神経膠腫(グリオーマ)の治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法、交流電場療法があります。また、診断されたときから、がんに伴う心と体のつらさなどを和らげるための緩和ケア/支持療法を受けることができますので、必要なときは担当医に相談しましょう。
1.悪性度と治療の選択
治療は、がんの性質や進行の程度、体の状態などに基づいて検討します。神経膠腫の治療を選択する際には、悪性度(グレード)を調べます。
1)悪性度(グレード)と分類
手術によって摘出した腫瘍組織から、遺伝子検査や病理学的分類に基づいて、悪性度(グレード)が判定されます。
脳腫瘍には、他のがんのようなTNM分類やステージ分類がありません。代わりにグレード1から4の数字で分類されています。グレード1の腫瘍は、手術ですべて摘出できれば再発のおそれがほとんどない良性腫瘍です。グレード1の神経上皮性腫瘍としては、子どもの小脳や視神経に発生することが多い毛様細胞性星細胞腫や神経節膠腫があります。
神経膠腫は、大きく乏突起膠腫、星細胞腫および膠芽腫に分類され、さらにグレードに応じてグレード2〜4に分かれます(表2)。
グレード | 乏突起膠腫 IDH変異型+1p/19q共欠失あり |
星細胞腫 IDH変異型+1p/19q共欠失なし |
膠芽腫 IDH野生型 |
---|---|---|---|
2 | 乏突起膠腫グレード2 | 星細胞腫グレード2 | |
3 | 乏突起膠腫グレード3 | 星細胞腫グレード3 | |
4 | 星細胞腫グレード4 | 膠芽腫グレード4 |
これらの分類やグレードによって治療方針が異なります。乏突起膠腫は星細胞腫に比べて悪性度が低く、薬物療法の効果が得られやすい腫瘍です。
神経膠腫をはじめ、脳腫瘍の診断は2021年WHO分類(WHO:World Health Organization)に基づいて行われます。2016年WHO分類までは、グレード3の腫瘍は退形成性乏突起膠腫、退形成性星細胞腫と呼ばれていましたが、2021年WHO分類では、退形成性という言葉は使われなくなりました。
また、以前は脳腫瘍の分類は主に顕微鏡で観察した組織学的検査に基づいていましたが、2021年WHO分類では、遺伝子検査に基づく腫瘍組織の分子診断を行うことになっています。2023年7月現在、国内では神経膠腫の手術後の遺伝子検査は保険適用になっていませんが、遺伝子検査をしない場合でも組織学的検査の結果や病気の進み方などに応じて速やかに治療が行われています。
遺伝子変異と神経膠腫の分類
神経膠腫は、顕微鏡で観察した病理検査により乏突起膠腫、星細胞腫、膠芽腫に分類され、さらにIDH・p53・TERT・EGFR・CDKN2A/B・H3.K27M・BRAFと呼ばれる遺伝子変異の有無や染色体1p/19q共欠失(1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失している)の有無、他の遺伝子変異によって細かく分けられます(図4)。
また、細胞障害性抗がん薬であるテモゾロミド(アルキル化薬)の効果が期待できるかどうかは、腫瘍細胞のMGMT遺伝子が関係していることが分かっています。すなわち、この遺伝子の働きが抑制されている場合には、テモゾロミドの効果を妨げずに、腫瘍が縮小しやすいことが知られています。
治療の選択に関わる腫瘍の悪性度(グレード)や分類について、分からないことや気になることがあれば担当医に確認しましょう。別の医師の話を聞いてみたい場合は大学病院やがんセンターなどでセカンドオピニオンを受けることもできます。がん診療連携拠点病院などに設置されている「がん相談支援センター」では、セカンドオピニオンを受けることのできる病院や、各病院の専門領域などに関する情報が得られます。
2)治療の選択
治療は、腫瘍の分類やグレードに応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。
神経膠腫の治療は、可能な限り手術で腫瘍を摘出し、病理診断後に放射線治療および薬物療法を追加することが原則です。グレード2の神経膠腫で腫瘍が全摘出できれば、追加の治療を行わずに経過観察することもあります。表3は、神経膠腫のグレード別の標準治療を示したものです。
