1.血小板減少について
血小板は血液に含まれる成分の一種です。血管の傷ついた部位に集まってかたまりをつくり、止血する作用があります。そのため、血小板の数が減少すると出血が起こりやすく、血が止まりにくくなります。
主な症状としては、以下のようなものがあります。
- あおあざができやすい
- 手足に点状出血(細かい点状の皮下出血)がみられる
- 鼻血が出る
- 血尿、血便がみられる
- 月経量が多くなる
- 歯ぐきや口の中の粘膜からの出血がみられる
2.原因
がんの治療やがん自体の影響によって、骨髄にある造血幹細胞(血液細胞のもととなる細胞)がダメージを受けると、骨髄抑制(血液細胞をつくる機能が低下すること)が起こり、血小板の数が減少します。
がんの治療では、細胞障害性抗がん薬や多くの分子標的薬による骨髄抑制の副作用が原因となることがあります。また、放射線治療で、骨髄が多く含まれる骨盤、胸骨、椎体などに放射線をあてることが原因となることがあります。
がん自体の影響としては、血液のがんやがんが骨髄に浸潤することが原因となって、血小板が十分につくられなくなることがあります。また、がんが引き金となって、播種性血管内凝固症候群(DIC)といわれる病気になることにより、血小板が減少することがあります。
3.血小板減少が起きたときには
血小板の数が少ないときは、少しの刺激でもあおあざができやすくなったり、小さな傷でも血が止まりにくくなったりするので、出血しないように心がけてください。出血したときの対処法については、以下のようなものがあります。
- 清潔なタオルやガーゼで出血が止まるまで直接圧迫します。また、冷却まくらや氷水を入れたビニール袋で冷やしすぎない程度に冷やします。
- 鼻血が出たときは、血管の収縮を促すため氷で冷やし、小鼻を指で5分程度圧迫します。
- 出血が止まるまでは安静にします。
血小板減少による出血は簡単に止まらないことがあります。出血が止まらない場合には、すぐに医師や看護師に連絡してください。出血の状態や血液検査の結果によっては、血小板の輸血を行うことがあります。
4.ご本人や周りの人ができる工夫
日常生活の中で出血しないように心がけ、出血がないか注意することが大切です。また、血小板の数が少ないときの日常生活の注意点を、医師に確認してみるのもよいでしょう。
1)転倒や外傷、打撲に注意する
転倒や外傷、打撲に注意して、激しい運動は避けるようにしましょう。カーペットや敷居などの段差につまずいて転ぶことがあります。段差をなくす、壁などを伝い歩きするなどが、防止につながることがあります。
2)切り傷や擦り傷をつくらないようにする
手袋や靴下を着用したり、ひげそりは電気カミソリを使ったりするなど、切り傷をつくらないような工夫をしましょう。また、擦り傷をつくらないように皮膚を強くかいたり、こすったりしないことも大切です。
3)歯磨きや鼻をかむときはやさしく行う
歯磨きは、柔らかい歯ブラシを使用してやさしく行います。また、鼻をかむときも力を入れずにやさしくかみます。
4)排便時、強くいきみすぎないように、便通を整える
排便時、強くいきみすぎると出血しやすくなります。便通を整えて快適な排便ができるように心がけましょう。
5)皮膚や口の中、便や尿の状態を観察し、出血がないか注意する
皮膚や口の中、便や尿の状態を観察し、出血がないか注意することが大切です。
5.こんなときは相談しましょう
特に刺激を与えていないのに口の中の粘膜から出血する場合や、出血が止まらない場合、血便が出た場合などは、すぐに医師や看護師に連絡しましょう。
血栓予防薬や一部の解熱鎮痛剤には、血小板の作用を抑制するものがあります。出血を悪化させる薬剤もありますので、がんの治療以外の薬を処方されている場合や飲む可能性がある場合には、あらかじめ医師や薬剤師に相談しておくことが大切です。
6.「出血しやすい・血小板減少」参考文献
- 厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/topics/tp061122-1.html,重篤副作用疾患別対応マニュアル 血液 血小板減少症;2007年(閲覧日:2020年4月13日)
- 国立がん研究センター看護部編.国立がん研究センターに学ぶがん薬物療法看護スキルアップ.2018年,南江堂
- 国立がん研究センター内科レジデント編.がん診療レジデントマニュアル第8版.2019年,医学書院
- American Cancer Societyウェブサイト.https://www.cancer.org/,Bleeding or Low Platelet Count;2017(閲覧日:2020年4月13日)
- National Cancer Instituteウェブサイト.https://www.cancer.gov/,Bleeding and Bruising (Thrombocytopenia) and Cancer Treatment;2018(閲覧日:2020年4月13日)
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