膀胱がんについて
1.膀胱について
膀胱は骨盤の中にある袋状の臓器です。男性では恥骨と直腸の間、女性では恥骨と子宮、腟の間にあります(図1)。腎臓でつくられた尿は、腎杯、腎盂、尿管を通って膀胱にたまり、尿道を通って体外に排出されます(図2)。この尿の通り道を尿路といいます。尿路の内側は、ほとんどが尿路上皮という粘膜でおおわれています。


膀胱には、尿を一時的にため、ある程度の量になったら体の外に出す働きがあります。尿道の一部分の周りには、尿道を締めることのできる筋肉があり、尿が漏れるのを防いでいます。膀胱に尿がたまってくると、刺激が脳に伝わり、尿意を感じます。膀胱の筋肉が収縮し、尿道を締める筋肉が緩むと、尿は尿道を通って体外に排泄されます。
2.膀胱がんとは
膀胱がんは、膀胱にできるがんの総称です。膀胱がんの大部分(90%以上)は膀胱の内部をおおう尿路上皮にできる尿路上皮がんです。尿路上皮がんは、がんが膀胱の壁にどのくらい深くまで及んでいるか(深達度)によって、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分類されます(図3)。膀胱がんには、尿路上皮がんのほかに扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどの種類もありますが、このページでは尿路上皮がんについて説明しています。尿路上皮がん以外の膀胱がんについては、担当医によく確認しましょう。
膀胱がんは、リンパ節、肺、肝臓、骨などに転移することがあります。
3.症状
膀胱がんの主な症状には、血尿や頻尿、排尿時の痛み、尿が残る感じ、切迫した尿意などがあります。血尿には、尿の色が赤や茶色になり目で見てわかる血尿と、顕微鏡で確認できる血尿があります。がんが進行すると、尿が出にくくなったり、わき腹や腰、背中が痛んだり、足がむくんだりすることもあります。
このうち、膀胱がんに特徴的なのは、痛みなどのほかの症状を伴わない血尿です。ほかに症状がなく、血尿も出たり出なかったりすることがあるため、受診せずに放置している間に進行してしまうこともあります。気になる症状がある場合には、早めに泌尿器科を受診しましょう。
4.関連する疾患
膀胱がんと似たような症状がみられる疾患として、膀胱炎、尿路結石、前立腺肥大症、前立腺がんがあります。早めに受診して検査を受け、原因となる疾患を見つけて適切な治療を受けることが大切です。
2021年04月28日 | 「編集委員・作成協力者・作成委員」へのリンクを追加しました。 |
2021年04月01日 | 「膀胱癌診療ガイドライン2019年版(2019年)」より、内容を全面的に更新し、4タブ形式に変更しました。 |
2019年04月26日 | 「4.疫学・統計」の項目名を「4.患者数(がん統計)」に変更し、内容を更新しました。 |
2016年01月08日 | タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。 |
2006年10月01日 | 更新しました。 |
1996年09月20日 | 掲載しました。 |
膀胱がん 検査
膀胱がんの検査では、まず尿検査を行い、尿の中に血液やがん細胞が含まれているかどうかを確認します。さらに、超音波検査や膀胱鏡検査を行い、がんであることがわかった場合には、転移の有無や膀胱内のがんの深さや広がりを確認するため、CT検査やMRI検査などの画像検査を行うこともあります。膀胱がんの確定診断のためには、治療を兼ねたTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行います。
1.尿検査
尿に血液やがん細胞が含まれているかどうかを確認する検査です(尿潜血検査、尿細胞診)。また、尿中の腫瘍マーカーの有無も確認します。
腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的につくられる物質です。膀胱がんでは、NMP22やBTAを測定します。この検査だけでがんの有無を確定できるものではなく、がんがあっても腫瘍マーカーの値が上昇しないこともありますし、逆にがんがなくても上昇することもあります。
2.超音波(エコー)検査
がんの位置や形、臓器の形や状態、周辺の臓器との関係などを確認するための検査です。体の表面に超音波の出る超音波プローブ(探触子)をあて、体内の臓器からはね返ってくる超音波を画像として映し出します。検査での痛みはなく、その場で確認することができます。
3.膀胱鏡検査(内視鏡検査)
内視鏡を尿道から膀胱へ入れて、がんがあるかどうか、その場所、大きさ、数、形などを確認する検査です。膀胱がんの診断と治療方針の決定のために、必ず行う検査です。多くの場合、膀胱がんであるかどうかは、膀胱鏡検査によってわかります。
