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膀胱がん(ぼうこうがん)

更新・確認日:2019年04月26日 [ 履歴 ]
履歴
2019年04月26日 「4.疫学・統計」の項目名を「4.患者数(がん統計)」に変更し、内容を更新しました。
2016年01月08日 タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。
2006年10月01日 更新しました。
1996年09月20日 掲載しました。

1.膀胱について

図1 膀胱の構造
図1 膀胱の構造(男性、女性)の図
膀胱は骨盤内にある臓器で、腎臓でつくられた尿が腎盂(じんう)、尿管を経由して運ばれたあとに、一時的に貯留する一種の袋の役割をもっています(図1)。膀胱には、尿が漏れ出ないよう一時的にためる働き(蓄尿機能)と、ある程度の尿がたまると尿意を感じ尿を排出する働き(排尿機能)があります。
膀胱を含め、腎盂、尿管、一部の尿道の内側は尿路上皮(以前は移行上皮と呼んでいた)という粘膜でおおわれています。

腎臓と腎盂の位置については、「腎細胞がん 基礎知識-1.腎臓について」をご参照ください。

2.膀胱がんとは

膀胱がんは、尿路上皮ががん化することによって引き起こされます。そのうち大部分(90%以上)は尿路上皮がんという種類ですが、まれに扁平上皮がん腺がんの場合もあります。

膀胱がんは画像診断やTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術) による確定診断により、1)筋層非浸潤(しんじゅん)性がん(表在性がんおよび上皮内がん)、2)筋層浸潤性がん、3)転移性がんに大別されます。詳しくは、「膀胱がん 検査・診断-2.病期(ステージ)」の「図2 膀胱がんの深達度」をご参照ください。

TURBTについては、「膀胱がん 検査・診断-1.検査」もご参照ください。

1)筋層非浸潤性がん

膀胱筋層には浸潤していないがんです。表在性がんと上皮内がんが含まれます。

表在性がんはカリフラワーやイソギンチャクのように表面がぶつぶつと隆起し、膀胱の内腔に向かって突出しています。この形態から、乳頭状がんと呼ばれることもあります。
表在性がんの多くはおとなしく浸潤しないがんですが、中には放置しておくと進行して浸潤がんや転移を来す危険性のあるハイリスク筋層非浸潤性がんと呼ばれるタイプのものもあります。

通常、表在性がんの治療はTURBTで行われます。しかし、表在性がんは膀胱内に再発しやすいという特徴があり、再発のリスクが高いと判断された場合には予防的に膀胱内注入療法が実施されることがあります。

上皮内がんは、膀胱の内腔に突出せず、粘膜のみががん化した状態をいいます。粘膜は上皮とも呼ばれ、上皮内のがんという意味で上皮内がんと呼ばれています。

2)筋層浸潤性がん

膀胱の筋層に浸潤したがんです。このがんは膀胱壁を貫いて、壁外の組織へ浸潤したり、リンパ節や肺や骨に転移を来す危険性があります。

3)転移性がん

原発巣の膀胱がんが、他臓器に転移した状態をいいます。膀胱がんが転移しやすい臓器としては、リンパ節、肺、骨、肝臓などがあります。

3.症状

膀胱がんの症状は、赤色や茶色の尿(肉眼的血尿)が出ることが最も一般的な症状です。また、頻繁に尿意を感じる、排尿するときに痛みがあるなど膀胱炎のような症状を来すこともあります。膀胱がんの場合は、症状が軽い、あるいはこのごろ症状が出現したばかりだとしても、がんの進行がゆっくりで、早期の状態であるとは限りません。症状が出現したときにはすでに筋層浸潤性がんや転移性がんであったということもあります。いずれにしても症状があれば医療機関を受診して、がんかどうかを診断しましょう。がんと診断された場合は、早期に治療を開始することが肝要です。下記に自覚できる主な症状を紹介します。

1)肉眼的血尿

肉眼的血尿とは、血の色を目で見て認識できる尿のことです。肉眼的血尿は、最も頻度の高い膀胱がんの症状で、一般的に痛みなどを伴わない無症候性です。血のかたまりが出る場合もあります。しかし、血尿があるからといって、必ずしも膀胱がんをはじめとする尿路系のがんがあるとは限りません。
数日経過すると血尿が止まるなど一過性の場合がありますが、そうした場合も早めの受診が必要です。

2)膀胱刺激症状

頻尿や尿意切迫感、排尿時痛や下腹部の痛みなどの膀胱刺激症状が出現する場合もあります。これらの症状は膀胱炎と非常に類似していますが、抗生剤を服用してもなかなか治らないことが特徴です。

3)背部痛

初発症状になることはまれですが、膀胱がんが広がり尿管口を閉塞するようになると尿の流れが妨げられ、尿管や腎盂が拡張してくることがあります。これを水腎症と呼んでいます。水腎症になると背中の鈍痛(背部痛)を感じることがあります。尿管結石でもこのような症状を呈することがあります。

4.患者数(がん統計)

膀胱がんは、日本全国で1年間に約20,000人が診断されます。膀胱がんと診断される人は男性に多い傾向にあり、60歳ごろから増加して、高齢になるほど多くなります1)

