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神経膠腫(グリオーマ)((しんけいこうしゅ))

更新・確認日:2019年05月13日 [ 履歴 ]
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2019年05月13日 関連情報として「脳腫瘍(成人)」へのリンクを追加しました。
2018年07月27日 「脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版」「臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版,2018年」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2017年08月21日 掲載準備中として、公開を中止しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1997年08月23日 掲載しました。
診療の流れ、セカンドオピニオンなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については以下の「治療にあたって」をご参照ください。

1.神経膠細胞とは

神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)は、グリア細胞とも呼ばれ、神経細胞(ニューロン)とともに、脳・脊髄に無数に存在します。主な役割は、神経細胞を固定し、栄養の供給や神経伝達物質の伝達をすることなどです。
神経膠細胞が存在している脳は、頭蓋骨(ずがいこつ)という脳を保護する骨に囲まれており、さらに、頭蓋骨の内側にある髄膜(ずいまく)によって被われています。脳は大まかに大脳や小脳、脳幹(のうかん)という部位に分けることができ、各部位にさまざまな機能があります。

脳内では、神経細胞から延びた神経線維(しんけいせんい)が集まり、束になり走行しています。神経線維は、細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしています。
図1 頭蓋骨内の構造
図1 頭蓋骨内の構造

2.神経膠腫(グリオーマ)とは

神経膠腫(しんけいこうしゅ)は、悪性の脳腫瘍の1つです。グリオーマとも呼びます。
神経膠腫は、神経膠細胞から発生します。
脳腫瘍には、他のがんのようなTNM分類やステージ分類がありません。代わりに悪性度(グレード)として1から4までの数字を用いて分類されています。グレード1の腫瘍は手術で全摘出できれば再発のおそれがほとんどない良性腫瘍です。グレード1の神経膠腫としては、子どもの小脳や視神経に発生することが多い毛様細胞性星細胞腫(もうようさいぼうせいせいさいぼうしゅ)があります。
神経膠腫の中で最も多いのは、びまん性星細胞腫(せいさいぼうしゅ)や乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)で、グレード2〜4に分類されます(表1)。組織型やグレードによって治療方針が異なります。
乏突起膠腫は星細胞腫に比べてややおとなしく、薬物療法の効果が得られやすい腫瘍です。また、神経膠腫の中には主に脳室の壁の近くに発生する上衣腫(じょういしゅ:エペンディモーマ)という腫瘍もあります。
表1 神経膠腫と悪性度
表1 神経膠腫と悪性度 悪性度(グレード) 星細胞腫系 乏突起膠腫系 グレード2 びまん性星細胞腫 (アストロサイトーマ) 乏突起膠腫 (オリゴデンドログリオーマ) グレード3 退形成性星細胞腫 退形成性乏突起膠腫 グレード4 膠芽腫 (グリオブラストーマ)
神経膠腫をはじめ、脳腫瘍の診断は世界保健機関(WHO)2016年分類に基づいて行われます。
これまで、脳腫瘍の分類は、主に顕微鏡で観察した組織学的検査に基づいていましたが、この分類では、腫瘍組織の遺伝学的検査がほぼ必須となっています。
神経膠腫では、IDHp53と呼ばれる遺伝子変異の有無や、染色体1p/19q共欠失(1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失している)の有無をもとに、表1の分類がさらに細分化されます。また、薬物療法(テモゾロミド)の効果が期待されるかは、腫瘍細胞のMGMTという遺伝子の一部の領域におけるメチル化が関係していることがわかっています。
しかし、神経膠腫の遺伝子検査は、2018年5月現在、保険適用ではありません。また、すべての施設で行うことができず、現在は一部の大学病院やがんセンターのみで実施が可能です。腫瘍の遺伝子診断などについては、主治医によく尋ねて、場合によっては大学病院やがんセンターなどでセカンドオピニオンを受けてください。
脳腫瘍は、神経膠腫のほかにも、中枢神経系悪性リンパ腫や髄芽腫(ずいがしゅ)などの悪性脳腫瘍や、髄膜腫(ずいまくしゅ)や神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)などの良性脳腫瘍に分類され、細かく分けると150種類以上にもなります。このため“脳がん”という言葉はほとんど使われることはありませんが、表にある神経膠腫は脳から発生した悪性腫瘍であり、“脳がん”にあたります。
脳腫瘍の種類や治療の概要などについては、以下をご参照ください。