4.CT検査
がんの存在や広がりを見たり、リンパ節やほかの臓器への転移を確認したりするための検査です。X線を体の周囲からあてて、体の断面を画像にします。短時間でがんの位置や形を細かく映し出すことができます。より詳しく調べるために造影剤を使う場合もあります。
膀胱がんで行われるCT尿路造影(CTウログラフィー)は、腎盂、尿管、膀胱の尿路全体を3次元データの画像にして見ることができる検査で、膀胱のほかに上部尿路(腎盂と尿管)にがんがあるかどうかを調べます。また、がんが膀胱の筋層に及んでいる可能性がある場合には、転移がないか確認するため、全身のCT検査も行います。
5.MRI検査
がんの存在や広がりを見たり、ほかの臓器への転移を確認したりするための検査です。磁気を使用して、体の内部を映し出しさまざまな方向の断面を画像にします。がんと正常組織を区別してはっきりと映し出します。より詳しく調べるために造影剤を使う場合もあります。膀胱がんでは、がんが筋層に及んでいる可能性がある場合に行います。
6.骨シンチグラフィ
放射性物質を静脈から注射し、骨への転移の有無を調べる検査です。骨にがんがあると、その部分に放射性物質が集まることを利用する検査です。痛みなどの症状があり骨転移の可能性がある場合に行います。
7.TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)
がんの進行の程度を調べる検査で、手術方法の1つでもあります。検査や治療の1つとして、複数回行うことがあります。全身麻酔あるいは腰椎麻酔をしながら、尿道から内視鏡を挿入してがんを電気メスで切除します。切除した組織を顕微鏡で調べることにより、がんの深達度(がんがどのくらい深くまで及んでいるか)や性質などについて、正確な病理診断を行うことができるため、ほぼすべての膀胱がんで行います。
また、上皮内がん(CIS)を合併している場合や、合併している可能性がある場合には、正常に見える膀胱の上皮を数カ所採取して調べるランダム生検を行います。
膀胱がん 治療
膀胱がんの治療では、まず始めに診断と治療を兼ねてTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行い、その後の治療法を検討していきます。治療法には、このほかに、薬物を膀胱内に注入する膀胱内注入療法や、膀胱全摘除術、薬物療法などがあります。
1.病期と治療の選択
治療法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。
1)深達度
深達度は、がんがどのくらい深くまで及んでいるかを示しています。Ta~T4bに分類され、数字が大きくなるほどがんが深くまで及んでいることを表します。
膀胱がんは、膀胱の内側の粘膜に発生します。膀胱の壁には、内側から粘膜上皮、上皮下結合組織、筋層があり、筋層の周囲には脂肪組織があります(図3)。がんが筋層まで及んでいるかどうかにより、Ta、Tis、T1を「筋層非浸潤性がん」、T2~T4を「筋層浸潤性がん」と分類します。

2)病期(ステージ)
病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的で、膀胱がんでは早期から進行するにつれて0期~Ⅳ期まであります。
病期は、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決めます(図4)。
Tカテゴリー:がんの深達度
Nカテゴリー:骨盤内のリンパ節への転移の有無や程度
Mカテゴリー:がんができた場所から離れた臓器やリンパ節への転移の有無

3)筋層非浸潤性がんのリスク分類
筋層非浸潤性膀胱がんは、病変の数や大きさ、深達度、異型度、上皮内がん(CIS)を併発しているかどうかなどによって、低リスク群、中リスク群、高リスク群、超高リスク群に分類されます。膀胱がんの異型度は、組織の構造や細胞の形が正常なものとどのくらい異なっているかによって、低異型度(low grade)と高異型度(high grade)に分けられます。
4)治療の選択
治療法は、がんの進行の程度に応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と患者がともに決めていきます。
図5、図6は、膀胱がんの標準治療を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。膀胱がんの治療法はがんの病期やリスクによって異なるため、治療を始める前にTURBTによる病理診断を行います。
