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子宮頸がん(しきゅうけいがん)

更新・確認日:2019年10月10日 [ 履歴 ]
履歴
2019年10月10日 「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」「子宮頸癌取扱い規約病理編第4版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年07月13日 「6.疫学・統計」を更新しました。
2013年08月13日 「6.疫学・統計」を更新しました。
2012年11月08日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2012年05月01日 内容を更新しました。
1996年04月01日 掲載しました。
診療の流れ、セカンドオピニオンなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については以下の「治療にあたって」をご参照ください。

1.子宮について

子宮は女性の骨盤内にある臓器で、大きさは成人女性で鶏の卵程度です。子宮は、下部の筒状の「子宮頸部(けいぶ)」と、上部の袋状の「子宮体部(たいぶ)」に分けられます。子宮頸部の下は腟(ちつ)につながり、子宮体部の左右からは卵管が出ています。また、子宮の左右には卵巣があります。基靱帯(きじんたい)は、子宮頸部の周囲にある組織(子宮傍組織)の1つで、子宮を支えています(図1)。
子宮は妊娠したときに胎児を育てる器官です。筋肉でできており、内側は子宮内膜と呼ばれる粘膜でおおわれています。子宮内膜は、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)というホルモンの作用を受けると、受精卵の着床に備えて増殖して厚くなり、妊娠しなければはがれおちます。これを月経といい、この周期は閉経するまで通常4週間隔で繰り返されます。
【図1 子宮の構造と周囲の臓器】
図1 子宮の構造と周囲の臓器
図1 子宮の構造と周囲の臓器の図
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2.子宮頸がんとは

子宮がんは、子宮体部にできる「子宮体がん」と、子宮頸部にできる「子宮頸がん」に分類されます。
子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる部分から発生します。子宮の入り口付近に発生することが多いので、婦人科の診察で観察や検査がしやすく、発見されやすいがんです。また、早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよいがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。
子宮頸がんは、進行すると骨盤の中のリンパ節に転移したり、子宮を支えている靱帯を伝って広がったり、また血管やリンパ管を通って子宮から遠い臓器(肺など)に転移したりすることがあります。

3.症状

子宮頸がんは、正常な状態からすぐがんになるのではなく、異形成といわれる、がんになる前の状態を何年か経てからがんになります。異形成の時期では症状がなく、おりものや出血、痛みもありません。
子宮頸がんが進行すると、月経中でないときや性交時に出血したり、濃い茶色や膿(うみ)のようなおりものが増えたり、水っぽいおりものや粘液が多く出てきたりすることがあります。さらに進むと下腹部や腰が痛んだり、尿や便に血が混じったりすることもあります。少しでも気になる症状があるときは、ためらわずに早めに婦人科を受診しましょう。

4.組織型分類(がんの組織の状態による分類)

子宮頸がんの組織型は、扁平(へんぺい)上皮がんと腺がんに大きく分けられます。扁平上皮がんが全体の7割程度、腺がんが2割程度を占めます。扁平上皮がんも腺がんも、がんになる前の状態が存在し、その中でも前がん病変と呼ばれる高度異形成や上皮内がんでは治療が必要になります。

5.患者数(がん統計)

子宮頸がんは、日本全国で1年間に約11,000人が診断されます。子宮頸がんと診断される人は20歳代後半から増加して、40歳代でピークを迎え、その後横ばいになります1)2)

6.発生要因

子宮頸がんの発生には、その多くにヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が関連しています。HPVは性交渉で感染することが知られています。しかし、多くの場合、感染しても免疫によって排除されます。HPVが排除されず感染が続くと、一部に子宮頸がんの前がん病変や子宮頸がんが発生すると考えられています。また、喫煙により、子宮頸がん発生の危険性が高まります。

7.予防と検診

1)予防

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。
HPVの複数ある型のうち、子宮頸がんの発生と関連が深い一部の型のHPV感染を予防するワクチンが接種可能になっています。しかし、ワクチン接種を受けたとしても、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。

●HPVワクチンについて

HPVワクチンは初めての性交渉前に接種することが望ましいと考えられており、9歳から接種が可能です。万が一、HPV ワクチンを接種した後に気になる症状が現れたときには、接種を行った医師またはかかりつけの医師に相談の上、協力医療機関の受診を検討してください。全国に設置された協力医療機関では、接種後に生じた症状の診療を行っています。

