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全ページ表示がんの冊子肺がん(はいがん)

更新・確認日:2017年08月03日 [ 履歴 ]
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2017年08月03日 「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版」「臨床・病理 肺癌取扱い規約 第8版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2014年10月23日 「3.薬物療法(抗がん剤治療)」を更新しました。
2013年03月25日 内容を更新しました。
2012年11月02日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1995年11月06日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期

肺がんの場合、以下の3つの要素によって病期が決められています。
・T(原発腫瘍 primary Tumor):原発巣の大きさや周囲の組織との関係
・N(所属リンパ節 regional lymph Nodes):胸部のリンパ節転移の程度
・M(遠隔転移 distant Metastasis):原発巣以外の肺転移や胸水、その他の臓器への遠隔転移の有無

これらのT、N、M 因子による病期の分類方法をTNM分類といいます。
表2 肺がんのT分類
Tis 上皮内がん、肺野に腫瘍がある場合は充実成分※1の大きさが0cm、かつ病変の大きさ※2が3cm以下
T1 充実成分の大きさが3cm以下、かつ肺または臓側胸膜におおわれ、葉気管支より中枢への浸潤が気管支鏡上認められない(すなわち主気管支に及んでいない)
    T1mi
微少浸潤性腺がんで充実成分の大きさが0.5cm以下、かつ病変の大きさが3cm以下
    T1a
充実成分の大きさが1cm以下で、TisやT1miには相当しない
    T1b
充実成分の大きさが1cmを超え2cm以下
    T1c
充実成分の大きさが2cmを超え3cm以下
T2 充実成分の大きさが3cmを超え5cm以下
または、充実成分の大きさが3cm以下でも以下のいずれかであるもの
・主気管支に及ぶが気管分岐部には及ばない
・臓側胸膜に浸潤がある
・肺門まで連続する部分的または片側全体の無気肺か閉塞性肺炎がある
    T2a
充実成分の大きさが3cmを超え4cm以下
    T2b
充実成分の大きさが4cmを超え5cm以下
T3 充実成分の大きさが5cmを超え7cm以下
または、充実成分の大きさが5cm以下でも以下のいずれかであるもの
・臓側胸膜、胸壁、横隔神経、心膜のいずれかに直接浸潤がある
・同一の肺葉内で離れたところに腫瘍がある
T4 充実成分の大きさが7cmを超える
または、大きさを問わず横隔膜、縦隔、心臓、大血管、気管、反回神経、食道、椎体、気管分岐部への浸潤がある
または、同側の異なった肺葉内で離れたところに腫瘍がある
※1: 充実成分とは、CT検査などによって病変内部の肺血管の形がわからない程度の高い吸収値を示す部分のことです。これに対し、病変内部の肺血管の形がわかる程度の淡い吸収値を示す部分をすりガラス成分といいます。
※2: 病変の大きさとは、充実成分およびすりガラス成分を含めた腫瘍全体の最大径のことです。
日本肺癌学会編「臨床・病理 肺癌取扱い規約 2017年1月(第8版)」(金原出版)より作成
表3 肺がんのN分類とM分類
N0 所属リンパ節※3への転移がない
N1 同側の気管支周囲かつ/または同側肺門、肺内リンパ節への転移で原発腫瘍の直接浸潤を含める
N2 同側縦隔かつ/または気管分岐下リンパ節への転移がある
N3 対側縦隔、対側肺門、同側あるいは対側の鎖骨の上あたりにあるリンパ節への転移がある
M0 遠隔転移がない
M1 遠隔転移がある
M1a 対側肺内の離れたところに腫瘍がある、胸膜または心膜への転移、悪性胸水※4がある、悪性心嚢水(しんのうすい)※5がある
M1b 肺以外の一臓器への単発遠隔転移がある
M1c 肺以外の一臓器または多臓器への多発遠隔転移がある
※3: 肺がんの所属リンパ節は、胸腔内や鎖骨の上あたりにあります。
※4: 胸水の中にがん細胞がみられること。
※5: 心臓の周りにたまった液体(心嚢水)の中にがん細胞がみられること。
日本肺癌学会編「臨床・病理 肺癌取扱い規約 2017年1月(第8版)」(金原出版)より作成
表4 肺がんの病期分類
  N0 N1 N2 N3 M1a M1b M1c
T1mi IA1            
T1a IA1 IIB IIIA IIIB IVA IVA IVB
T1b IA2 IIB IIIA IIIB IVA IVA IVB
T1c IA3 IIB IIIA IIIB IVA IVA IVB
T2a IB IIB IIIA IIIB IVA IVA IVB
T2b IIA IIB IIIA IIIB IVA IVA IVB
T3 IIB IIIA IIIB IIIC IVA IVA IVB
T4 IIIA IIIA IIIB IIIC IVA IVA IVB
日本肺癌学会編「臨床・病理 肺癌取扱い規約 2017年1月(第8版)」(金原出版)より作成
小細胞肺がんでは、上記の病期分類のほかに「限局型」と「進展型」による分類も用いて、治療法を決めていきます。
表5 小細胞肺がんの病期分類
限局型 ・病巣が片側肺に限局している
・反対側の縦隔および鎖骨上窩(じょうか)リンパ節までに限られている
・悪性胸水および心嚢水がみられない
進展型 ・「限局型」の範囲を超えてがんが進んでいる
日本肺癌学会編「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版」(金原出版)より作成