(1)筋層非浸潤性膀胱がん(0期・Ⅰ期)の治療
TURBTによって筋層非浸潤性膀胱がんと診断された場合、膀胱の中に細胞障害性抗がん薬やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を注入する膀胱内注入療法を行います。薬の種類や回数、期間はリスク分類などによって検討します。上皮内がん(CIS)以外の高リスクの筋層非浸潤性膀胱がんでは、2回目のTURBTを行うことがあります。また、BCGなどの膀胱内注入療法に効果がみられなかった場合には、膀胱全摘除術を行うこともあります。

(2)筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ期・Ⅲ期・Ⅳ期)の治療
転移がない筋層浸潤性膀胱がんの標準治療は膀胱全摘除術です。膀胱を摘出した場合、尿を体外に排出する経路をつくるために、尿路変向(変更)術が行われます。高齢であったり合併症をもっていたりする場合には、TURBT、薬物療法、放射線治療などを組み合わせる膀胱温存療法を行うこともあります。転移があるなどがんが進行している場合には、薬物療法などを検討します。

妊娠や出産について
がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。
2.内視鏡治療
1)TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)
尿道から膀胱内に内視鏡を挿入し、がんを電気メスで切除する治療法で、検査も兼ねて行います。手術の前に全身麻酔または腰椎麻酔をします。筋層非浸潤性膀胱がんの場合、TURBTでがんを切除できることもあります。初回のTURBTで再発、または筋層浸潤や所属リンパ節への転移などの進展のリスクが高いと判断された場合や、筋層まで切除できず、筋層にがんがあるかどうか判断できなかった場合には、もう一度TURBTを行うことがあります。
2)TURBTの合併症
TURBTの合併症として、出血(血尿)、頻尿などが起こることがあります。出血が多く血尿がひどい場合は、特殊なカテーテルで膀胱内を洗浄します。膀胱に穴があく膀胱穿孔が起きることもありますが、カテーテルを長期に留置することで、多くの場合は改善します。
3.膀胱内注入療法
膀胱内注入療法は、TURBTの後に、筋層非浸潤性膀胱がんの再発や進展を予防する目的で、細胞障害性抗がん薬やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に注入する治療法です。注入は尿道からカテーテルを通して行います。
なお、上皮内がん(CIS)の場合は、治療を目的としてBCGを注入します。治療の効果については、膀胱内の組織を採取して顕微鏡で確認します。
1)細胞障害性抗がん薬注入療法
細胞障害性抗がん薬注入療法では、TURBTの後、細胞障害性抗がん薬を膀胱内に注入します。低リスクまたは中リスクの筋層非浸潤性膀胱がんに対して行われる治療法で、リスクによって注入の回数や時期を判断します。
2)BCG(ウシ型弱毒結核菌)注入療法
BCG注入療法では、TURBTの後、がん細胞を攻撃する免疫の力を強めるBCGという薬を膀胱内に注入します。中リスクの一部、高リスク、超高リスクの一部の筋層非浸潤性膀胱がんに対して行われることのある治療法で、リスクなどによって注入の回数や時期を判断します。細胞障害性抗がん薬の注入療法よりも高い治療効果が期待できます。
膀胱内注入療法の副作用
膀胱内注入療法の副作用として、頻尿、排尿時の痛み、血尿、発熱などの症状が出ることがあります。特にBCG注入療法では副作用が出やすく、注入のスケジュールや量の変更を検討することもあります。また、BCG注入療法の重い副作用として、間質性肺炎や感染が起きることがあります。
4.手術(外科治療)
転移のない筋層浸潤性膀胱がんでは、膀胱を手術ですべて取り除く膀胱全摘除術を行います。膀胱を切除した後は、尿路変向(変更)術を行い、尿を体の外に出す経路をつくります。
1)膀胱全摘除術
膀胱全摘除術の標準的な手術法では、男性では膀胱、前立腺、精のう、遠位尿管と骨盤内のリンパ節を摘出します。尿道再発のリスクが高い場合には尿道も同時に切除します。女性では、膀胱、子宮、腟の一部、遠位尿管、尿道を摘出し、骨盤内のリンパ節を摘出します。
2)膀胱全摘除術後の合併症
手術後の合併症として、手術でつなぎ合わせた部分が開いたり、細菌などによる感染が起きたりすることがあります。感染症が起きた場合には、切開して膿を出したり、抗生物質を使ったりします。
また、膀胱全摘除術では、同時に生殖器官も摘出することが一般的であるため、性機能に障害が起きることがあります。
