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更新・確認日:2020年01月23日 [ 履歴 ]
履歴
2020年01月23日 「肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2019年版」より、内容の更新をしました。
2019年07月22日 新規に追加された用語へのリンクを追加しました。
2017年08月03日 「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版」「臨床・病理 肺癌取扱い規約 第8版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2014年10月23日 「3.薬物療法(抗がん剤治療)」を更新しました。
2013年03月25日 内容を更新しました。
2012年11月02日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1995年11月06日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法を決める際には、組織型やがんの進行の程度、体の状態、年齢、合併症などを考慮します。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期はローマ数字を使って表記するのが一般的です。肺がんでは早期から進行につれて0期〜IV期に分類します(表4)。

1)病期(ステージ)

肺がんの病期は、次のTNMの3種の分類(TNM分類)の組み合わせで決まります。
T:原発巣のがんの大きさや広がりの程度(表2)
N:所属リンパ節(胸腔内や鎖骨の上あたりのリンパ節)への転移の有無(表3)
M:遠隔転移の有無(表3)
表2  肺がんのT分類 (原発巣のがんの大きさや広がりの程度)
表2  肺がんのT分類 (原発巣のがんの大きさや広がりの程度)の表
日本肺癌学会編「臨床・病理 肺癌取扱い規約 2017年1月(第8版)」(金原出版)より作成
表3 肺がんのN分類(所属リンパ節への転移の有無)とM分類(遠隔転移の有無)
表3 肺がんのN分類(所属リンパ節への転移の有無)とM分類(遠隔転移の有無)の表
日本肺癌学会編「臨床・病理 肺癌取扱い規約 2017年1月(第8版)」(金原出版)より作成
表4 肺がんの病期分類
表4 肺がんの病期分類の表
日本肺癌学会編「臨床・病理 肺癌取扱い規約 2017年1月(第8版)」(金原出版)より作成

●小細胞肺がんの分類

小細胞肺がんの治療法を選択する際には、上記の病期分類と併せて、「限局型」と「進展型」による分類(表5)も使用しています。
表5 小細胞肺がんの病期分類
表5 小細胞肺がんの病期分類の表
日本肺癌学会ウェブサイト「肺癌診療ガイドライン2019年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む」より作成
用語集
胸水 

2)治療の選択

肺がんの治療法は、組織型や病期ごとの標準治療に基づいて、体の状態や年齢、本人の希望なども考慮しながら担当医と共に決めていきます。複数の治療法を併用することもあります。
図4、図5は、組織型や病期ごとの標準治療の流れをまとめたものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

(1)非小細胞肺がんの治療

比較的早期の非小細胞肺がんの治療の中心は手術です。再発予防のため手術後に薬物療法を行うこともあります。また、体の状態、年齢、合併する他の病気などの影響で手術が難しい場合には、放射線治療を行います。
がんが手術では完全に取りきることができない程度に進行している場合にも、放射線治療を行います。この場合、体の状態がよければ、放射線治療と薬物療法を同時に行うこともあります(化学放射線療法)。さらに進行した状態では、薬物療法が治療の中心になります。
図4 非小細胞肺がんの治療の選択
図4 非小細胞肺がんの治療の選択の図
日本肺癌学会ウェブサイト「肺癌診療ガイドライン2019年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む」より作成

(2)小細胞肺がんの治療

小細胞肺がんの治療の中心は薬物療法です。ごく早期の場合は手術を行うこともあります。限局型の場合には、体の状態によって放射線治療を併用することもあります。
図5 小細胞肺がんの治療の選択
図5 小細胞肺がんの治療の選択の図
日本肺癌学会ウェブサイト「肺癌診療ガイドライン2019年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む」より作成

●妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

手術は、I期、II期の非小細胞肺がんとI期、IIA期の小細胞肺がんが対象で、手術によってがんを取りきることができる場合に行います。手術ができるかどうかについては、手術前の体の状態を総合的に評価して判断します。手術後の順調な回復のためにも、手術前には1カ月以上の禁煙をします。
手術の方法としては、これまで、胸部の皮膚を15〜20cmほど切開して、肋骨の間を開いて行う開胸手術が一般的でした。しかし近年では、胸腔鏡という細い棒状のビデオカメラを挿入し、モニターの画像を補助的に使う開胸手術や、モニターの画像だけを見ながら行う手術が広く行われています。それぞれに長所と短所があり、具体的な手術の手順は病院によって異なることもあります。

1)手術の種類

切除する範囲によって複数の手術法があります。どの種類の手術を行うかは、組織型や病期、体の状態などによって異なります。

(1)肺葉切除術

がんのある肺葉を切除する手術です(図6)。通常はリンパ節郭清(周囲のリンパ節の切除)も行います。I期からII期の非小細胞肺がんに対する標準的な手術方法です。がんが肺と隣接する胸壁や心膜に広がっているときには、一緒に切除する場合があります。
図6 肺葉切除術の切除範囲
図6 肺葉切除術の切除範囲の図

(2)縮小手術

肺をできるだけ温存することを目的として、肺葉の一部分のみを切除する手術です。非小細胞肺がんのごく早期か、I期で肺の機能などに問題があり、肺葉切除ができない場合の手術です。再発の可能性が高くなるので、可能であれば肺葉切除術を行います。
縮小手術には、がんがある区域のみを切除する区域切除(図7左)と、区域の中でがんがある部分のみを切除する楔状けつじょう切除(図7右)があります。
図7 縮小手術の切除範囲
図7 縮小手術の切除範囲の図

(3)片側肺全摘手術

がんがある側の片肺をすべて切除する手術です(図8)。がんが肺葉を越えて広がっている場合や、大血管や気管支に及んでいる場合に必要になることがあります。がんが肺と隣接する胸壁や心膜に広がっているときには、一緒に切除する場合があります。体に大きな負担がかかるので、心臓や肺の状態や年齢なども考慮しながら、手術できるかどうかを検討します。
図8 片側肺全摘手術の切除範囲
図8 片側肺全摘手術の切除範囲の図

2)手術後の合併症

肺の手術を行うと、肺活量の低下や肺炎などの合併症がおきることがあります。合併症を予防するために、手術前・手術後それぞれに呼吸訓練をすることが大切です。

●肺活量の低下

手術中の肺の圧迫の影響や、手術の傷あとの痛みなどのため、手術前と比べて肺活量が著しく低下することがあります。

●肺炎などの肺の病気

手術後の痛みのために咳がしにくくなると、気道の中に痰などの分泌物がたまりやすくなります。これが肺炎や無気肺(肺の一部または全体に空気がなく、肺がつぶれた状態)などの肺の病気の原因になることがあります。

3.放射線治療

放射線治療は、高いエネルギーを持つ放射線をあててがん細胞を破壊し、がんを消滅させたり小さくしたりする治療法です。がんの治癒や進行の抑制、がんによる身体症状の緩和や延命などを目的として行います。体の状態がよく、細胞障害性抗がん薬を使用できる場合には、放射線治療と同時に使用することがあります(化学放射線療法)。
化学放射線療法では、放射線治療と細胞障害性抗がん薬を同じ時期に併用したほうが、時期を分けて連続的に行うよりも効果が高いとされていますが、急性の副作用が出る可能性も高くなります。

1)非小細胞肺がんの放射線治療

I期からIII期で手術が難しい場合には、治癒を目標とした放射線治療を行います。II期・III期で体の状態がよい場合には、化学放射線療法を行います。また、I期・II期で医学的には手術が可能でも、患者本人が手術を希望しないときには、治癒を目標とした放射線治療を行うことがあります。