グレード | 診断 | 治療 |
---|---|---|
2 | 乏突起膠腫 | 手術のみ(全摘出の場合など) 手術+薬物療法(化学療法) 手術+放射線治療+薬物療法 |
星細胞腫 | ||
3 | 乏突起膠腫 | 手術+放射線治療+薬物療法 |
星細胞腫 | ||
4 | 星細胞腫 | 手術+放射線治療+薬物療法 手術+放射線治療+薬物療法+交流電場療法 |
膠芽腫 |
担当医から複数の治療法を提案されることもあります。治療を選ぶにあたって分からないことは、まず担当医にしっかり確認することが大切です。悩みや困りごとについては、「がん相談支援センター」で相談できます。
妊娠や出産について
がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕性を温存すること(妊娠するための力を保つこと)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。治療が始まってからでは、妊孕性の温存が難しいことがあります。
詳しくは関連情報の「妊孕性(にんようせい)」をご参照ください。
2.手術(外科治療)
悪性脳腫瘍の手術は、神経症状を悪化させないように、可能な限り腫瘍を摘出することが原則です。
脳腫瘍はとても細かく分類されています。手術前の画像診断では神経膠腫かどうかの判断が難しいことも多く、手術を開始した後に違うタイプの脳腫瘍と分かることがあります。また、中枢神経系原発悪性リンパ腫や胚細胞腫瘍など、腫瘍をすべて摘出できなくても放射線治療や薬物療法で寛解する腫瘍もあり、手術を適切に進めるために、手術中におおよその病理診断(術中迅速病理診断)が可能な施設で受ける必要があります。
脳は部位により役割が決まっています。右前頭葉のようにあまり重要な働きをしていない部位に腫瘍ができた場合は、神経症状が悪化することなく、腫瘍をすべて摘出できる場合も少なくありません。
一方、運動野(手足の動きに関わる部位)や言語野(言葉に関わる部位:言語中枢)に腫瘍ができた場合は、腫瘍の摘出により症状が悪化することがあります。その場合は腫瘍全部の摘出を避けて、一部分の摘出によって分子診断、病理診断(病理検査)を行います。そのあとに、放射線治療や薬物療法を主とした治療を行うことになります。
術中ナビゲーション
腫瘍の位置を正確に把握して安全に手術を行うために、精度の高いナビゲーション装置を使います。手術前のCTやMRIの画像データと位置感知カメラから腫瘍とその周辺を立体的に描き出し、手術器具の位置と周辺の情報をリアルタイムに示して正確な手術をサポートします。
また、腫瘍細胞にのみ取り込まれる光感受性物質(5-ALA:5-アミノレブリン酸)を手術当日に服用することで、グレード3・4の神経膠腫では蛍光診断が可能となり、腫瘍の摘出が容易になります(手術中にレーザー光をあてると腫瘍部分だけが赤く光るため、腫瘍の広がりが肉眼で分かる)。
術中モニタリング
手術による運動麻痺などの後遺症を避けるため、脳の重要な部分に電気刺激を行って、手術中に機能を確かめます。運動機能や感覚機能などをSEP(体性感覚誘発電位)やMEP(運動誘発電位)などの術中脳波や筋電図でモニターしながら手術を行います。使用する術中モニタリングの種類は腫瘍の位置で決まります。
覚醒下手術
言語機能や高次機能、運動機能を温存しながら脳腫瘍を摘出する目的で行います。手術の途中で麻酔を緩めて意識をはっきりさせ、実際に機能が保たれていることを確認しながら腫瘍を摘出します。脳は、体中の痛みを感じることができますが、脳自体の痛みは感じないので、手術中に会話しながら手術を行うことができます(脳を切除しても痛くありません)。
覚醒下手術が受けられる施設は、認定を行っている日本Awake surgery学会のホームページで調べることができます。
術中MRI
脳などの様子をMRI画像で確認しながら手術を行うシステムです。腫瘍が摘出できたかどうかを確認するために、手術中にMRI撮影を行います。特にグレード2・3の腫瘍では、正常組織との境界が分かりにくいため、術中MRIは有用と考えられています。ただし、術中MRIが実施できる施設は限られています。
手術の合併症
手術では、脳の機能を温存しながらできる限り腫瘍を摘出します。