3)尿路変向(変更)術
膀胱を摘出した場合には、尿を体外に出すための通り道をつくる尿路変向(変更)術が行われます。尿路変向(変更)術には、回腸導管造設術、自排尿型新膀胱造設術、尿管皮膚ろう造設術などがあります。それぞれの方法に特徴があり、手術後は変更後の尿路を生涯使用することになるため、がんの位置や全身の状態、生活状況などを考慮して決めていきます。
(1)回腸導管造設術
小腸(回腸)の一部を切り離して左右の尿管とつなぎ、腹壁に固定して尿の出口とする方法で、広く行われている術式です。尿路を体外につなぐため、人工的に腹壁につくった排泄口のことを尿路ストーマ(ウロストミー)と呼びます。ストーマから断続的に尿が出るため、尿をためるためのストーマ装具(採尿袋)をつけます(図7)。

(2)自排尿型新膀胱造設術
小腸または大腸を一部切りとってつなぎ合わせ、尿をためるための袋(新膀胱)をつくり、左右の尿管と尿道につなぐ方法です(図8)。ストーマをつくる必要がなく、尿道から尿が出せることが大きな特徴ですが、術後にリハビリテーションを行って、排尿のコツやメンテナンスの方法を身につける必要があります。また、手術が複雑で時間がかかるため体への負担が大きく、尿道にがんがある場合や尿道に再発する危険性が高い場合には選択できません。

(3)尿管皮膚ろう造設術
尿管を直接腹壁に固定して尿の出口とする方法です。左右の尿管を片側にまとめて1つのストーマにつなぐ一側性と、左右それぞれにストーマをつくる両側性とがあります。ストーマから断続的に尿が出るため、尿をためるためのストーマ装具をつける必要があります。手術の時間や入院期間が比較的短く、体への負担が少ないため、一般的には高齢者や合併症をもつ人に行われることの多い方法です。
4)尿路変更(変向)術の合併症
手術の後に、腸閉塞が起こることがあります。腸閉塞は、腸の炎症による部分的な癒着(本来はくっついていないところがくっついてしまうこと)などにより、腸管の通りが悪くなる状態のことをいいます。便やガスが出なくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐などの症状が出ます。多くの場合、食事や水分を取らずに点滴を受けたり、胃や腸に鼻からチューブを入れて胃液や腸液を出したりすることなどで回復しますが、手術が必要になることもあります。
このほかにも、術式によってさまざまな合併症が起こることがあります。例えば、回腸導管造設術では、尿管や腸管のつなぎめから尿などが漏れることがあります(縫合不全)。腹膜炎を併発した場合には緊急手術が必要となることがあります。
また、自排尿型新膀胱造設術では、尿意を感じなくなるため、尿もれを起こすことや、膀胱に尿がたまりすぎて膀胱が拡張し、排尿が困難になることがあります。尿が出なくなった場合には、自分で尿道にカテーテルを通し、尿を導き出す自己導尿が必要になります。また、尿管皮膚ろう造設術では、ストーマの開口部が狭くなりやすく、カテーテルやステントの留置が必要になる場合があります。
5.放射線治療
放射線治療は、がんに放射線をあてて縮小させる治療法です。膀胱がんでは標準治療ではありませんが、筋層浸潤性膀胱がんで膀胱の温存を希望する場合や、全身状態などから膀胱全摘除術が難しい場合に、TURBTや薬物療法などと組み合わせた集学的治療の一部として行うことがあります。また、がんが進行したことによる膀胱出血や、骨転移による痛みなどの症状を和らげる目的で、放射線治療を行うこともあります。
6.薬物療法
進行していて切除が難しい膀胱がんや、転移や再発したがんに対しては、薬物療法を行います。薬物療法は、薬物を体内に取り入れ、がんの増殖を抑えたり成長を遅らせたりする治療法です。膀胱がんでは、細胞障害性抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬を使います。
1)細胞障害性抗がん薬
進行していて切除が難しい場合や、転移がある場合の薬物療法としては、まず細胞障害性抗がん薬による治療が行われます。また、膀胱全摘除術の前や後に、手術の効果を高める目的で、細胞障害性抗がん薬による薬物療法を行うこともあります。
進行していて切除が難しい場合や、転移がある場合には、ゲムシタビンとシスプラチンを併用するGC療法を行います。腎機能に障害がある場合には、ゲムシタビンとカルボプラチンを併用するGCarbo療法を行うことがあります。また、膀胱全摘除術の前に、手術の効果を高めることを目的として、シスプラチンを基本とした薬物療法を行うこともあります。
2)免疫チェックポイント阻害薬
