がん情報サービス

乳がん((にゅうがん))

更新・確認日:2020年07月09日 [ 履歴 ]
履歴
2020年07月09日 「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン(1)治療編2018年版」「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン(2)疫学・診断編2018年版」「日本乳癌学会編 臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版(2018年)」により、内容を全面的に更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2019年06月10日 関連情報として「日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン」へのリンクを掲載しました。
2018年06月13日 「5.発生要因」「6.予防と検診 1)予防」を更新しました。
2017年05月11日 「5.疫学・統計 1)乳がんの統計」に男性乳がんの記載を追加しました。
2016年09月02日 「5.疫学・統計 2)乳がんの発生要因」を更新しました。
2015年11月04日 「3.症状 1)乳房のしこり」に葉状腫瘍の記載を追加しました。
2015年08月25日 「5.疫学・統計」の罹患データを2011年で更新しました。
2015年03月23日 タブ形式への移行と、「臨床・病理 乳癌取扱い規約2012年(第17版)」「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン(1)治療編(2)疫学・診断編2013年版」より、内容の更新をしました。
2011年07月15日 内容を更新しました。
1997年10月01日 掲載しました。
診療の流れ、セカンドオピニオンなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については以下の「治療にあたって」をご参照ください。

1.乳房について

乳房にゅうぼうは、母乳(乳汁)をつくる乳腺にゅうせんと、それを包む脂肪組織からなります。
乳腺は、乳頭から放射状に張り巡らされている15〜20の乳腺にゅうせんように分かれています。乳腺葉は、乳管と乳腺にゅうせん小葉しょうようからできています。乳腺小葉は腺房せんぼうという小さい組織が集まって形づくられています(図1)。
また、乳房には、多くのリンパ管が通っており、乳房の外側のリンパ節のほとんどが腋窩えきかリンパ節(わきの下のリンパ節)に集まっています。このほかに、乳房から近いリンパ節として、乳房の内側の胸骨の隣にある内胸リンパ節と、鎖骨の上にある鎖骨上リンパ節があります(図2)。
女性の乳房では、授乳期にホルモンの作用で腺房が発達して母乳がつくられ、乳管を通して分泌されます。
【図1 乳房の構造】
図1 乳房の構造
図1 乳房の構造図
閉じる
【図2 乳房の周囲のリンパ節】
図2 乳房の周囲のリンパ節
図2 乳房の周囲のリンパ節の図
閉じる

2.乳がんとは

乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉から発生します。男性にも発生することがあります。男性も、多くは女性と同様に乳管からがんが発生します。
乳がんは、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺など)に転移することがあります。
用語集
転移 

3.症状

乳がんの主な症状は、乳房のしこりです。ほかには、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などがあります。
乳がんは自分で見つけることのできるがんの1つです。日頃から入浴や着替えのときなどに、自分の乳房を見たり触ったりして、セルフチェックを心がけましょう。ただし、セルフチェックでは見つけられないこともあるため、定期的に乳がん検診を受けることも重要です。
乳房のしこりは、乳腺症など、乳がん以外の原因によっても発生することがあります。気になる症状がある場合は早めに乳腺専門医を受診し、早期発見につなげましょう。

4.乳がんの種類

乳がんは大きく非浸潤がんと浸潤がんに分けられます。非浸潤がんは、がん細胞が乳管や乳腺小葉にとどまっているがんです。浸潤がんは、乳管や乳腺小葉の周囲まで広がっているがんです。
浸潤がんの中で最も多いのは浸潤性乳管がんです。その他に特殊型がん(粘液がん、腺様嚢胞せんようのうほうがんなど)や炎症性乳がんなどがあります。

5.関連する疾患

1)乳腺症

乳腺症は、30〜40歳代の女性に多くみられる乳腺の良性の変化で、基本的に治療は必要となりません。また、一部を除けば、将来がんになることはありません。主な症状はしこりや痛みで、月経前に増大し月経後に縮小します。

6.患者数(がん統計)

乳がんは、日本全国で1年間に約92,300人が診断されます。男女別でみると、男性では1年間に約650人、女性では約91,600人です1)。全体のほとんどが女性における発症ですが、男性でも発症することがあります。女性のがんの中では最も多いがんで、特に40歳代後半〜60歳代後半の罹患率が高い傾向があります1)