2)検診

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。
20歳以上は2年に1回、子宮頸がん検診を受けましょう。ほとんどの市町村では、検診費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担で受けることができます。
検診の内容は、子宮頸部の細胞診および内診、問診、視診です。問診では、不正性器出血などの症状の有無、妊娠および分娩歴、月経の症状、過去の検診受診歴などを確認します。検査の結果が「要精密検査(がんの疑いあり)」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。
※ 厚生労働省の指針では、がん検診の死亡率減少効果が確実で、検診の不利益(偶発症、過剰診断、偽陰性・偽陽性)が少ない検診だけが推奨されています。現時点で子宮頸がん検診では、細胞診が推奨されています。
なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わったあとの診療としての検査は、ここでいう検診とは異なります。

8.「子宮頸がん」参考文献

1)厚生労働省.がん登録 全国がん罹患数 2016年速報,2019年
2)日本臨床腫瘍学会編.新臨床腫瘍学 改訂第5版.2018,南江堂
3)日本婦人科腫瘍学会編.子宮頸癌治療ガイドライン2017年版,金原出版
4)日本婦人科腫瘍学会編.患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版.2016年,金原出版
5)日本産科婦人科学会・日本病理学会編.子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4版.2017年,金原出版
6)日本産科婦人科学会編.産婦人科研修の必修知識2016-2018.2016年,日本産科婦人科学会

●作成協力

この「それぞれのがんの解説 子宮頸がん」は、全国がんセンター協議会および厚労科研(H29がん対策‐一般‐005)の全面的なご協力により作成されました。
「がん情報サービス」情報作成協力者一覧 1.2019年度のご協力者
更新・確認日:2019年10月10日 [ 履歴 ]
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2019年10月10日 「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」「子宮頸癌取扱い規約病理編第4版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年08月13日 病期の記述について「子宮頸癌取扱い規約(第3版)」より確認、更新しました。
2012年11月08日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2012年05月01日 内容を更新しました。
1996年04月01日 掲載しました。

1.子宮頸がんの検査

子宮頸がんの検査では、通常まず細胞診を行います。その結果によっては、子宮頸がんの発生する危険性が高い種類のHPVの感染を検査する、ハイリスクHPV検査を行うこともあります。精密検査として、コルポスコープ(腟[ちつ]拡大鏡)下の組織診、さらに円錐(えんすい)切除術による組織診を行います。がんの広がりをみる検査には内診・直腸診、超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査があります。また膀胱や直腸を内視鏡で観察し、浸潤の有無を確認することもあります。その他、診断の補助、治療効果判定、再発の早期発見のために、腫瘍マーカーの検査を行うこともあります。

2.検査の種類

1)細胞診

ブラシなどで子宮頸部を擦って、採取した細胞をガラス板に固定し、それを色素で染めて顕微鏡で見る検査です。異常な細胞が見つかると精密検査を行いますが、がんと診断されるものは一部で、多くは異形成と呼ばれるがんの一歩手前の段階のものです。細胞診で異常が見つかっても、がんと決まったわけではありません。

2)コルポスコープ診・組織診

細胞診で異常があった場合には、コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を使ったコルポスコープ診を行います。子宮頸部を拡大して観察し、正常、異常、浸潤がん、評価不能などに分類します。そして疑わしい部分の組織を採取し(生検)、作成した病理組織標本を顕微鏡で観察して子宮頸がんや異形成などの確定診断を行います。さらに必要があれば、子宮頸部を円錐状に切除して組織診断を行います(円錐切除術)。
用語集
生検 

3)内診・直腸診

内診では、腟に指を入れ、もう片方の手は下腹部にあて、両方の手で挟みながら子宮の位置や形、かたさなどを調べます。直腸診をすることもあり、子宮傍組織(基靭帯:きじんたい)への浸潤の程度、直腸やその周囲に異常がないかを、肛門から指をさし入れて調べます。

4)超音波(エコー)検査

体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。腟の中から超音波をあてて子宮や卵巣の状態を観察したり、おなかの上から超音波をあてて、別の臓器やリンパ節への転移がないかなどを調べたりすることができます。

5)CT検査・MRI検査

CTはX線、MRIは強い磁場を使い、体の断面の様子を画像にして調べる検査です。いずれも造影剤を使うことで、診断の能力が上がります。治療前の子宮頸がんの広がりや、リンパ節や離れた臓器への転移などの診断に使います。

6)PET検査

放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞に取り込まれるブドウ糖の分布を撮影することで、がんの広がりを調べる検査です。リンパ節や他の臓器への転移の有無、がんの再発の有無、治療の効果を調べるために使われることがあります。