細胞障害性抗がん薬を用いた薬物療法の効果がなく、がんが再発したり進行したりした場合には、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬である免疫チェックポイント阻害薬の使用を検討します。免疫チェックポイント阻害薬を使う治療法は、免疫療法にも分類されます。
膀胱がんでは、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)※の使用を検討します。
※薬の名前は「一般名(商品名)」で示しています。薬の名前の記載方針については関連情報をご覧ください。
薬物療法の副作用
細胞障害性抗がん薬の副作用には、吐き気、食欲不振、白血球減少、血小板減少、貧血、口内炎、脱毛などがあります。また、免疫チェックポイント阻害薬の副作用には、かゆみ、疲労、吐き気、免疫関連副作用(甲状腺機能低下症など)があります。免疫関連副作用は、頻度としてはそれほど高くはありませんが、重い症状が出ることもあるため、慎重な対応と早期発見が必要です。
7.免疫療法
免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2021年3月現在、膀胱がんの治療に効果があると証明されている方法には、免疫チェックポイント阻害薬を使用する薬物療法と、BCGを用いる膀胱内注入療法があります。
8.緩和ケア/支持療法
がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。
緩和ケアは、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげます。がんと診断されたときから始まり、がんの治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます。
なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。
9.リハビリテーション
一般的に、治療中や治療終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。
尿路変向(変更)術は身体的変化に加え、生活面や心理面に影響することがあります。尿路変向(変更)術を行った場合は、それぞれの特徴に応じたケアと合わせて、新しい排尿管理法を習得するためのリハビリテーションもしていきます。
1)ストーマを造設した場合のリハビリテーション
ストーマを造設した場合には、日常的にストーマ装具をつける必要があるため、装具の選び方やつけはずし、尿の捨て方、入浴の方法、トラブルが出た場合の対応法などについて、説明を受けて練習します。
2)新膀胱を造設した場合のリハビリテーション
新膀胱を造設した場合には、排尿のコツをつかむための自排尿訓練を行います。新膀胱には尿を押し出すための筋肉がないため、腹圧をかけて、立った姿勢あるいは座った姿勢で排尿します。尿意を感じないので、定期的に排尿するようにします。タイミングは4時間おきが目安ですが、水分摂取量や発汗量などで変化します。夜間も排尿する必要がありますが、尿意によって目覚めることがありませんので、目覚ましなどをかけるようにします。
10.転移・再発
転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療により縮小したりなくなったりしたようにみえたがんが再び出現することをいいます。
筋層非浸潤性膀胱がんが膀胱内に再発した場合には、最初に膀胱内にがんができた場合と同様にTURBTを行います。病理診断の結果によって、BCGの膀胱内注入療法や膀胱全摘除術などを行うことがあります。
筋層浸潤性膀胱がんは、リンパ節、肺、肝臓、骨などに遠隔転移することがあります。膀胱全摘除術後に遠隔転移をしたり、もともと膀胱があったあたりや上部尿路、尿道などにがんが再発したりすることもあります。
遠隔転移をした場合や、膀胱を全摘除した後にがんが再発した場合には、細胞障害性抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法を検討します。また、膀胱内の出血や骨転移による痛みを緩和するなどの目的で、放射線治療を検討することもあります。
2021年04月01日 | 「膀胱癌診療ガイドライン2019年版(2019年)」より、内容を全面的に更新し、4タブ形式に変更しました。 |
2020年02月27日 | 「2.治療成績」の参照先を「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」としました。 |
2016年06月14日 | 図4,5,6,7,8より著作権マークを削除しました。 |