3.症状

神経膠腫が脳に発生すると、腫瘍の周りには脳浮腫(のうふしゅ)という脳のむくみが生じます。手や足を強くぶつけると、手足が腫れることと同じです。腫瘍や脳浮腫によって、脳の機能が影響を受けることになります。
脳腫瘍や脳浮腫による症状は、腫瘍によって頭蓋骨内部の圧力が高まるために起こる「頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)」と、腫瘍が発生した場所の脳が障害されて起こる「局所症状(巣症状:そうしょうじょう)」に分けられます。

1)頭蓋内圧亢進症状:多くに共通して起こる症状

脳は周囲が頭蓋骨に囲まれた閉鎖空間であるため、その中に腫瘍ができると逃げ場がなく、その結果、頭蓋の中の圧力が高くなります。これによってあらわれる頭痛、吐き気、意識障害などの症状を、頭蓋内圧亢進症状といいます。人間の頭蓋内圧はいつも一定ではなく、睡眠中にやや高くなりますので、朝起きたときに頭痛が強く、吐き気を伴うことがあります。

2)局所症状(巣症状):脳の各部位が担う機能と関連する症状

運動や感覚、思考や言語などのさまざまな機能は脳の中でそれぞれ担当する部位が決まっています。脳の中に腫瘍ができると、腫瘍や脳浮腫によってその部位の機能が障害され、局所症状として出現するため、脳のどの部位がどのような機能を担っているのかを理解することが大切です。
脳は大脳、小脳、脳幹からなります。そして大脳は、前頭葉(ぜんとうよう)、側頭葉(そくとうよう)、頭頂葉(とうちょうよう)、後頭葉(こうとうよう)、大脳基底核(だいのうきていかく)に分けられ、それぞれに異なった機能を担っています(図2)。
腫瘍がどこにあるかは、手術のリスクや今後どのような症状が出る可能性があるかを予測する上で重要です。
図2 脳の表面図と断面図
図2 脳の表面図と断面図 脳の表面図 前頭葉 頭頂葉 後頭葉 側頭葉 脳幹 小脳 脳の断面図 視交叉 脳梁 下垂体 視床下部
前頭葉には、思考や記憶力の中枢があります。前頭葉と頭頂葉の間には中心溝(ちゅうしんこう)という大きな溝があります。
前頭葉側には運動野(中心前回にある体を動かす機能を受け持つ部分)があり、頭頂葉側に感覚野(中心後回にある刺激を感じる機能を受け持つ部分)があります。
顔、手、足の運動や感覚は、脳の外側から、中心側(左右大脳半球間裂[かんれつ])に向かって整列しています。したがって、脳腫瘍などが脳の内側(左右大脳半球の間)にある場合には足に強い麻痺(まひ)や感覚障害が生じ、外側(側頭葉側)にある場合には、手に強い麻痺や感覚障害が生じます。
人の脳は大脳半球と呼ばれる左右の脳に分かれます。右利きの人のほとんど、左利きの人の7割程度は、左の大脳半球が優位半球です。
優位半球とは言語中枢(話す、理解する)がある大脳半球で、この優位半球が障害されると、言葉での意思の疎通が障害される可能性が出てきます。
非優位半球(多くは右脳)の病気ではあまり症状があらわれないこともあります。
側頭葉のウェルニッケ野には言語理解の中枢があり、前頭葉のブローカ野には発語の中枢があります。そしてこれらに障害があり、発語や言語の理解ができなくなることが失語という症状です。
一般に左脳の広い障害では、利き手の右手足が不自由になるばかりでなく、言語の障害も起きるため、右脳の障害よりもはるかに日常生活上の困難が伴います。手術を行う際にも右脳と左脳ではリスクも異なります。
頭頂葉前部には痛みや触覚などを感じる感覚野があります。優位半球の頭頂葉の障害では計算障害などのほかに、失読・失書(字が読めない・書けない)などの症状が出現します。
後頭葉は視覚情報の認識に関わります。光は網膜(もうまく)から視神経に伝えられますが、視神経は頭蓋内に入ったところにある視交叉(しこうさ)という部分で交わり、視覚情報が伝達されます。つまり、視界の右側の情報は左後頭葉へ、視界の左側の情報は右後頭葉へとそれぞれ視放線(しほうせん)を通って伝えられます。
脳腫瘍により視交叉の前で左視神経が障害されると、左の視力が落ちます。視交叉の後で、左の視放線や左後頭葉が障害されると、左右の視力は保たれますが、右側の視界が見えなくなる半盲(はんもう)という状態になります。
また下垂体(かすいたい)腫瘍などによって視交叉が圧迫されると、耳側性半盲(視野の外側が見えなくなる状態)が起こります。
小脳はバランスの中枢で、運動の学習効果を獲得する機能があります。小脳は大脳と異なり、同側性支配です。つまり右大脳の障害では左手足の障害をきたすのに対して、右小脳の障害では右側の運動障害を生じます。
小脳に腫瘍があると、ふらつきやめまいなどの症状がみられます。
また小脳浮腫を起こすと、直前にある脳幹を圧迫したり、第四脳室を閉塞するため髄液の流れが滞り水頭症(すいとうしょう)をきたし、急速に意識障害が進行することがあります。

