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中咽頭がん

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中咽頭がんについて

1.中咽頭について

咽頭いんとうは、鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位で、筋肉と粘膜でできた約13cmのくだです。咽頭は上からそれぞれ、上咽頭じょういんとう中咽頭ちゅういんとう下咽頭かいんとうの3つの部位に分かれています(図1)。

中咽頭とは、咽頭の中間部分で、軟口蓋なんこうがい(口の上部の奥にある柔らかい部分)、口の奥の突き当たりの壁、口蓋扁桃こうがいへんとう舌根ぜっこん(舌の付け根部分)が含まれます。軟口蓋は、飲食物を飲み込むときに上がり、鼻腔への通り道をふさぎます。この動きによって、飲食物は鼻腔に流れず、下咽頭へ送られます。
なお、頭頸部とうけいぶとは、脳、目、首の骨(頸椎)を除いた頭と頸部(首)のことで、鼻や口、あご、のど、耳、またそれらの周囲の臓器を指します。

図1 頭頸部の構造
図1 頭頸部の構造図

2.中咽頭がんとは

中咽頭がんは、中咽頭に発生するがんで、頭頸部がんの1つです。発生するがん細胞の種類(組織型)は、ほとんどが扁平へんぺい上皮がんです。

発生には、喫煙と飲酒のほか、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因となっているものがあることが分かっています。ヒトパピローマウイルス感染に関連した中咽頭がんは、そうでないものに比べて予後がよいことが知られています。

咽頭の周りには多くのリンパ節があるため、頸部(首)のリンパ節に転移しやすいという特徴があります。がんの発見時に頸部リンパ節への転移が見つかることも珍しくありません。また、先に頸部リンパ節転移が見つかり、原発巣を探していくうちに中咽頭がんであることがあとから分かることもあります。

3.症状

中咽頭がんは、初期のうちは自覚症状が見られないことがあります。

症状としては、飲み込むときの違和感、おさまらない咽頭痛、のどからの出血、口を大きく開けにくい、舌を動かしにくい、耳の痛み、口の奥・のど・首にできるしこり、声の変化があげられます。

このような症状がある場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

4.関連する疾患

中咽頭がんと同時、または異なる時期に、口腔、喉頭、食道などのほかの臓器にがん見つかることがあります。中咽頭がんの原因の1つである喫煙や過度の飲酒は、これらのがんの発生要因でもあると考えられているためです。このように、異なる臓器に発生するがんのことを重複がんといいます。

更新・確認日:2023年03月20日 [ 履歴 ]
履歴
2023年03月20日 図1の一部を修正しました。
2023年01月05日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版」より、内容を更新しました。
2019年04月23日 「4.統計」の項目名を「4.患者数(がん統計)」に変更し、内容を更新しました。
2018年11月29日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年03月14日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年03月16日 内容を更新しました。
1997年05月12日 掲載しました。

中咽頭がん 検査

触診、喉頭鏡こうとうきょう検査や内視鏡検査で咽頭を確認し、がんが疑われる場合は、組織を採取して詳しく調べる検査(生検せいけん)を受けます。また、がんの大きさ、リンパ節や他臓器への転移などを確認するために、CT検査やMRI検査、超音波(エコー)検査、PET検査などが行われます。

がんの検査について、大まかな流れや心構えなどの基本的な情報を掲載しています。

1.触診

医師が首の回りを丁寧に触って、リンパ節への転移がないかなどを調べる検査です。緊張すると首が固くなり、リンパ節のれが見つけにくくなるため、リラックスして首の力を抜くことが大切です。また、中咽頭がんは、口から入れた指が届く場所にがんができるため、がんがあると疑われる部分を指で直接触れて、がんの大きさや硬さ、広がりなどを調べます。咽頭反射(のどへの刺激による吐き気)を伴うため、少しつらい検査ですが、がんの広がりを調べるためには重要な検査です。

2.喉頭鏡検査・間接喉頭鏡検査

小さな鏡がついている器具を口から入れて、鼻やのどの奥を確認する検査です。

3.内視鏡検査

咽頭や喉頭に局所麻酔をかけ、咽頭反射とのどの表面の痛みを除いたあと、内視鏡を鼻や口から入れて、咽頭を確認する検査です。また、中咽頭がんは、同時に食道がんなどができることがあるため、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で重複がんがないか調べることが勧められています。