7.発生要因

乳がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。体内のエストロゲンが多いことや、エストロゲンを含む経口避妊薬の使用、閉経後の長期のホルモン補充療法は、乳がんを発生するリスクを高めることがわかっています。
また、初経年齢が低い、閉経年齢が高い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がない、異型乳管過形成をはじめとする異型を伴う上皮内病変にかかったことがあることなども、乳がんの発生と関連があります。
さらに、飲酒、閉経後の肥満、運動不足といった生活習慣も乳がんを発生するリスクを高めると考えられています。
そのほかに、第一親等(自分の親または子)で乳がんになった血縁者がいることも乳がんの発生要因になります。原因としては、BRCA1、BRCA2という遺伝子の変異が知られていますが、これらの変異があるからといって必ずしも発症するとは限りません。遺伝医学などの専門家のいる施設で、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を行うことが勧められます。

8.予防と検診

1)予防

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。
中でも乳がんを予防するためには、飲酒を控え、閉経後の肥満を避けるために体重を管理し、適度な運動を行うことが良いと考えられています。

2)検診

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。
40歳以上の女性は2年に1回、乳がん検診を受けましょう。ほとんどの市町村では、検診費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担で検診を受けることができます。
検診の内容は、マンモグラフィ(乳房X線検査)と問診です。問診では、自覚症状、月経や妊娠などに関する事項、既往歴、家族の病歴、過去の検診の受診状況などを確認します。
検査の結果が「要精密検査(がんの疑いあり)」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。
※厚生労働省の指針では、がん検診の死亡率減少効果が確実で、検診の不利益(偶発症、過剰診断、偽陰性・偽陽性)が少ない検診だけが推奨されています。現時点で乳がん検診では、マンモグラフィが推奨されています。
なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わった後の診療としての検査は、ここでいう検診とは異なります。

9.「乳がん」参考文献

1)厚生労働省ウェブサイト.がん登録 全国がん登録 罹患数・率 報告 平成29年報告;2020年(閲覧日2020年6月5日)
2)日本臨床腫瘍学会編.新臨床腫瘍学 改訂第5版.2018年,南江堂
3)日本乳癌学会編.乳癌診療ガイドライン2018年版(追補2019).2019年,金原出版
4)日本乳癌学会編.乳癌診療ガイドライン(1)治療編2018年版.金原出版
5)日本乳癌学会編.乳癌診療ガイドライン(2)疫学・診断編2018年版.金原出版
6)日本乳癌学会編.患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版.金原出版
7)日本乳癌学会編.臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版.2018年,金原出版
8)日本リハビリテーション医学会がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会編.がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版.2019年,金原出版
9)日本がんリハビリテーション研究会編.がんのリハビリテーションベストプラクティス.2015年,金原出版
更新・確認日:2020年07月09日 [ 履歴 ]
履歴
2020年07月09日 「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン(1)治療編2018年版」「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン(2)疫学・診断編2018年版」により、内容を全面的に更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2019年06月10日 関連情報として「日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン」へのリンクを掲載しました。
2015年03月23日 タブ形式への移行と、「臨床・病理 乳癌取扱い規約2012年(第17版)」「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン(1)治療編(2)疫学・診断編2013年版」より、内容の更新をしました。
2011年07月15日 内容を更新しました。
1997年10月01日 掲載しました。
乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査を行います。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を顕微鏡で調べて診断を確定します。
がんの広がり方や転移を調べるためには、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ、PET検査などの画像検査を行います。
用語集
転移 

1.視診・触診

視診では、えくぼやただれの有無、乳房の形の左右の差、乳頭からの分泌物の有無を、目で見て観察します。触診では、指で乳房からわきの下を触って、しこりの有無や大きさ、硬さ、動き方などを確認します。

2.マンモグラフィ

マンモグラフィは、病変の位置や広がりを調べるために行う乳房専用のX線検査です。乳腺の重なりを少なくするために、2枚の板の間に乳房を挟んで圧迫し、薄く伸ばして撮影します(図3)。
視診・触診で発見しにくい小さな病変や、超音波検査では発見しにくい微細な石灰化(乳房の一部に微細なカルシウムが付着したもので、乳がんでみられることがあるもの)を見つけることができます。画像の性質上、高濃度乳房(乳腺の密度が高く、マンモグラフィで白く見える部分が多い状態)とされる場合では、病変が存在していても見つかりにくいことがあります。
図3 マンモグラフィの様子
図3 マンモグラフィの様子の図