以下に、脳の各部位が担う機能(表2)と、腫瘍が存在する場所に応じた局所症状の例(表3)を示します。
表2 脳の各部位が担う機能
表2  脳の各部位が担う機能 脳の部位 主な機能 前頭葉 思考、意欲、情動、創造などを担う脳の最高中枢です。主に左側にある優位半球では言葉を発する機能があります。手足を動かすといった運動の命令も出しています。 側頭葉 音を認識したり、物体の視覚的イメージから見たものが何であるかを認識したりします(例:顔の識別など)。主に左側にある優位半球では言葉の理解に関わっています。 頭頂葉 体性感覚*を感知し、これらの情報を統合しています。また物体間の距離や上下、左右、場所などの理解にも関わっています。 * 体性感覚: 痛さ、冷たさ、温かさ、触れた感じ、振動、関節の角度や位置、押さえられた感じ。 後頭葉 目から入ってきた色や形、動きなどの情報をまとめて、物体の視覚的イメージを形成します。 下垂体・視床下部 下垂体はホルモンの司令塔です。視床下部は、さまざまなホルモンの量を常に監視し、生体が正常に機能するために都合のよいよう、下垂体に対して指令を出しています。 小脳 手足をスムーズに動かしたり、体のバランスをとるための筋肉の無意識の動きを制御しています。
表3 局所症状の例
表3 局所症状の例 腫瘍が存在する場所 局所症状の一例 前頭葉 腫瘍とは反対側の運動麻痺(片麻痺)、言葉を理解できるがうまく話せなくなる(運動性失語)、性格変化、自発性低下、年月日や場所がわからなくなる(認知機能の低下)、集中力低下、記憶力低下、てんかん発作 側頭葉 言葉の理解が低下する感覚性失語(優位半球)、腫瘍とは反対側の視野障害(半盲)、実際にはない臭いを感じる(幻臭)、てんかん発作 頭頂葉 腫瘍とは反対側の感覚障害、読み書きができなくなる、計算ができなくなる(失算)、左右を判断できなくなる、指の呼称ができなくなる(手指失認)、左右片方の刺激を認識できなくなる(半側空間失認) 後頭葉 腫瘍とは反対側の視野が欠ける(同名半盲) 視交叉・視床下部 視力・視野障害、尿の濃度がうまく調節されなくなる(尿崩症)、肥満、体温調節の異常 視床 意識の障害、運動麻痺(片麻痺)、手足のしびれや感覚の異常 脳幹部 運動(顔・四肢)麻痺や感覚障害、ものが二重に見える(複視)、顔面神経麻痺、顔面や手足の感覚障害、食べたものが飲みこみにくくなる(嚥下障害)、聴力障害 小脳 細かな動きができない協調運動障害(失調症)、ふらつきやめまい、歩行障害

4.統計

神経膠腫と新たに診断される人数は、日本では1年間に約4,000-5,000人です。
悪性脳腫瘍のうちで最も多く、20%強を占めます。1)