5.原因・予防

膀胱がんの確立されたリスク要因は喫煙です。男性の50%以上、女性の約30%の膀胱がんは、喫煙のために発生するとの試算があります。
また、職業でナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニルといった危険物質にさらされる(曝露:ばくろ)ことも確立したリスク要因とされています。

エジプト、ナイル川流域では、ビルハルツ住血吸虫症が膀胱がんを発生させるリスク要因である可能性が高いとされています。

その他のリスク要因の候補としては、フェナセチン含有鎮痛剤、シクロフォスファミド、骨盤内臓器に対する放射線治療の際の膀胱への被曝などがあげられます。
近年、糖尿病治療と膀胱がん発症との関連があるのではという指摘もなされています。

6.検診

膀胱がんの罹患率は比較的低く、また、一般検診の実施についての有用性は確認されていません。しかし、「5.原因・予防」で示したような、喫煙歴のある高齢者や、職業性発がん物資を扱った経験をもつ、いわゆる高リスク集団に対しては、年1回程度の検尿および尿細胞診の有用性が示唆されています。
【参考文献】
1.国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録 2014年全国推計値,2018年
2.日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版);金原出版
3.日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2015年版;医学図書出版
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更新・確認日:2016年01月08日 [ 履歴 ]
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2016年01月08日 タブ形式への移行と内容の更新をしました。
2006年10月06日 内容を更新しました。

1.がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

がんの疑い

  「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく受診しましょう。
   

受診

  受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
   

検査・診断

  検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかったりすることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。
   

治療法の
選択

  がんや体の状態に合わせて、担当医は治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、まわりの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。
   

治療

  治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、小さなことでも構いませんので、気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。よい解決方法が見つかるかもしれません。
   

経過観察

  治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

2.受診と相談の勧め

がんという病気は、患者さんごとに症状のあらわれ方が異なります。また、症状がなく検診でがんの疑いがあると言われることもあります。何か気にかかる症状があるときや、詳しい検査が必要と言われたときには、医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご自身で判断したり、何か見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、問題がないことを確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでは、がんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしていますので、お気軽に訪ねてみてください。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で相談できます。対面だけでなく、電話などでも相談することができますので、わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

詳しくは、「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」をご覧ください。

お近くのがん相談支援センターは「がん相談支援センターを探す」から検索することができます。

3.がんと言われたとき

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。

病気がどのくらい進んでいるのか、果たして治るのか、治療費はどれくらいかかるのか、家族に負担や心配をかけたくない…、人それぞれ悩みは尽きません。気持ちが落ち込んでしまうのも当然です。しかし、あまり思い詰めてしまっては、心にも体にもよくありません。

この一大事を乗りきるためには、がんと向き合い、現実的かつ具体的に考えて行動していく必要があります。そこで、まずは次の2つを心がけてみませんか。

1)情報を集めましょう

まず、自分の病気についてよく知ることです。担当医は最大の情報源です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。また、あなたが集めた情報が正しいかどうかを、あなたの担当医に確認することも大切です。

「知識は力なり」。正しい知識は、あなたの考えをまとめるときに役に立ちます。

2)病気に対する心構えを決めましょう

大きな病気になると、積極的に治療に向き合う人、治るという固い信念をもって臨む人、なるようにしかならないと受け止める人などいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためには、あなたが自分の病気のことをよく知っていることが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医からよく説明を受け、いつでも率直に話し合い、その都度十分に納得した上で、病気に向き合うことに尽きるでしょう。

情報不足は、不安と悲観的な想像を生み出すばかりです。あなたが自分の病状について理解した上で治療に取り組みたいと考えていることを、担当医や家族に伝えるようにしましょう。

お互いが率直に話し合うことが、お互いの信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。
更新・確認日:2016年01月08日 [ 履歴 ]
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2016年01月08日 タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。
2006年10月01日 更新しました。
1996年09月20日 掲載しました。

1.検査

膀胱(ぼうこう)がんが疑われた場合、膀胱鏡検査と尿細胞診が行われます。膀胱鏡所見により、筋層非浸潤性がんか筋層浸潤性がんかの大まかな区別ができます。検査の結果次第で、超音波(エコー)検査やCT検査などの精密検査を追加します。

筋層非浸潤性がんの多くは、転移したり、局所で浸潤したりするようなことはまれですので、必ずしも全身転移の状態を判定する検査は必要ではありません。しかし、筋層浸潤性がんの場合は、遠隔転移の判定のために全身CT検査あるいは骨シンチグラフィが行われます。また、膀胱にがんが見つかった場合、同じ尿路上皮でおおわれている腎盂(じんう)・尿管にもがんが発生している場合があるため、病変の有無をチェックするマルチスライスCT urography(CT尿路造影)、あるいは静脈性腎盂造影(DIPあるいはIVPなどと呼ばれている)が行われることがあります。

膀胱がんの深達度の判定はTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)の結果によって診断されますが、MRI検査も一部有用とされています。

その他、膀胱がんでは、尿検査による2種類の腫瘍マーカー(NMP22、BTA test)が保険適応となっており、強く疑われる場合に、診断の補助として用いられる場合もあります。

1)膀胱鏡検査(内視鏡検査)

膀胱鏡検査は、膀胱鏡(膀胱の内視鏡)を尿道から膀胱へ挿入して行う内視鏡検査です。肉眼的にがんの発生部位、大きさ、数、形状などを確認します。通常は、通院で行います。