画像診断の進歩により、腫瘍の部位や広がりを正確に把握することが可能になり、一般に、手術前に比べ手術後の神経症状(運動や感覚、思考や言語などのさまざまな機能が障害されて起こる症状)が悪化することは少なくなりましたが、手術によって起こる合併症は、腫瘍の部位、大きさによってさまざまです。手術後に一時的に生じる脳浮腫(脳のむくみ)により症状が悪化することや、てんかん発作を起こすこともあります。手術前に担当医にどのようなリスクがあるのか、よく聞いておくことがとても重要です。
また、手術中や手術後に出血などが起こると、麻痺や意識障害などの重い障害が出ることがあります。そのため、手術後に強い頭痛や吐き気がみられたり、意識障害や運動麻痺などがあらわれたりした場合には、早急にCT検査を行い、必要に応じて再手術などの処置を行います。
手術後数日間は脳浮腫が強まり、神経症状が悪化することがありますが、多くの場合、適切な薬を使うことにより改善します(支持療法)。
3.放射線治療
高エネルギーのX線やその他の放射線を照射して、腫瘍細胞にダメージを与える方法です。神経膠腫の治療において放射線治療は重要な治療法の1つであり、手術や薬物療法と組み合わせて行うこともあります。治療の際には、放射線をできるだけ腫瘍部分だけに照射し、正常組織には照射しないように、もしくは照射量が少なくなるようにします。
1)局所放射線治療
神経膠腫は周囲の正常組織に浸潤していくため、腫瘍と正常組織との境界が不明瞭で、腫瘍の広がりも大きくなります。したがって、ピンポイントに高エネルギーの放射線を照射するガンマナイフやリニアック(直線加速装置)を用いた定位放射線照射を行っても、腫瘍にダメージを与えて小さくすることは困難です。
グレード2~4の神経膠腫に対しては、局所放射線治療を行います。腫瘍と腫瘍の浸潤部分に対して、正常な脳への影響をできるだけ少なくするために1回1.8~2.0グレイを週に5回、6週間かけて照射します(総線量54~60グレイ)。ガンマナイフやサイバーナイフといった定位放射線照射は、初発の神経膠腫に対して行うことはありません。
2)強度変調放射線治療(IMRT)
脳の正常な部位への照射を防ぐために、強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)を行うことがあります。IMRTとは、コンピューターによる緻密な計算により、腫瘍の形状に合わせて放射線を照射することで、がん組織には高い放射線量を与える一方で、隣接する正常組織にあたる線量を低く抑えることのできる治療方法です。
3)粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)
粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)とは、陽子や重粒子(重イオン)などの粒子放射線のビームを病巣に照射する放射線治療の1つです。これらの治療は頭頸部がんに対してはよく行われますが、神経膠腫に対して通常の放射線治療よりも効果があるかどうかは、まだ分かっていません。
乏突起膠腫、星細胞腫に対する放射線治療
グレード2の乏突起膠腫、星細胞腫に対して、腫瘍が手術ですべて摘出できたときは、多くの場合、そのまま経過をみます。しかし、腫瘍が残った場合は、再発後に症状が悪化することがしばしばあるため、グレード2の神経膠腫に対しても、早期に放射線治療が行われることがあります。
放射線治療の副作用
放射線治療後、比較的早い段階であらわれる副作用としては、放射線が照射された部位に起こる皮膚炎、中耳炎、外耳炎などや、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下などがあります。これらの症状は通常、照射後約1カ月で消失します。
また、放射線治療が終了して数カ月から数年たってから、認知機能の低下や運動機能障害などが起こることもあります(晩期合併症)。こうした影響は高齢者にやや多い傾向がみられますが、全般に副作用のあらわれ方や程度には個人差があります。
4.薬物療法
グレード3および4の神経膠腫に対しては、手術後に、放射線治療に加えて薬物療法を行います。グレード2の神経膠腫については、全摘出ができれば多くの場合、経過をみますが、薬物療法を追加したり、放射線治療と薬物療法を組み合わせて行ったりすることもあります。乏突起膠腫は星細胞腫に比べて薬物療法が効きやすい性質があります。