3.超音波(エコー)検査

超音波検査では、乳房内の病変の有無、しこりの性状や大きさ、わきの下など周囲のリンパ節への転移の有無を調べます。乳房の表面から超音波を発生する器械(プローブといいます)をあてて、超音波の反射の様子を画像で確認します(図4)。
超音波検査では、乳腺は白く、多くの乳がんは黒く写るため、マンモグラフィで高濃度乳房とされる場合では、超音波検査の方が乳がんの発見に役立つことがあります。放射線による被ばくの心配がないため、妊娠中でも検査が可能です。
図4 超音波(エコー)検査の様子
図4 超音波(エコー)検査の様子の図

4.生検・病理検査

病変の一部を採取して顕微鏡で調べ、確定診断するための検査です。

1)細胞診

細胞診では、がん細胞の有無を調べます。主に、乳頭から出る分泌物の細胞を調べる細胞診と、超音波などの画像を見ながら病変に細い針を刺して注射器で吸い出した細胞を顕微鏡で調べる細胞診(穿刺せんし吸引細胞診)があります。多くの場合、局所麻酔の必要もなく、手で触れながら、あるいは超音波で病変を確認しながら針を刺します。

2)組織診

組織診では、局所麻酔を行い、マンモグラフィや超音波検査で確認しながら病変の一部を採取し、顕微鏡で調べます。組織診には、注射針より少し太い針を使う「針生検」と、手術で組織を取る「外科的生検」があります。
「針生検」には、ばねの力を利用して組織を採取する「コア針生検」と、吸引力も利用して組織を採取する「吸引式乳房組織生検」があります。がん細胞が含まれている場合には、がんの性質を調べ、最適な治療法の選択をしていきます。
手術中に行うことのある、センチネルリンパ節生検については以下をご覧ください。

5.その他の画像検査

その他の画像検査には、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ、PET検査などがあります。
CT検査はX線を使って、主に遠隔転移(骨や肺などの別の臓器に転移すること)の有無を調べます。MRI検査は磁気を使って、乳がんの広がりを調べたり、乳がんかそうでないかを判断したりするために行います。
図5 CT検査の様子
図5 CT検査の様子の図
骨シンチグラフィは、弱い放射線を放出する薬を注射して撮影することによって、がんが骨に転移しているかどうかを調べるために行うことがあります。
PET検査は、ほかの臓器への転移などについて確認するための検査です。放射性フッ素を付加したブドウ糖(FDG)を注射し、がん細胞に取り込まれるブドウ糖の分布を画像にします。CT検査やMRI検査など他の検査では診断がはっきりしない場合に使用されることがあります。

6.腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に産生される物質で、血液検査などにより測定します。この検査だけでがんの有無を確定できるものではなく、がんがあっても腫瘍マーカーの値が上昇を示さないこともありますし、逆にがんがなくても上昇を示すこともあります。
乳がんでは、現在のところ、診断(乳がんがあるかどうかを判断すること)や、病期(がんの進行の程度)の判定ができる腫瘍マーカーはありません。ただし、再発や転移した場合には、治療の効果をみるために、腫瘍マーカーのCEAやCA15-3を調べることがあります。
更新・確認日:2020年07月29日 [ 履歴 ]
履歴
2020年07月29日 「4.薬物療法 2)サブタイプ分類と薬物療法、3)乳がんの性質による薬の選択」の一部及び図9 乳がんの性質による薬の選択を変更しました。
2020年07月09日 「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン(1)治療編2018年版」「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン(2)疫学・診断編2018年版」「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン2018年版(追補2019)」「日本乳癌学会編 臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版(2018年)」により、内容を全面的に更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2019年06月10日 関連情報として「日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン」へのリンクを掲載しました。
2017年07月19日 1.手術(外科治療)に関連情報「乳がん 手術リハビリテーションクリニカルパス」を掲載しました。
2015年03月23日 タブ形式への移行と、「臨床・病理 乳癌取扱い規約2012年(第17版)」「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン(1)治療編(2)疫学・診断編2013年版」より、内容の更新をしました。
2011年07月15日 内容を更新しました。
1997年10月01日 掲載しました。
乳がんの治療法には、主に手術、放射線治療、薬物療法があり、手術によってがんを取りきることが基本となります。手術後の病理検査によって、術後の治療計画を検討します。がんの状態によっては、術前薬物療法(手術の前に行う薬物療法)を行うこともあります。図6は乳がんの治療の大まかな流れです。
図6 乳がんの治療の流れ
図6 乳がんの治療の流れの図
日本乳癌学会編「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版」(金原出版)より作成
※病期(がんの進行の程度)による治療の選択については、図7をご参照ください。

1.病期と治療の選択

がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期(ステージ)