2)尿細胞診検査

尿にがん細胞が出ていないかどうかを顕微鏡で見て判定する検査です。尿細胞診検査は陰性、疑陽性、陽性の3段階で評価されます。5段階法で評価する場合は、1、2は陰性(悪性所見なし)、3は疑陽性(悪性の疑い)であり、4、5では陽性(悪性所見が強く疑われる)に該当します。

判定が陽性の場合には膀胱がんあるいは上部尿路がん(腎盂・尿管がん)が存在している可能性が高いと判断されます。おとなしい表在性がんなどでは、がんがあっても尿細胞診検査で異常を認めないこともあるため、検査の結果が陰性であるからといってがんがないとはいえません。ほかの検査と併せて判断します。

3)腹部超音波(エコー)検査

体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。がんが隆起しているタイプのものは、超音波検査でも診断可能なことがあります。

4)CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ

CT検査は他の臓器への遠隔転移の有無、リンパ節転移(リンパ行性転移)の診断、周辺臓器への広がりがどの程度かを診断する場合に有用です。
CT検査では、X線を使って体の内部を描き出します。通常はヨードを造影剤として使います。

上部尿路にがんが発生しているか否かの検出のために、マルチスライス造影CTにて尿路を描出するCT urography(CT尿路造影)が実施されることがあります。この方法は3次元的にデータを取得して目的とする画像を再構成することが可能で、従来の静脈性腎盂造影検査より診断能力がよいと考えられています。

MRI検査では磁気を使って画像をつくる検査です。膀胱がんでは筋層浸潤がんの判断に使用されます。MRIもガドリニウムという造影剤を使用することがあります。

CTやMRIで造影剤を使用する場合、アレルギーが起きることがあります。薬剤などによるアレルギーの経験がある人は、医師に申し出てください。

骨シンチグラフィでは、ラジオアイソトープを使って骨の病変(骨転移)を調べます。

5)TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

膀胱がんの確定診断をするためにTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行います。一般的に全身麻酔もしくは腰椎麻酔で、病変部を専用の内視鏡で生検あるいは切除し、組織を採取します。採取された組織を顕微鏡で見て、がんの種類や筋層に浸潤しているかなどを確認します。

表在性膀胱がんの場合にはTURBTでがんを切除できる可能性が高く、診断と治療をかねた検査になります。TURBTによる組織検査の結果、それ以上の手術は不要と判断されることがあります。

また「膀胱がん 基礎知識-2.膀胱がんとは」で概説したハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんの場合には、最初のTURBTで完全切除と判断されても、がんが筋層内に残っていることがあり、もう一度TURBT(2nd TURBT)が実施されることがあります。

2.病期(ステージ)

病期とは、がんがどの程度進行しているかを示す言葉で、英語をそのまま用いてSstage(ステージ)ともいいます。医師による説明などの際にも、「ステージ」という言葉が使われることが多いかもしれません。

病期は、次の3つの指標によって決まります。

•がんの広がり(T:原発腫瘍 primary Tumor)
•リンパ節転移の有無(N:所属リンパ節 regional lymph Nodes)
•別の臓器への転移の有無(M:遠隔転移 distant Metastasis)

これをTNM分類といい、国際的に用いられています。
表1 T−原発腫瘍の壁内深達度
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍なし
Ta 乳頭状非浸潤がん
Tis 上皮内がん(CIS)
T1 上皮下結合組織に浸潤する腫瘍
T2a 筋層の半ばまでの浸潤
T2b 浸潤が筋層の半ばを越えるもの
T3a 膀胱周囲脂肪組織への顕微鏡的浸潤が想定される
T3b 膀胱周囲脂肪組織への肉眼的にはっきりとした壁外浸潤が想定される
T4a 前立腺※、精嚢、子宮あるいは腟への浸潤
T4b 骨盤壁あるいは腹壁への浸潤
※前立腺にある尿道に上皮内がんが進展した場合や表在性がんが発生している場合、浸潤ではなく、多発している病態であり、T4aには分類されません。
日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編
「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」(金原出版)より作成
筋層非浸潤がんはTaからT1で、その内Tisは上皮内がんと呼ばれます。筋層浸潤がんはT2かそれ以上です(図2)。
図2 膀胱がんの深達度
図2 膀胱がんの深達度の図
日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編
「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」(金原出版)より作成
表2 N−所属リンパ節
NX 所属リンパ節の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 小骨盤内の1個のリンパ節への転移を認める
N2 小骨盤内の多発性リンパ節への転移を認める
N3 総腸骨リンパ節転移を認める
日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編
「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」(金原出版)より作成
表3 M−遠隔転移
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり
日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編
「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」(金原出版)より作成
表1~3の組み合わせによって、膀胱がんの病期分類がなされます。例えば、がんが膀胱周囲の脂肪層まで浸潤し(表1でT3)、リンパ節転移が1個見つかったが(表2でN1)、ほかの臓器に転移がなかった(表3でM0)場合には、「T3N1M0」となります(図3)。これらの数字が高いほどがんは進行していることになります。リンパ節転移については、所属リンパ節を越えて遠隔に転移がある場合には遠隔転移として扱われます。
図3 膀胱がんの病期
図3 膀胱がんの病期の図
日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編
「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」(金原出版)より作成
【参考文献】
  1. 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版);金原出版
  2. 日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2015年版;医学図書出版
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更新・確認日:2020年02月27日 [ 履歴 ]
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2020年02月27日 「2.治療成績」の参照先を「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」としました。
2016年06月14日 図4より著作権マークを削除しました。
2016年02月12日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2016年01月08日 タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。
2006年10月01日 更新しました。
1996年09月20日 掲載しました。