4.生検

咽頭や喉頭に局所麻酔をかけ、内視鏡で確認しながら病変の一部を採取して、顕微鏡で詳しく確認し、がんかどうかを診断する検査です。

中咽頭がんでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染に関連するp16というタンパク質の状態により、TNM分類および病期が異なります。そのため、採取したがん組織を免疫染色という方法を用いて調べ、p16が多く作られている場合にp16陽性、そうでない場合にp16陰性と診断されます。

5.CT検査

体の周囲からX線をあてて撮影することで、体の断面を画像として見ることができる検査です。がんの深さや広がり、リンパ節への転移の有無を調べるときに行われます。造影剤を注射して撮影すると、がんの広がりや、がんが周りの臓器に浸潤しんじゅんしているか等を詳しく確認することができます。

6.MRI検査

強力な磁石と電波を使用して撮影することで、体の断面を画像として見ることができる検査です。MRI検査の画像は、CT検査よりも、がん組織と正常な組織の区別が明確です。がんの深さや広がり、リンパ節への転移の有無をCT検査とは異なる情報から調べることができます。

7.超音波(エコー)検査

首の表面から超音波をあて、そのはね返りをモニターで見ながら確認する検査です。主に頸部けいぶリンパ節への転移の有無を調べるときに行われます。

8.PET検査

放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞にエネルギー源として取り込まれるブドウ糖の分布を撮影することで、全身のがん細胞を検出する検査です。CT検査やMRI検査とは異なる情報から、がんの広がり、リンパ節やほかの臓器への転移の有無を調べます。治療後の再発の診断にも有用なことがあります。

9.腫瘍マーカー検査

中咽頭がんでは、現在のところ、がんの診断や治療効果の判定に使用できるような、特定の腫瘍マーカーはありません。

更新・確認日:2023年01月05日 [ 履歴 ]
履歴
2023年01月05日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版」より、内容を更新しました。
2018年11月29日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年03月14日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年03月16日 内容を更新しました。
1997年05月12日 掲載しました。

中咽頭がん 治療

中咽頭がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法、緩和ケアがあります。

1.ステージと治療の選択

治療は、がんの進行の程度を示すステージ(病期)やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。

1)ステージ(病期)

がんの進行の程度は、「ステージ(病期)」として分類します。ステージは、ローマ数字を使って表記することが一般的で、中咽頭がんでは0期〜Ⅳ期に分けられ、進行するにつれて数字が大きくなります。

ステージは、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決まります。
Tカテゴリー:原発腫瘍の広がり
Nカテゴリー:頸部けいぶのリンパ節に転移したがんの大きさと個数
Mカテゴリー:がんができた場所から離れた臓器への転移の有無

原発腫瘍とは、原発部位(がんがはじめに発生した部位)にあるがんのことで、原発巣ともいわれます。

中咽頭がんのTNM分類および病期は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染に関連するp16が陽性か陰性かによって異なります。

p16陰性または検査未実施の場合は表1、表2を、p16陽性の場合は表3、表4をご参照ください。

表1 中咽頭がんのTNM分類(p16陰性/検査未実施)
表1 中咽頭がんのTNM分類(p16陰性/検査未実施)の表
日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版.より作成
表2 中咽頭がんの病期分類(p16陰性/検査未実施)
表2 中咽頭がんの病期分類(p16陰性/検査未実施)の表
日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版.より作成
表3 中咽頭がんのTNM分類(p16陽性)
表3 中咽頭がんのTNM分類(p16陽性)の表
日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版.より作成
表4 中咽頭がんの病期分類(p16陽性)
表4 中咽頭がんの病期分類(p16陽性)の表
日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版.より作成