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含めて検討し、担当医とともに決めていきます。

図5、図6は臨床病期と大まかな治療の流れを示しました。担当医と治療方針について話し合う参考にしてください。

(1)非小細胞肺がんの治療

非小細胞肺がんの中心となる治療は手術です。病期によっては再発予防のため手術後の化学療法が勧められています。また、全身状態、年齢、合併する他の病気などにより、手術が難しいと判断した場合は放射線治療を行います。さらに進行した状態では、薬物療法を中心に行います。
図5 非小細胞肺がんの治療の選択
図5 非小細胞肺がんの治療の選択
日本肺癌学会編「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版」(金原出版)より作成

(2)小細胞肺がんの治療

小細胞肺がんは手術が可能な早期に発見されることは少なく、中心となる治療は化学療法です。放射線治療を併用することもあります。
図6 小細胞肺がんの治療の選択
図6 小細胞肺がんの治療の選択
日本肺癌学会編「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版」(金原出版)より作成

●妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕(にんよう)性温存治療(妊娠できる可能性を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

手術ができるかどうかについては、手術前の全身状態(特に呼吸機能)が大きく影響します。手術後を順調に乗り切るために、十分な禁煙期間(1カ月以上)を設けることが大切です。

非小細胞肺がんの標準的な治療法は手術です。病期がI期、II期、またIIIA期の一部の場合は手術が可能になります。小細胞肺がんの場合は限局型のI期で手術を行うことがあります。

1)手術方法

これまで、胸部の皮膚を15~20cmほど切開して、肋骨の間を開いて行う開胸手術が一般的でしたが、近年は、10cm以下の切開で、体の負担がより少ない開胸手術が行われるようになっています。

また、数カ所小さく切開し、胸腔鏡を挿入してモニター画面で確認しながら行う、胸腔鏡下手術も広く行われていますが、肺がんに対する胸腔鏡手術が、従来の開胸手術と比べて、安全面や体への負担面において優れているかについては、まだ明らかになっていません。

手術においては、肺の切除をどの程度の範囲で行うかが重要になります。標準術式(手術法)は肺葉ごと切除する肺葉切除術です。それ以外では、がんの広がりによっては片側の肺をすべて切除する肺全摘術や、腫瘍の大きさ、性質や状態によっては、肺葉の一部を切除する縮小手術を行うこともあります(図7)。

肺を切除するのと同時に、周囲のリンパ節を一緒に摘出するリンパ節郭清(かくせい)も行います。
図7 手術の種類
図7 手術の種類

2)手術直後の様子

酸素吸入を数日間行います。また、肺を切除した部分には、血液混じりの液状成分や、空気(肺を切除した部位から漏れ出た場合)がたまるため、ドレーンと呼ばれる管を脇から入れて体の外へ出します。ドレーンは数日間付けたままになります。手術の翌日より、ベッドから離れて歩行を始めます。また、飲食は翌日の昼から開始します。