1.臨床病期による治療選択

各種の画像診断とTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)による組織検査の結果を基に、患者さんの希望や年齢、合併症などを考慮した上でがんの治療法が決定されます。

筋層非浸潤性がんに対しては、TURBTや抗がん剤あるいはBCG(ウシ型弱毒結核菌)を生理食塩水に溶解して膀胱内に注入する膀胱内注入療法が行われます。

筋層浸潤性がんに対しては、骨盤内のリンパ節郭清(かくせい)を伴った膀胱全摘除+尿路変向術(外科治療)や放射線治療が行われます。ただし、筋層非浸潤性がんの場合でも、進展や転移のリスクが高いと判断される場合には、筋層浸潤性がんに準じた治療が行われることもあります。

転移性がんの場合には、全身抗がん剤治療(化学療法)が行われます。全身抗がん剤治療は筋層浸潤性がんの治療の前や後にも補助的に使用されることがあります。

図4に、膀胱がんの病期(ステージ)と治療方法の関係を表します。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図4 膀胱がんの臨床病期と治療
図4 膀胱がんの臨床病期と治療の図

2.治療成績

筋層非浸潤性膀胱がんのうち、表在性膀胱がんの場合は致命的になることはまれです。ただし、前にも述べたように、このがんは膀胱内に多発し、何度も再発することが特徴ですので、定期的に膀胱内を観察する必要があります。ハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんと判断された場合には、筋層浸潤性がんと同様の経過をたどることがあります。

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。生存率とは、がんと診断されてからある一定の期間経過した時点で生存している割合のことで、通常はパーセンテージ(%)で示されます。がんの治療成績を表す指標としては、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます。

なお、生存率には大きく2つの示し方があります。1つは「実測生存率」といい、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。他方を「相対生存率」といい、がん以外の死因を除いて、がんのみによる死亡を計算した生存率です。

以下のページに、国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センターが公表している院内がん登録から算出された生存率を示します。ここでは、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供する目的で、5年生存率より新しいデータで算出をした3年生存率についても情報提供をしています。

※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではありません。

3.自分に合った治療法を考える

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではありません。自分の生活や人生において何を大切にするのか、自分で考えることが大切です。

まずは、病状を詳しく把握しましょう。わからないことは、まず担当医に質問してみましょう。診断を聞くときには、病期(ステージ)を確認しましょう。治療法は、病期によって異なります。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。

担当医と話すときの助けとして「わたしの療養手帳 自分に合った治療法は?」もご参照ください。「患者必携 わたしの療養手帳」はさまざまな場合で必要なことを書きとめることができる手帳になっています。印刷もできますので、自分で記入してみて、わからないことや聞いてみたいことを整理してみましょう。

診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。

担当医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。セカンドオピニオンを聞きたいときは、担当医に話してみましょう。多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解していますので、快く資料を作ってくれるはずです。

セカンドオピニオンについては「セカンドオピニオン」もご参照ください。

担当医以外でも、看護師などほかの医療スタッフやがん相談支援センターのスタッフに相談することができます。あなたの抱えている問題点を整理し、一緒に考えてくれます。

がん相談支援センターについては「がんの相談窓口「がん相談支援センター」」もご参照ください。
【参考文献】
  1. 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版);金原出版
  2. 日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2015年版;医学図書出版
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更新・確認日:2016年06月14日 [ 履歴 ]
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2016年06月14日 図5,6,7,8より著作権マークを削除しました。
2016年01月08日 タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。
2006年10月01日 更新しました。
1996年09月20日 掲載しました。

1.手術(外科的治療)

膀胱(ぼうこう)がんの外科的な治療は、大きく分けて2つの方法があります。1つは、専用の内視鏡で腫瘍を切除するTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)です。もう1つは、下腹部を切開して膀胱を摘出する膀胱全摘除術です。

1)TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

(1)TURBTとは

全身麻酔あるいは腰椎麻酔を行って、専用の内視鏡を用いてがんを電気メスで切除する方法です。すでに「膀胱がん 検査・診断-1.検査」で概説したように、診断をかねて実施されます。筋層非浸潤性がんの場合、病態によってはTURBTでがんを完全に切除できることもあります。しかし、表在性がんは膀胱内に再発しやすいという特徴があり、再発のリスクが高いと判断された場合には、予防的に膀胱内注入療法が実施されることがあります。

手術時間は1時間程度です。手術後、尿を体外へ誘導するために、膀胱内に管(カテーテル)を留置します。翌日に抜去しますが、状況によっては数日間留置することもあります。病態によっては、手術当日あるいは翌日に再発を予防する目的で、膀胱内に生理食塩水で溶解した抗がん剤を注入する膀胱内注入療法が併用されることがあります。組織検査の結果、ハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんと判断された場合には、再度TURBT(2nd TUR)が行われることがあります。
【TURBTの合併症と後遺症について】