2)治療の選択

治療は、がんの進行の程度や組織型に応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。

中咽頭がんの治療では、がんの状態を改善することと同時に、飲み込むことや発声などの機能を残すことも重要視されています。手術と手術以外の治療法(放射線治療、放射線治療と薬物療法を併用する化学放射線療法)を比較しても、いずれもメリットとデメリットがあり、どちらがよいかはまだ分かっていません。そのため、治療法は、腫瘍の部位と広がり、転移の有無、機能温存の希望から決めていきます。

なお、がんがp16陽性か陰性かによって治療の選択が変わることはありません。

図2は、中咽頭がんに対する根治を目指す治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

図2 中咽頭がんの治療の選択
図2 中咽頭がんの治療の選択の図
日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版.2022年,金原出版.より作成

妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもを持つことを希望している場合で、特に薬物療法を受ける可能性が高いときには、妊孕性にんようせいを温存すること(妊娠するための力を保つこと)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談しましょう。

2.手術(外科治療)

中咽頭がんの手術は、がんとリンパ節の切除が中心です。切除した部位の機能が失われる場合は、体の別の組織を移植する手術によって切除した部分を再建する「再建手術」を行い、飲み込むことや発声の機能などをできるだけ保つようにします。

1)手術について

(1)中咽頭がんに対する手術

T1、T2の場合は、口から器具を入れてがんを切除する経口的切除術ができることも多く、手術後の障害も比較的少なくてすみます。がんが進行していると切除する範囲が大きくなります。腫瘍の広がっている範囲に応じて舌や喉頭、下咽頭も同時に切除することがあります。

(2)頸部郭清術けいぶかくせいじゅつ

中咽頭がんでは、頸部リンパ節に転移があることが多いです。頸部リンパ節に転移している場合や、転移の確率が高い場合は、頸部リンパ節を切除する頸部郭清術を行います。取り除く範囲は、がんの状態によって異なります。リンパ節への転移がない場合でも予防的に頸部郭清術を行うことがあります。周辺の血管や神経、筋肉をできるだけ残しながら手術しますが、がんの状態によってはそれらを残すことができないことがあります。

2)術後の合併症

(1)中咽頭がんの手術の後遺症

下あごの骨を切除した場合は、口の開閉がしにくくなり、食べ物をよくかみ砕くことが難しくなることがあります。咽頭や喉頭、舌など切除する範囲が大きい場合は、発音する機能や飲食物を飲み込む機能が損なわれることがあります。また、声帯を切除した場合は声が出せなくなります。そのため、発声法(食道発声、シャント発声など)の習得や電気式人工喉頭(発声を補助する器具)を使用した代用音声のリハビリテーションを行います。

(2)頸部郭清術の後遺症

頸部郭清術の際は、リンパ節、周囲の血管や筋肉、神経を切除することがあるため、術後に、顔のむくみ、頸部のこわばり、肩の運動障害などの後遺症が起こることがあります。後遺症を最小限に抑えるために、リハビリテーションを行います。

発声のリハビリテーションに関する情報を掲載しています。
日喉連は、喉頭がんなどで声帯を切除し、声が出せなくなった人たちが組織する団体です。下記のページでは、発声の訓練を通して社会復帰や会員の交流をはかる、全国各地の発声教室が紹介されています。
がん相談支援センターでは、患者会や患者サロンなど、同じような体験をした人と話ができる場に関する情報をもらえることもあります。また、困りごとや悩みごとのほか、人工喉頭の購入費用の助成制度などについても相談できます。

3.放射線治療

放射線治療は、放射線をあててがん細胞を破壊し、がんを消滅させたり小さくしたりします。中咽頭がんでは、放射線治療のみ行う場合と、放射線治療と薬物療法とを併用する化学放射線療法を行う場合があります。化学放射線療法に関する情報は、関連情報をご確認ください。

1)放射線治療について

体の表面から放射線をあてる外部照射を30~35回(1日1回、週5日の治療を6~7週間)受けます。

がんのステージによっては、薬物療法と併用して放射線治療を行う化学放射線療法を行う場合もあります。薬物を併用することにより放射線治療の効果を高めることや、治療後の再発リスクを下げることが期待されます。

強度変調放射線治療(IMRT)では、さまざまな方向からあてる放射線の量をコンピューターで調節するため、複雑な形のがんでもそれぞれの部位に適切な量の放射線を照射することができます。また、治療終了後にあらわれる副作用を軽減する効果が期待されます。