7)内視鏡検査

内視鏡検査には、膀胱鏡検査と直腸鏡検査があります。膀胱鏡検査では、尿道から膀胱へ内視鏡を挿入して、膀胱の中にがんが広がっていないか調べます。また、直腸鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入して、直腸の中にがんが広がっていないかを調べます。

8)腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーとは、がんの種類により特徴的に産生される物質で、血液検査などにより測定します。この検査だけでがんの有無を確定できるものではなく、がんがあっても腫瘍マーカーの値が上昇を示さないこともありますし、逆にがんがなくても上昇を示すこともあります。
子宮頸がんでは腫瘍マーカーとしてSCCやCA125、CEAなどが使われます。診断の補助、治療効果判定、再発の早期発見などに用います。しかし、早期がんでは上昇しなかったり、他の良性疾患でも上昇したりすることがあり注意が必要です。
更新・確認日:2019年10月10日 [ 履歴 ]
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2019年10月10日 「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」「子宮頸癌取扱い規約病理編第4版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月12日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2012年11月08日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2012年05月01日 内容を更新しました。
1996年04月01日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的で、子宮頸がんでは早期から進行するにつれてI期〜IV期に分けられます。

1)子宮頸がん前がん病変(高度異形成、上皮内がん)

子宮頸がんでは、前がん病変と呼ばれるがんになる前の状態でも治療を行います。
子宮頸がんの組織型は、扁平上皮がんと腺がんに大きく分けられます。
  • 扁平(へんぺい)上皮がんには、異形成と呼ばれるがんになる前の状態が存在します。さらに異形成には3つの段階があり、軽度(CIN1)、中等度(CIN2)、高度(CIN3)と進みます。扁平上皮がんでは、高度異形成(CIN3)と上皮内がん(CIN3)を前がん病変としています(図2)。
  • 腺がんでは、上皮内がんを前がん病変としています。
図2 扁平上皮がんの発生・進行のしかた(イメージ)
図2 扁平上皮がんの発生・進行のしかた(イメージ)?の図
日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版(2016年)」(金原出版)より作成

2)病期(ステージ)

子宮頸がんでは、治療開始前に病期分類を決定する臨床進行期分類を用いています(表1)。
表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2011、FIGO2008)
表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2011、FIGO2008)の表
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4版(2017年)」(金原出版)より作成
図3 子宮頸がんの進行期分類の図解
図3 子宮頸がんの進行期分類の図解の図
日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版(2016年)」(金原出版)より作成

3)治療の選択

子宮頸がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法があります。それぞれの治療法は、単独で行われるばかりでなく、組み合わせて行われることがあります。
図4は、子宮頸がんに対する治療方法を示したものです。担当の医師と治療方針について話し合うときの参考にしてください。図にある治療法は原則的なものですので、合併症の有無や妊娠の希望などによっては別の治療法を選択することもあります。
図4 子宮頸がんの治療の選択
図4 子宮頸がんの治療の選択の図
日本婦人科腫瘍学会編「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」(金原出版)より作成

●妊娠や出産について

前がん病変からIB1期までの方で将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。また、子宮は妊娠したときに胎児を育てる器官であるため、子宮頸がんの手術治療が将来の妊娠に与える影響についても確認しましょう。

2.手術(外科治療)

前がん病変の高度異形成や上皮内がんと、I〜II期の子宮頸がんに対する有効な治療法が手術です。がんの広がりにより子宮頸部(けいぶ)または子宮全部を切除します。卵巣と卵管は、年齢、病状に合わせて、切除するかどうかを決めます。切り取った組織は、顕微鏡で詳しく調べて(病理検査)、がんの広がりを診断し、手術後の治療方針を決めます。
良性疾患や前がん病変に対する単純子宮全摘出術では腹腔鏡下手術も広く行われています。子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術も保険適用になっていますが、実施可能な病院は限られています。

1)手術の種類

(1)円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)

子宮頸部の一部を円錐状に切除します(図5)。高度異形成に対しては、病巣を完全に取りきる治療として行います。画像の検査でわからないような早期がんの場合には、顕微鏡でがんの広がりを正確に調べる目的で円錐切除術を行い、がんの広がりに応じた適切な手術の方法を決めます。
図5 円錐切除術の範囲
図5 円錐切除術の範囲の図