3)手術の合併症の予防について

手術後は、痰(たん)が一時的に増えることがあります。また手術後の痛みにより痰が出しにくくなるため、肺炎を起こしやすくなります。手術後は痰をしっかり出すことが特に重要です。手術後の痛みをうまくコントロールして、体をよく動かしましょう。

(1)手術後の痛みの対処法

開胸手術の場合、主に背中側の肩甲骨の下あたりに創(きず)ができます。創自体の痛みのほかに、肋骨に沿った痛みや、前胸部に痛みが出るなど、創部周囲に痛みが広がることもあります。「鉄板が背中に入っているような感じや重い感じがする」と表現する人もいます。

痛みは我慢しないで、積極的に担当医や看護師に伝えましょう。痛み止めの薬を変えたり、増やしたり、痛みや状態に応じた処置を受けることができます。

(2)痰をうまく出すための対処法

手術後には、肺を切除した部位からの軽度の出血、気道からの分泌物の増加、麻酔の影響などによって、いつもより多めの痰が出ることがあります。特にたばこを長年吸ってきた人は、大量の痰が出ることがあります。痰をうまく出せずにいると肺炎の危険性が高まりますので、意識的に痰を出すように努めましょう。

痰の出し方については、手術前に看護師から指導を受けます。上体を起こし、水分を補給し、痛み止めの薬を使用してしっかり咳(せき)をして痰を出しましょう。気管支を広げる薬を吸入する処置が行われることもあります。

4)術前術後のリハビリテーション

痰をうまく出せるように、さらに、呼吸機能を回復させるために、看護師やリハビリテーションスタッフの指導の下、術前術後のリハビリテーションを行います。手術前には、手術後に呼吸訓練が正しく行えるようにするために行います。手術直後では、自分で体を動かせるようになったら、体を起こしてベッドに座ったり、病室内を歩いたりすることから始めます。さらに、体力が低下している場合は、トレーニングマシンなどを使って持久力訓練を行います。

関連情報

3.放射線治療

高エネルギーのX線を体の外から照射してがん細胞を死滅させる治療です。

治癒を目的に行う「根治的放射線治療」と、骨や脳などへの転移によって起こる症状を緩和する目的で行う「緩和的放射線治療」があります。小細胞肺がんで限局型の場合は、脳への転移を予防するために、脳全体に放射線を照射する「予防的全脳照射」を行うこともあります。

根治的放射線治療が適するのは、非小細胞肺がんでは、I期やII期で手術が難しい場合と、III期で化学療法と放射線治療を併用する化学放射線療法が難しい場合です。小細胞肺がんでは限局型が放射線治療の対象となります。

治療のスケジュールは非小細胞肺がんの場合、1日1回2Gy(グレイ)の照射を週5回、合計6週間で60Gyを照射するのが標準的です。小細胞肺がんは、細胞分裂の速さを考慮し、照射と照射の間に放射線が効きにくい細胞が出現しないよう、1回1.5Gyの照射を1日2回週5回照射し、合計3週間で45Gy照射する加速多分割照射が行われる場合もあります。

1)放射線治療の副作用について

副作用は主に放射線が照射された部位に起こります。皮膚や粘膜は細胞分裂が盛んなため、放射線の影響を受けやすく炎症を起こします。かゆみや発赤、皮がむけるなどの皮膚炎の症状が強い場合は軟膏で治療します。食道炎を起こした場合は、固形物の通りが悪くなり、胸やけや痛みを伴うこともありますが、症状が強いときには粘膜保護剤や痛み止めを服用します。肺に炎症が起こり咳や痰の増加、発熱、息切れなどの症状が出る放射線肺臓炎を起こした場合は、副腎皮質ステロイド剤などの治療を行いますが、炎症が強く出た場合は、長い間咳や息切れが続くことがあります。

