   IA期 がんが子宮筋層の1/2未満のもの
   IB期 がんが子宮筋層の1/2以上のもの
II期 がんが子宮体部を越えて子宮頸部に広がったもの
(がんは子宮の外に出ていない)
III期 がんが子宮外に広がっているが、骨盤を越えて外には広がっていないもの、または骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの
   IIIA期 がんが子宮の外の膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣卵管に広がっているもの
   IIIB期 腟ならびに/あるいは子宮傍組織に広がったもの
   IIIC期 骨盤内、あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの
     IIIC1期 骨盤リンパ節転移があるもの
     IIIC2期 骨盤リンパ節への転移の有無に関わらず、傍大動脈リンパ節転移があるもの
IV期 がんが骨盤を越えて別の部位へ広がるか、膀胱ならびに/あるいは腸の粘膜を侵すもの、ならびに/あるいは遠隔転移のあるもの
    IVA期 膀胱ならびに/あるいは腸の粘膜までがんの浸潤を認めるもの
    IVB期 腹腔内ならびに/あるいは鼠径部(そけいぶ:足のつけ根)のリンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの
日本産科婦人科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会編「子宮体癌取扱い規約」 2012年4月(第3版)より作成
更新・確認日:2016年02月12日 [ 履歴 ]
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2016年02月12日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2016年01月27日 「子宮体がん治療ガイドライン2013年版」より、「子宮体がんの病期と治療方法」の図を更新しました。
2014年10月03日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2013年12月13日 「子宮体がん治療ガイドライン2009年版」に準じて内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。

1.臨床病期と治療

子宮体がんの治療は、手術(外科治療)でがんを取り除くことが基本になります。患者さんの状態やがんの広がりに応じて、放射線治療化学療法(抗がん剤治療)ホルモン療法を組み合わせて行います。子宮を残す治療が可能なのは、早期がんであることに加えて、黄体ホルモンによって成長が抑制される性質をもったがんの場合であり、十分なインフォームドコンセントの上で行われる必要があります。
図2 子宮体がんの病期と治療方法
図2 子宮体がんの病期と治療方法の図
日本婦人科腫瘍学会編「子宮体がん治療ガイドライン2013年版」(金原出版)より作成

2.治療成績

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。生存率は通常、がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。こうしたほかの要素の分布(頻度)が異なるため、用いるデータによって、生存率の値が異なる可能性があります。

以下に、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。診断や治療の技術は進歩していますので、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。

データは平均的なものであり、かつ確率として推測されるものですので、全ての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【子宮体がんの生存率データについて、さらに詳しく】
このデータは、2005年から2007年の間に、子宮体がんの診断や治療を受けた患者さんが対象となっています。治療については、外科治療だけではなく、放射線治療、化学療法、内分泌療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、外科治療だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。

臨床病期については「子宮体がん 検査・診断−2.病期(ステージ)」をご参照ください。
表2 子宮体がんの病期別生存率
病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
I 2,103 94.9
II 176 90.0
III 394 68.3
IV 181 16.8
全症例 3,034 85.4
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3.自分に合った治療法を考える

治療方法は、全て担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、患者さん自身が満足できる方法が一番です。

まずは、病状を詳しく把握しましょう。あなたの体を一番よく知っているのは担当医です。わからないことは、何でも質問してみましょう。診断を聞くときには、病期あるいはリスク分類を確認しましょう。治療法は、病期によって異なります。医療者とよくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。

診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。
最初にかかった担当医に何でも相談でき、治療方針に納得できればいうことはありません。

担当医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。セカンドオピニオンが必要な場合は、担当医に相談してみましょう。多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解していますので、快く資料を作ってくれるはずです。

セカンドオピニオンについては「セカンドオピニオンを活用する患者必携サイトへのリンクもご参照ください。
更新・確認日:2013年12月13日 [ 履歴 ]
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2013年12月13日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。

1.手術(外科治療)