2016年02月12日 | 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。 |
2016年01月08日 | タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。 |
2006年10月01日 | 更新しました。 |
1996年09月20日 | 掲載しました。 |
膀胱がん 療養
がんと診断されてからの仕事については「がんと仕事」、医療費や利用できる制度、相談窓口などのお金に関する情報は「がんとお金」をご参照ください。また、「がん相談支援センター」でも相談することができます。
「地域のがん情報」では、各都道府県等が発行しているがんに関する冊子やホームページへのリンクを掲載しています。併せてご活用ください。
1.日常生活を送る上で
症状や、治療の状況により、日常生活の注意点は異なります。体調をみながら、担当医とよく相談して無理のない範囲で過ごしましょう。
1)TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)後の日常生活
TURBTでは、膀胱の機能が大きく損なわれることはありませんので、治療後は1週間程度で治療前と同じような日常生活を送れるようになります。
2)膀胱全摘徐術後の日常生活
術後は、ウオーキングやストレッチなどの軽い運動から始めて、2~3カ月から半年程度で手術前の日常生活が送れるように、体力をつけていきます。腹筋を使う激しい運動は数カ月間控える必要があります。自分の体力に合わせて徐々に行動範囲を広げていくことが大切です。
ストーマ造設後の日常生活
ストーマを造設した場合、術後に尿の出口が狭くなることがあります。特に尿管皮膚ろうでは起こりやすいため、尿が出てこない、尿の出が悪いなどのトラブルが起きたときは、すぐに病院に連絡をしましょう。また、ストーマの周りがくぼんだり突出したりするなどの変化が起きていないか、ストーマ装具がうまく貼れないために尿が漏れたり、肌が荒れたりしていないかなど、気をつけて観察します。ストーマ装具には防臭加工がされているため、トイレで尿を捨てるとき以外は臭うことはほとんどなく、ケアの方法を身につければ、外出、入浴など通常の生活を送ることができます。
公共機関やショッピングセンターの施設構内などでは、オストメイト(ストーマをもっている人のこと)対応のトイレも設置が進んでいます。オストメイト対応の多機能トイレには、図9のようなマークがあります。ウェブサイト「オストメイトJP」で、全国のオストメイト対応トイレが検索できます。

永久的なストーマを造設した場合には、身体障害者の認定が受けられます。認定されると身体障害者手帳が交付され、ストーマ装具の給付や公共交通機関の割引、税金の減免などの諸助成を受けることができます。また、障害年金を受給できる場合があります。申請方法や制度内容などの情報についてはがん相談支援センターでご確認ください。
3)性生活について
性生活によって、がんの進行に悪影響を与えることはありません。また、性交渉によってパートナーに悪い影響を与えることもありません。ただし、薬物療法中は避妊が必要な場合があります。
膀胱全摘除術を行うと、男性の場合、射精ができなくなります。また、前立腺側面を走行する勃起神経を切除することが多く、その場合には勃起機能も失われます。がんの状態によっては勃起神経を温存できることもありますが、それでも十分な勃起が得られないこともあります。
女性の場合、子宮と腟の一部を膀胱と一緒に切除することが一般的です。この場合、腟が少し短くなりますが、性交渉は可能です。
2.経過観察
治療後は、定期的に通院して検査を受けます。検査を受ける頻度は、がんの進行度や治療法によって異なります。筋層非浸潤性膀胱がんの場合、膀胱鏡検査や尿細胞診で再発がないか確認します。検査の内容や間隔はリスクごとに判断します。
膀胱全摘除術を受けた場合には、血液検査、CT検査、尿細胞診、超音波(エコー)検査などを行います。検査の間隔は、がんの性質などを考慮して判断します。
規則正しい生活を送ることで、体調の維持や回復を図ることができます。禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、適度な運動などを日常的に心がけることが大切です。
膀胱がん 臨床試験
よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。
膀胱がんの臨床試験を探す
国内で行われている膀胱がんの臨床試験が検索できます。
がんの臨床試験を探す チャットで検索
※入力ボックスに「膀胱がん」と入れて検索を始めてください。チャット形式で検索することができます。