2)放射線治療の副作用

放射線治療の副作用は、全身にあらわれるものと、治療する部位に起こる局所的なものがあります。また、治療中や治療後すぐにあらわれるものと、治療終了後半年から数年たってあらわれるものがあります。

副作用が原因で治療が続けられなくなるという事態を避けるため、皮膚科医、看護師、歯科医、歯科衛生士、言語聴覚士、栄養士、心理士などの医療スタッフが連携して、副作用を最小限にするための治療やケアが行われます。

(1)治療中や治療後すぐにあらわれる副作用

声がかれたり、唾液が出にくくなったり、皮膚炎や粘膜炎が起こることがあります。また、粘膜炎によって水や食事が飲み込みにくくなる嚥下困難などの症状があらわれることもあります。このような症状は、治療終了後1~2カ月くらいで改善することが多いです。ただし、声がかれたり、唾液が出にくくなるという症状の改善には時間がかかるため、口や咽頭の乾燥、味が分からないという症状はしばらく続く可能性があります。

皮膚炎が起こった場合は、外用薬(塗り薬)を用いて皮膚の組織を保湿します。口内炎や粘膜炎の痛みには、うがい薬を使ったり、歯科で口腔ケアを受けたりします。

また、口腔や咽頭の粘膜炎などによって、食事を十分に食べられず体力が落ちたり、薬剤を内服できなかったりすることが原因で、治療が続けられなくなることがあります。これを防ぐため、放射線治療の前に胃ろう(おなかの皮膚から胃へくだを通す穴)(図3)をつくっておくこともあります。なお、胃ろうは、ほとんどの場合、内視鏡を使ってつくります。

治療中や治療後に、食事が十分に食べられなかったり、薬を内服できなかったりする場合には、胃ろうから直接栄養や薬剤をとることができます。胃ろうから栄養をとることによって、食事が食べられないことによる体力低下や、栄養状態を改善するための入院などの可能性を減らすことができます。治療が終わって、口から十分食事がとれるようになったら、胃ろうに入れていた管を抜きます。通常、管を抜いたあとの穴は自然にふさがります。

図3 胃ろう
図3 胃ろう

(2)治療終了後半年から数年たってあらわれる副作用

中耳炎、嚥下・開口障害(口が開きにくくなること)、唾液が出にくいことによる味覚の低下や虫歯の増加、歯が抜ける、下顎骨壊死かがくこつえし(下あごの骨の組織が局所的に壊死すること)や下顎骨骨髄炎(普段から口の中にいる細菌による感染が下あごの骨に及んだ状態)によるあごの痛みやれなどの症状があらわれることがあります。治療終了後も口の中をきれいに保つように気をつけることが大切です。

4.化学放射線療法

化学放射線療法は、手術を行わずに放射線治療と併用して薬物療法(化学療法)を行い、治癒を目指す方法です。薬物療法と放射線治療を併用することで治療効果を高めることができます。

化学放射線療法における薬物療法では、細胞障害性抗がん薬や、分子標的薬を使います。細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を邪魔することで、がん細胞を攻撃する薬です。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質などを標的にして、がんを攻撃する薬です。

副作用として、放射線治療によって声がかれたり、皮膚炎や粘膜炎、粘膜炎による嚥下障害が起こったりすることや、薬物療法によって骨髄抑制などがあらわれることがあります。

薬に関する詳しい情報は、治療の担当医や薬剤師などの医療者にご確認ください。

薬物療法で使われる薬の種類に関する情報は以下のページをご覧ください。

5.薬物療法

中咽頭がんの薬物療法には、治癒や機能の温存を目指した集学的治療として行われる薬物療法と、再発・転移した場合に行われる薬物療法があります。

治癒や機能の温存を目指した薬物療法では、放射線治療と同時に行われる化学放射線療法のほか、根治を目指した治療の前に行われる導入化学療法、根治を目指した手術の後に行われる術後化学放射線療法があります。