1)テモゾロミドを用いた治療
手術後に放射線治療と併用してテモゾロミドを6週間内服します。その後、維持療法としてテモゾロミドを5日間、4週間おきに内服し、これを1コースとして6~12コース行います。
テモゾロミドは経口で服用する細胞障害性抗がん薬ですが、これまでの薬剤に比べて貧血、白血球減少、血小板減少などの骨髄抑制が軽いのが特徴です。その一方で、リンパ球減少という特徴があり、ニューモシスチス肺炎などの特殊な肺炎を合併するリスクがありますので、予防として抗菌薬を併用することもあります。
その他の主な副作用は吐き気、便秘などの消化器症状や倦怠感などがあります。これらについては、吐き気を予防する制吐剤や緩下剤などの服用により症状を和らげます。
2)PAV療法
PAV療法とは内服薬のプロカルバジン(P)と注射薬のニムスチン(AまたはACNU)・ビンクリスチン(V)の3種類の薬物を組み合わせた治療法で、6~8週間おきに投与します。白血球や血小板の減少、貧血がみられるときは、輸血を行うこともあります。
3)ベバシズマブを用いた治療
個々の状態に合わせて、血管新生(腫瘍が新たに血管を作ること)を阻害するベバシズマブを用いた治療を行うこともあります。
神経膠腫は腫瘍を大きくする過程で、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)という物質を分泌して腫瘍への血管を発達させ、同時に、脳浮腫(脳のむくみ)を引き起こします。この薬は、VEGFに対する抗体であり、VEGFの働きを抑えることにより腫瘍の血管新生を抑制し、脳浮腫やそれに伴う神経症状を改善します。治療の際は、高血圧やタンパク尿などの副作用をチェックします。
4)がん遺伝子パネル検査と個別化治療
神経膠腫では、標準治療がない、または治療が終了したなどの条件を満たす場合に、がん遺伝子パネル検査が行われることがあります。がん遺伝子パネル検査は、腫瘍組織の遺伝子の変異を同時に多数調べる検査で、一人ひとりに効果的な治療を探すために行うものです。
がん遺伝子パネル検査の結果、薬物療法後の再発で腫瘍の遺伝子変異の数が多い場合には、ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体のペムブロリズマブ(遺伝子組換え)の効果が期待できます。また、BRAF遺伝子に変異がある場合は、変異型BRAFの活性を阻害するBRAF阻害薬の効果が期待できます。
がん遺伝子パネル検査を受けても必ず治療法が見つかるわけではありませんが、標準治療がない遺伝子変異についてもさまざまな治験や臨床試験が行われており、効果が期待できる治療法が見つかることもあります。遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などでその薬の使用が検討されます。
脳浮腫に対する治療
脳浮腫に対しては、ステロイドを使用します。脳浮腫によって頭痛や手足の麻痺などさまざまな症状があらわれても、ステロイド治療により症状が劇的に改善することがあります。
ただし、ステロイドの効果は一時的なものです。腫瘍が増大傾向にある場合にはステロイドを増量しますが、胃潰瘍や糖尿病、感染(肺炎などが起こりやすくなる)、骨折などの副作用に注意が必要です。また、強い脳浮腫に対してはベバシズマブの投与が効果的で、膠芽腫で手術後も強い神経症状がある場合には、初期治療から使用します。
けいれん発作(てんかん)に対する治療
脳の神経細胞は、その1つ1つが適切な信号を送り出すことによって、体の働きを調節します。ところが、何らかの刺激が原因で脳のある場所の神経細胞が一斉に興奮し、一度に信号を送ることがあります。このときに起こる発作をけいれん発作といい、発作が繰り返し起こる場合にはてんかんと呼びます。脳腫瘍によって起こるほか、その摘出後でも起こることがあります。
刺激された脳とは反対側の手または足が自分の意思に反して震える、言葉が話せなくなるなど、さまざまな症状が起こります。脳全体に神経細胞の異常な興奮が広がると意識を失い、全身の筋肉が震えたり、つっぱったりする大発作となります。大発作が起こると、脳に酸素が十分行き渡らなくなり、重篤な事態を引き起こす可能性もあります。この場合、すぐに医師にけいれん発作を止める処置をしてもらう必要があります。