用語集

4.薬物療法

薬剤を点滴あるいは内服で投与し、血液の流れで全身にめぐらせ、全身に広がったがん細胞に作用させます。副作用に対する予防法や対策が進歩していることもあり、外来通院しながら治療を受けることが多くなっています。

使用する薬剤は、肺がんの組織分類や病期、全身状態によって異なります。

1)細胞障害性抗がん剤(化学療法)

細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)は、細胞増殖を制御しているDNAに作用したり、がん細胞の分裂を阻害したりすることで、がん細胞の増殖を抑える薬です。

非小細胞肺がんの化学療法は、手術と組み合わせて行われる「術後化学療法」と、手術による治癒が難しい状況で行われる「緩和的化学療法」があります。緩和的化学療法は、肺がんを完全に治すことが難しい場合でも進行を抑え、延命や症状を軽減することを目的として行います。小細胞肺がんは、化学療法が治療の中心になります。

(1)非小細胞肺がんの化学療法

●術前化学療法
病期I~IIIA期に対して手術前に、プラチナ製剤(白金を含む抗がん剤)との組み合わせで、プラチナ併用療法を考慮する場合もあります。

●術後化学療法
手術後の化学療法では、IA期でがんの大きさが2cm以上の場合やIB期に対してはテガフール・ウラシル配合剤療法、II期~IIIA期に対してはシスプラチン併用療法を行います。

●化学放射線療法
手術が難しいIIIA期・IIIB期では、胸部への放射線治療と抗がん剤(プラチナ併用療法)の併用療法が治療の第一選択となります。併用する時期は逐次よりも同時のほうが効果が高いとされていますが、副作用も強くなることがあるため注意が必要です。使用する抗がん剤の組み合わせは、CP療法(カルボプラチン+パクリタキセル)、CD療法(シスプラチン+ドセタキセル)、CV療法(シスプラチン+ビノレルビン)です。

(2)小細胞肺がんの化学療法

●限局型
限局型で病期がI期で手術が可能な場合は術後化学療法が、手術が難しい場合は胸部への放射線治療と化学療法を併用する化学放射線療法が行われています。使用する抗がん剤の組み合わせは、PE療法(シスプラチン+エトポシド)です。

●進展型
進展型は、化学療法単独で治療を行います。使用する抗がん剤の組み合わせは、PI療法(シスプラチン+イリノテカン)が標準治療ですが、副作用が強い場合はPE療法(シスプラチン+エトポシド)を、高齢の場合はCE療法(カルボプラチン+エトポシド)など状況によって使用する抗がん剤を検討します。

(3)抗がん剤の副作用について

使用する薬剤の種類によって副作用は異なり、その程度も個人差があります。新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなる骨髄抑制などが起こったりします。その他、全身のだるさ、吐き気、手足のしびれや感覚の低下、筋肉痛や関節痛、皮膚や爪の変化、肝臓の機能異常などが出ることもあります。

用語集

2)分子標的薬

分子標的薬は、がんの増殖に関わっている分子を標的にしてその働きを阻害する薬です。切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんで非扁平上皮がん(腺がん、大細胞がん)の治療として使用します。

1次治療としては、がんの増殖に関わるEGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異とALK(未分化リンパ腫キナーゼ)融合遺伝子の有無、ROS1融合遺伝子の有無、全身状態、年齢を考慮し、使用する薬剤を検討します。

使用する薬剤は、EGFR遺伝子変異がある場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤のゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブのいずれかになります。また、ALK融合遺伝子がある場合は、ALKチロシンキナーゼ阻害剤のアレクチニブまたはクリゾチニブを使用します。ROS1融合遺伝子がある場合は、ROS1チロシンキナーゼ阻害の効果もあるクリゾチニブを使用します。その他に、VEGF(新しい血管を作る働きをもつ成長因子)を阻害するベバシズマブを抗がん剤と併用して使用することがあります。

1次治療後、効果がなくなった場合や、副作用などの理由で1次治療を中止した場合でも、全身状態が良好であれば、2次治療、3次治療が行われます。使用する薬剤は、以前用いたものとは異なる薬剤や組み合わせになります。また、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤のゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブを使用後に、T790M変異という抵抗性がみられた場合は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤のオシメルチニブが2次以降の治療の選択肢の1つになっています。