外科手術は、子宮体がんの最も一般的な治療です。手術によりがんを取り除くと同時に、病気の広がりを正確に診断し、放射線治療化学療法などを追加するかどうか判断します。

子宮体がんでは、早期の場合手術をしないでホルモン療法を行うこともありますが、多くの場合は、病期によって下記のいずれかの手術の方法(術式)を選択します。術式の違いは、切除する範囲の違いで、病期が進むと切除する範囲を広げなくてはなりません。しかし、切除範囲を広げると、手術による障害が起こります。この2つの点を考慮して適切な術式を選択します。

手術には、子宮だけを摘出する単純子宮全摘出術と卵巣・卵管の切除を組み合わせる方法、子宮と卵巣・卵管のまわりを広めに切除する広汎(こうはん)子宮全摘出術、これら2つの中間となる準広汎子宮全摘出術などがあります。
【手術の方法について、さらに詳しく】

1)単純子宮全摘出術と両側付属器(卵巣・卵管)切除術

おなかを切り開き、子宮、卵巣、卵管を切除します。手術前の診断で、子宮内膜異型増殖症と判明している場合には、標準的にこの手術が行われます。手術前の診断でI期以上の場合には、これに加えて、骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合があります。
単純子宮全摘出術と両側付属器(卵巣・卵管)切除術の図

2)広汎性子宮全摘出術

子宮、卵管、卵巣、腟および子宮周囲の組織を含めた広い範囲を切除します。この術式は、手術前の診断で、がんが子宮の頸部に及んでいる場合(II期およびIII期の一部)などに選択されることがあります。普通、広汎性子宮全摘出術の場合は、骨盤内リンパ節郭清を行います。同時に、腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合もあります。
広汎性子宮全摘出術の図

3)準広汎子宮全摘出術+卵巣・卵管切除術

子宮と卵巣・卵管に加えて、子宮を支える組織の一部およびリンパ節を切除します。
準広汎子宮全摘出術+卵巣・卵管切除術の図
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【手術に伴う主な合併症について】
子宮がんでは、治療の方法や手術の範囲によって、治療後の経過が大きく異なります。手術を行った場合、治療部分が下腹部のため、手術直後は手術によってできた傷が痛み、起き上がったり、立ち上がったりなど下腹部に力を入れることが難しく、トイレのときに苦労するなどの問題があるかもしれません。傷の状態が安定し、痛みがとれてくると、動ける範囲が少しずつ広がります。

(1)排尿についての後遺症

子宮を含む広範囲にわたって臓器を切除する手術を行った場合、直腸や膀胱の排泄を調節する神経が傷ついたり、うまく働かなくなったりすることによって、排便や排尿に関する後遺症が起こることがあります。中でも排尿についての後遺症を訴えられる方が多く、尿が出にくくなる、尿がたまっても尿意を感じない、尿が漏れるなどの症状がみられます。

手術の際には、尿道から膀胱に排尿用の管が挿入されます。手術後、症状が落ち着いたら管を抜いて、その後は自分で排尿できるように訓練します。自分で排尿できるようになるまでの時間には個人差があるので、根気よく訓練することが大切です。尿が出にくいときは、腹圧を使い自力で排尿しますが、それだけでは排尿しきれないことが多いため、尿道に管を入れて膀胱に残った尿(残尿)を取り除くこともあります(導尿)。慣れるまでは、看護師に方法を確認しましょう。神経の回復を待ちながら、徐々に自力で排尿できるようにしていきます。

尿意を感じないときには、多めに水分をとり、決まった時間にトイレに行く習慣をつけるようにします。トイレで下腹部を押したり、温水洗浄便座のビデで尿道口を刺激したり、自分なりの排尿法を工夫して見つけることが大切です。強くおなかを押して腹圧をかけすぎると、膀胱を傷めたり、尿が腎臓に逆流したりする可能性があるので注意しましょう。

尿漏れがあるときは、尿漏れ用のパッドなどを利用するとよいでしょう。尿漏れを放っておくと、臭いや皮膚のかゆみ、かぶれなどの症状が出ることもあります。気になる症状があるときには、担当医や看護師に相談してみましょう。