導入化学療法は、放射線治療の前に行う薬物療法のことです。薬物療法によって腫瘍の量を減らし、治療効果を高めることが目的です。治療は、複数の細胞障害性抗がん薬を組み合わせます。分子標的薬を併用することもあります。

術後化学放射線療法は、手術のあと、がんが取り切れなかった場合や、再発の可能性が高い場合に行う治療のことです。細胞障害性抗がん薬が用いられ、放射線治療を併用することが勧められています。

再発や遠隔転移に対する薬物療法では、細胞障害性抗がん薬や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬が使われます。

薬に関する詳しい情報は、治療の担当医や薬剤師などの医療者にご確認ください。

再発・転移した場合の薬物療法に関する情報は、以下をご覧ください。
化学放射線療法については、以下をご覧ください。
薬物療法で使われる薬の種類に関する情報は以下のページをご覧ください。

6.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケア/支持療法は、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげたり、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くしたりするために行われる予防、治療およびケアのことです。

決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まります。つらさを感じるときには、がんの治療とともに、いつでも受けることができます。

「さまざまな症状への対応」には、症状別に、がんそのものやがんの治療に伴って起こることがある症状や原因の説明、ご本人や周りの人ができる工夫などを紹介しているページへのリンクを掲載しています。

7.リハビリテーション

リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行われます。また、緩和ケアの一環として、心と体のさまざまなつらさに対処する目的でも行われます。

中咽頭がんでは、手術の合併症を予防し、後遺症を最小限に抑えることや、回復を早めるために、手術前後の時期には以下のリハビリテーションを行います。治療後の安静が必要な期間を過ぎてからは、積極的に、機能を回復するための練習が必要です。話すこと、飲み込むこと、かむことは、多くの筋肉や神経の複雑な働きによって可能になります。話すことが、飲み込みやすさを助けることもあります。はじめは身ぶりや手ぶり、メモによる筆談などを組み合わせながら、なるべくのどを使うように心がけてみましょう。

1)飲み込みのリハビリテーション

飲食物を食道へ、空気を気管へふり分ける働きが低下すると、誤嚥ごえんによる肺炎が生じる恐れがあります。これを防ぐために、言語聴覚士や看護師などと共に、安全に食事をとるリハビリテーションを行います。舌やのどの筋力強化の訓練や、実際に食事をするリハビリテーションがあります。

2)食べ物をよくかみ砕くためのリハビリテーション

手術で下あごの骨を切除したあとにかむ動作がしにくくなった場合は、鏡を見ながら、口の開け閉めを練習するようにします。退院後、1人でも練習できるように、担当医や看護師、リハビリテーション専門の医療スタッフにリハビリテーションの方法を確認しておきましょう。

3)頸部郭清術による症状のリハビリテーション

頸部郭清術を行った場合、手術後の顔のむくみ、頸部の変形・こわばり、肩の運動障害などが起こることがあります。理学療法士などの指導を受けながら、腕をあげたり、肩や首を回したりする運動を行います。このような運動を退院後も継続することで、不快感の軽減が期待できます。

発声のリハビリテーションに関する情報を掲載しています。

8.再発した場合の治療

再発とは、治療によって、見かけ上なくなったことが確認されたがんが、再びあらわれることです。原発巣やその近くに、がんが再びあらわれることだけでなく、別の臓器で「転移」として見つかることも含めて再発といいます。

中咽頭がんでは、発見時に頸部リンパ節に転移していることも少なくありません。また、肺、肝臓、骨などのほかの臓器に転移することもあります。

1)局所再発に対する放射線治療・手術

放射線治療は、原則として同じ場所に対して繰り返し行うことができないため、初めの治療で放射線治療を行ったあとに再発した場合は、切除が可能であれば手術を行います。一方で、初めの治療で放射線治療を行っていない場合は、放射線治療を含めて治療法を検討します。

2)再発に対する薬物治療

初回の治療後に再発し、手術や放射線治療ができない場合や遠隔転移が出現した場合には、薬物療法を行います。

薬物療法は、細胞障害性抗がん薬や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を使います。体の状態に応じて、いくつかの薬を併用したり、1つの薬で治療したりします。体調や合併症などの状況によって、薬物療法を行うことが難しい場合には、症状を和らげるための治療が勧められることがあります。