- 臨床試験への参加を検討したい場合には、今おかかりの担当医にご相談ください。
- がんの種類によっては、臨床試験が見つからないこともあります。また、見つかったとしても、必ず参加できるとは限りません。
膀胱がん 患者数(がん統計)
1.患者数
年に日本全国で膀胱がんと診断されたのは例(人)です。
2.生存率
がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。生存率とは、がんと診断されてからある一定の期間経過した時点で生存している割合のことで、通常はパーセンテージ(%)で示されます。がんの治療成績を表す指標としては、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます。
なお、生存率には大きく2つの示し方があります。1つは「実測生存率」といい、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。他方を「相対生存率」といい、がん以外の死因を除いて、がんのみによる死亡を計算した生存率です。
以下のページに、国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センターが公表している院内がん登録から算出された生存率を示します。
※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではありません。
膀胱がん 予防・検診
1.発生要因
膀胱がんの確立された危険因子は喫煙です。また、職場などでナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニルなどの化学物質にさらされること(曝露)によって、膀胱がんを発生するリスクが高まることがわかっています。
※がん情報サービスの発生要因の記載方針に従って、主なものを記載しています。記載方針については関連情報をご覧ください。
2.予防と検診
1)予防
日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。
膀胱がんを予防するために、たばこを吸っている人は禁煙しましょう。禁煙を始めてから年数がたつほど、禁煙しなかった場合と比べて膀胱がんのリスクを減らせることがわかっています。
2)検診
がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。
しかし、膀胱がんについては、現在、指針として定められている検診はありません。気になる症状がある場合には、医療機関を早めに受診することをお勧めします。
なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わった後の診療としての検査は、ここでいう検診とは異なります。
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膀胱がん 関連リンク・参考資料
1.膀胱がんの相談先・病院を探す
2.参考資料
- 日本泌尿器科学会 日本病理学会 日本医学放射線学会編.泌尿器科・病理・放射線科 腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 第1版.2011年,金原出版.
- 日本泌尿器科学会編.膀胱癌診療ガイドライン2019年版.2019年,医学図書出版.
- 日本臨床腫瘍学会編.新臨床腫瘍学(改訂第5版).2018年,南江堂.
- 並木幹夫ほか編.標準泌尿器科学 第9版.2014年,医学書院.
- 勝俣範之ほか編.がん診療スタンダードマニュアル.2019年,シーニュ.
- 佐藤隆美ほか著.がん治療エッセンシャルガイド 改訂4版.2019年,南山堂.
- 奧山明彦編.看護のための最新医学講座 第2版 22 泌尿・生殖器疾患.2008年,中山書店.
作成協力
2021年07月01日 | 「1.膀胱がんの相談先・病院を探す」を追加しました。 |
2021年04月28日 | 「編集委員・作成協力者・作成委員」へのリンクを追加しました。 |
2021年04月01日 | 「膀胱癌診療ガイドライン2019年版(2019年)」より、内容を全面的に更新し、4タブ形式に変更しました。 |
2019年04月26日 | 「4.疫学・統計」の項目名を「4.患者数(がん統計)」に変更し、内容を更新しました。 |
2016年01月08日 | タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。 |
2006年10月01日 | 更新しました。 |
1996年09月20日 | 掲載しました。 |