(2)便秘、便が出にくい後遺症

子宮を含む広範囲にわたって臓器を切除する手術を行った場合、排尿障害と同じように、神経が傷ついたりうまく働かなくなったりすることによって、便秘になる場合があります。放射線治療を行った場合にも、しばらくしてから腸の動きが悪くなり、便秘になることがあります。

朝起きたら1杯の冷たい水を飲むなど、排便を促す工夫をしましょう。食物繊維が多すぎる食事は、イレウス(腸閉塞)の原因になることがありますので、注意しましょう。腸を動かすためには、適度な運動も必要です。また、担当医から緩下剤が処方されることもあります。

(3)足がむくむ(リンパ浮腫)後遺症

骨盤内や足の付け根(鼠径部[そけいぶ])のリンパ節を取り除いた場合、両足から骨盤を通って心臓に向かうリンパの流れが滞り、下半身がむくむことがあります。このむくみを、リンパ浮腫といいます。リンパ浮腫のむくみは一般的に、太ももの付け根から始まり、大腿(だいたい)部、膝の下、足首、足の甲へと末端に向かって広がっていきます。治療後早期にあらわれることもありますが、数年たってから出ることも少なくありません。リンパ節を取り除いた後に、放射線治療を追加した場合は、よりむくみが出やすくなります。

リンパ浮腫によるむくみが出ると足が動かしにくくなりますが、適度に足を動かすことは、むくみの解消に役立ちます。

入院中は看護師から用手的(手を使った)リンパドレナージについて説明を受けて、取り組んでみましょう。用手的リンパドレナージとは、腕や足にたまったリンパ液を、正常に機能するリンパ節へと誘導してリンパ浮腫のむくみを改善させるための、医療用のマッサージ方法です。一般的に行われているマッサージや、美容目的のリンパドレナージとは異なります。看護師や専門家の指導を受けて、正しくマッサージを行う必要があります。

リンパの流れをよくするマッサージ機器などを利用する場合にも、担当医や看護師に確認した上で、使用方法について説明を受けてからにするとよいでしょう。

昼間は弾性ストッキングをはき、長時間、同じ姿勢や正座でいることを避けます。弾性ストッキングは、足全体に圧力をかけることにより、リンパ液が下に落ちるのを抑えます。就寝時以外、一日中着用するものなので、形を整えて正しく着用することが大切です。サイズもいろいろあるので、医師や看護師に相談してみてください。

医療機関によっては、リンパ浮腫を専門に診療する外来を設けているところもあります。

また、リンパ浮腫があるときに細菌感染すると、足が赤く腫(は)れあがったり、高熱が出るリンパ管炎を引き起こしたりしやすいので、皮膚は清潔に保つ必要があります。足の小さなけがも化膿(かのう)しないように消毒します。気になる症状があらわれたときにはマッサージは避け、早めに受診しましょう。

リンパ浮腫によるむくみについては、「リンパ浮腫」もご参照ください。

(4)更年期障害のような症状が起こる後遺症

閉経前に両側の卵巣を切除する手術や、放射線治療で卵巣の機能が失われた場合、女性ホルモンが減少し、卵巣欠落症状と呼ばれる症状が起こりやすくなります。この症状は更年期障害(こうねんきしょうがい)に似ており、ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸(どうき)、不眠、腟分泌液の減少、骨粗しょう症、高脂血症(こうしけっしょう)などがみられます。症状の強さや期間は人によって異なりますが、特に若い方では症状が強くなる傾向があります。

血行をよくしたり、精神的にリラックスしたりすることで、症状が軽くなると感じられる方が多いようです。入浴や軽い運動をしたり、音楽を聴いたりなど、自分に合う方法を探してみましょう。時間の経過とともに、症状は徐々に消えますが、つらいときは我慢しないで担当医に伝えましょう。必要に応じて症状を軽くする薬が処方されます。
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2.放射線治療