5.発生要因

神経膠腫と診断されたときには、なぜ神経膠腫になったのかと思いつめてしまう方もいます。しかし、神経膠腫の発生要因はほとんど明らかになっていません。
なお、まれですが、白血病などで過去に行った放射線治療の影響で、脳腫瘍(神経膠腫)を発生する危険性が高くなることがわかっています。

6.予防と検診

1)予防

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。

2)検診

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。
しかし、脳腫瘍(神経膠腫)については、現在、指針として定められている検診はありません。
一方、脳ドックなどで脳腫瘍(神経膠腫)が見つかることがあります。悪性脳腫瘍は症状が急速に進行することが特徴であるため、気になる症状がある場合には、脳神経外科や神経内科を早期に受診することが勧められます。
なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わった後の診療としての検査は、ここでいう検診とは異なります。

7.「神経膠腫(グリオーマ)」参考文献

1) The Committee of Brain Tumor Resistry of Japan. Report of brain tumor registry of Japan (2005-2008) 14th edition. Neurologia medico-chirurgica 2017; Suppl: 57
2) 日本脳腫瘍学会編.日本脳神経外科学会監.脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版 成人膠芽腫・成人転移性脳腫瘍・中枢神経系原発悪性リンパ腫,2016年,金原出版
3) 臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版,2018年,金原出版
4) International Agency for Research on Cancer. WHO Classification of Tumours of the Central Nervous System (WHO Health Organization Classification of Tumours), 2016, World Health Organization
5)国立がん研究センター内科レジデント編.がん診療レジデントマニュアル 第7版,2016年,医学書院
6)「外部サイトへのリンク抗がん剤報告書:塩酸プロカルバジン(脳腫瘍)、硫酸ビンクリスチン(脳腫瘍), 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会(平成16年8月27日)」
更新・確認日:2018年07月27日 [ 履歴 ]
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2018年07月27日 「脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版」「臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版,2018年」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2017年08月21日 掲載準備中として、公開を中止しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1997年08月23日 掲載しました。

1.神経膠腫の検査

神経膠腫が疑われる場合、症状の詳しい経過を問診した上で、専門的な診察や神経学的検査などを行います。手術を安全に行うための検査として腫瘍の位置、大きさ、血管との関係を確かめるためにCTやMRI検査が行われます。悪性度の検討や、CTやMRI検査だけでは再発かどうかの判断がつかないときには、PET検査という脳の代謝をみる検査を行うこともあります。

2.検査の種類

1)CT、MRI検査

CTはX線を、MRIは磁気を使った検査です。頭蓋骨の内部を描き出し、腫瘍の存在を調べます。多くの施設では、CTはMRIに比べて迅速に検査することができます。CTやMRI検査では、病気をより明瞭に描き出すために必要に応じて造影剤を使った検査を行います。造影剤を使って検査を行うと、腫瘍の広がりや悪性度なども術前に推定することができます。
神経膠腫ではグレード3から4のように悪性度が高いほど、造影剤でよく染まる(腫瘍の輪郭がはっきりする)傾向があります。
また、通常のCTやMRIに加え、必要に応じて、特殊なMRI検査を行うことがあります。例えば、脳の血液の変化をみるfMRI(functional MRI)を用いて、脳の運動野(手足の動きの中枢)や言語野(言葉の中枢)の位置を調べることがあります。
造影剤のアレルギーや喘息(ぜんそく)の既往(きおう)のある方、特にCTではヨードアレルギーのある方は副作用の起こる危険性が高くなるので、医師に申し出てください。

2)脳血管造影検査

造影剤を用いてX線で脳の血液の流れを撮影する検査です。

大腿部(だいたいぶ)の動脈に挿入したカテーテル(細い管)から造影剤を注入して、血管の走行と腫瘍との関係を調べます。脳血管造影検査によって時に脳梗塞が起こることがあります。