細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を邪魔することで、がん細胞を攻撃する薬です。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質などを標的にして、がんを攻撃する薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞ががん細胞を攻撃する力を保つ(がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぐ)薬です。

いずれの薬物療法でも副作用への対応が重要となります。予想される副作用とその対応については担当医とよく相談をしましょう。特に免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療では、いつ、どんな副作用が起こるか予測がつかず、治療が終了してから数週間から数カ月後に起こる副作用もあるため注意が必要です。起こるかもしれない副作用の症状を事前に知り、自分の体調の変化に気を配って、治療中や治療後にいつもと違う症状を感じたら、医師や薬剤師、看護師などの医療スタッフにすぐに相談することも必要です。

なお、2023年1月現在、中咽頭がんの治療に効果があると証明されている免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです。そのほかの免疫療法で、中咽頭がんに対して効果が証明されたものはありません。

更新・確認日:2023年05月16日 [ 履歴 ]
履歴
2023年05月16日 「3.放射線治療」に「図3 胃ろう」を追加しました。
2023年03月20日 構成を変更し、「化学放射線療法」の見出しを立てました。また、放射線治療の副作用に一部加筆しました。
2023年01月05日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版」より、内容を更新しました。
2018年11月29日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月10日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2013年03月25日 内容を更新しました。
2013年03月14日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年03月16日 内容を更新しました。
1997年05月12日 掲載しました。

中咽頭がん 療養

1.経過観察

治療によりがんが消失したと判断されたあとは、定期的に通院して検査を受けます。検査を受ける頻度は、がんの進行度や治療法によって異なります。

中咽頭がんは、再発する場合は、治療後2年以内が多いとされ、その後は緩やかに減少していきます。受診の間隔は状態によって異なりますが、治療後2年以内は1〜2カ月に1回程度を目安に継続的な受診が必要で、少なくとも5年間は経過観察をする必要があります。

再発や転移、治療後の合併症、食道がんなどの別のがんの早期発見を目的に、内視鏡検査、首の触診、画像検査などが行われます。

2.日常生活を送る上で

規則正しい生活を送ることで、体調の維持や回復を図ることができます。禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、適度な運動などを日常的に心がけることが大切です。

症状や治療の状況により、日常生活の注意点は異なりますので、体調を見ながら、担当医とよく相談して無理のない範囲で過ごしましょう。

日頃から口腔ケアを心がけることも大切です。口の中には、普段もたくさんの細菌が存在しています。しかし、治療を受けると、これらの細菌が原因で感染症になることがあります。これを防ぐには、粘膜に刺激のないやさしいブラッシング、うがいやこまめに水分をとるなど、口の中を清潔でうるおった環境に保つことが効果的です。また、定期的に歯科医師の診察を受けましょう。

性生活について

性生活によって、がんの進行に悪影響を与えることはありません。また、性交渉によってパートナーに悪い影響を与えることもありません。

しかし、がんやがんの治療は、性機能そのものや、性に関わる気持ちに影響を与えることがあります。がんやがんの治療による性生活への影響や相談先などに関する情報は、「がんやがんの治療による性生活への影響」をご覧ください。

なお、薬物療法中やそのあとは、膣分泌物や精液に薬の成分が含まれることがあるため、パートナーが薬の影響を受けないように、コンドームを使いましょう。また、薬は胎児に影響を及ぼすため、治療中や治療終了後一定期間は避妊しましょう。経口避妊薬などの特殊なホルモン剤を飲むときは、担当医と相談してください。

以下の関連情報では、療養中に役立つ制度やサービスの情報を掲載しています。

がんと診断されてからの働き方についてQ&A形式で紹介しています。
がんの治療にかかる主な費用や利用できる制度、相談窓口などのお金に関する情報について掲載しています。
治療で不安なこと、痛みやつらさ、治療費のことなど、がんに関するさまざまな相談に対応する窓口について紹介しています。
各都道府県等が発行しているがんに関する冊子やホームページへのリンクを掲載しています。
更新・確認日:2023年01月05日 [ 履歴 ]
履歴
2023年01月05日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版」より、内容を更新しました。
2018年11月29日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年03月25日 内容を更新しました。
2012年11月15日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1997年05月12日 掲載しました。