けいれん発作を予防するために、抗てんかん薬が処方されます。規則正しく服用を続けることで、発作を起こさずに生活することが期待できます。自らの判断で薬の飲み方を変えたり、服用をやめたりしないことが重要です。
最近は、けいれんを起こしていない場合、肝機能障害や薬疹などのリスク、他の薬との相互作用を考慮し、抗てんかん薬を予防的に処方しないこともあります。担当医とよく相談してください。なお、けいれん発作がある場合や、発作を起こす危険がある場合には車の運転はできません。
5.交流電場療法
大脳に生じた初発の膠芽腫に対しては、化学放射線療法(放射線治療と薬物療法[化学療法]を併用する治療法)の後、テモゾロミドによる維持療法と並行して交流電場療法を行うことがあります。交流電場療法では、交流電場腫瘍治療システムという治療機器を1日18時間以上装着します。
6.緩和ケア/支持療法
がんになると、体や治療そのものだけでなく、仕事のこと、経済的なことを含めた将来への不安などのつらさも経験するといわれています。
緩和ケアは、がんに伴う体のつらさだけでなく、治療によって社会とのつながりが薄くなったりしたときの心のつらさを和らげるものです。支持療法はがんそのものによる症状や、がんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くしたりするために行われる予防、治療およびケアのことです。
決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まります。つらさを感じるときには、がんの治療とともに、いつでも受けることができます。本人にしか分からないつらさについても、積極的に医療者に話してみてください。今のつらさが和らぐきっかけになるかもしれません。
7.リハビリテーション
リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行われます。また、緩和ケアの一環として、心と体のさまざまなつらさに対処する目的でも行われます。
一般的に、治療中や治療終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。
脳腫瘍(神経膠腫)では、手足の麻痺、歩行障害や言語障害などがある場合に、リハビリテーションを実施します。また、手術後に安静状態が続くことによる関節の拘縮(関節が固まって動きが悪くなること)予防のためのリハビリテーションや、食事などの日常生活に合わせたリハビリテーションも必要に応じて追加されます。
8.再発した場合の治療
再発とは、治療によって、見かけ上なくなったことが確認されたがんが、再びあらわれることです。原発巣のあった場所やその近くに、がんが再びあらわれることだけでなく、別の臓器で「転移」として見つかることも含めて再発といいます。
神経膠腫(脳腫瘍)がどのように再発するかは腫瘍の種類によって異なりますが、多くの場合、もともと腫瘍があった場所の近くに再発(局所再発)が起こります。グレード4の膠芽腫は、初期治療が終わって数カ月から1年以内に再発することが多く、治療が難しくなってくるのが現状です。再発した場合には、手術や、細胞障害性抗がん薬の変更、追加などを行います。
再発した神経膠腫に対して、国内外で分子標的薬などの薬物療法が臨床試験として行われています。しかし、これらは一部の限られた病院でのみ実施が可能です。臨床試験の実施状況、受診可能な病院に関しては、まずは担当医にご相談ください。関連情報の「全国の希少がんセンターに設置されている希少がんホットライン」に電話相談したり、「研究段階の医療(臨床試験、治験など)について」「国立保健医療科学院 臨床研究情報ポータルサイト」「国立保健医療科学院 臨床研究等提出・公開システム(jRCT) 臨床研究検索」などのウェブサイトで調べたりすることもできます。
再発といっても一人ひとり状況は異なります。病気の広がりや、再発までの期間、これまで受けてきた治療内容などによって総合的に治療法を検討し、状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。