放射線治療には、高エネルギーのX線やガンマ線でがん細胞を傷つけ、がんを小さくする効果があります。放射線を体の外から照射する方法(外部照射)が主に行われますが、腟内または子宮腔内に放射線を発する器具を入れて照射する方法(腔内[くうない]照射)もあります。また、放射線を発する、針状の器具を患部に刺して照射する方法(組織内照射)もあります。放射線治療は、手術後に再発の危険性を減らす目的で行われたり、再発した場合や手術ができない場合に行われたりします。
【放射線治療の副作用について、さらに詳しく】
副作用には、放射線が照射された部位に起こる皮膚炎・粘膜炎などや、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気・嘔吐(おうと)、食欲低下、白血球減少などがあります。また、子宮体がんの放射線治療の場合、直腸炎、膀胱炎、小腸の閉塞(へいそく:ふさがること)や下痢などが起こることもあります。治療が終わって数ヵ月から数年たって起こる症状(晩期合併症)もあります。患者さんによって副作用の程度は異なります。
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3.化学療法(抗がん剤治療)

子宮体がんに対する抗がん剤による治療は、手術ができない場合や、再発の危険性を減らす目的で手術後に行う場合、あるいはがんが再発した場合に行います。手術後に、高リスクと判定された患者さんに行うと、再発の危険性を減らす効果があることがわかっています。
【化学療法の副作用について、さらに詳しく】
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします。特に毛根(髪の毛)、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛や口内炎、吐き気、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなったりすること(血小板減少)があります。白血球の数が減少すると、細菌などに対する免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなるため、感染症対策を行う必要があります。脱毛や吐き気など、副作用の多くは一時的なもので、抗がん剤治療が終わると治療前の状態に戻ります。現在では、抗がん剤の副作用による苦痛を軽くする方法の開発が進んでいます。また、副作用が著しい場合には、治療薬の変更や治療の休止、中断などを検討することもあります。
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4.ホルモン療法

ホルモン療法では、がんの増殖を抑えるために黄体ホルモン剤を投与します。手術をしない段階の診断で、子宮内膜異型増殖症もしくはI期であり、子宮を摘出しないで治療したいと希望する若年の女性の場合に選択されることがあります。がんの病巣を含む子宮内膜を全て掻爬(そうは)する治療と組み合わせて行います。子宮を残すということによる再発のリスクや、ホルモン療法による副作用のリスクなどを考慮する必要があります。

ホルモン療法は、再発の危険性の高い症例に対する補助的な治療として、あるいは化学療法の効果が不十分な場合や、全身状態が不良で化学療法を行うことができない場合に、化学療法にかわる全身的治療として行われることもあります。
更新・確認日:2013年12月13日 [ 履歴 ]
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2013年12月13日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。

1.治療後に日常生活を送る上で

1)食事について

手術や放射線治療などで卵巣の機能が失われたり、ホルモン療法を行ったりすると、女性ホルモンが減少することにより骨密度が低くなるため、骨粗しょう症を引き起こしやすくなります。カルシウムやビタミンDを多く含む食べ物を積極的にとるとともに、適度な運動を心がけましょう。心配であれば骨密度を測定するのもよいでしょう。

●カルシウム(健康な骨と歯をつくります)を多く含む食品:乳製品、煮干しや干しえびなどの魚介類、ひじきや昆布などの海藻類、ゴマなど
●ビタミンD(カルシウムの吸収をよくし、骨や歯を強くします)を多く含む食品:魚類全般

食事については、特に制限はありません。栄養のバランスを第一に、楽しく気持ちよく食べることが大切です。

2)運動について

治療の内容によって、退院の時期には違いがあります。退院直後は体力が低下しているので、しばらくは、疲れたらすぐに横になる、脚を高くして休むなど、無理をしないようにしましょう。運動は、体力の回復に合わせて、散歩などから始め、少しずつ運動量を増やしていきましょう。