1.TURBTの合併症

術後の再出血、感染症、尿閉、排尿時痛などがあります。適切な治療により改善することが一般的です。腰椎麻酔によって手術が実施された場合には、術後に頭痛が発生することがあります。尿管の出口(尿管口)やその付近の腫瘍を切除した場合、尿管が電気メスによる炎症で通過障害を来すことがあります。完全に途絶して閉塞することはまれです。

また、膀胱を深く削ったために膀胱に穴が空く(膀胱穿孔:ぼうこうせんこう)を起こすことがあります。術後出血や膀胱穿孔を起こした場合には、再手術や開腹手術が必要なことがあります。

長時間にわたり腫瘍切除をした場合、手術中に使用する還流液が血管内に入ることによって、血液中のNa(ナトリウム)が低下し、意識障害や血圧低下を起こすことがあります。

2.TURBTの後遺症

この手術を何度も繰り返したり広い範囲を切除した場合には、膀胱容量が減少して頻尿となったり、尿道が狭くなったり(尿道狭窄[きょうさく])することがあります。また、尿管の通過障害が原因となって、腎臓でつくられた尿がスムーズに膀胱へと流れない状態(水腎症)が起こることがあります。
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2)膀胱全摘除術+尿路変向術

(1)膀胱全摘除術とは

筋層浸潤性がんと一部の筋層非浸潤性がんの最も有効な治療法とされています。
全身麻酔を使用し、下腹部に切開を入れ、尿管の切断をしたあと、膀胱の摘出を行い、男性では前立腺と精嚢(せいのう)を摘出します。がんの状態によっては尿道も摘出することがあります。女性では子宮と腟壁の一部、尿道をひとかたまりとして摘出するのが一般的です。骨盤内のリンパ節の摘出(骨盤内のリンパ節郭清)を併せて行います(図5)。

なお、最近は腹腔鏡下手術や、ダヴィンチによるロボット支援手術(先進医療として保険適応外の診療と保険診療が併用される)で、膀胱全摘除術を施行する場合もあります。
図5 膀胱全摘除術の摘出範囲
図5 膀胱全摘除術の摘出範囲の図
【膀胱全摘除術+尿路変向術について、さらに詳しく】
膀胱を摘出したあと、何らかの方法で尿を体外に排出する尿路変向(変更)術が実施されます。体液を体の外に出すための管(ドレーン)を入れて創(きず)を閉じます。手術終了時は、ドレーンのほかにも、経鼻胃管(胃液を吸い出すためのチューブ。鼻から出します)や、尿管ステント(ストーマ[人口膀胱]から尿管を経て腎臓に達する細いチューブ)、点滴など多くのチューブが体に挿入されています(図6)。
図6 膀胱全摘+尿路変向(変更)術の直後の様子
図6 膀胱全摘+尿路変向(変更)術の直後の様子の図
この手術は侵襲(しんしゅう)の大きな手術です。わが国における泌尿器科グループ(日本臨床腫瘍研究グループ)で実施した134例の膀胱全摘に関する前向き試験のときの結果では、開腹による膀胱全摘出術の平均出血は約1600cc、輸血が8割以上に必要で、手術時間は7時間半を要していました。担当医は合併症や全身状態などによって患者さんに適した手術内容や尿路変向術の方法を検討します。
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(2)尿路変向(変更)術について

膀胱を摘出すると腎臓でつくられた尿を何らかの方法で体外に排出する必要があります。そのための手術が尿路変向(変更)術です。尿路変向術は将来QOL:クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)に大きく関わってきますので、事前に担当医や看護師の説明を繰り返し聞いて十分理解し、納得して選択することが大切です。現在、わが国では回腸導管が最も多く実施されていますが、尿管皮膚瘻(ひふろう)や自排尿型新膀胱なども行われています。
【尿路変向(変更)術について、さらに詳しく】

1.回腸(結腸)導管造設術

小腸(回腸)あるいは大腸(S状結腸)の一部を切り離し、その腸に左右の尿管をつないだ上で腸の先を皮膚の外に出し、尿の出口とする方法です(図7)。皮膚から出した腸の部分をストーマと呼びます。ストーマには尿をためる装具(パウチ袋)をつけ、袋に一定量の尿がたまったら、トイレに流します。この方法は長い歴史があり、術後も機能が安定した方法で長期にわたり合併症が少ないことが特徴です。しかし、断続的に尿がストーマから流れ出るので、常時、装具(パウチ袋)をつけておく必要や、ストーマのケア(装具の交換、皮膚の手入れなど)を行う必要があります。
図7 回腸導管でのストーマ造設方法
図7 回腸導管でのストーマ造設方法の図

2.尿管皮膚瘻造設術

手術の方法が単純で、手術中の患者さんの体への負担が一番少ない尿路変向術ですが、ストーマ狭窄(ストーマの穴が小さくなり、通りが悪くなる)が起こる危険があります。切断した尿管を直接皮膚に縫いつけ、尿を出すためのストーマをつくります。左右の尿管を片側にまとめる一側性では左右どちらか1つのストーマとなり、両側性では左右1つずつ、合わせて2つのストーマとなります(図8)。