乳がんの病期は、がんが乳房の中でどこまで広がっているか、リンパ節転移があるか、骨や肺など乳房から離れた臓器への転移があるかなどによって決まります(表1)。
表1 乳がんの病期
表1 乳がんの病期の図
日本乳癌学会編「臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版(2018年)」(金原出版)より作成

2)治療の選択

治療法は、がんの進行の程度に応じた標準治療を基本として、体の状態、年齢、本人の希望なども含めて検討し、担当医と患者がともに選んでいきます。
図7は乳がんに対する治療法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図7 乳がんの治療の選択
図7 乳がんの治療の選択の図
日本乳癌学会編「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン(1)治療編2013年版」(金原出版)、日本乳癌学会編「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版」(金原出版)より作成

(1)0期

乳房部分切除術(乳房温存手術)または乳房全切除術を行います。がんの状態によってはセンチネルリンパ節生検が行われます。乳房部分切除術を行う場合は、手術後の放射線治療が必要になります。

(2)I〜IIIA期

乳房部分切除術または乳房全切除術を行います。乳房部分切除術後には放射線治療を行います。また、乳房全切除術後にも必要となることがあります。がんが大きい場合は、術前薬物療法により手術の前に薬物療法でがんを小さくしてから手術を行うことがあります。リンパ節への転移がある場合には、リンパ節郭(かく)清(せい)(リンパ節を切除する手術)が行われます。
さらに、手術で切除した組織を使ってがんの広がりや性質なども調べ、必要に応じて薬物療法を行います。

(3)IIIB〜IV期

主に薬物療法を行います。がんの状態によっては手術や放射線治療を追加する可能性があります。

●妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能かどうかを、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.手術(外科治療)

乳がんの治療は、遠隔転移していることが明らかな場合を除き、がんを手術によって切除することが中心です。主な手術には、「乳房部分切除術(乳房温存手術)」と「乳房全切除術」とがあります。

1)手術の種類

(1)乳房部分切除術(乳房温存手術)

乳房部分切除術は、乳房の一部を切除する手術方法です。腫瘍から1〜2cm離れたところで切除します。がんを確実に切除し、患者さんが美容的に満足できる乳房を残すことを目的に行います。通常、手術後に放射線照射を行い、残された乳房の中での再発を防ぎます。
乳房部分切除術を受けられる条件については明確なものはなく、がんの大きさや位置、乳房の大きさ、本人の希望などにもよるので、手術を担当する医師とよく相談することが重要です。
しこりが大きい場合は、術前薬物療法によって腫瘍を縮小させてから手術を行うことがあります。
手術中には、切除した組織の断端(切り口)のがん細胞の有無を顕微鏡で調べて、確実にがんが切除できていることを確認します。がんが手術前の予想よりもはるかに広がっている場合は、手術中に乳房をすべて切除する乳房全切除術に変更するか、もしくは、再手術で乳房全切除術を行うこともあります。
乳房部分切除術、乳房全切除術の再発率は差がないといわれています。
※術後に放射線治療を行った

(2)乳房全切除術

乳房全切除術は、乳房をすべて切除する手術方法です。乳がんが広範囲に広がっている場合や、多発性(複数のしこりが離れた場所に存在する)の場合に行います。

(3)腋窩えきかリンパ節郭清

手術前の触診や画像診断、手術中のセンチネルリンパ節生検などで腋窩(わきの下)リンパ節にがんが転移していると診断された場合は、腋窩リンパ節郭清(リンパ節を切除する手術)を行います。切除する範囲やリンパ節の数は、転移の範囲によって決まります。
●センチネルリンパ節生検
乳房内からがん細胞が最初にたどりつくリンパ節をセンチネルリンパ節といいます(図8)。触診や画像診断などで腋窩リンパ節への転移がないと判断された場合や、リンパ節転移の有無がはっきりわからなかった場合には、手術の途中でセンチネルリンパ節生検(センチネルリンパ節の一部を採取して調べること)を行います。

センチネルリンパ節生検の結果で、センチネルリンパ節に転移がないか、あるいは転移があってもわずかであるとわかった場合は、リンパ節郭清をしなくてよくなります。リンパ節郭清をしない手術は郭清をする手術より体の負担が少なくなるため、この検査は重要です。
図8 センチネルリンパ節
図8 センチネルリンパ節の図