分子標的薬による副作用では、皮膚や爪の変化、下痢、高血圧、出血、タンパク尿、倦怠感などが起こることがあります。多くの場合では軽度ですが、まれに、間質性肺炎などの危険性の高い副作用があらわれることがあります。

3)免疫チェックポイント阻害剤

私たちの体に備わっている免疫の機能には、発生したがん細胞を異物として排除する働きがあります。しかし、がん細胞はその免疫にブレーキをかけ、排除されないようにすることがあります。免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫にブレーキをかける場所(免疫チェックポイント)で、ブレーキをかけられないように阻害する薬です。切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの治療として使用します。

現在、免疫チェックポイント阻害剤の使用が認められているのは、治療効果が証明されているもので、病状などの条件が合った場合に限られています。また、免疫チェックポイント阻害剤の治療では、間質性肺炎、甲状腺(こうじょうせん)機能異常、劇症I型糖尿病、自己免疫性腸炎、重症筋無力症などの重篤な副作用が一部の患者さんでみられることが知られており、死亡例の報告もあります。そのため、免疫チェックポイント阻害剤による治療は、定められた施設要件(投与を受けても安全である、十分な対応が可能な施設)、医師要件(処方されても安心できる、十分な知識・経験を有する医師)を満たす専門医療機関で、適切な方法で受けることが必須となります。

免疫チェックポイント阻害剤として、PD-1(免疫チェックポイントの1つ)とがん細胞が結合することを阻害するPD-1阻害剤のニボルマブが、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して保険適応されており、プラチナ製剤併用化学療法後の2次治療以降に使用することがあります。ただし、全身状態のよくない患者さんおよび間質性肺炎や膠原(こうげん)病などの合併症を有する患者さん、化学療法未実施の患者さんに対して、また、術後化学療法、他の化学療法や放射線治療との併用については、有効性および安全性は確立しておらず、こうした状況での使用は勧められません。

また、PD-1阻害剤のペムブロリズマブが、PD-L1陽性(PD-1と結合する物質)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して保険適応されています。EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子がともに陰性もしくは不明の場合に使用することがあります。承認されて間もない薬のため、副作用について特に慎重に検討がなされています。

内容が専門的で複雑ですので、わからないことは担当医に聞いてみましょう。

関連情報

5.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【肺がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表5 肺がんの病期別生存率(対象:2006~2008年に診断を受けた患者さん)
病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
I 7,134 83.8
II 1,309 50.1
III 4,309 22.4
IV 5,011 4.8
全症例 18,048 44.7
全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年7月集計)による
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6.緩和ケア

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんのニーズに応じて幅広い対応をします。患者さん本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えるようにしましょう。

用語集
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7.臨床試験

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験や治験などの研究段階の医療が行われています。

関連情報

1)肺がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

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8.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

一般的に、転移した肺がんは、すべてを手術で取りきることが難しいため、薬物療法を中心に治療を行いますが、場所や症状などによって放射線治療を行う場合もあります。これらの治療ができない場合にも症状を和らげる治療を行い、痛みや苦痛を緩和しながら日常生活が送れるようにします。

肺がんが転移しやすい場所は、リンパ節、脳、肝臓、副腎、骨です。

用語集

1)骨転移の治療

薬物療法を中心として、放射線治療を併用することもあります。薬物療法では、痛み止めや骨転移による骨折を予防するために、骨粗しょう症の治療薬としても使用するビスフォスフォネート製剤やデノスマブを服用します。放射線治療では、痛みの緩和や、骨折の危険性が高い場合、麻痺などの神経症状の出現の可能性がある場合などに行います。

2)脳転移の治療

脳転移の症状緩和には、放射線治療による効果が期待できます。脳全体に放射線を照射する「全脳照射」と、転移がある部分にのみ放射線を照射する「定位放射線治療」があります。どちらの治療を行うかは、病状や転移の状態・個数・大きさなどによって検討します。
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