ステント(細い管)を体内に入れておく場合もありますが、近年は手術手技の工夫でステントを留置することは少なくなっています。回腸導管と同様に、尿をためる装具(パウチ袋)を常時つけておくことと、ストーマのケアが必要となります。この方法は回腸導管と異なり、ストーマに炎症が起こるとストーマが狭窄してしまうことがあります。術後時間が経過してからもこのようなストーマ狭窄が起こりうるのがこの方法の弱点です。狭窄が起こると、尿が流れにくくなり、たまって、水腎症が発生します。この場合には尿管ステントを生涯、留置することになります。留置されたステントは1カ月から数カ月置きに交換が必要となります。
図8 尿管皮膚瘻でのストーマ造設方法
図8 尿管皮膚瘻でのストーマ造設方法の図

3.自排尿型新膀胱造設術

小腸(回腸)や結腸を切り離したあと、縫い合わせて尿をためる袋(新膀胱)をつくり、左右の尿管を新膀胱につなぎ、さらにこれを尿道につなぐ方法です。この方法はストーマがなく、尿道から尿が出せることが大きな特徴です。しかし、尿道にがんが再発する危険性が高い場合は適応となりません。

尿道から尿が出せますが術前と同じではありません。尿を強く押し出す筋力は新膀胱にはありませんので、腹圧をかけて尿を出す必要があります。また、尿意は感じませんので、定時的に排尿する必要があります。

夜間に排尿しないで寝ているとその間も尿は新膀胱にたまり続けます。その状態が恒常的になると、膀胱が大きくなりすぎて将来排尿ができなくなる危険性があります。夜間は定期的に起床しても尿が漏れていることが一般的です。また、術後、長期間経過すると腹圧をかけて排尿することが困難になる傾向があります。実際に自排尿ができなくなったり、腎機能が低下したりすることがあります。

4.その他の尿路変向術(導尿型新膀胱造設術)

1980年代に登場した方法ですが、近年はほとんど用いられていません。腸を袋状にし、尿をためる袋(新膀胱)をつくり、尿を排出するための細い通り道(導尿路)を腹壁、またはへそにつなぐ方法です。途中で尿が漏れたり導尿が困難となったり膀胱内に結石ができるなどの合併症が必発です。ストーマがないこと以外にメリットがなく、蓄尿機能、排尿機能とも不安定で、いろいろな合併症が発生するため、近年では特殊な場合を除いて実施されません。
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3)術後の合併症

一般的な合併症としては腸閉塞や感染症による発熱、腎盂腎炎、創感染や創部の離解(縫い合わせた部分が開いてしまう)があります。これらは適切な抗生剤や処置により改善することが一般的です。
膀胱全摘は侵襲の大きな手術です。重大で時として命に関わる合併症が起こることがあります。
【重大な合併症についてさらに詳しく】

(1)感染

抗生物質に耐性をもった大腸菌や緑膿菌、表皮ブドウ球菌が感染の原因の場合には治療に難渋したり、多臓器不全におちいり致死的になることがあります。

(2)吻合不全(ふんごうふぜん)

腸管を利用して尿路変向術を行った場合には、腸管の吻合不全を起こすことがあります。腹膜炎を併発した場合には、緊急手術が必要となることがあります。

(3)肺梗塞(エコノミークラス症候群)

手術時間が長いこともあり、血が静脈内で固まって肺動脈を詰まらせる肺梗塞(エコノミークラス症候群)が発生することがあります。大きな血管が閉塞すると致死的となる場合があります。

(4)水腎症

尿路変向術に際して、尿管や尿道と腸粘膜の接合部分やストーマなどに狭窄を生じることがあります。このような状態になると、尿の流れが悪くなり、尿がうっ滞する水腎症という状態となります。そのまま放置すると腎臓の機能が障害されます。このような場合には再度、狭窄部分に管を通し、尿の流れを確保する必要があります。その後の経過により管が不要となる場合もありますが、常に管を入れておかなくてはならないことも、まれながらあります。
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4)術後の後遺症

術後の後遺症として、消化管運動障害、膀胱機能障害、性機能障害、長期間経過後の腎機能障害などが起きることがあります。
【術後の後遺症についてさらに詳しく】

(1)消化管運動障害

術後はなかなか腸の調整が利かず、便秘あるいは下痢になることが多く、時に便秘と下痢を交互に繰り返すこともあります。時間の経過とともに落ち着いてくることが多いのですが、整腸剤や下剤の服用が必要となることもあります。

(2)膀胱機能障害

膀胱を摘出することにより膀胱が本来もつ、尿を何らかの方法でためる蓄尿機能とたまった尿を排出する排尿機能を代用する必要があります。「治療-1.手術(外科的治療) 2)膀胱全摘除術+尿路変向術」で説明した尿路変向術の項目を参照ください。また「膀胱を摘出した場合のリハビリテーション」の項を参照してください。

(3)性機能障害

男性の場合、射精はできません。また、前立腺側面を走行する勃起神経を切除することが多く、その場合には勃起機能も失われます。がんの状態によっては勃起神経を温存できることもありますが、それでも十分な勃起が得られないことも多くあります

女性の場合、子宮と腟の一部を膀胱と一緒に切除することが一般的です。この場合、腟が少し短くなりますが、性交渉は可能です。

(4)長期間経過後の腎機能障害

尿路変向術後は、特に大きな合併症がなくても、長期的(数年~十数年)には腎臓の働きが悪化することがあるとされています。
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2.化学療法:全身抗がん剤治療