2)手術後の合併症

乳がんの手術後の合併症として、腕や肩を動かしにくい、リンパ浮腫(腕や手にリンパ液がたまってむくんだ状態)などの症状があらわれることがあります。

(1)腕や肩を動かしにくい

治療した側の腕があがりにくい、腕を回しにくい、腕がだるい、痛む、しびれる、わきの皮膚が突っ張るといった症状がみられることがあります。リンパ節や脂肪組織、皮膚、筋肉など、切除した範囲が大きいとこれらの症状が起こりやすくなります。担当医に相談の上、腕や肩の運動を段階的に取り入れていくと良いでしょう。

(2)リンパ浮腫が起きる

リンパ節郭清や、リンパ節に放射線治療を行った後に、腕や手がむくむことがあります。リンパ浮腫はいったん起きると治りづらいこともあるため、予防が大切です。医師の指導によって、日常生活の工夫を行いましょう。

●乳房の再建について

乳房の再建とは、乳房切除術後に、自家組織(自分のおなかや背中などから採取した組織)やシリコンなどの人工物を用いて、新たに乳房をつくることです。再建の時期については、乳がんの手術と同時に行う一次再建と、数カ月から数年後に行う二次再建とがあります。
ごくまれですが、自家組織による再建では移植した組織の壊死、人工物による再建では人工物の感染や乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)などの合併症が発症することがあります。再建を受けるかどうかについては、担当医とよく話し合い、理解した上で決めましょう。

●手術の傷あとが怖い、見るのがつらいときには

手術後の傷あとにショックやつらい思いを抱く人は少なくありません。傷の色や形は、手術後少しずつ、周りの皮膚になじんできます。治療後間もない時期には、傷の状態も含めて医師などに診てもらいましょう。看護師や担当医に相談することで、あなたの気持ちや治療後の状態に応じた助言を受けることができるでしょう。

3.放射線治療

放射線治療は、がんに高エネルギーのX線を照射することで、がん細胞を死滅させたり小さくしたりする治療法です。
乳房部分切除術の後には、原則として残った乳房の組織に対して照射します。乳房全切除術を行った場合は、手術した胸の範囲全体と、鎖骨の上の部分に対して照射することもあります。1日1回、週5回で約4〜6週間かけて照射するのが一般的です。

●放射線治療の副作用

治療中や治療後すぐの副作用として、放射線があたったところの皮膚が日焼けのように赤くなり、かゆくなったりひりひりしたりすることがあります。さらに、皮膚表面がむけたり、水ぶくれのようになったりすることもありますが、治療が終了すれば2週間ほどで徐々に回復します。
乳房部分切除術の数カ月後に乳房が少し縮んで小さくなることがあります。また、乳房に放射線をあてることによって、乳汁をつくる機能は失われますが、反対側の乳房から通常通り授乳できます。
なお、放射線が肺に照射されることによって、肺炎が起こることがあります。咳や微熱が続き、他の医療機関にかかる場合は、「放射線治療を受けた」ことを伝えるようにしましょう。

4.薬物療法

乳がんに対する薬物療法で用いられる薬には、ホルモン療法薬、分子標的薬、細胞障害性抗がん薬があります。
薬物療法には、「再発の危険性を下げる(術前薬物療法・術後薬物療法)」、「手術前にがんを小さくする(術前薬物療法)」、「手術が困難な進行がんや再発に対して延命や症状を緩和する」などの目的があり、病期(ステージ)、リスクなどに応じて行われます。

1)薬物療法を行うタイミングについて

乳がんの薬物療法を、術前に行うべきか、術後に行うべきかで悩む人も少なくありません。
術前に行うメリットは、しこりが大きいために乳房部分切除術が行えない人が、しこりが小さくなった場合に乳房部分切除術ができる可能性が出てくることや、手術での切除範囲が少なくてすむことでより美容性の高い手術ができる可能性があることです。
術前に行うデメリットは、針生検などの限られた標本で病理診断を行うため、治療の選択が難しくなる場合があることです。
細胞障害性抗がん薬や分子標的薬による薬物療法は、術前に行っても術後に行っても、乳がんの再発率や生存率は同じといわれています。一方、ホルモン療法薬の術前と術後の使用における再発率や生存率の違いは明らかになっていません。

2)サブタイプ分類と薬物療法

乳がんの分類には、病期分類に加え、がん細胞の特徴によるサブタイプ分類があります。サブタイプ分類は、薬物療法を行う際にどの薬が適しているかを選ぶ参考にするためのものです(図9)。しかし、治療方法は、この分類だけではなく、悪性度(がん細胞の形からみた転移や再発の危険性の度合い)や全身の状態、本人の希望とともに決めていくことになりますので、担当医とよく話し合ってください。
サブタイプ分類は、本来、遺伝子検査の結果によってわかるものですが、遺伝子検査よりも簡易にできる病理検査で、がん細胞の中にあるタンパク質を調べることにより便宜的に分類することがあります。
調べるタンパク質は、ホルモン受容体、HER2はーつーKi67けーあいろくじゅうななです。