退院後にも、排泄の問題やリンパ浮腫などの後遺症が続く場合があります。不快な症状が続くときには、担当医に相談しましょう。

3)女性としてのつらい気持ち

子宮・卵巣のがんは、比較的若い年齢で発症することが多いがんです。病気や治療後の後遺症、副作用などに加えて、性や妊娠・出産のこと、家族や夫婦関係のことなど、女性としてのつらい気持ちや悩み、心配事が重なることは少なくありません。こうすればつらい気持ちが必ず軽くなる、楽になるという方法はありませんが、今の自分の気持ちを落ち着いて整理したり、担当医や看護師などの医療者に伝えたり、自分と似た経験をした患者さんの話を患者会などで聞くといったことが役立つかもしれません。パートナー(配偶者・恋人)や家族と一緒に、解決方法を話し合うのもよいでしょう。前向きな気持ちになれない日々が続くのも自然なことと捉えて、否定的になりすぎないようにしましょう。

卵巣を全て切除した場合、女性ホルモンが足りなくなるため、更年期症状のような不快な症状を感じたり、腟からの分泌物が減少したりする場合があります。また、腟を切除することによる性交障害が起こることもあります。

2.治療後の経過観察と検査

治療を行った後の、体調や再発の有無を確認するために、定期的な通院が必要になります。手術を行った場合は、手術後3年目までは1ヵ月から3ヵ月ごと、手術後4年目と5年目は半年ごと、それ以降は1年ごとの通院が一般的です。通院時には、体調の変化や後遺症についての問診に続き、必要に応じて内診、直腸診細胞診血液検査や、X線、CT、MRIなどの画像検査が行われます。排泄に関して、泌尿器科や大腸外科、肛門科の医師の診察を受け、必要な治療を受ける場合もあります。
更新・確認日:2013年12月13日 [ 履歴 ]
履歴
2013年12月13日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
2000年01月24日 掲載しました。

1.再発

再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなった後、再びがんが出現することをいいます。子宮体がんでは、子宮や腟、骨盤内で起こる局所での再発のほか、肺や肝臓などで転移として見つかることがあります。再発が局所の場合は、骨盤内臓器摘出術などの手術を行うこともありますが、多くの場合、放射線や抗がん剤、ホルモン剤による治療を行います。再発といっても、それぞれの患者さんで病気の状態は異なります。病巣の広がりや再発した時期、これまでの治療法などによって、総合的に治療法を判断する必要があります。それぞれの患者さんの状況に応じて、治療やその後のケアを決めていきます。

2.転移

転移とは、がん細胞がリンパ液血液の流れで運ばれてほかの臓器に移動し、そこでふえたものをいいます。がんは、検査では認められなくても、治療の時点ですでにほかの臓器に移動している可能性があり、時間がたってから転移として見つかる場合があります。

がんの広がり方は、はじめにがんができた場所によって異なります。子宮体がんでは、リンパ節、腟、腹膜、肺に転移することがあります。進行・再発した子宮がんでは、化学療法(抗がん剤治療)放射線治療、痛みや食欲の低下に対する治療など、患者さんの状態や症状に応じた治療や療養の方針が検討されます。

3.生活の質を重視した治療

近年、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の改善を目的として、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族が自分らしく過ごしたりするための緩和ケアが浸透しはじめています。

緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状や、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くするため、また、自分らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をします。
そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことなど、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

緩和ケアについては、「緩和ケアを受けるには」もご参照ください。
再発や転移、痛みが強いときの治療については、「患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版」の以下の項もご参照ください。
がんの再発や転移のことを知る患者必携サイトへのリンク
緩和ケアについて理解する患者必携サイトへのリンク
痛みを我慢しない患者必携サイトへのリンク
がんの再発に対する不安や、再発に直面したときの支えとなる情報をまとめた冊子です。がんの再発という事態に直面しても、「希望を持って生きる」助けとなりたいという願いを込めて、再発がんの体験者、がん専門医らとともに検討を重ねて作成されたものです。
(Webサイトでもご覧になれます。「もしも、がんが再発したら [患者必携]本人と家族に伝えたいこと患者必携サイトへのリンク
もしも、がんが再発したら 冊子