なお、最近では脳血管造影のかわりに、比較的体への負担が少ない以下のような検査が行われることも多くなっています。脳血管造影検査時に、麻酔薬を使用して左右大脳半球の優位半球を同定する検査が行われることもあります。
・ 3D-CTアンギオ検査:ヘリカルCTを用いて、脳血管の構造を詳しく調べます。
・ MRA検査:MRI装置を用いて脳の血管を詳しく調べます。
これらの診察や検査によって、神経膠腫かどうか、ほかの腫瘍の可能性がないか、腫瘍の発生部位や広がりなどを推測することが可能です。しかし、診断を確定するためには、手術により腫瘍組織を採取し、その細胞を顕微鏡で観察して病理医が診断する病理検査(病理診断)が必要です。
更新・確認日:2018年07月27日 [ 履歴 ]
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2018年07月27日 「脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版」「臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版,2018年」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
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2006年10月01日 内容を更新しました。
1997年08月23日 掲載しました。

1.悪性度(グレード)と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。がんの進行の程度は、悪性度(グレード)として分類します。

1)悪性度(グレード)

手術によって摘出した標本から、病理学的分類に基づき、悪性度(グレード)が診断されます。
脳腫瘍の病理学的診断は、腫瘍の遺伝子変異と組み合わせた世界保健機関(WHO)が発表した「WHO分類」に従って行われます。

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含め検討し、担当医とともに決めていきます。
神経膠腫の治療の原則は、可能な限り手術で腫瘍を摘出し、病理診断後に追加として放射線治療および薬物療法を行うことです。なお、グレード2の神経膠腫で腫瘍が全摘出できれば、経過観察することもあります。
表4 は、神経膠腫のグレード別の治療方針を示したものです。
表4 神経膠腫のグレード別の治療方針5)
表4 神経膠腫のグレード別の治療方針 悪性度 治療 グレード2 びまん性星細胞腫 乏突起膠腫 手術のみ(全摘出など) 手術+放射線治療(+薬物療法*) 手術+薬物療法* グレード3 退形成性星細胞腫 退形成性乏突起膠腫 手術+放射線治療+薬物療法(テモゾロミド) グレード4 膠芽腫 手術+放射線治療+薬物療法(テモゾロミド[+ベバシズマブ]) * PAV(プロカルバジン、ニムスチン、ビンクリスチン併用)療法が行われます。テモゾロミドが使用されることもあります。
なお、がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

悪性脳腫瘍の手術の原則は、症状を悪化させないように可能な限り腫瘍を摘出することです。神経膠腫のような悪性脳腫瘍は、脳の表面ではなく、脳の内側から発生し、脳の中央部へしみこむように広がっていきます。
脳は部位により役割が決まっており、右前頭葉のようにあまり重要な働きをしていないところに腫瘍ができた場合には、腫瘍を肉眼的に全摘出することが可能です。
一方で、運動野(手足の動きの中枢)や言語野(言葉の中枢)に腫瘍が発生した場合には、腫瘍摘出により症状が悪化することがありますので、無理な全摘出は行いません。腫瘍の完全摘出よりも一部摘出による病理診断を行い、放射線や薬物療法での治療が主になります。

1)術中ナビゲーション

安全に手術を行うために、また、腫瘍が存在する部位を手術中に把握するために、車のカーナビゲーション装置よりもさらに精度の高いナビゲーション装置が使われます。

2)術中モニタリング

運動機能や感覚機能をSEP(体性感覚誘発電位)やMEP(運動誘発電位)といった術中脳波や筋電図でモニタリングしながら手術が行われます。

3)覚醒下手術

言語野の位置を同定し、言語機能や高次機能を温存するために、覚醒下手術(途中に麻酔を緩めて意識をはっきりさせたまま行う手術)が行われます。脳は、体中の痛みを感じることができますが、脳自身の痛みを感じるレセプター(受容体)や領域がなく、脳を切除しても痛くありませんので、手術中に患者さんと会話しながら手術を行います。

4)術中MRI

腫瘍が摘出できたかどうか、術中にMRI撮影を行うこともあります。
手術や生検(せいけん:腫瘍の一部を採取すること)で得られた腫瘍組織は、病理診断によって腫瘍の性質や遺伝子変異、悪性度を診断し、放射線治療や薬物療法の方針を決定します。
なお、術前の画像検査では神経膠腫かどうかを判断しにくいことも多く、手術中の迅速診断(術中病理診断)によって、手術が続けられます。