中咽頭がん 臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。

現在行われている標準治療は、より多くの人によりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

中咽頭がんの臨床試験を探す

国内で行われている中咽頭がんの臨床試験が検索できます。

がんの臨床試験を探す チャットで検索
入力ボックスに「中咽頭がん」と入れて検索を始めてください。チャット形式で検索することができます。

がんの臨床試験を探す カテゴリで検索 中咽頭がん
国内で行われている中咽頭がんの臨床試験の一覧が出ます。

臨床試験への参加を検討する際は、以下の点にご留意ください

  • 臨床試験への参加を検討したい場合には、担当医にご相談ください。
  • がんの種類や状態によっては、臨床試験が見つからないこともあります。また、見つかったとしても、必ず参加できるとは限りません。
がんの臨床試験への参加を考えるときに、知っておきたい情報について掲載しています。
「がんの臨床試験を探す」の使い方のコツや注意事項がまとめてあります。
更新・確認日:2023年01月05日 [ 履歴 ]
履歴
2023年01月05日 内容を確認し、表記を一部変更しました。
2021年07月01日 掲載しました。

中咽頭がん 患者数(がん統計)

1.患者数

2019年に日本全国で口腔・咽頭がんと診断されたのは、23,671例(人)です。

中咽頭がんは、口腔・咽頭がんの1つです。

2.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、全国がんセンター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。

更新・確認日:2023年01月05日 [ 履歴 ]
履歴
2023年01月05日 「1.患者数」「2.生存率」を更新しました。
2021年07月01日 掲載しました。

中咽頭がん 予防・検診

1.発生要因

中咽頭がんの発生には、喫煙、飲酒のほか、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因となっているものがあることが分かっています。

2.予防と検診

1)予防

日本人を対象とした研究では、がん全般の予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形の維持、感染予防が有効であることが分かっています。

中咽頭がんを予防するためには禁煙し、飲酒も適量を心がけましょう。

2)がん検診

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和3年一部改正)」でがん検診の方法が定められています。

しかし、中咽頭がんについては、現在は指針として定められているがん検診はありません。気になる症状がある場合には、医療機関を早めに受診することをお勧めします。

なお、がん検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。症状をもとに受診して行われる検査や、治療後の経過観察で行われる定期検査は、ここでいうがん検診とは異なります。

更新・確認日:2023年01月05日 [ 履歴 ]
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2023年01月05日 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和3年10月1日一部改正)」を確認し、更新しました。
2019年04月23日 「4.統計」の項目名を「4.患者数(がん統計)」に変更し、内容を更新しました。
2018年11月29日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年03月14日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年03月16日 内容を更新しました。
1997年05月12日 掲載しました。

中咽頭がん 関連リンク・参考資料

1.中咽頭がんの相談先・病院を探す

がん診療連携拠点病院・地域がん診療病院とは、専門的で質の高いがん医療を提供する病院として国が指定した病院です。これらの病院では、がんに関する相談窓口「がん相談支援センター」を設置しており、病院の探し方についても相談できます。

以下の「相談先・病院を探す」では、中咽頭がんを含む「口腔がん・咽頭がん・唾液腺がん・鼻のがん」の診療を行うがん診療連携拠点病院などの病院やがん相談支援センターを探すことができます。また、診断や治療の実施状況や病院の種類などで絞り込んで検索したり、院内がん登録の件数などを確認することもできます。

2.参考資料

  1. 日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版.2022年,金原出版.
  2. 日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版.

作成協力

更新・確認日:2023年01月05日 [ 履歴 ]
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2023年01月05日 「2.参考資料」を更新しました。
2021年07月01日 「1.中咽頭がんの相談先・病院を探す」を追加しました。
2019年04月23日 「4.統計」の項目名を「4.患者数(がん統計)」に変更し、内容を更新しました。
2018年11月29日 「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年03月14日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年03月16日 内容を更新しました。
1997年05月12日 掲載しました。
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