(2)単純子宮全摘出術

子宮頸部のまわりの組織は取らずに子宮だけを切除します(図6)。子宮筋腫などの良性の病気と同じ手術方法です。おなかを切り開いて切除する開腹手術、おなかを切らずに腟から切除する腟式手術、腹腔鏡下手術のいずれかで行います。
図6 単純子宮全摘出術の範囲
図6 単純子宮全摘出術の範囲の図

(3)準広汎(こうはん)子宮全摘出術

がんの取り残しが起こらないように、単純子宮全摘出術よりも少し広めに子宮を切除する方法です(図7)。子宮と一緒に、基靭帯(子宮を支えている子宮頸部の周囲にある組織)の一部と腟(2cm程度)を切除します。
図7 準広汎子宮全摘出術の範囲
図7 準広汎子宮全摘出術の範囲の図

(4)広汎子宮全摘出術

がんを完全に取りきるために、準広汎子宮全摘出術よりもさらに子宮を広く切除する方法です(図8)。子宮と一緒に、基靭帯や腟(3〜4cm程度)を大きく切除します。また、骨盤内のリンパ節も一緒に切除(リンパ節郭清)します。がんを完全に取りきる可能性が高い手術である一方、リンパ浮腫、排尿のトラブル、性生活への影響などの合併症が一定の割合で起こります。
図8 広汎子宮全摘出術の範囲
図8 広汎子宮全摘出術の範囲の図

(5)広汎子宮頸部摘出術

妊娠するための力を保つために、子宮体部と卵巣を残し、それ以外は広汎子宮全摘出術と同じ範囲を切除します(図9)。広汎子宮全摘出術が必要な進行期で、かつ妊娠可能な年齢で子どもが欲しい場合に行います。しかし、本来取るべき子宮体部と卵巣を残すため、がんの大きさが小さいなど一定の基準を満たしている必要があります。
図9 広汎子宮頸部摘出術の範囲
図9 広汎子宮頸部摘出術の範囲の図

2)手術後の合併症

近年、手術の技術や合併症の予防法が向上し、合併症の発症する割合は低くなってきています。しかしながら、一定の割合で合併症は起こりますので、気になる症状があるときは、担当医に相談しましょう。
子宮頸がんの手術に伴う合併症には、足や下腹部のむくみ(リンパ浮腫)、排尿のトラブル、便秘、腸閉塞、更年期障害と同様の症状(卵巣欠落症状)などがあります。

(1)リンパ浮腫

リンパ液は手足の先から胸部へと一方向に流れています。リンパ液の通り道であるリンパ節とリンパ管を切り取ることによって、リンパ液の通り道が少なくなり、足や下腹部がむくみやすくなります。
現在のところ、リンパ浮腫の確実な予防法はありませんが、日々の生活の中でこまめに、足を高くして休む、リンパドレナージをする、弾性ストッキングをはくなどの圧迫療法を行う、圧迫した状態での運動をする(運動療法)、スキンケアなどを継続的に行う、などが予防に効果的であるといわれています。自分でマッサージなどのセルフケアの方法を習得しておくことが大切です。また、医師による弾性着衣装着指示書があると、弾性ストッキングは保険適用(療養費として支給)になります。

(2)排尿のトラブル

排尿に関係する神経は基靭帯の中を走っているので、基靭帯を広く切除する広汎子宮全摘出術をした場合に排尿障害が起こりやすくなります。症状は、尿がたまった感じがわかりにくい、尿を出しにくい、尿が全部出しきれない、尿がもれるなどです。個人差がありますが、多くは手術後数週間から数カ月である程度は改善します。しかし、手術前とまったく同じ状態に回復することは難しいので、尿をためすぎない、強くおなかを押して無理やり出さない、一定の間隔で排尿する、など日常生活での注意が必要です。

(3)便秘

排尿のトラブルと同様、広汎子宮全摘出術をした場合に起こりますが、排尿のトラブルよりも頻度は少なく、比較的短期間で回復します。食事の調整や下剤の服用で対応します。

(4)腸閉塞

手術をすると一時的に腸の動きが悪くなります。腸の動きの回復が遅れたり、おなかの中の創(きず)と腸が癒着したりして、食べ物や水分の流れが悪くなり、腹痛、嘔吐(おうと)、ガスが出にくくなるなどの症状が出て食事がとれなくなります。多くの場合はしばらく食事をやめて腸を休めることで回復しますが、まれに腸にチューブを入れる処置や手術が必要になります。
用語集
癒着 

(5)卵巣欠落症状(らんそうけつらくしょうじょう)