  • ホルモン受容体検査:がんの増殖(増えること)に関わる女性ホルモンに反応するタンパク質を調べます。エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の有無を調べ、どちらかの受容体があれば、ホルモン受容体陽性と判定します。

  • HER2:がん細胞の増殖を促すタンパク質です。HER2検査では、がん細胞にあるHER2タンパクの有無を調べます。

  • Ki67検査:細胞の増殖能力の指標となるタンパク質を調べる検査で、がん細胞の中のKi67の量を測定します。Ki67の値については、研究中で、まだ明確な基準値はありません。

また、HER2検査で十分な判断がつかない場合には、HER2遺伝子の数の増加を調べる検査を行うこともあります。

3)乳がんの性質による薬の選択

(1)ホルモン受容体陽性乳がん

ホルモン受容体陽性(女性ホルモンにより増殖する性質をもつこと)を「ルミナル」といい、ホルモン療法薬の効果が期待できます。がん細胞が増えるスピードが遅い(HER2陰性、Ki67が低値)という特徴をもつ場合には、ホルモン療法薬が治療の第一選択になります。がん細胞が増えるスピードが速い(Ki67が高値)という特徴をもつ場合には、ホルモン療法薬に加え細胞障害性抗がん薬も使います。
ホルモン受容体が陽性でHER2が陰性の乳がんの場合、細胞障害性抗がん薬を使うかどうかを決めるために、多遺伝子アッセイという複数の遺伝子を調べる検査を行うことがあります。保険適用外であるため、高額な検査となります。

(2)HER2陽性乳がん

HER2タンパクをもっている乳がんには、分子標的薬による治療を行います。原則として、細胞障害性抗がん薬と組み合わせて使います。

(3)ホルモン受容体陰性・HER2陰性乳がん(トリプルネガティブ乳がん)

トリプルネガティブは、3つの陰性(エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性、HER2陰性)を意味します。女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)によって増殖する性質をもたず、かつ、がん細胞の増殖に関わるHER2タンパクをもっていないという特徴があります。細胞障害性抗がん薬によって治療します。
図9 乳がんの性質による薬の選択
図9 乳がんの性質による薬の選択の図

4)乳がんの薬物療法で使われる薬

(1)ホルモン療法薬

ホルモン療法薬は、ホルモンの分泌や働きを阻害し、ホルモンを利用して増殖するタイプのがんを攻撃する薬です。ホルモン受容体が陽性の乳がんであれば効果が期待できます。
種類としては、体内のエストロゲン(女性ホルモン)の量を減らすホルモン療法薬として、LH-RHアゴニスト製剤とアロマターゼ阻害薬、がん細胞がエストロゲンを取り込むのを妨げる抗エストロゲン薬があります。
主な薬には、次のようなものがあります。
抗エストロゲン薬:タモキシフェン、トレミフェン
LH-RHアゴニスト製剤:リュープロレリン、ゴセレリン
アロマターゼ阻害薬:アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン
閉経前と閉経後では、体内でエストロゲンがつくられる経路が異なるので、それにあった薬を使います。閉経前では、抗エストロゲン薬に、場合によりLH-RHアゴニスト製剤を組み合わせて使う場合があります。閉経後では、アロマターゼ阻害薬もしくは抗エストロゲン薬を使います。
薬に関する詳しい情報は関連情報をご覧ください。

(2)分子標的薬

分子標的薬は、がんの増殖に関わるタンパク質や、栄養を運ぶ血管、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬です。一部の乳がんでは、HER2タンパクが乳がんの細胞の増殖に関連しています。そのため、病理検査でHER2が陽性であれば、HER2を標的とする分子標的薬を使って治療します。
乳がんの治療に使われる分子標的薬には、トラスツズマブ(ハーセプチン)などがあります。多くの場合、他の細胞障害性抗がん薬と組み合わせて使います。
乳がんの一部は遺伝性で、BRCA1BRCA2などの原因遺伝子が知られています。HER2が陰性で、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異があり、手術ができない場合や再発したがんである場合には、分子標的薬のオラパリブ(リムパーザ)を使うことがあります。
※薬の名前の記載については以下をご参照ください。

