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全ページ表示でんし冊子神経膠腫(グリオーマ)(しんけいこうしゅ)

更新・確認日:2018年07月27日 [ 履歴 ]
履歴
2018年07月27日 「脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版」「臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版,2018年」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2017年08月21日 掲載準備中として、公開を中止しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1997年08月23日 掲載しました。

1.悪性度(グレード)と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。がんの進行の程度は、悪性度(グレード)として分類します。

1)悪性度(グレード)

手術によって摘出した標本から、病理学的分類に基づき、悪性度(グレード)が診断されます。
脳腫瘍の病理学的診断は、腫瘍の遺伝子変異と組み合わせた世界保健機関(WHO)が発表した「WHO分類」に従って行われます。

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含め検討し、担当医とともに決めていきます。
神経膠腫の治療の原則は、可能な限り手術で腫瘍を摘出し、病理診断後に追加として放射線治療および薬物療法を行うことです。なお、グレード2の神経膠腫で腫瘍が全摘出できれば、経過観察することもあります。
表4 は、神経膠腫のグレード別の治療方針を示したものです。
表4 神経膠腫のグレード別の治療方針5)
表4 神経膠腫のグレード別の治療方針 悪性度 治療 グレード2 びまん性星細胞腫 乏突起膠腫 手術のみ(全摘出など) 手術+放射線治療(+薬物療法*) 手術+薬物療法* グレード3 退形成性星細胞腫 退形成性乏突起膠腫 手術+放射線治療+薬物療法(テモゾロミド) グレード4 膠芽腫 手術+放射線治療+薬物療法(テモゾロミド[+ベバシズマブ]) * PAV(プロカルバジン、ニムスチン、ビンクリスチン併用)療法が行われます。テモゾロミドが使用されることもあります。
なお、がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

悪性脳腫瘍の手術の原則は、症状を悪化させないように可能な限り腫瘍を摘出することです。神経膠腫のような悪性脳腫瘍は、脳の表面ではなく、脳の内側から発生し、脳の中央部へしみこむように広がっていきます。
脳は部位により役割が決まっており、右前頭葉のようにあまり重要な働きをしていないところに腫瘍ができた場合には、腫瘍を肉眼的に全摘出することが可能です。
一方で、運動野(手足の動きの中枢)や言語野(言葉の中枢)に腫瘍が発生した場合には、腫瘍摘出により症状が悪化することがありますので、無理な全摘出は行いません。腫瘍の完全摘出よりも一部摘出による病理診断を行い、放射線や薬物療法での治療が主になります。

1)術中ナビゲーション

安全に手術を行うために、また、腫瘍が存在する部位を手術中に把握するために、車のカーナビゲーション装置よりもさらに精度の高いナビゲーション装置が使われます。

2)術中モニタリング

運動機能や感覚機能をSEP(体性感覚誘発電位)やMEP(運動誘発電位)といった術中脳波や筋電図でモニタリングしながら手術が行われます。

3)覚醒下手術

言語野の位置を同定し、言語機能や高次機能を温存するために、覚醒下手術(途中に麻酔を緩めて意識をはっきりさせたまま行う手術)が行われます。脳は、体中の痛みを感じることができますが、脳自身の痛みを感じるレセプター(受容体)や領域がなく、脳を切除しても痛くありませんので、手術中に患者さんと会話しながら手術を行います。

4)術中MRI

腫瘍が摘出できたかどうか、術中にMRI撮影を行うこともあります。
手術や生検(せいけん:腫瘍の一部を採取すること)で得られた腫瘍組織は、病理診断によって腫瘍の性質や遺伝子変異、悪性度を診断し、放射線治療や薬物療法の方針を決定します。
なお、術前の画像検査では神経膠腫かどうかを判断しにくいことも多く、手術中の迅速診断(術中病理診断)によって、手術が続けられます。

5)手術の合併症

手術では、脳の機能を温存しながらできるかぎり腫瘍を摘出します。
画像診断の進歩により、腫瘍の部位や広がりを正確に把握することが可能になり、一般に、術前に比べ手術後の神経症状が悪化することは少ないといえます。
一方、手術中や手術後に出血などが起こると、麻痺や意識障害などの重篤な障害をきたすことがあります。そのため、術後に強度の頭痛が続いたり、意識障害や運動麻痺などが出現した場合には、早急にCT検査を行い、必要に応じて再手術を行います。
また、術後数日間は脳浮腫が強まり、神経症状が悪化することがありますが、多くの場合は、薬物療法で改善します。

3.放射線治療

高エネルギーのX線やそのほかの放射線を照射して、腫瘍細胞を障害する方法です。神経膠腫の治療において、放射線治療は重要な治療法の1つであり、手術後に、単独あるいは薬物療法と組み合わせて行われます。