閉経前に両側の卵巣を切除する手術や、放射線治療で卵巣の機能が失われた場合、女性ホルモンが減少し、更年期障害と同様の症状が起こりやすくなります。この症状を卵巣欠落症状といいます。具体的には、ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸(どうき)、不眠、腟からの分泌液の減少、骨粗しょう症、高脂血症(こうしけっしょう)などの症状があらわれます。症状の強さや発症する期間は人によって異なりますが、特に年齢が若いと症状が強くなる傾向があります。症状を軽くするためには、血行をよくしたり、精神的にリラックスしたりすることも大切です。つらいときは我慢しないで担当医に伝えましょう。必要に応じて症状を和らげるためホルモン療法薬や漢方などが処方されます。

3.放射線治療

放射線治療は手術、薬物療法などと並んで、がんに対する主な治療法の1つです。細胞内のDNAを直接傷つける高エネルギーのX線やガンマ線などの放射線をがんに照射し治療するものです。最近は放射線治療を選択する人も少しずつ増加しています。
子宮頸がんに対しては、骨盤の外から照射する外照射と、直接子宮頸部のがんに照射する腔内(くうない)照射、また、放射線を出す物質をがん組織やその周辺組織内に直接挿入して行う組織内照射があります。
子宮頸がんでは、病期にかかわらず放射線治療を行うことができますが、比較的進行したがんの場合には、細胞障害性抗がん薬とともに放射線治療を行うこと(化学放射線療法)が多くなっています。また術後再発リスクの高い人や、初回治療で放射線治療を行わなかった人の再発の際の治療手段にもなります。

●放射線治療の副作用

放射線治療の副作用には、照射開始後数週間以内に起こる急性反応と、治療後数カ月から数年たってから起こる晩期合併症があります。
急性反応には、だるさ・吐き気や照射された部位の皮膚炎、粘膜炎、直腸炎や膀胱炎などがあります。しかしこれらは治療終了後には通常自然に治っていきます。
晩期合併症には、消化管からの出血や閉塞、穿孔(せんこう:穴が開く)、直腸腟ろう(直腸と腟がつながって腟から便が漏れる症状)などがあります。尿路の障害として、出血、感染や、膀胱尿管腟ろう(膀胱や尿管と腟がつながって腟から尿が漏れる症状)、その他に腟が狭くなったり、腟の壁同士がくっついたりすることなどがありますが、必ずしも起こるものではありません。

4.薬物療法

子宮頸がんでの薬物療法は、主に、遠隔転移のある進行がんや再発した場合に行われます。クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を保ち生存期間を延ばすことが治療の目標となります。

1)細胞障害性抗がん薬

細胞障害性抗がん薬は、細胞の増殖の仕組みに注目して、その仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬です。がん以外の正常に増殖している細胞も影響を受けます。
子宮頸がんに対しては、白金製剤のみによる治療と他の薬を併用する治療が行われています。また、放射線治療の効果を高めるために白金製剤が使われることがあります。
白金製剤とは、細胞障害性抗がん薬の中で白金を含むグループのことです。子宮頸がんで使う主な白金製剤に、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチンがあります。白金製剤以外の薬には、パクリタキセル、イリノテカン、ノギテカンなどがあります。現在、白金製剤と他の薬を組み合わせる多剤併用療法では、シスプラチン+パクリタキセル、もしくは、カルボプラチン+パクリタキセルが標準治療として用いられることが多くなっています。

●細胞障害性抗がん薬の副作用

主な副作用には、吐き気や嘔吐、脱毛、末梢(まっしょう)神経障害(感覚低下、痛み)などがあります。近年では、吐き気に対して新しい予防薬が使えるようになっています。

2)分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質を標的にしてがんを攻撃する薬です。子宮頸がんでは、ベバシズマブが用いられており、細胞障害性抗がん薬とともに使います。

●分子標的薬の副作用

主な副作用には、傷が治りにくい、高血圧、タンパク尿、出血などがあり、従来の細胞障害性抗がん薬とは異なる副作用が報告されています。

5.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、QOLを維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。
なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。
本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

6.リハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。
子宮頸がんに対する手術や放射線治療の後には下肢から下腹部にかけてリンパ浮腫を発症することがよくあります。リンパ浮腫の軽減には、弾性着衣で圧迫した状態での運動が効果的とされており、リンパ浮腫の改善のためにも運動は重要です。

7.臨床試験

よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。
現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。
参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