5)手術の合併症

手術では、脳の機能を温存しながらできるかぎり腫瘍を摘出します。
画像診断の進歩により、腫瘍の部位や広がりを正確に把握することが可能になり、一般に、術前に比べ手術後の神経症状が悪化することは少ないといえます。
一方、手術中や手術後に出血などが起こると、麻痺や意識障害などの重篤な障害をきたすことがあります。そのため、術後に強度の頭痛が続いたり、意識障害や運動麻痺などが出現した場合には、早急にCT検査を行い、必要に応じて再手術を行います。
また、術後数日間は脳浮腫が強まり、神経症状が悪化することがありますが、多くの場合は、薬物療法で改善します。

3.放射線治療

高エネルギーのX線やそのほかの放射線を照射して、腫瘍細胞を障害する方法です。神経膠腫の治療において、放射線治療は重要な治療法の1つであり、手術後に、単独あるいは薬物療法と組み合わせて行われます。

1)局所照射

グレード2〜4の神経膠腫に対しては、局所放射線治療が行われます。腫瘍と腫瘍の浸潤(しんじゅん)部分に対して、1回1.8〜2.0グレイの量を週に5回、6週間かけて照射し、合計54〜60グレイの照射を行います。

2)IMRT(強度変調放射線治療)

転移性脳腫瘍は腫瘍と正常細胞との境界が比較的明瞭ですが、神経膠腫は浸潤性に発育し腫瘍の広がりも大きいため、ピンポイントに高エネルギーの放射線を照射する、ガンマナイフやリニアックを用いた定位放射線治療では腫瘍をコントロールすることは困難です。正常脳への照射を防ぐために、強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる治療を行うことがあります。IMRTとは、コンピューターによる緻密な計算により、腫瘍の形状に合わせて放射線を照射することで、がん組織には高い放射線量を与え、隣接する正常組織には線量を低く抑えることを可能にした治療方法です。
なお、陽子線治療や重粒子線治療は頭頸部(とうけいぶ)がん(耳鼻科領域のがん)に対してはよく行われますが、神経膠腫に対しては、これらの治療が通常の放射線治療よりも効果があるかどうかは不明です。
※ 陽子線治療・重粒子線治療:陽子や重粒子(重イオン)などの粒子放射線のビームを病巣に照射する放射線治療の1つです。神経膠腫に対しては、先進医療として行われています。
グレード2のびまん性星細胞腫、乏突起膠腫などに対する放射線治療は、海外での臨床試験の結果、手術診断後に早期放射線治療を行う場合と、再発あるいは腫瘍増大後に放射線治療を行う場合とで、生存期間が変わらないという結果が報告されました。全摘出されている場合は、手術のみで経過をみることも多いですが、神経膠腫の患者さんは、再発後に症状が悪化することもしばしばあるため、腫瘍が残っている場合にはグレード2の神経膠腫に対しても、早期に放射線治療が行われていることが多いです。
用語集
浸潤 

●副作用について

放射線治療後すぐにあらわれる副作用としては、放射線が照射され部位に起こる皮膚炎、中耳炎、外耳炎などや、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲低下などがあります。これらの症状は照射後約1カ月で消失します。また、脳そのものの機能に影響が及ぶこともあります。中には、放射線治療が終了して数カ月から数年たってから起こる症状(晩期合併症)もあります。このような影響は高齢者に少し多くなる傾向がありますが、全般に、患者さんによって副作用の程度は異なります。

4.薬物療法

グレード3および4の神経膠腫に対しては、放射線治療に加え、薬物療法が行われます。グレード2の神経膠腫については、全摘出できれば経過をみることもありますが、放射線治療単独や、放射線+薬物療法により治療することもあります。
乏突起膠腫は星細胞腫に比べて薬物療法が効きやすい性質があります。