膀胱がんに対する化学療法には、内服や点滴などにより全身に抗がん剤を作用させる全身抗がん剤治療と、膀胱内に抗がん剤を注入する膀胱内注入療法があります。ここでは前者の全身抗がん剤治療について解説します(膀胱内注入療法については「治療-4.その他の治療 膀胱内注入療法」を参照ください)。

膀胱がんが、リンパ節や隣接臓器に転移のある場合、膀胱を全摘しても再発・転移する可能性が高いと判断された場合には、膀胱の摘出の前あるいは後に化学療法が行われます。

GC療法(ゲムシタビン+シスプラチンの2剤組み合わせ)が、現在膀胱がんの治療に行われる化学療法です。GC療法が登場する前にはM-VAC療法(メソトレキセート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチンの4剤組み合わせ)が行われていました。GC療法とM-VAC療法では治療効果はどちらも同じ程度ですが、副作用についてはM-VAC療法の方が強いため、GC療法が行われるようになっています。しかし、GC療法で効果がない場合などには、M-VAC療法が行われることがあります。また、2014年2月よりパクリタキセルとカルボプラチンの適応外使用が保険承認されたことから、今後はGC療法以外の組み合わせによる治療が行われる可能性があります。副作用として、吐き気、食欲不振、白血球減少、血小板減少、貧血、口内炎などが起きることがあります。
【化学療法の副作用について、さらに詳しく】
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします。特に毛根(髪の毛)、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛や口内炎、吐き気、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなったりすること(血小板減少)があります。白血球の数が減少すると、細菌などに対する免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなるため、感染症対策を行う必要があります。脱毛や吐き気など、副作用の多くは一時的なもので、抗がん剤治療が終わると治療前の状態に戻ります。現在では、抗がん剤の副作用による苦痛を軽くする方法の開発が進んでいます。また、副作用が著しい場合には、治療薬の変更や治療の休止、中断などを検討することもあります。
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3.放射線治療

放射線治療の適応となるのは、膀胱の摘出を望まない場合や、高齢もしくは全身状態がよくないため膀胱の摘出や化学療法が困難・危険と判断される浸潤性の膀胱がんの場合です。また、骨転移などの痛みを和らげることや、摘出ができない進行した膀胱がんからの出血を軽減することを目的として、放射線治療が選択されることがあります。

膀胱の摘出手術を望まない場合に、放射線治療に化学療法を併せて治療し、膀胱を温存することを目指す場合があります。深達度がT3a以下で腫瘍経3cm以下などの場合によいとされています。しかしこのような方法により膀胱を5年間温存できた可能性は6割以下であり、温存した膀胱に再度がんが発生するなどの危険性もあります。これらの治療法は、その特徴や膀胱がん再発の危険性などをよく理解した上で、治療法を選択する必要があります。

4.その他の治療:膀胱内注入療法

膀胱がんに対して非常に重要な治療法として膀胱内注入療法があります。筋層非浸潤性がんに対して積極的に行われます。膀胱内注入療法は、抗がん剤あるいはBCG(ウシ型弱毒結核菌)を生理食塩水に溶解して、尿道から膀胱に挿入したカテーテルを通じて膀胱内に注入し、ある程度の時間排尿せずに薬剤を膀胱内に接触させる方法です。

1)抗がん剤注入療法

おとなしい(ハイリスクではない)タイプの筋層非浸潤性膀胱がん(参照:「膀胱がん 基礎知識-2.膀胱がんとは」)に対して行われる治療法です。

TURBT当日あるいは24時間以内に抗がん剤を1回のみ注入する場合や、その後も外来で週一回程度注入する場合があります。抗がん剤注入療法は、全身抗がん剤治療と異なりほとんど副作用はありません。抗がん剤注入療法では、1時間程度膀胱に尿を貯留させる必要があるため、手術当日に注入する場合は出血や膀胱穿孔などのリスクがない場合に実施されます。前述のようなリスクがある場合は、膀胱に注入した抗がん剤が全身に吸収され合併症を引き起こす危険性があり、TURBT当日に抗がん剤注入療法を行うことはありません。

2)BCG(ウシ型弱毒結核菌)注入療法

ハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんや上皮内がんに対して行われる治療法です。毎週1回注入し、6~8回繰り返します。注入終了後も1~3年間は注入を維持した方がよいとの推奨もありますが、具体的なスケジュールは定まっておらず、実際に完遂率が低い、副作用も高頻度にみられるなどの問題点もあります。
【BCG注入療法の副作用、後遺症についてさらに詳しく】

(1)BCG注入療法の副作用

BCG注入療法は抗がん剤注入療法と異なり、ごく軽微なものまで含むとほぼ全例の患者さんに何らかの副作用が起こります。
排尿痛、頻尿が最も多く80%、次いで肉眼的血尿72%、排尿困難33%などがあり、尿道痛や残尿感、陰茎浮腫なども来すことがあります。また、発熱が60%、発熱に伴う関節痛、白血球の増多など検査値の異常が認められることがあります。下腹部痛や圧迫感などが起こることもあります。

重大な副作用としては39℃以上の発熱、2日以上続く38℃以上の発熱、全身消耗衰弱、鼠径部リンパ節腫脹、肺炎、咳(咳嗽:がいそう)、胸部や腹部痛、目のかすみなどがありBCGの全身感染が疑われます。このような場合には担当医に連絡してください。