8.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。
生存率とは、がんと診断されてからある一定の期間経過した時点で生存している割合のことで、通常はパーセンテージ(%)で示されます。
がんの治療成績を表す指標としては、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます。
なお、生存率には大きく2つの示し方があります。1つは「実測生存率」といい、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。他方を「相対生存率」といい、がん以外の死因を除いて、がんのみによる死亡を計算した生存率です。
以下のページに、国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センターが公表している院内がん登録から算出された生存率を示します。ここでは、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供する目的で、5年生存率より新しいデータで算出をした3年生存率についても情報提供をしています。
※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではありません。

9.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

1)転移の治療

子宮頸がんで多くみられるのは、肺、脳、傍大動脈リンパ節(骨盤より上の大動脈まわりのリンパ節)、骨への転移です。転移の治療は、がんの部位や数、年齢や体の状態などにより、さまざまです。一般的に、転移が1カ所から数カ所程度で部位が限定される場合には放射線治療や手術を選択することが多くなります。また、転移が複数の部位にまたがる場合には薬物療法を選択することが多くなります。
薬物療法は、白金製剤を含む2種類の細胞障害性抗がん薬で治療します。分子標的薬を併用することもあります。

2)再発の治療

再発の治療は、再発した場所が、以前に放射線をあてた部位か、あてていない部位かによって大きく方針が異なります。放射線をあてていない部位の再発では、放射線治療が行われます。放射線治療中に細胞障害性抗がん薬を併用する治療も検討します。
放射線をあてた部位に再発した場合には、手術や再度の放射線治療をすると合併症の頻度が高くなります。そのため薬物療法が選ばれることも多いですが、効果があまり期待できないため、QOLを保つために症状を和らげる治療も検討します。
骨盤内の再発の場合、直腸や膀胱などもあわせて摘出する骨盤除臓術が行われることもあり、その場合は人工肛門や人工膀胱をつくることが必要となります。
更新・確認日:2019年10月10日 [ 履歴 ]
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2019年10月10日 「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2012年11月08日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2012年05月01日 内容を更新しました。
1996年04月01日 掲載しました。

1.日常生活を送る上で

症状や、治療の状況により、日常生活の注意点は異なります。どのような症状がありうるのか、また、症状が重いときにはどのように対処したらよいか担当の医師とあらかじめ相談しておきましょう。自分の体調をみながら、無理のない範囲で過ごしてください。
また、退院後にも、排尿のトラブルや便秘の問題、リンパ浮腫などの合併症が続く場合があります。不快な症状が続くときには、担当医に相談しましょう。

1)食事について

食事については、特に制限はありません。栄養バランスを第一に、楽しく食べることが大切です。ただし、開腹手術や放射線治療を受けた場合は、治療後に腸閉塞(へいそく)を発症する場合があります。食物繊維の多い食物や消化しにくいものなどは、控えめにすることが望ましいでしょう。

2)運動について

退院直後は体力が低下しているので、しばらくは疲れたらすぐに横になる、足を高くして休むなど、無理をしないようにしましょう。運動は、体力の回復に合わせて、散歩などから始め、少しずつ運動量を増やしていきましょう

3)性生活について

子宮摘出術や放射線治療を受けたとしても、性生活を諦める必要性はありません。手術を受けた場合、腟(ちつ)の乾燥や痛み、腟の短縮、性満足度の低下などが認められるとされています。しかし、精神的ケアによる不安感の改善やパートナーの理解などが、性交障害の改善に大きな影響を及ぼすとされています。思い切って医療者に相談したり、パートナー(配偶者・恋人)や家族と一緒に、解決方法を話し合うのもよいでしょう。前向きな気持ちになれない日々が続くのも自然なことと捉えて、あまり否定的になりすぎないことも大切です。

2.経過観察

治療を行ったあと、再発や転移の早期発見、治療後の合併症・後遺症の早期発見、早期治療のため、定期的に検査が必要となります。
子宮頸がんの標準的な経過観察の間隔の目安
●1〜2年目:1〜3カ月ごと
●3年目:3〜6カ月ごと
●4〜5年目:6カ月ごと
●6年目以降:1年ごと
子宮頸がんの再発は多くが骨盤内であるため、内診や直腸診、腟の細胞診が行われます。CT検査やMRI検査といった画像検査は再発が強く疑われる際に精密検査として行われます。治療前の腫瘍マーカー検査で高い値がみられた場合には、治療後も採血した際に経過をみていきます。
規則正しい生活を送ることで、体調の維持や回復を図ることができます。禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、適度な運動など、日常的に心がけることが大切です。