1)局所照射

グレード2〜4の神経膠腫に対しては、局所放射線治療が行われます。腫瘍と腫瘍の浸潤(しんじゅん)部分に対して、1回1.8〜2.0グレイの量を週に5回、6週間かけて照射し、合計54〜60グレイの照射を行います。

2)IMRT(強度変調放射線治療)

転移性脳腫瘍は腫瘍と正常細胞との境界が比較的明瞭ですが、神経膠腫は浸潤性に発育し腫瘍の広がりも大きいため、ピンポイントに高エネルギーの放射線を照射する、ガンマナイフやリニアックを用いた定位放射線治療では腫瘍をコントロールすることは困難です。正常脳への照射を防ぐために、強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる治療を行うことがあります。IMRTとは、コンピューターによる緻密な計算により、腫瘍の形状に合わせて放射線を照射することで、がん組織には高い放射線量を与え、隣接する正常組織には線量を低く抑えることを可能にした治療方法です。
なお、陽子線治療や重粒子線治療は頭頸部(とうけいぶ)がん(耳鼻科領域のがん)に対してはよく行われますが、神経膠腫に対しては、これらの治療が通常の放射線治療よりも効果があるかどうかは不明です。
※ 陽子線治療・重粒子線治療:陽子や重粒子(重イオン)などの粒子放射線のビームを病巣に照射する放射線治療の1つです。神経膠腫に対しては、先進医療として行われています。
グレード2のびまん性星細胞腫、乏突起膠腫などに対する放射線治療は、海外での臨床試験の結果、手術診断後に早期放射線治療を行う場合と、再発あるいは腫瘍増大後に放射線治療を行う場合とで、生存期間が変わらないという結果が報告されました。全摘出されている場合は、手術のみで経過をみることも多いですが、神経膠腫の患者さんは、再発後に症状が悪化することもしばしばあるため、腫瘍が残っている場合にはグレード2の神経膠腫に対しても、早期に放射線治療が行われていることが多いです。
用語集
浸潤 

●副作用について

放射線治療後すぐにあらわれる副作用としては、放射線が照射され部位に起こる皮膚炎、中耳炎、外耳炎などや、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲低下などがあります。これらの症状は照射後約1カ月で消失します。また、脳そのものの機能に影響が及ぶこともあります。中には、放射線治療が終了して数カ月から数年たってから起こる症状(晩期合併症)もあります。このような影響は高齢者に少し多くなる傾向がありますが、全般に、患者さんによって副作用の程度は異なります。

4.薬物療法

グレード3および4の神経膠腫に対しては、放射線治療に加え、薬物療法が行われます。グレード2の神経膠腫については、全摘出できれば経過をみることもありますが、放射線治療単独や、放射線+薬物療法により治療することもあります。
乏突起膠腫は星細胞腫に比べて薬物療法が効きやすい性質があります。

1)テモゾロミド

手術後に放射線治療と併用して6週間テモゾロミドを内服します。その後、維持療法として5日間テモゾロミドを4週おきに内服します。
テモゾロミドは化学療法で用いられる経口の細胞障害性抗がん剤ですが、これまでの薬剤に比べて貧血、白血球減少、血小板減少などの骨髄抑制が軽いのが特徴です。ただし、リンパ球減少が特徴的でニューモシスチス肺炎などの特殊な肺炎を合併するリスクがありますので、肺炎の予防薬を同時に併用するなど専門医とよく相談しながら治療することが必要です。ほかの主な副作用は悪心(おしん)、吐き気、便秘などの消化器症状や倦怠感などですが、吐き気を予防する制吐剤(せいとざい)や緩下剤(かんげざい)などと服用することにより症状が軽減します。

2)ベバシズマブ

また、患者さん個々の状態に合わせて、血管の新生を阻害する薬であるベバシズマブを組み合わせた治療を行うこともあります。神経膠腫は腫瘍が大きくなるために、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)という物質を分泌して腫瘍への血管を発達させ、さらに脳浮腫(脳のむくみ)を引き起こします。この薬は、VEGFに対する抗体であり、VEGFの働きを抑えることで腫瘍の血管新生を抑制し、脳浮腫やそれに伴う神経症状を改善します。

3)脳浮腫に対する治療

脳浮腫に対しては、ステロイド治療が行われます。脳浮腫が強くなって頭痛や手足の麻痺などさまざまな症状があらわれても、ステロイド治療を行うと脳浮腫が改善し症状が劇的によくなることがあります。しかしステロイドの効果は一時的なものです。腫瘍が進行した場合には、ステロイドが増量されますが、胃潰瘍(いかいよう)や糖尿病、感染(肺炎などを起こしやすくなる)、骨折などの副作用に注意が必要となります。強い脳浮腫に対してはベバシズマブが効果的で、膠芽腫で手術後も強い神経症状がある場合には、初期治療から使用されます。