1)テモゾロミド

手術後に放射線治療と併用して6週間テモゾロミドを内服します。その後、維持療法として5日間テモゾロミドを4週おきに内服します。
テモゾロミドは化学療法で用いられる経口の細胞障害性抗がん剤ですが、これまでの薬剤に比べて貧血、白血球減少、血小板減少などの骨髄抑制が軽いのが特徴です。ただし、リンパ球減少が特徴的でニューモシスチス肺炎などの特殊な肺炎を合併するリスクがありますので、肺炎の予防薬を同時に併用するなど専門医とよく相談しながら治療することが必要です。ほかの主な副作用は悪心(おしん)、吐き気、便秘などの消化器症状や倦怠感などですが、吐き気を予防する制吐剤(せいとざい)や緩下剤(かんげざい)などと服用することにより症状が軽減します。

2)ベバシズマブ

また、患者さん個々の状態に合わせて、血管の新生を阻害する薬であるベバシズマブを組み合わせた治療を行うこともあります。神経膠腫は腫瘍が大きくなるために、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)という物質を分泌して腫瘍への血管を発達させ、さらに脳浮腫(脳のむくみ)を引き起こします。この薬は、VEGFに対する抗体であり、VEGFの働きを抑えることで腫瘍の血管新生を抑制し、脳浮腫やそれに伴う神経症状を改善します。

3)脳浮腫に対する治療

脳浮腫に対しては、ステロイド治療が行われます。脳浮腫が強くなって頭痛や手足の麻痺などさまざまな症状があらわれても、ステロイド治療を行うと脳浮腫が改善し症状が劇的によくなることがあります。しかしステロイドの効果は一時的なものです。腫瘍が進行した場合には、ステロイドが増量されますが、胃潰瘍(いかいよう)や糖尿病、感染(肺炎などを起こしやすくなる)、骨折などの副作用に注意が必要となります。強い脳浮腫に対してはベバシズマブが効果的で、膠芽腫で手術後も強い神経症状がある場合には、初期治療から使用されます。

4)けいれん発作(てんかん)に対する治療

脳の神経細胞は、その一つ一つが適切な信号を送り出すことによって、体の働きを調節します。ところが、脳腫瘍や摘出手術をした後でも何らかの刺激が原因で、脳のある場所の神経細胞が一斉に興奮して一度に信号を送ることがあります。このときに起こる発作をけいれん発作といい、発作が繰り返される場合に一連として、てんかんといいます。
刺激される脳の部位によって、脳とは反対側の片方の手または足が自分の意思に反して震える、言葉が話せなくなるなど、さまざまな症状が起こります。脳全体に神経細胞の異常な興奮が広がった場合は、意識を失い、全身の筋肉が震えたり、つっぱったりする大発作となります。大発作の場合は、脳に酸素が十分行き渡らなくなり、重篤な事態を引き起こす可能性もありますので、すぐに医師にけいれん発作を止める処置をしてもらう必要があります。
けいれん発作を予防するために、抗てんかん薬が処方されます。規則正しく服用を続けることで、発作を起こさずに生活することが期待されますが、抗てんかん薬を服用していれば絶対にけいれん発作が起きない、ということではありません。自らの判断で薬ののみ方を変えたり、薬をのむことをやめると、けいれん発作が起きる可能性があります。最近は、けいれんを起こしていない場合、抗てんかん薬による肝機能障害や中毒疹などのリスク、他の抗がん剤などの相互作用も考え、予防的に抗てんかん薬を処方しないこともあります。担当医とよく相談してください。けいれん発作のある方や起こす危険がある方は、車の運転はできません。

5.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、脳腫瘍全国集計調査委員会(The Committee of Brain Tumor Resistry of Japan)が公表している全国調査から算出された5年生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【神経膠腫の生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。
表5 神経膠腫のグレード別の生存率(2005-2008年に治療を行った患者さん)
表5 神経膠腫のグレード別の生存率(2005-2008年に治療を行った患者さん) 悪性度 5年生存率(%) グレード2 びまん性星細胞腫 77 乏突起膠腫 92 グレード3 退形成性星細胞腫 43 退形成性乏突起膠腫 63 グレード4 膠芽腫 16
The Committee of Brain Tumor Resistry of Japan. : Neurologia medico-chirurgica 2017; Suppl: 57より作成
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6.リハビリテーション

脳腫瘍(神経膠腫)によって、手足の麻痺、歩行障害や言語障害などがある場合にはリハビリテーションを行います。
手術後の安静による関節の拘縮(こうしゅく:関節が固まって動きが悪くなること)の予防や、食事などの日常生活に合わせたリハビリテーションも必要に応じて追加していきます。