2)小細胞肺がんの放射線治療

小細胞肺がんでは限局型が放射線治療の対象となります。I期で手術ができない場合や、II期以降でも体の状態がよい場合には、化学放射線療法を行います。また、I期またはIIA期以外の限局型では、初回の治療によってがんが画像検査では分からないほど縮小し、体の状態も良い場合には、脳への転移による再発を予防するために脳全体に放射線を照射することがあります(予防的全脳照射)。

【放射線治療の副作用】

皮膚や粘膜など細胞分裂が盛んな部分は放射線の影響を受けやすく、治療後に炎症を起こすことがあります。放射線があたった部位に起こりやすく、食道の痛みや飲み込みにくさ、咳や発熱、息切れなどの症状がでることがあります。重症になることもありますので、高熱やひどい息切れがある場合には早めに医師に相談しましょう。

4.薬物療法

薬剤を点滴または内服で体内に取り入れ、がんの増殖を抑えたり成長を遅らせたりする治療です。体内に入った薬は全身をめぐるので、肺以外の臓器に転移している場合にも効果を期待できます(全身療法)。手術や放射線治療のような局所療法と組み合わせて、治療後の再発や転移を予防することもあります。肺がんは転移しやすいがんなので、薬物療法はとても有効な治療法です。
治療の効果は、X線検査やCT検査、気管支鏡下検査、腫瘍マーカー検査などで判定します。副作用などの理由で一次治療(がんの診断後に初めて行う薬物治療)を中止した場合や、一次治療の効果がなくなった場合でも、体の状態が良好であれば、二次治療、三次治療が行われます。その場合、前の治療ですでに使ったものとは異なる薬や組み合わせを使用します。
肺がんの薬物療法で使用する薬には、大きく分けて「細胞障害性抗がん薬」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」があります。どの薬を使用するかは、肺がんの組織分類や病期、体の状態などによって異なります。
細胞障害性抗がん薬は、細胞の増殖の仕組みに着目して、その仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬です。がん以外の正常に増殖している細胞も影響を受けます。

分子標的薬は、がん細胞に特徴的な分子を目印にしてがんを攻撃する薬です。がん以外の正常に増殖している細胞への影響を抑えられるのが特徴です。肺がんでは、チロシンキナーゼ阻害薬や血管新生阻害薬を使用します。がん遺伝子検査をもとに適切な薬を選びます。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、分子標的薬に含めることもあります。
※免疫チェックポイント阻害薬については「5.免疫療法」もご参照ください。

1)非小細胞肺がんの薬物療法

再発や転移を予防することを目的として、手術後に細胞障害性抗がん薬による治療を行うことがあります。II期やIII期で、手術は難しいが放射線治療の効果が期待できる場合に、放射線治療を併用し、化学放射線療法を行うことがあります。
進行していて手術では取りきれない場合には、薬物療法が治療の中心になります。細胞障害性抗がん薬や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を使用します。複数の薬を組み合わせて併用することもあります。

2)小細胞肺がんの薬物療法

小細胞肺がんでは、主に細胞障害性抗がん薬で治療を行います。進展型では免疫チェックポイント阻害薬と併用することもあります。小細胞肺がんは転移しやすいがんですが、細胞障害性抗がん薬の効果が出やすいという特徴があります。

(1)限局型の場合

病期がIからIIA期で手術で取り切れる場合は、再発や転移を防ぐために、手術の後に細胞障害性抗がん薬を使用することがあります。手術が難しい場合は化学放射線療法を行います。体の状態によっては、細胞障害性抗がん薬のみで治療を行います。
I期とIIA期以外では細胞障害性抗がん薬による治療が中心となり、体の状態を考慮しながら適切な方法を選びます。状態が良い場合(PS0-2)には、放射線治療を併用した化学放射線療法を行います。PS3では薬物療法が治療の中心です。いずれの場合も、初回の治療でがんが画像検査では分からないほど縮小し、PSが良いまたは改善した場合には、予防的全脳照射を行うことがあります。