4)けいれん発作(てんかん)に対する治療

脳の神経細胞は、その一つ一つが適切な信号を送り出すことによって、体の働きを調節します。ところが、脳腫瘍や摘出手術をした後でも何らかの刺激が原因で、脳のある場所の神経細胞が一斉に興奮して一度に信号を送ることがあります。このときに起こる発作をけいれん発作といい、発作が繰り返される場合に一連として、てんかんといいます。
刺激される脳の部位によって、脳とは反対側の片方の手または足が自分の意思に反して震える、言葉が話せなくなるなど、さまざまな症状が起こります。脳全体に神経細胞の異常な興奮が広がった場合は、意識を失い、全身の筋肉が震えたり、つっぱったりする大発作となります。大発作の場合は、脳に酸素が十分行き渡らなくなり、重篤な事態を引き起こす可能性もありますので、すぐに医師にけいれん発作を止める処置をしてもらう必要があります。
けいれん発作を予防するために、抗てんかん薬が処方されます。規則正しく服用を続けることで、発作を起こさずに生活することが期待されますが、抗てんかん薬を服用していれば絶対にけいれん発作が起きない、ということではありません。自らの判断で薬ののみ方を変えたり、薬をのむことをやめると、けいれん発作が起きる可能性があります。最近は、けいれんを起こしていない場合、抗てんかん薬による肝機能障害や中毒疹などのリスク、他の抗がん剤などの相互作用も考え、予防的に抗てんかん薬を処方しないこともあります。担当医とよく相談してください。けいれん発作のある方や起こす危険がある方は、車の運転はできません。

5.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、脳腫瘍全国集計調査委員会(The Committee of Brain Tumor Resistry of Japan)が公表している全国調査から算出された5年生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【神経膠腫の生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。
表5 神経膠腫のグレード別の生存率(2005-2008年に治療を行った患者さん)
表5 神経膠腫のグレード別の生存率(2005-2008年に治療を行った患者さん) 悪性度 5年生存率(%) グレード2 びまん性星細胞腫 77 乏突起膠腫 92 グレード3 退形成性星細胞腫 43 退形成性乏突起膠腫 63 グレード4 膠芽腫 16
The Committee of Brain Tumor Resistry of Japan. : Neurologia medico-chirurgica 2017; Suppl: 57より作成
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6.リハビリテーション

脳腫瘍(神経膠腫)によって、手足の麻痺、歩行障害や言語障害などがある場合にはリハビリテーションを行います。
手術後の安静による関節の拘縮(こうしゅく:関節が固まって動きが悪くなること)の予防や、食事などの日常生活に合わせたリハビリテーションも必要に応じて追加していきます。

7.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんに伴う症状や治療による副作用に対しての予防、症状を軽減させる治療のことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。
もし、歩行障害や一人で生活するのがつらいことなどがある場合には、在宅で訪問看護を受けることも大事です。
関連情報
緩和ケア

8.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●脳腫瘍(神経膠腫)の臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。
さまざまな脳腫瘍(神経膠腫)に対しても、分子標的薬などの薬物療法が臨床試験として国内外で行われています。
※ 分子標的薬:がんを治療する薬剤として用いられる、がん細胞が増殖する異常な性質の原因となっているたんぱく質を攻撃する物質や抗体のこと。
参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

9.再発

再発とは、治療の効果により目に見える大きさの腫瘍がなくなった後、再び腫瘍が出現することをいいます。
腫瘍がどのように再発するかは腫瘍の種類によって異なりますが、多くの場合、もともと腫瘍があった場所に近い場所での再発(局所再発)が起こります。グレード4の膠芽腫は、初期治療が終わって数カ月から1年以内に再発することが多く、治療が困難となっていくのが現状です。再発した場合には、手術や、抗がん剤の変更・追加を行います。

再発した神経膠腫に対して、分子標的薬などの薬物療法が臨床試験として国内外で行われています。
しかし、これらは、現在、一部の限られた病院でのみ実施が可能です。
臨床試験が行われているかについてや、受診可能な病院については、「国立がん研究センター 希少がんホットライン」のページもご参照ください。
再発といってもそれぞれの患者さんで状態は異なります。病気の広がりや、再発した時期、これまでの治療法などによって総合的に治療法を判断する必要があります。それぞれの患者さんの状況に応じて、治療やその後のケアを決めていきます。
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