7.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんに伴う症状や治療による副作用に対しての予防、症状を軽減させる治療のことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。
もし、歩行障害や一人で生活するのがつらいことなどがある場合には、在宅で訪問看護を受けることも大事です。
関連情報
緩和ケア

8.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●脳腫瘍(神経膠腫)の臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。
さまざまな脳腫瘍(神経膠腫)に対しても、分子標的薬などの薬物療法が臨床試験として国内外で行われています。
※ 分子標的薬:がんを治療する薬剤として用いられる、がん細胞が増殖する異常な性質の原因となっているたんぱく質を攻撃する物質や抗体のこと。
参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

9.再発

再発とは、治療の効果により目に見える大きさの腫瘍がなくなった後、再び腫瘍が出現することをいいます。
腫瘍がどのように再発するかは腫瘍の種類によって異なりますが、多くの場合、もともと腫瘍があった場所に近い場所での再発(局所再発)が起こります。グレード4の膠芽腫は、初期治療が終わって数カ月から1年以内に再発することが多く、治療が困難となっていくのが現状です。再発した場合には、手術や、抗がん剤の変更・追加を行います。

再発した神経膠腫に対して、分子標的薬などの薬物療法が臨床試験として国内外で行われています。
しかし、これらは、現在、一部の限られた病院でのみ実施が可能です。
臨床試験が行われているかについてや、受診可能な病院については、「国立がん研究センター 希少がんホットライン」のページもご参照ください。
再発といってもそれぞれの患者さんで状態は異なります。病気の広がりや、再発した時期、これまでの治療法などによって総合的に治療法を判断する必要があります。それぞれの患者さんの状況に応じて、治療やその後のケアを決めていきます。
更新・確認日:2018年07月27日 [ 履歴 ]
履歴
2018年07月27日 「脳腫瘍診療ガイドライン1 2016年版」「臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第4版,2018年」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2017年08月21日 掲載準備中として、公開を中止しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1997年08月23日 掲載しました。

1.日常生活を送る上で

腫瘍や治療の影響で、運動や認知の障害が起こることがあるため、治療にあたっては、こうした機能の評価を行い、必要に応じて、リハビリテーション(リハビリ)が行われます。
運動機能障害や高次脳機能障害は、患者さん個々の状況によって、さまざまです。入院中にはわからなくても、退院後、普段の仕事や生活に戻ったときに、以前できたことが同じようにできないなど、障害に気が付くこともあります。
日常生活の中で、困ったことや気が付いたことは、早めに担当医や看護師、リハビリのスタッフ(一般に、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士など)に相談しましょう。神経症状が強い場合には、訪問看護師による在宅ケアも重要です。
なお、がんの治療に用いられる薬剤には高額なものもありますが、高額療養費制度が適応されます。脳腫瘍に伴うてんかんに対しても自立支援医療制度があります。
医療費などの経済的問題などは、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターなどで相談をしてください。
また、性生活には、支障はありませんが、治療中は避妊しましょう。妊娠・出産を希望される場合は担当医とよく相談されるとよいでしょう。経口避妊薬などの特殊なホルモン剤をのむときも、担当医とよく相談してください。

2.経過観察

治療を行った後の体調や再発の有無を確認するために、定期的に通院します。神経膠腫では、定期的にMRI検査による頭部の画像診断を行います。またテモゾロミドなどの薬物療法を継続している場合には、白血球や血小板が減少していないかどうか定期的に採血して調べる必要があります。ベバシズマブの場合には、高血圧や蛋白尿などが起きていないかも確認します。
神経膠腫の治療はまだまだ難しいことも多く、症状も一人ひとり異なります。新しい薬剤なども少しずつ開発され、臨床試験が行われており、神経膠腫の治療をしながらこれまで通りに仕事をしている人も多数います。

なお、神経膠腫の治療ではほとんどの場合、入院や定期的な通院、自宅療養が必要となります。このため、できれば周りの人に病気のことを伝え、理解と協力を得ておきましょう。

生活や仕事、暮らしのこと、周囲への伝え方などについては、以下もご参照ください。