(2)進展型の場合

進展型は主に細胞障害性抗がん薬で治療します。免疫チェックポイント阻害薬と併用することもあります。使用する薬は健康状態や年齢によって異なります。

【薬物療法の副作用について】

使用する薬剤の種類によって副作用は異なり、その程度も個人差があります。細胞障害性抗がん薬は新陳代謝の盛んな細胞に影響を与えやすく、脱毛や、口内炎、下痢、白血球や血小板の数が少なくなる骨髄抑制などの症状が出ることがあります。
分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は、薬ごとにさまざまな副作用があらわれます。自分が受ける薬物療法について、いつどんな副作用が起こりやすいか、どう対応したらよいか、特に気をつけるべき症状は何かなど、治療が始まる前に担当医に確認しておきましょう。

5.免疫療法

免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2020年1月現在、肺がんの治療に効果があると証明されているのは、免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです。

6.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

7.リハビリテーション

リハビリテーションは、がんとその治療による合併症や副作用などによる身体的・心理的な障害の緩和や、能力の回復・維持を目的に行われます。
肺の手術を行うと、手術前と比べて肺活量が著しく低下したり、痛みのため痰を出しにくくなったりして、肺炎や無気肺などの合併症につながることがあります。このような合併症を避けるため、手術の前後に呼吸訓練を行います。手術後の呼吸訓練を正しく行い、回復の効率をよくするためには、手術前の比較的余裕のある時期にしっかりと呼吸の訓練をしておくことが大切です。胸部や手足の筋肉のストレッチや、息切れが強くならない程度のウォーキングなどの運動も有効です。看護師やリハビリテーションスタッフの指導を受けながら、しっかりと行いましょう。
手術後には、呼吸訓練と併せて、肺の一部分だけを圧迫しないように心がけます。長時間同じ姿勢で寝たきりにならないように体の向きを変えたり、無理のない程度に体を動かしたりしましょう。早期回復のためには、退院後もリハビリテーションを引き続き粘り強く続けていくことが大切です。

8.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●肺がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。
参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

9.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。生存率とは、がんと診断されてからある一定の期間経過した時点で生存している割合のことで、通常はパーセンテージ(%)で示されます。がんの治療成績を表す指標としては、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます。
なお、生存率には大きく2つの示し方があります。1つは「実測生存率」といい、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。他方を「相対生存率」といい、がん以外の死因を除いて、がんのみによる死亡を計算した生存率です。
以下のページに、国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センターが公表している院内がん登録から算出された生存率を示します。ここでは、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供する目的で、5年生存率より新しいデータで算出をした3年生存率についても情報提供をしています。
※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではありません。

10.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によってがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

1)転移

肺がんはリンパ節、反対側の肺、骨、脳、肝臓、副腎などに転移しやすいがんです。一般的に、転移した肺がんを手術ですべて取りきることは難しいため、症状がない場合は薬物療法を中心に、痛みなどがある場合は症状を取り除くための放射線治療や手術を行います。これらの治療ができない場合にも、症状を和らげる治療を行い、痛みや苦痛を緩和しながら日常生活を送れるようにします。

●骨転移の治療

痛みなどの症状がある場合には、放射線治療を行います。骨折の危険性が高い、脊髄圧迫があるなどの場合には、手術を行うこともあります。骨転移による骨折を予防するために、骨粗しょう症の治療薬を服用することもあります。

●脳転移の治療

痛みや麻痺などの症状がある場合には、症状を緩和するための手術や放射線治療を検討します。症状がない場合には薬物療法が中心ですが、転移巣の大きさや個数、部位などの状況によって、放射線治療や手術を行うこともあります。

2)再発

再発がんでは、がんが肺以外の組織にもみられることが多いので、非小細胞肺がん、小細胞肺がんともに全身療法である薬物療法が治療の中心となります。非小細胞肺がんでは、がんの組織型や遺伝子変異などの有無、体の状態をみながら治療薬を選択します。小細胞肺がんは特に再発の多いがんです。再発した場合には、一次治療終了から再発までの期間の長さによって、適切な細胞障害性抗がん薬を選びます。
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