(3)細胞障害性抗がん薬

細胞障害性抗がん薬は、細胞の増殖の仕組みに着目して、その仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬です。がん以外の正常に増殖している細胞も影響を受けます。
サブタイプ分類がトリプルネガティブ乳がんである場合に、細胞障害性抗がん薬を使います。その他の場合でも、がんの大きさや転移の状況、がんの増殖の要因などから判断して、他の薬や放射線治療とともに使うことがあります。
細胞障害性抗がん薬は、必要に応じて複数の薬を組み合わせて行います。複数の薬を組み合わせて使う例として、AC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミドを組み合わせる治療)などがあります。
治療に使われる細胞障害性抗がん薬には、アンスラサイクリン系薬剤(ドキソルビシン、エピルビシン)、タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)などがあります。
薬に関する詳しい情報は関連情報をご覧ください。

●副作用について

ホルモン療法薬の副作用として、ホットフラッシュ(ほてり)、性器出血などの生殖器の症状、骨密度低下などの骨の症状などが出ることがあります。また、気分が落ち込む、イライラするなどの症状が出ることもあります。
分子標的薬は、薬によって異なりますが、悪寒、下痢、発疹などの副作用があります。
細胞障害性抗がん薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えます。副作用には、血液細胞の数や、肝機能、腎機能など検査でわかるものと、口内炎や吐き気、脱毛、下痢など自分でわかるものがあります。
副作用の有無や程度は人によりさまざまです。最近は副作用を予防する薬も開発され、特に吐き気や嘔吐に対しては以前と比べて多くの人が予防できるようになってきました。副作用の症状や対処についても、担当の医師や薬剤師・看護師からしっかりと説明を受けましょう。

5.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。
関連情報
緩和ケア

6.リハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示のもと、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。
がんと診断されたことによって運動や身体活動を制限する必要はなく、むしろ日常的に運動を行うことが望ましいといわれています。日常生活の中でできるトレーニングについて医師に確認し、無理をせず、段階的に行っていきましょう。

1)手術後の腕や肩のリハビリテーション

肩関節が動く範囲や傷のひきつれ感や痛みを確認し、状態に合わせた運動を開始します。退院までの期間が短いことも多いため、家でひとりでもできるトレーニングの指導を受けると良いでしょう。

2)リンパ浮腫予防のための運動

手術で腋窩リンパ節郭清を行った場合や、放射線治療を行った場合は、リンパ浮腫が起こりやすくなります。リンパ浮腫の予防のためには、スキンケアや、適度な運動を行うことが良いとされています。医師の指示のもと、肩関節を動かしてリンパ液の流れを促進する運動を行いましょう。
クリニカルパスとは、入院中の患者さんの検査や治療、療養に関する予定を記載した計画表のことで、計画的に安全な医療を進める手助けとなります。

7.臨床試験

より良い標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんにより良い治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。

●乳がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。臨床試験があるかどうかについては、担当医に相談してみましょう。

8.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。生存率とは、がんと診断されてからある一定の期間経過した時点で生存している割合のことで、通常はパーセンテージ(%)で示されます。がんの治療成績を表す指標としては、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます。
なお、生存率には大きく2つの示し方があります。1つは「実測生存率」といい、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。他方を「相対生存率」といい、がん以外の死因を除いて、がんのみによる死亡を計算した生存率です。
以下のページに、国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センターが公表している院内がん登録から算出された生存率を示します。ここでは、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供する目的で、5年生存率より新しいデータで算出をした3年生存率についても情報提供をしています。
※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではありません。

9.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなった後、再びがんが出現することをいいます。

1)転移

乳がんの遠隔転移(別の臓器に転移すること)は、骨や肺、肝臓、脳などに起こることが多いです。乳がんが遠隔転移している場合は、他の臓器にも検査ではわからないほどの小さな転移(微小転移)がある可能性が高いと考えられています。そのため、手術で切除することは勧められておらず、薬物療法を行います。
転移した乳がんは、他の臓器にあっても乳がんなので、乳がんとしての治療を行います。
がん細胞の特徴(ホルモン受容体の有無、HER2の状況など)、体の状態や本人の希望などを考慮に入れ、治療法を決めます。同時に、転移したがんのために生じる特有の症状を和らげる治療も行います。

●骨に転移した場合

強い痛みがある場合には、鎮痛薬による治療のほか、放射線治療を行います。骨折の危険性が高い場合には、整形外科的な手術で骨折を予防することもあります。また、乳がんの薬物療法に加えて、痛みや骨折のリスクを減らす目的でゾレドロン酸やデノスマブという薬が使われることがあります。