(2)BCG注入療法の後遺症

BCG注入療法で起こる副作用の多くは数日で軽快することが一般的ですが、まれな後遺症として、膀胱が萎縮してしまうことがあります。
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【研究段階の治療について】
膀胱がんのその他の治療として、ペブチドワクチンや抗体による免疫療法などの開発が進められています。有効であることが証明されていない治療は研究段階にあるため、「臨床試験(りんしょうしけん)」として実施されています。臨床試験にはいろいろな種類があり、参加できる条件も異なっていますので、希望する場合は、検討できる臨床試験があるかどうか担当医にご相談ください。

臨床試験については、「臨床試験について」をご参照ください。
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【参考文献】
  1. 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版);金原出版
  2. 日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2015年版;医学図書出版
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更新・確認日:2016年01月08日 [ 履歴 ]
履歴
2016年01月08日 タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。
2006年10月01日 更新しました。
1996年09月20日 掲載しました。

1.治療後に日常生活を送る上で

膀胱がんによって膀胱を摘出したときには、尿の通る経路を新たにつくる尿路変向(変更)術を行います。その方法によって、排尿の方法やトラブルがあったときの対応が異なりますので、入院中に担当医や看護師から排尿の管理の方法や日常生活上の留意点について説明を受けましょう。

病院によっては、人工膀胱に関するケア(ストーマケア)を専門とする外来を設けたり、皮膚や排泄のケアについて専門的な知識と経験をもった看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)が相談に応じたりしていることもあります。

尿路変向(変更)術およびストーマケアについては、「膀胱を摘出した場合のリハビリテーション」もご参照ください。

2.治療後の経過観察と検査

膀胱がんは膀胱が存在する限り、膀胱内に再発する可能性は常にあります。TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)のあとは定期的に通院し、膀胱鏡や尿の細胞診で再発の有無をチェックします。初期治療後、通常3カ月後に膀胱鏡検査、尿細胞診検査を行い、その後はリスク別に通院の間隔が変わってきます。

膀胱を摘出した場合は、術後2年間は3~6カ月ごとに、その後は1年ごとに検査を行い、転移が出現していないかなど定期的にチェックします。また、回腸導管や腸管でつくられた新膀胱がきちんと機能しているか、腎障害が出てきていないかなどのチェックも行います。

治療後の通院間隔については、病態や病状によって変わってきますので、担当医に確認しましょう。
【参考文献】
  1. 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版);金原出版
  2. 日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2015年版;医学図書出版
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更新・確認日:2016年01月08日 [ 履歴 ]
履歴
2016年01月08日 タブ形式への移行と、「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版)」「膀胱癌診療ガイドライン2015年版」より、内容の更新をしました。
2006年10月01日 更新しました。
1996年09月20日 掲載しました。

1.転移

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れで運ばれてほかの臓器に移動し、そこで増えたものをいいます。がんは検査では認められなくても、治療の時点ですでにほかの臓器に移動している可能性があり、時間がたってから転移として見つかる場合があります。膀胱がんの転移は、リンパ節、肝、肺、骨、副腎、脳に多くみられます。転移が確認された場合には全身抗がん剤治療や放射線治療の適応となります。
転移を検出する方法としては、主にCT検査や骨シンチグラフィが用いられています。

転移はそれぞれの患者さんによって状態が異なるため、症状や体調あるいは希望に応じて治療やケアの方針を決めていきます。

2.再発

再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。膀胱がんでは内視鏡切除を実施した場合に起こる膀胱内再発と、膀胱を摘出したにも関わらずがん細胞が残存したため、膀胱を摘出した部位にがんが認められる局所再発があります。さらに膀胱がんの治療を行ったあとに腎盂や尿管といった部位に腫瘍が発生する上部尿路再発があります。同じ再発といっても病態は異なっています。

筋層非浸潤性がんは、膀胱内に何度も再発することが特徴です。初期治療後に再発のリスクが高いと判断された場合にはもう一度TURBT(2nd TURBT)を行いますが、再発した場合には、膀胱内注入療法(抗がん剤またはBCG)、場合によっては膀胱全摘除術が実施されます。膀胱を摘出したあとの局所再発は、全身抗がん剤治療や放射線治療などが実施されます。再発はそれぞれの患者さんによって状態が異なるため、症状や体調あるいは希望に応じて治療やケアの方針を決めていきます。

3.生活の質を重視した治療

近年、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の改善を目的として、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族が自分らしく過ごしたりするための緩和ケアが浸透し始めています。

緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状や、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くするため、また、自分らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をします。
そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことなど、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

緩和ケアについては、「緩和ケア」もご参照ください。

再発や転移、痛みが強いときの治療については、「患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版」の以下の項もご参照ください。
がんの再発に対する不安や、再発に直面したときの支えとなる情報をまとめた冊子です。がんの再発という事態に直面しても、「希望を持って生きる」助けとなりたいという願いを込めて、再発がんの体験者、がん専門医らとともに検討を重ねて作成されたものです。 もしも、がんが再発したら 冊子
【参考文献】
  1. 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011年4月(第1版);金原出版
  2. 日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2015年版;医学図書出版
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