●肺に転移した場合

基本的には薬物療法を行いますが、転移か原発かどうかの判断が難しい場合に手術を行う場合もあります。

●脳に転移した場合

脳に転移したがんを小さくすることや、痛みを和らげることを目的として、主に放射線治療が行われます。転移したがんが1つで手術しやすい場所であれば、手術で取り除くこともあります。また、症状を改善するために、ステロイドなどの薬を使うこともあります。

2)再発

乳房部分切除術を行った後の乳房に起こる再発、また乳房を全部摘出した後の胸の皮膚やリンパ節に起こる再発を局所再発といいます。局所再発の場合は、手術でがんを切除した後、必要に応じて放射線治療や薬物療法を行います。
別の臓器などの乳房から離れた部分に転移として再発が見つかった場合(遠隔再発)は、薬物療法を行います。ホルモン受容体陽性の場合は、まずホルモン療法薬で治療します。HER2陽性の人は、トラスツズマブなどの分子標的薬と、細胞障害性抗がん薬を使います。それ以外の人や、ホルモン療法薬が効かなくなった場合は、細胞障害性抗がん薬による治療を行います。
乳がんの治療で使う薬の種類は多いため、1つの治療法を行って効果があり副作用の問題がなければそれを続け、効果がなくなってきたら別の治療法に変更します。
更新・確認日:2020年07月09日 [ 履歴 ]
履歴
2020年07月09日 「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン(1)治療編2018年版」「日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン2018年版(追補2019)」により、内容を全面的に更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2019年06月10日 関連情報として「日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン」へのリンクを掲載しました。
2017年07月19日 1.手術(外科治療)に関連情報「乳がん 手術リハビリテーションクリニカルパス」を掲載しました。
2015年03月23日 タブ形式への移行と、「臨床・病理 乳癌取扱い規約2012年(第17版)」「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン(1)治療編(2)疫学・診断編2013年版」より、内容の更新をしました。
2011年07月15日 内容を更新しました。
1997年10月01日 掲載しました。

1.日常生活を送る上で

乳がんは他のがんと比べて、比較的若い年齢で発症することが多いがんです。乳がんと診断されたときから治療が進む中で、仕事や家族のことなどさまざまな不安を抱え、それが生活に影響を与えることもあります。
不安や悩みへの対処として、医療スタッフへの相談はもちろんですが、患者会や援助団体、がん相談支援センターを利用するのも良い方法です。
また、治療による副作用は、治療後も継続したり、治療後しばらくたってからあらわれたりすることがあります。気になることがあれば、担当医に相談しましょう。
その病院に通院していなくても、どなたでも匿名で無料で相談できます

1)リンパ浮腫について

手術で腋窩えきかリンパ節郭清を行った場合や、放射線治療を行った場合は、リンパ浮腫というむくみが起きることがあります。リンパ浮腫については、以下の関連情報をご覧ください。

2)食生活や運動について

乳がんの再発の危険性を高める食品などはありません。しかし、肥満は再発のリスクを高めるといわれています。そのため、健康的な食生活と適度な運動を続け、肥満を避けるようにしましょう。

3)性生活・妊娠について

薬物療法中は妊娠しないように気をつけましょう。治療終了後は、薬が体内から出るまでの一定期間をおけば妊娠が可能です。妊娠・出産を希望する場合には、担当医に相談しましょう。
性生活によって、女性ホルモンの分泌が増えたり、がんの進行に悪影響を与えたりすることはありません。また、性交渉によってパートナーに悪い影響を与えることもありません。
ホルモン療法中には、皮膚の感覚が変化したり、性交痛が起こりやすくなったりすることもあります。パートナーとのコミュニケーションを大切にしていきましょう。

4)仕事や社会復帰について

がんと診断されたことで、必ずしも仕事を辞める必要はありません。体調が落ち着いていれば、仕事をしながら治療を受けることもできます。体調が優れないときには無理をせず、時間や業務の内容を調整できるかどうかを上司や同僚などに相談しましょう。

2.経過観察

乳房部分切除術後は、手術した乳房や反対側の乳房に対して、年1回くらいの間隔で、視触診やマンモグラフィなどの検査を行います。これらの検査で何か異常のあった場合や、気になる自覚症状があった場合に、さらなる検査を追加していくことがあります。
初期治療終了後、3年間は再発の可能性が高いとされる期間のため3〜6カ月ごと、4〜5年は6〜12カ月ごと、5年以降は年1回の定期的な経過観察が勧められています。
規則正しい生活を送ることで、体調の維持や回復を図ることができます。禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、適度な運動など、日常的に心がけることが大切です。